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SAVEDスコア

SAVED score

別名
SAVED
臓器系
血液腫瘍
科目
PathophysiologyInternal Medicine
トピック
病態生理学 2-30:腫瘍による二次的障害(1):癌患者の他臓器障害内科学 H-25:多発性骨髄腫
適用疾患
多発性骨髄腫

🧠 全体像は、を投与する患者に絞って(VTE)の発症リスクを5項目で層別化するである。名前の各文字がそのまま項目に対応する——S(手術)・A(アジア人種)・V(VTE既往)・E(80歳以上)・Dの用量)。化学療法全般を対象とすると異なり、骨髄腫治療に特有の血栓源——と高用量の併用——を前提に作られた点が出発点になる。

何を評価するスコアか

で、骨髄腫そのものの診断やとは関係しない。対象は免疫調節薬(など)を投与する患者で、使うタイミングはを含む治療を開始する時点である。目的は「この患者にアスピリンだけで十分か、より強力なを要するか」を判断する材料を与えることにある。

癌患者の血栓症はという古典的なを介して生じるが、ではこれに骨髄腫治療特有の要素がされる。腫瘍細胞が産生するに加え、そのものが血管内皮を障害して凝固能を亢進させること、の高用量投与がさらにを強めることが重なって生じる。単独でもは化学療法一般より高く、この骨髄腫治療に特有の危険因子の組み合わせこそが、骨髄腫特異的なスコアが別途必要になった理由である1

内容
目的 開始後のVTE発症リスクの層別化
対象 を投与する患者
使う場面 を含む治療の開始時
評価しないもの 病期、腎機能、的リスク、既発症血栓の重症度

⚠️ 対象はこれからを開始する患者であり、すでにVTEを発症した患者の重症度評価や決定には使わない。

構成要素と配点

5項目・満点8点(最低−3点)の加算式で、いずれも開始前の情報を用いる。

💡 各項目は加点式だが、人種だけが減点式である。そのため理論上の合計点は−3点(アジア人種で他の危険因子が無い場合)から+8点(非アジア人種で他の全項目に該当する場合)までの幅を取る。

文字 項目 基準 点数
S 手術 90日以内の +2
A 人種 アジア人種 −3
V VTE既往 VTEの既往 +3
E 高齢 80歳以上 +1
D 用量 標準用量(1サイクル120〜160 mg) +1
D 用量 高用量(1サイクル160 mg超) +2

💡 唯一マイナス点を持つのが人種(アジア人種、−3点)である。 これは人種そのものに血栓を防ぐ機序があるという意味ではなく、導出・検証コホートでアジア人種の患者のVTE発症率が一貫して低かったという疫学的観察をそのまま数値化したものである。生物学的な機序は確立していない。

VTE既往(+3点)が単独項目としては最大の配点を持つ。 一度血栓を起こした患者は、を再開・継続する際にも高リスクであるという直感と一致する。

の用量はが変わるたびに変更されうるため、レジメン変更のたびにを再計算するべきである。1時点だけの評価で治療期間全体のリスクを固定しない。

💡 手術(+2点)と高用量(+2点)は、いずれも周術期・薬剤性のという機序が想定される項目である。 手術はそれ自体が独立したVTEの危険因子で、周術期のや血管損傷が加わる。は標準用量(+1点)より高用量(+2点)の方が配点が高く、用量が増えるほど凝固能を亢進させるというを反映している。

解釈とカットオフ

合計点 リスク分類 の目安
1点以下 低リスク アスピリン
2点以上 高リスク など、より強力な

原著の導出コホート(SEER-Medicareデータベース、2397例)では、高リスク群のVTE発症率が3か月時点7%・6か月時点12%で、低リスク群(4%・7%)を上回った。SAVEDモデルのC統計量は導出0.61・検証0.60で、当時のNCCNガイドラインが採用していた(0.51・0.54)を明確に上回った1。米国退役軍人医療制度を用いた外部検証コホート(1251例)でも同様の傾向が確認された。

この結果を受け、NCCNガイドラインは2点以上を高リスクの閾値として採用し、低リスクにはアスピリン、高リスクにはによるを対応させている2。高リスク群のにはにはが用いられる。ASCOの2023年版ガイドラインも、を併用する患者に、低リスクにはアスピリン(81〜325 mg)または、高リスクにはによるを提案している3

原著の判別能(C統計量0.60〜0.61)は高リスク群と低リスク群を明確に分けるほど高くはなく、その後の外部検証でも施設・集団によって0.6台前半から0.7台前半まで変動することが繰り返し報告されている2

⚠️ は「1点以下=低リスク/2点以上=高リスク」の2群のみで、という区分は設けられていない。境界の2点は、手術(+2)またはVTE既往(+3)が1つ入るだけで到達する低い点数であることに注意する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 導出・検証コホートの構成に偏りがある。 は65歳超のMedicare受給者が対象で、アジア人種は7%にとどまる。外部検証コホート(米国退役軍人医療制度)はさらに偏りが大きく、98%が男性、アジア人種はわずか2%だった1アジア人種の−3点という配点自体が、ごく少数のアジア系患者から推定された値であり、女性や非高齢者、アジア系患者の多い集団への一般化には注意を要する。

65歳未満まで対象を広げた感度分析では判別能がおおむね維持された(C統計量0.58)ため、導出年齢層より若い患者にもある程度の適用余地はあると考えられる1が、これは年齢による偏りを部分的に緩和するだけで、性別・人種構成の偏りは解消しない。

⚠️ IMPEDE-VTEスコアとの使い分けは明確な優劣で決まらない。 IMPEDE-VTEスコアはより項目数が多く、免疫調節薬の使用・BMI・・ESA()・・人種・VTE既往・カテーテル・既存のという10因子で構成されるが、これらは病歴・治療歴・身体所見であり、採血で測るは1つも含まない・ヘモグロビン・というを3項目含むのとは対照的である。IMPEDE-VTEスコアは初回抗骨髄腫療法を開始する骨髄腫患者全般を対象にする。

IMPEDE-VTEスコア
対象 を投与する骨髄腫患者 初回抗骨髄腫療法を開始する骨髄腫患者全般
項目数 5項目(うち1項目は2段階) 使用・BMI・骨折歴・既存のなど10因子
採血の有無 含まない 含まない
高リスクの 2点以上 4点以上
判別能(C統計量) 検証研究により0.6台〜0.7台前半 検証研究により0.6台〜0.7台前半

両モデルの判別能(C統計量)は検証研究によって0.6台から0.7台前半までばらつき、系統的にどちらかが優れるとは言えない。NCCNガイドラインはどちらのスコアを使ってもよいとし、IMPEDE-VTEスコア4点以上または2点以上を高リスクとして扱う2

⚠️ などのを含む現行のでは過小評価しうる。 導出・検証コホートはいずれもこれらの薬剤が普及する前の患者で構成されており、では大半の患者がで低リスクと判定されたにもかかわらず、実際のVTE発症率は低くなかった2

⚠️ 保険請求データから導出されており、病期や、時間変化するリスクは反映されない。 導出・検証コホートはいずれも医療保険請求データから構築されており、国際的リスク、治療開始後に変化する凝固能などは項目に含まれない。が捉えるのは、あくまで開始時点のベースラインリスクだけである。

⚠️ を伴う患者では、点数だけで抗凝固薬の種類を機械的に決めない。 を高頻度に合併する。性が高く、腎機能に応じたまたは他の抗凝固薬への変更を要する場面があり、はこの点を評価しない。

⚠️ に転用してはいけない。 患者2870例での検証でC統計量が0.5台にとどまり、実質的にを持たなかった。骨髄腫にはやIMPEDE-VTEスコアなどなモデルを用いるべきである4

まとめ

  • は、免疫調節薬を投与する患者のVTE発症を事前に予測するスコアであり、既発症血栓の重症度評価には使わない。
  • 手術(+2)・人種(アジア人種は−3)・VTE既往(+3)・高齢(80歳以上で+1)・用量(標準+1/高用量+2)の5項目・満点8点で構成される。
  • 1点以下が低リスク(アスピリン)、2点以上が高リスク(など)として扱われる。
  • 導出・検証コホートは高齢かつ米国退役軍人医療制度由来で男性に大きく偏り、アジア人種の−3点はごく少数の症例から推定された値である。
  • IMPEDE-VTEスコアと明確な優劣はなく、NCCNガイドラインはどちらの使用も認めている。を含む現行のでは過小評価しうる。
  • 保険請求データから導出されているため、病期・的リスク・時間変化するリスク因子は反映されない。
  • を高頻度に合併する疾患であるため、の選択には以外のも要る。
  • の用量はごとに変わりうるため、レジメン変更のたびにスコアを再計算する。
  • でのがほぼ無く、代わりに用いてはいけない。

出典

  1. 1.Derivation and validation of a risk assessment model for immunomodulatory drug-associated thrombosis among patients with multiple myeloma(Journal of the National Comprehensive Cancer Network・2019)SEER-Medicareの導出コホート2397例と米国退役軍人医療制度の外部検証コホート1251例で5項目のSAVEDスコアを作成し、2点以上を高リスクとする閾値と、C統計量が当時のNCCNガイドライン(IMWGコンセンサスモデル)を上回ることを示した。外部検証コホートは98%が男性、アジア人種はわずか2%だった閲覧 2026-08-01
  2. 2.Approach to Contemporary Risk Assessment, Prevention and Management of Thrombotic Complications in Multiple Myeloma(Cancers (Basel)・2022)NCCNガイドラインがIMPEDE-VTEスコア(3点以下)またはSAVEDスコア(2点未満)を低リスク、それぞれ4点以上・2点以上を高リスクとして採用したこと、両モデルの弁別能に明確な優劣がないこと、GRIFFIN試験でSAVEDスコアが低リスクと判定した集団でも実際のVTE発症率は低くなかったことを報告した閲覧 2026-08-01
  3. 3.Venous Thromboembolism Prophylaxis and Treatment in Patients With Cancer: ASCO Guideline Update(Journal of Clinical Oncology・2023)免疫調節薬とデキサメタゾンを併用する多発性骨髄腫患者に、低リスクにはアスピリンまたは低分子量ヘパリン、高リスクには低分子量ヘパリンによる血栓予防を提案するとする閲覧 2026-08-01
  4. 4.Evaluation of the Khorana score for prediction of venous thromboembolism in patients with multiple myeloma(Research and Practice in Thrombosis and Haemostasis・2022)多発性骨髄腫患者2870例でKhoranaスコアのC統計量は0.5台にとどまり弁別能がほぼ無く、SAVEDスコアやIMPEDE-VTEなど骨髄腫特異的モデルへの置き換えを支持した閲覧 2026-08-01