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Khoranaスコア

Khorana score

別名
Khorana risk scoreコラーナスコア
臓器系
腫瘍血液
科目
Pathophysiology
トピック
病態生理学 2-30:腫瘍による二次的障害(1):癌患者の他臓器障害
構成:検査値
血小板数ヘモグロビン白血球数
適用疾患
Trousseau症候群

🧠 全体像は「これから化学療法を始める外来癌患者を、腫瘍の部位・血算3項目(・ヘモグロビン・)・肥満度という治療前に分かる5項目だけで採点し、の発症リスクを層別化する」である。すでに起きた血栓の重症度や予後を測るスコアではなく、まだ血栓を起こしていない患者の発症前リスクを予測する点が出発点になる。原著は0点・1〜2点・3点以上の3群だったが、がいずれも2点以上を組み入れ基準にしたことを受け、現在のASCO・ITAC・NCCNガイドラインは2点以上の適応判断の閾値として扱う。

何を評価するスコアか

で、診断や重症度そのものは評価しない。対象は化学療法をこれから開始する・リンパ腫の外来患者で、使うタイミングは化学療法開始前の初回評価時である。目的はただ一つ、「この患者に(抗凝固薬の投与)を検討すべきか」を判断する材料を与えることにある。

癌患者の血栓症は静脈血栓が約8割・動脈血栓が約2割を占め、という古典的なを介して生じる。腫瘍細胞そのものが促凝固性物質を放出して主にの側を担うため、5項目のうち腫瘍の部位だけが最大の2点を持つのは、リスクの主因が治療ではなく腫瘍の生物学的性質にあることを反映している。

⚠️ のようにすでに血栓症を発症した患者の重症度評価や決定には使わない。あくまで血栓が起きるのためのスコアである。

構成要素と配点

5項目・満点6点の加算式で、いずれも化学療法開始前の値を用いる。

項目 基準 点数
腫瘍の部位(極高リスク) 胃癌 2
腫瘍の部位(高リスク) 肺癌リンパ腫卵巣癌等)・精巣癌 1
化学療法前 350×10⁹/L以上 1
化学療法前ヘモグロビン 10 g/dL未満、またはの使用 1
化学療法前 11×10⁹/L超 1
BMI 35 kg/m²以上 1

💡 腫瘍の部位以外は全てまたは身体測定値で、・診察所見を要する項目が無い。カルテの数値だけで機械的に採点できる設計が、原著が意図した「日常診療で使える簡便さ」の核心である1

・胃癌だけが2点を持ち、単独で「極高リスク」の位置づけになる。 の好発腫瘍として癌が古典的に語られるのはこの臨床像と符合する。

解釈とカットオフ

合計点 原著(2008年)の3区分 現行の実地での扱い
0点 低リスク
1〜2点 2点は次列の高リスクに合流
3点以上 高リスク
2点以上 (区分をまたぐ) の適応を検討する閾値

原著は0点・1〜2点・3点以上の3群でVTE発症率が段階的に上昇することを示す目的で作られた1が、その後の試験————がいずれも2点以上を組み入れ基準に採用した。この2試験での有効性が示されたことを受け、現行のASCO・ITAC・NCCNガイドラインは2点以上を、出血リスクや薬物相互作用がなければ)またはによるを提案する閾値として扱う2原著の3区分と実地で参照される「2点以上」という閾値は、区分の切れ目が一致しないことに注意する——原著の1〜2点()の中に、現在の予防適応となる2点が含まれる。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ では検証が弱い。 2870例での検証ではC統計量が0.5台にとどまり、実質的にを持たなかった。骨髄腫にはIMPEDE-VTEなどなモデルを用いるべきとされる3も原著の導出コホートで症例数が乏しく、同様の限界を持つ。

⚠️ 入院患者・周術期の患者には検証されていない。 対象はあくまで外来で化学療法を始める患者であり、入院中の内科患者や手術患者のVTEリスク評価に転用しない。

⚠️ 感度は高くない。 高リスク群(3点以上)のVTE発症率は低リスク群より高いものの、実際に発症したVTE症例の過半数は高リスク群以外(0〜2点)から生じており、低リスクという判定だけでVTEを除外する根拠にはならない4

⚠️ すでにVTEを発症した患者の再発リスク評価には使わない。 本スコアは発症前のリスクを予測するものであり、既発症患者の再発にはなど別の基準を用いる。

まとめ

  • は、化学療法を開始する外来癌患者のVTE発症を事前に予測するスコアで、既発症血栓の重症度評価ではない。
  • 腫瘍の部位(膵・胃は2点、肺・リンパ腫・婦人科・膀胱・精巣は1点)、化学療法前のヘモグロビン、BMIの5項目・満点6点で構成される。
  • 原著の3区分(0/1〜2/3点以上)に対し、INI・AVERT両試験の組み入れ基準を経て、現行ガイドラインは2点以上の適応検討閾値として扱う。
  • では検証が弱く、入院・周術期患者には未検証で、感度も高くない。既発症血栓の再発リスク評価にも使わない。

出典

  1. 1.Development and validation of a predictive model for chemotherapy-associated thrombosis(Blood・2008)化学療法を開始する外来癌患者2701例の導出コホートで5項目のスコアを作成し、独立した1365例で検証した。0点・1〜2点・3点以上の3群でVTE発症率が段階的に上昇した閲覧 2026-08-01
  2. 2.Venous Thromboembolism Prophylaxis and Treatment in Patients With Cancer: ASCO Guideline Update(Journal of Clinical Oncology・2023)Khoranaスコア2点以上の外来癌患者に、出血リスクや薬物相互作用がなければアピキサバン・リバロキサバン・低分子量ヘパリンによる血栓予防を提案できるとする閲覧 2026-08-01
  3. 3.The Khorana score for prediction of venous thromboembolism in cancer patients: a systematic review and meta-analysis(Haematologica・2019)高リスク群のVTE発症率は低リスク群よりは高いが、発症したVTEの過半数は高リスク群以外で起きており、除外目的での感度は乏しい閲覧 2026-08-01
  4. 4.Evaluation of the Khorana score for prediction of venous thromboembolism in patients with multiple myeloma(Research and Practice in Thrombosis and Haemostasis・2022)多発性骨髄腫患者2870例でKhoranaスコアのC統計量は0.5台にとどまり弁別能がほぼ無く、SAVEDスコアやIMPEDE-VTEなど骨髄腫特異的モデルへの置き換えを支持した閲覧 2026-08-01