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Ottawaスコア(癌関連VTE再発)

Ottawa score for recurrent VTE

別名
OttawaスコアOttawa risk score
臓器系
腫瘍血液
科目
Pathophysiology
トピック
病態生理学 2-30:腫瘍による二次的障害(1):癌患者の他臓器障害
適用疾患
Trousseau症候群

🧠 全体像)は、とは似て非なる存在である。が「これから化学療法を始める患者」のVTE発症前リスクを予測するのに対し、すでにを発症しを開始した患者を対象に、治療開始後6か月以内の再発リスクを層別化するために作られた。性別・・病期・VTE既往という4因子だけで採点する簡便さが特徴だが、その後の複数の外部検証ではが乏しいという結果が繰り返し報告されており、現行ガイドラインは本スコア単独での抗凝固方針決定を支持していない。

何を評価するスコアか

で、と同じ「予測」の枠組みに属するが、対象患者とタイミングが逆になる。対象はすでに肺塞栓症と診断され、を開始した癌患者で、使うタイミングはVTE診断時、すなわちの開始時点である。目的は、治療開始後6か月以内にVTEが再発するリスクを見積もり、抗凝固薬の選択やを検討する材料を与えることにある。

原著はLouzadaらが2012年に発表し、カナダの導出コホート543例でモデルを作成したうえで、2つのに参加した独立検証コホート819例で検証した1

⚠️ の診断や、未診断の患者に対する癌検索の判断には使わない。あくまで癌もVTEも診断が確定したあとの再発のためのスコアである。

構成要素と配点

原著は4因子・5項目の加算式で、点数の範囲は−3〜+3点。

項目 基準 点数
性別 女性 +1
肺癌 +1
乳癌 −1
病期 病期Iに限局した早期病期) −2
VTEの既往 今回のより前に、別のVTEの既往がある +1

💡 乳癌と病期Iだけがマイナス点を持つ。いずれも「相対的に予後の良い」を反映した項目で、肺癌・VTE既往・女性という3つのプラス項目とは逆方向に働く。加点だけのと対照的に、負の点数を持つことがの構造上の特徴である。

⭐ 実地で参照される検証研究の多くは、低リスク・高リスクの2群だけでなく、乳癌と病期I・IIをまとめてそれぞれ−1点に揃えたmodified Ottawa score(以下「改訂版」)を使い、低・中間・高の3群に分ける。この版では病期IIも減点対象に加わる代わりに病期Iの減点幅が−2から−1に縮む。原著と改訂版のどちらを使っているかで採点結果とリスク区分が変わりうるため、参照する研究がどちらの版かを必ず確認する。

解釈とカットオフ

リスク区分 点数 再発率の目安
原著(2分類) 低リスク 0点以下 4.5%以下
原著(2分類) 高リスク 1点以上 19%以上
改訂版(3分類) 低リスク −1点以下 2.2%
改訂版(3分類) 0点 7.1%
改訂版(3分類) 高リスク 1点以上 10.2%

原著の独立検証コホート(819例)では、低リスク(0点以下)の再発率が4.5%以下、高リスク(1点以上)が19%以上だった1。一方、9研究14,963例を統合したでは、原著版の高リスク群(全体の49.3%)の再発率は18.6%、低リスク群は7.4%で、改訂版(3分類)では低リスク2.2%・7.1%・高リスク10.2%という段階的な差が示された2同じ「低リスク」でも版によって指す点数域・母集団が異なるため、数値だけを覚えず、参照している研究がどちらの版のを使っているかを常に確認する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ そのものが乏しく、報告ごとに大きくばらつく。 9研究を統合したでは原著版のが0.70だった一方、実地で多用される改訂版(3分類)では 0.50〜0.55まで低下し、3群への再分類がかえってを悪化させた2。フランスの前向きコホート(409例)では高リスク群7.8%・低リスク群4.8%の再発率に有意差がなく(p=0.429)、を含む7研究3,413例の更新でもは0.59(研究に限ると0.53)にとどまった。著者らは「本スコアでの治療を個別化することは支持されない」とし、点数によらず患者ごとの出血リスク・癌の状態・本人の意向を総合する多職種的な判断を推奨している3

⚠️ DOAC時代の検証はまだ限定的である。 原著・主要な検証研究の多くはで治療された患者を対象にしており、で治療する患者への外挿は確立していない。

⚠️ 現行ガイドラインはを抗凝固方針の標準的な判断材料として採用していない。 ASCO 2023ガイドラインは、化学療法前のを明記する一方、既発症VTE患者の抗凝固期間・薬剤選択をのような検証されたスコアで標準化する枠組みは示さず、6か月以降の継続は出血リスクや患者の意向による個別判断に委ねている4

⚠️ 名称の取り違えに厳重な注意が要る。 「Ottawa」を冠する臨床ツールは複数存在し、本スコアとは全くの別物である。整形外科・救急領域のOttawa Ankle Rules・Ottawa Knee Ruleは、の外傷でX線撮影が必要かどうかを判断する画像適応の決定則であり、癌患者のVTE再発リスクとは何の関係もない。同様に、PERC ruleは肺塞栓症を臨床的に除外できるかを判定する基準で、これもとは別のツールである。

⚠️ とは対象患者もタイミングも逆である。 は化学療法開始の患者にVTEがこれから起きるリスクを予測するのに対し、すでにVTEを発症し中の患者に再発リスクを予測する。両者を取り違えると、発症前の患者に再発リスクスコアを当てはめる、あるいは既発症患者にの要否を判断するといった誤用につながる。

まとめ

  • )は、すでにを発症しを開始した患者の6か月以内の再発リスクを層別化するスコアで、とは対象患者・タイミングが逆である。
  • 原著は性別(女性+1)・(肺癌+1、乳癌−1)・病期I(−2)・VTE既往(+1)の4因子・5項目からなり、0点以下を低リスク、1点以上を高リスクとする。実地で使われる改訂版は乳癌・病期I/IIをそれぞれ−1点にそろえ、低・中間・高の3群に分ける。
  • 外部検証ではが乏しく、報告によっては0.5台〜0.7とばらつき、な前向きコホートやほど性能が低く出る傾向がある。
  • 現行のASCOガイドラインは、本スコアを抗凝固期間・薬剤選択の標準的な判断材料として採用しておらず、個別の出血リスク・癌の状態・患者の意向を総合した判断を求めている。
  • Ottawa Ankle Rules・Ottawa Knee Rule(外傷のX線適応を決める救急の判断規則)とは全くの別物であり、混同しない。

出典

  1. 1.Development of a Clinical Prediction Rule for Risk Stratification of Recurrent Venous Thromboembolism in Patients With Cancer-Associated Venous Thromboembolism(Circulation・2012)導出コホート543例で性別・原発巣・病期・VTE既往の4因子からなるスコアを作成し、2つの無作為化比較試験に参加した独立検証コホート819例で、低リスク(0点以下)の再発率は4.5%以下、高リスク(1点以上)は19%以上だった閲覧 2026-08-01
  2. 2.Accuracy of the Ottawa score in risk stratification of recurrent venous thromboembolism in patients with cancer-associated venous thromboembolism: a systematic review and meta-analysis(Haematologica・2020)9研究14,963例を統合したメタ解析で、原著版(2分類)の弁別能はAUROC 0.70だった一方、実地で多用される改訂版(3分類)はAUROC 0.50〜0.55にとどまり、3群への再分類がかえって弁別能を悪化させた閲覧 2026-08-01
  3. 3.The Ottawa Score Performs Poorly to Identify Cancer Patients at High Risk of Recurrent Venous Thromboembolism: Insights from the TROPIQUE Study and Updated Meta-Analysis(Journal of Clinical Medicine・2022)前向きコホートTROPIQUE(409例)では高リスク群7.8%・低リスク群4.8%の再発率に有意差がなく(p=0.429)、7研究3,413例の更新メタ解析でもAUROCは0.59(大規模研究に限ると0.53)にとどまり、著者らは本スコアで抗凝固療法を個別化することは支持されないと結論した閲覧 2026-08-01
  4. 4.Venous Thromboembolism Prophylaxis and Treatment in Patients With Cancer: ASCO Guideline Update(Journal of Clinical Oncology・2023)化学療法前のリスク層別化にはKhoranaスコアを用いる一方、既発症VTE患者の抗凝固期間・薬剤選択をOttawaスコアのような検証されたスコアで標準化する枠組みは示さず、6か月以降の継続は出血リスクや患者の意向による個別判断に委ねている閲覧 2026-08-01