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Ottawa Knee Rule

Ottawa Knee Rule

別名
オタワ膝ルール
臓器系
運動器
科目
Traumatology and OrthopedicsMacroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
外傷学 29:膝靱帯損傷の受傷機転・診断・治療解剖学 6.3:下肢:膝と膝窩
構成:症状
圧痛

🧠 全体像:Ottawa Knee Ruleは、急性膝外傷で単純X線を撮らなくてよい人を選ぶ除外規則である。点数を足さない。構造はきわめて単純で、5項目の単なるOR——55歳以上、の圧痛、の孤立性圧痛、90度まで屈曲できない、受傷直後と診察時の両方で4歩歩けない——のうち1つでも当てはまれば撮影する。ここが同じ開発チームのOttawa Ankle Rulesと決定的に違う点で、側には「領域の痛み」というAND条件が前置きされるのに対し、膝側には入口となるAND条件が無い。感度はほぼ100%だが特異度は50%前後なので、陽性は「撮る」を意味するだけで「骨折している」ではない。

目的と適用場面

内容
目的 急性膝外傷で単純X線を省略できる患者を選び出す
対象 急性の膝外傷。導出・検証コホートはいずれも成人である12
使う場面 初診時のの段階。撮影オーダーを出す前
判定するもの 撮影の要否のみ。骨折の有無・靱帯損傷の重症度・は判定しない
評価しないもの をはじめとする靱帯損傷、、、に伴う血管損傷

⭐ 除外規則なので、感度を最大に振って特異度を捨ててある。 導出研究の時点で特異度は0.541、統合値でも48.6%にとどまる3。陰性の価値(撮らなくてよい)は高く、陽性の情報量は乏しい。

💡 特異度を上げようとした改訂は採用されなかった。 検証研究では特異度を改善する方向で規則を練り直す試みが行われたが、感度の低下が許容できないという理由で退けられている2。「もう少し絞り込めるはずだ」という直感は、この規則については一度試されて否定されている。

判定項目

⚠️ 5項目は単純なORである。 前置きのAND条件は無い。急性の膝外傷であれば、次の5項目のうちいずれか1つ以上があるときに単純X線を撮影する1。

項目 内容
年齢 55歳以上
の圧痛 に圧痛がある
の孤立性圧痛 だけに圧痛があり、他のには圧痛が無い
屈曲制限 膝を90度まで屈曲できない
受傷直後と救急外来の両方で、4歩の荷重歩行ができない

⚠️ 「の圧痛」ではなく「の孤立性圧痛」である。 に圧痛があっても顆部・・などにも圧痛があれば、この項目は満たさない(ただしその場合、の項目が別に立つことはある)。「孤立性」という限定語を落とすと、規則は本来より陽性に傾く。

⚠️ 荷重の項目だけは内部がANDである。 「受傷直後と診察時の両方」で4歩歩けないことを求める。していても4歩歩ければ「荷重できる」と判定して、この項目は満たさない。

Ottawa Ankle Rulesとの構造の違い

⚠️ 同じ「Ottawa」でも判定の形が違う。 混同すると、膝で存在しないAND条件を探したり、でAND条件を飛ばしたりする。

見る点 Ottawa Knee Rule Ottawa Ankle Rules
規則の数 1つ 2つ(撮影の規則と足部撮影の規則)
入口のAND条件 無い ある(領域の痛み/領域の痛み)
判定項目 5項目のOR 各規則3項目のOR
年齢そのものが項目か 項目である(55歳以上) 項目ではない
共通する項目 受傷直後と診察時の両方で4歩の荷重歩行ができないこと 同左
flowchart TD
    A["急性の膝外傷"] --> B{"55歳以上か"}
    B -->|"はい"| Z["単純X線を撮影する"]
    B -->|"いいえ"| C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head of the fibula'>腓骨頭</span>に圧痛があるか"}
    C -->|"はい"| Z
    C -->|"いいえ"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patella'>膝蓋骨</span>に孤立性の圧痛があるか"}
    D -->|"はい"| Z
    D -->|"いいえ"| E{"90度まで屈曲できないか"}
    E -->|"はい"| Z
    E -->|"いいえ"| F{"受傷直後と診察時の両方で<br>4歩の荷重歩行ができないか"}
    F -->|"はい"| Z
    F -->|"いいえ"| G["撮影を省略できる<br>(骨折以外の膝損傷は別に評価する)"]

解釈とカットオフ

陰性(5項目のいずれも満たさない)=撮影を省略してよい。

導出研究(成人1,047例)では、骨折68例に対する感度1.0(95%CI 0.95〜1.0)・特異度0.54で、撮影率は68.6%から49.4%へ相対28.0%減ると見込まれた1。前向き検証(適格1,251例中1,096例)では、臨床的に重要な骨折63例に対する感度が1.0(95%CI 0.94〜1.0)、規則が陰性のときの骨折確率は0%(95%CI 0〜0.4%)、撮影の相対的削減見込みは28%であった。が規則を正しく解釈した割合は96%、解釈のκ値は0.77である2。

成人4,249例を含む6研究を統合したでは、98.5%(95%CI 93.2〜100%)、48.6%(43.4〜51.0%)、統合0.05(0.02〜0.23)であった3。

判定 意味 次にすること
陰性 骨折の可能性が十分低い 撮影を省略する。骨折以外の膝損傷の評価をここで終わらせない。悪化・改善しない場合の再診を必ず伝える
陽性 骨折を否定できない 膝の単純X線を撮る。骨折があるという意味ではない(特異度は50%前後)

💡 0.05は「撮らない」を支えるが、導入のまでは支えない。 統合レビューの著者らは、規則が感度100%へ向けてされており実際の骨折が通常は低いため、日常導入のを確かめるにはながなお必要であるとしている3。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 陽性の情報量は乏しい。 特異度は導出時0.541、統合値48.6%3で、陽性例のおよそ半数は撮影しても骨折がない。陽性を「骨折の可能性が高い」と読み替えない。

⚠️ 前提が崩れる患者には適用しない。 5項目のうち4項目は患者のと協力に依存する(圧痛を訴える、膝を曲げる、4歩歩く)。意識障害・中毒、他部位の強い疼痛による注意のそらし、感覚障害・麻痺、指示に従えない状態では、いずれの項目も信用できない。

⚠️ 成人で導出・検証された規則である。 導出コホートも検証コホートも成人であり12、の対象も成人4,249例である3。小児へ広げるかどうかは施設の方針を確認する。

⚠️ この規則は骨折の除外規則であって、膝外傷の除外規則ではない。 陰性でも・・は否定できない。とくには本規則の埒外にある——多くはされて外見上「腫れた膝」でしかなく、単純X線を撮っても正常でありうる。の除外は、撮影の要否とはまったく別の手順(・血管評価)で行う。も、されていれば圧痛がに孤立して残るとは限らない。

⚠️ 規則の性能は運用の質に依存する。 検証研究でもが規則を正しく解釈できたのは96%であった2。項目の定義(「孤立性」の圧痛、「両方の時点」での)を曖昧に運用すれば、実地の感度は報告値より落ちる。

⚠️ 「Ottawa」を冠する臨床ツールは複数あり、互いに全くの別物である。 本規則(膝のX線適応)のほかに、・足部のX線適応を決めるOttawa Ankle Rules、の除外に用いるOttawa SAH Rule、癌関連の再発リスクを層別化する(再発)がある。開発チームの所在地が同じというだけで、も目的も共有していない。

💡 膝のX線適応にはOttawa以外の規則もある(Pittsburgh Knee Ruleなど)。ただし判定項目の立て方が異なり、本ノートでは扱わない。施設で別の規則を採用している場合は、項目を混ぜて使わない。

まとめ

  • Ottawa Knee Ruleは、急性膝外傷で単純X線を省略してよい人を選ぶ除外規則で、点数を合計するスコアではない。
  • 判定は5項目の単純なOR——55歳以上/の圧痛/の孤立性圧痛/90度まで屈曲できない/受傷直後と診察時の両方で4歩の荷重歩行ができない。1つでも当てはまれば撮影する。
  • Ottawa Ankle Rulesと構造が違う。 側には「領域の痛み」というAND条件があり規則が2つに分かれるが、膝側には入口のAND条件が無く規則は1つである。年齢が項目に入るのも膝だけである。
  • 「の孤立性圧痛」と「受傷直後と診察時の両方での」という限定語を落とさない。
  • 導出時の感度1.0・特異度0.54、前向き検証で感度1.0・陰性時の骨折確率0%(0〜0.4%)・撮影28%減、統合では感度98.5%・特異度48.6%・0.05。
  • 特異度は50%前後で、陽性は「撮る」を意味するだけである。
  • 成人で導出・検証された規則で、意識障害・中毒・感覚障害・注意をそらす他部位損傷では前提が崩れる。
  • 陰性でも・・軟骨の損傷は否定できず、したとは本規則では捕まえられない。

出典

  1. 1.Derivation of a decision rule for the use of radiography in acute knee injuries(Annals of Emergency Medicine・1995)急性膝外傷の成人1,047例を対象に、23項目の標準化された臨床所見のうち信頼性(κ値)と骨折との関連(χ二乗値)がともに高いものを再帰分割によって絞り込み、①55歳以上、②腓骨頭の圧痛、③膝蓋骨の孤立性圧痛、④90度まで屈曲できない、⑤受傷直後と救急外来の両方で4歩の荷重歩行ができない、の5項目からなる規則を導出したこと。5項目のいずれか1つ以上があることを撮影の指標とすると、対象集団の骨折68例に対する感度が1.0(95%CI 0.95〜1.0)・特異度が0.54(95%CI 0.51〜0.57)となり、X線撮影率が68.6%から49.4%へ、相対的に28.0%減ると見込まれたこと。127例を2人の医師が独立に診察して観察者間一致を検討したこと。臨床応用は前向き検証を待つべきであると結論していること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  2. 2.Prospective validation of a decision rule for the use of radiography in acute knee injuries(JAMA・1996)成人を診療する2大学病院の救急部で、急性膝外傷の適格者1,251例のうち1,096例を前向きに評価した検証研究で、臨床的に重要な骨折63例に対する規則の感度が1.0(95%CI 0.94〜1.0)であったこと。医師が規則を正しく解釈した割合が96%、解釈のκ値が0.77(95%CI 0.65〜0.89)であったこと。X線撮影の相対的な削減見込みが28%、規則が陰性であったときの骨折確率の推定値が0%(95%CI 0〜0.4%)であったこと。撮影を受けなかった患者には14日目に構造化電話面接を行って骨折の可能性を確認したこと。特異度を上げる方向で規則を改訂する試みは、許容できない感度の低下を招いたため採用されなかったこと(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  3. 3.The accuracy of the Ottawa knee rule to rule out knee fractures: a systematic review(Annals of Internal Medicine・2004)1966〜2003年の英語・非英語文献を対象としたシステマティックレビューで、同定した11研究のうち成人4,249例を含む6研究を統合し、統合陰性尤度比0.05(95%CI 0.02〜0.23)、統合感度98.5%(95%CI 93.2〜100%)、統合特異度48.6%(95%CI 43.4〜51.0%)を得たこと。Ottawa Knee Ruleが陰性であれば急性膝外傷後の骨折を正確に除外できると結論する一方、規則が感度100%へ向けて較正されており実際の骨折有病率が通常は低いため、日常的に導入することの費用対効果を確かめるには大規模な多施設研究がなお必要であると述べていること(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02