組織病理学

組織病理学 · H1-021

腎アミロイドーシス(Congo red染色)

Renal amyloidosis with Congo red stain

描出疾患
アミロイドーシス

🧠 全体像:腎(renal amyloidosis)は、ミスフォールドしたタンパク質由来のが細胞外へ沈着する病態である。では沈着部が通常光で橙赤色から赤色となり、交差下で特徴的な異常色を示す。腎では「糸球体・血管・間質・」のどこに沈着しているかを順に読む。

標本の要点

項目 所見
臓器 腎臓
染色
標的 βシート構造に富む細胞外
通常光 無構造な沈着物がサーモンピンクから橙赤色に染まる
交差 古典的にはリンゴ緑色と表現される異常
主な 糸球体、、細動脈・動脈、間質、

アミロイド形成の流れ

flowchart TD
    A["前駆タンパク質の産生増加・構造不安定化"] --> B["タンパク質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='misfolding'>ミスフォールディング</span>"]
    B --> C["βシートに富む不溶性線維を形成"]
    C --> D["細胞外へ沈着"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration'>糸球体濾過</span>障壁・血管・間質を障害"]
    E --> F["蛋白尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrotic syndrome'>ネフローゼ症候群</span>・腎機能低下"]

は単一のタンパク質名ではなく、異なる前駆タンパク質が共通した線維構造をとって沈着する病変群である。Congo red陽性はの存在を示すが、AL、AA、ATTRなどの型までは決められないため、やなどによるが別に必要になる。

⚠️ 型判定をだけで終わらせない。 は前駆蛋白の種類で決まるのに、のは特異度・感度がともに低い。レーザーマイクロダイセクションで沈着物だけを切り出し、で構成蛋白を直接同定する方法では、50例の訓練セットで特異度・感度とも100%、41例の検証セットで98%の精度が得られている1。

観察の順序

低倍率

  1. 腎皮質全体を見て、糸球体と血管が橙赤色に強調される分布を確認する。
  2. 沈着が糸球体優位か、血管優位か、間質・にも広がるかをする。
  3. 正常に近い領域と沈着の強い領域を比較する。

高倍率

観察所見 機能への影響
糸球体 から係蹄壁へ無構造物質が蓄積し、係蹄構造を圧迫する 蛋白尿、
領域が拡大し、結節状に見えることがある 濾過面積の減少
細動脈・動脈 血管壁へ環状に沈着し、壁が肥厚する 、虚血
間質 尿細管の間に沈着が広がる 間質障害、腎機能低下
尿細管周囲が帯状に肥厚する 尿細管機能障害

Congo red染色の解釈

Congo redはの配列に沿って結合する。通常光では沈着部が赤橙色に見え、交差ではによる異常色を示す。

⚠️ とは別の光学現象であり、「リンゴ緑色」と「赤緑」は同じものの言い換えではない。 Congo red分子は上に一定の向きで配列するため、(dichroism:振動方向によって吸収される光が変わる)と(birefringence:振動方向によってが変わる)の両方を獲得する2。ただし両者が現れる光学条件が違う。子とを正確に直交させたときに見えるのはによる色で、配向したCongo redのは吸収ピーク近傍で最大となり、短波長側では負(青を透過)、長波長側では正(黄を透過)へ転じ、その混合が緑として知覚される。ガラスなど光学系がもつ付加的なが青か黄を削るため、実際には黄緑・黄・青緑・青が見えることが多い。一方子をずらしていくとの効果が弱まり、代わりにの効果が現れて緑から赤へ(逆向きでは緑から無色へ)変わる。この非対称な変化はの確認に有用である3。すなわち色は赤・黄・緑などを含み標本の厚さや光学条件で変化するので、古典的な「」より、交差下で見えるものはと呼ぶほうが正確である。重要なのは緑色そのものではなく、Congo red陽性沈着物が交差下で特徴的な異常を示し、子をずらすとによる色変化を伴うことである。

💡 通常光だけで赤い沈着を見つけて終わらず、所見と組織内分布を組み合わせる。染色が弱い場合や標本が厚すぎる場合は判定が難しく、臨床的疑いが強ければ別切片・別組織での再評価が必要になる。

鑑別

病変 Congo red 鑑別点
糖尿病性 陰性 の増加とを示す
陰性 HEで均質好酸性に見えても、特徴的な異常を示さない
陰性 が主体で、の収縮・硬化を伴う
フィブリン沈着 陰性 急性血管傷害や壊死性病変に伴い、分布とが異なる

まとめ

  • では、糸球体、、血管、間質、へ細胞外が沈着する。
  • は通常光で赤橙色、交差下で特徴的な異常を示す。
  • 「リンゴ緑色」は古典的な表現であり、緑色だけを絶対条件として機械的に判定しない。
  • Congo red陽性だけでは型を決定できず、臨床情報と型判定を組み合わせる。単独では型を誤りうるため、による直接同定がで勝る1。

出典

  1. 1.Classification of amyloidosis by laser microdissection and mass spectrometry-based proteomic analysis in clinical biopsy specimens(Blood・2009)アミロイドーシスの治療は前駆蛋白の種類で決まるため型判定が不可欠である一方、従来用いられてきた免疫組織化学は特異度・感度がともに低いこと、レーザーマイクロダイセクションとタンデム質量分析を組み合わせた方法は50例の訓練セットで特異度・感度100%、41例の心アミロイドーシス検証セットで98%の精度で型を同定したことを確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Optical properties of amyloid stained by Congo red: history and mechanisms(Micron・2009)Congo red分子はアミロイド線維上に配向するため二色性と複屈折の両方を示し、交差偏光下で見える色は屈折率の異常分散と吸収、光学系の付加的な複屈折が組み合わさった異常色(anomalous colours)である。緑一色に限られるわけではなく、偏光子と検光子のずらし方によっても色が変わる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Physical basis of colors seen in Congo red-stained amyloid in polarized light(Laboratory Investigation・2008)配向したCongo redの複屈折は吸収ピーク近傍で最大となり、短波長側では負(青を透過)、長波長側では正(黄を透過)で、その混合が緑として知覚されること、スライドガラスなど光学系の付加的複屈折が青または黄を削るため実際には黄緑・黄・青緑・青が見えること、偏光子・検光子をずらすと複屈折の効果が減って二色性の効果が現れ緑から赤へ(逆向きでは緑から無色へ)変わり、この非対称性がアミロイドの確認に有用であること、したがって交差偏光下の所見はapple-green birefringenceではなくanomalous colorsと呼ぶほうが正確であることを確認した。閲覧 2026-08-24