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Disease Atlas · 皮膚 · 腫瘍

乳房外Paget病

Extramammary Paget disease

別名
乳房外パジェット病EMPDextramammary Paget disease
臓器系
皮膚腫瘍生殖・産婦人科
科目
PathologyObstetrics and Gynecology (Gynecology)Dermatology
トピック
病理学 C/70:外陰・膣の疾患婦人科 16:外陰・腟の悪性腫瘍皮膚科 3-10:皮膚上皮内悪性腫瘍
鑑別疾患
カンジダ症悪性黒色腫乾癬接触皮膚炎
関連疾患
陰嚢癌外陰癌乳頭Paget病
治療薬
イミキモド
症状
瘙痒皮疹皮膚びらん・潰瘍
検査値
CEACA19-9
原因となる疾患
大腸癌膀胱癌

🧠 全体像:は「の多い皮膚に生じる」である。好発部位は外陰・陰嚢・・腋窩で、いずれもの密な領域という一点で説明がつく1。読み解く軸は2つしかない——①原発性か続発性か(続発性は下部消化管・尿路などの腺癌が表皮へ這い上がったもので、全体の約18%。見つけたらを探しに行く)、②浸潤があるか(大半は表皮内にとどまり予後は良いが、浸潤すると一気に転帰が変わる)1。臨床上の最大の落とし穴は湿疹とされて外用治療が長く続くことで、診断までの期間の中央値は2年に及ぶ1。名前を共有する・とはまったく別の実体である。

定義と疫学

と呼ばれる腺系の腫瘍細胞が表皮内で増殖する皮膚腺癌である。好発年齢は50〜80歳、ピークは70歳代1。欧米では外陰型が多いことを反映して男女比1対2〜1対7と女性に多く、アジアの報告ではほぼ1対1である1。

部位 位置づけ
外陰 最多。全体の中では少数を占めるにすぎないが、としては最も多い
陰嚢・陰茎 男性の代表的な部位。の組織型の内訳では扁平上皮癌に次ぐ主要な一群を占める
続発性である割合が約25%と、部位別で最も高い1
腋窩 まれ

原発性と続発性

この区別が、そのまま「で完結するか、内視鏡・まで行くか」を決める。

項目 原発性 続発性
割合 大多数 約18%1
由来 または1 内臓腺癌の1
背景となる なし 大腸・膀胱・子宮頸部・前立腺・卵巣・子宮内膜の腺癌1
CK7 陽性2 由来による(大腸癌由来は陰性、由来は陽性)2
CK20 陰性 陽性1
GCDFP-15 陽性 陰性1
治療の主眼 皮膚病変の制御 の治療
flowchart TD
    A["外陰・陰嚢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perianal region'>会陰肛門部</span>の難治性湿疹様紅斑"] --> B["生検(表皮内の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Paget cell'>Paget細胞</span>)"]
    B --> C{"免疫染色のパターン"}
    C -->|"CK7陽性・CK20陰性・GCDFP-15陽性"| D["原発性を示唆"]
    C -->|"CK20陽性・GCDFP-15陰性"| E["続発性を示唆"]
    E --> F["部位に応じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>検索<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='colonoscopy'>大腸内視鏡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystoscopy (cystoscope)'>膀胱鏡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical cytology'>子宮頸部細胞診</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>など"]
    D --> G["浸潤の有無を評価<br>1 mmを超える浸潤はリンパ節転移リスク"]
    F --> G
    G --> H["切除範囲と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adjuvant therapy'>補助療法</span>を決める"]

⚠️ 染色パターンはの由来で変わり、CK7そのものが反転する。 続発性は大腸癌由来ならCK7陰性・CK20陽性だが、由来ならCK7陽性・CK20陽性である2。CK20陽性の原発性や、CK7陽性ないしCK20陰性の大腸癌由来続発性といった非典型例も存在するため、CK7とCK20の組み合わせは原発性と続発性を分けるな方法ではない2。大腸や由来ではuroplakin IIIやMUC2が診断の助けになる1。単一のマーカーで原発性と断定せず、臨床像・部位と合わせて判断する。

臨床像と誤診

  • 境界の比較的明瞭なで、鱗屑・痂皮・びらんを伴い、しばしば白色調の部分が混じる。強いが長く続く。
  • 湿疹(など)・乾癬・カンジダ症と紛らわしく、ステロイドや抗真菌薬の外用が繰り返される1。診断までの期間の中央値は2年1、外陰型に限れば平均25.1か月と報告されている3。
  • ⚠️ 「難治性の外陰・陰嚢の湿疹」は生検の適応である。 外用治療で治らない、あるいは中止するとする陰部の紅斑を、皮膚炎の診断のまま何か月も引っ張らない。これが本症で最も繰り返される臨床上の失敗である。

病理

表皮内に、豊富な淡明な細胞質と大型で多形の核を持つが単在性ないし小胞に散在する1。細胞質の粘液は・・PAS・で証明される1。免疫染色ではCK7陽性・陽性・S100陰性が原発性の基本形である1。

💡 S100陰性が悪性黒色腫との分かれ目になる。 表皮内に淡明な大型細胞が散在する像はやでも起こりうるため、鑑別は形態ではなく免疫染色で付ける。

続発性を疑ったときの検索

病変部位に応じて、・・・腹部超音波または・・・を組み合わせ、CEA・CA19-9・CA15-3を併せて測る1。患者の10〜30%にの合併がみられる1。

⭐ 部位でが違う。 続発性である割合は部位別に、が約25%と高いのに対し、陰茎陰嚢部と外陰はそれぞれ約6%である1。の病変では下部消化管の検索を省かない。

治療と再発

境界が不明瞭で臨床的に見える範囲を越えて広がるため、切除範囲の設定が治療の中心課題になる。

治療 要点
従来の2〜5 cmから、境界明瞭な病変では1〜2 cmへ見直されている(臨床的境界を越える顕微鏡的進展の平均は0.33 mm)1
再発率11〜22%。通常のの26.5〜37%より低い1
外用 数か月の治療では最大70%だが再発が多い。6か月以上の治療期間が推奨される1
放射線治療 約60 Gyで5年80%超1

部位で再発の質が違う

部位 再発率 再発の内訳
外陰 34%(1,423例中481例) 89.4%は皮膚・粘膜内にとどまる3
陰茎・陰嚢 14%(1,101例中152例) 35.5%が・遠隔転移を伴う3
33.9%(218例中74例) 27.0%が・遠隔転移を伴う。浸潤癌の割合が50%と最も高い3

⚠️ 再発率の高さと、再発の危険さは別の話である。 外陰型は70.3%がにとどまるにもかかわらず約3分の1でが行われており、それでも34%が再発した——ただし再発の大半は皮膚・粘膜内にとどまる3。逆に陰茎陰嚢型は再発自体は少ないが、再発した場合の3分の1以上は転移を伴う3。外陰型には過剰な侵襲を避けつつ局所再発を綿密に監視し、会陰肛門型には転移性再発を念頭に置くという使い分けになる3。

予後

SEERに基づく5年は全体87%、限局92%、領域77%、遠隔16%である1。または1 mm未満の表在浸潤にとどまる例の転帰は良好だが、1 mmを超える浸潤でリンパ節転移のリスクが上がり生存が低下する1。

乳頭Paget病との対比

項目
部位 外陰・陰嚢・・腋窩 乳頭部
背景 大多数は原発性(皮膚由来)。約18%が内臓腺癌の進展1 ほぼ常に基礎にがある
粘液 は豊富な粘液を含む1 大多数の症例では粘液に乏しい1
検索 部位に応じたの検索 乳房の画像評価

⚠️ だが別実体であり、ともである。 3者に共通するのは記載者の名前だけで、細胞起源も臓器も治療もつながらない。

まとめ

  • はの多い外陰・陰嚢・・腋窩に生じるで、好発は50〜80歳。
  • 大多数は原発性だが約18%は内臓腺癌(大腸・・子宮頸部・前立腺など)のによる続発性で、続発性ならの検索が要る。続発性である割合はで約25%、陰茎陰嚢部・外陰でそれぞれ約6%。
  • 湿疹・乾癬・カンジダ症とされやすく、診断までの中央値は2年。難治性の陰部湿疹は生検する。
  • 病理はの粘液を持つで、原発性はCK7陽性・CK20陰性・GCDFP-15陽性、S100陰性が悪性黒色腫との分かれ目。続発性のCK7はの由来で反転するため、CK7/CK20の組み合わせだけで原発性と続発性を決めない。
  • 治療は切除が中心で、の再発率11〜22%は通常のの26.5〜37%より低い。再発の質は部位で異なり、外陰型は局所再発、会陰肛門型・陰茎陰嚢型は転移性再発を警戒する。

出典

  1. 1.Extramammary Paget Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)乳房外Paget病が高齢者に多い稀な皮膚腺癌で良性疾患と紛らわしく内臓悪性腫瘍と関連しうること、アポクリン腺の多い外陰・会陰肛門部・陰嚢陰茎部・腋窩に生じ外陰が最多であること、好発年齢が50〜80歳で70歳代にピークがあり、欧米では男女比1対2〜1対7と女性に多い一方でアジアの報告ではほぼ1対1であること、原発性がアポクリン腺導管細胞またはToker細胞に由来し、続発性が内臓悪性腫瘍の表皮向性進展で全体の約18%を占めること、続発性の原発巣として大腸・膀胱尿路上皮・子宮頸部・前立腺・卵巣・子宮内膜の腺癌が多く、乳房外Paget病患者の10〜30%に内臓悪性腫瘍の合併がみられること、続発性である部位別の割合が会陰肛門部で約25%・陰茎陰嚢部と外陰でそれぞれ約6%であること、診断までの期間の中央値が2年で湿疹・乾癬・カンジダ症と紛らわしく外用治療が繰り返されること、Paget細胞が豊富な淡明細胞質と大型多形核を持ちアルシアン青・ムチカルミン・PAS・コロイド鉄で粘液が証明されること、免疫染色で原発性がCK7陽性・CK20陰性・GCDFP-15陽性・CEA陽性・S100陰性であること、続発性については病理の節が「CK7陰性・CK20陽性・GCDFP-15陰性」と書く一方で鑑別の節は「CK20陽性、原発巣に応じてuroplakin IIIまたはMUC2陽性」と述べるにとどまりCK7に言及しておらず、同一章内で記述が揃っていないこと、原発検索として病変部位に応じ子宮頸部細胞診・大腸内視鏡・膀胱鏡・腹部超音波またはCT・上部消化管内視鏡・マンモグラフィ・経静脈性尿路造影とCEA・CA19-9・CA15-3が挙げられること、広範囲局所切除のマージンが従来の2〜5 cmから境界明瞭な病変では1〜2 cmへと見直され臨床的境界を越える顕微鏡的進展の平均が0.33 mmであったこと、再発率がMohs顕微鏡手術で11〜22%・通常の広範囲局所切除で26.5〜37%であること、イミキモド外用の完全奏効率が数か月の治療で最大70%だが再発が多く6か月以上の治療期間が推奨されること、放射線治療が約60 Gyで5年局所無増悪率80%超を示すこと、SEERの5年疾患特異的生存率が全体87%・限局92%・領域77%・遠隔16%であること、浸潤が1 mmを超えるとリンパ節転移リスクが上がり生存が低下することを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Extramammary Paget's Disease: Diagnosis, Pathogenesis, and Treatment with Focus on Recent Developments(Current Oncology・2021)免疫染色の節で、原発性乳房外Paget病が典型的にCK7陽性・CK20陰性を示すのに対し、大腸癌由来の続発性乳房外Paget病は典型的にCK7陰性・CK20陽性、尿路上皮癌由来の続発性乳房外Paget病は典型的にCK7陽性・CK20陽性を示すこと、CK20陽性の原発性やCK7陽性ないしCK20陰性の大腸癌由来続発性といった非典型的な染色パターンが存在するため、CK7とCK20の組み合わせは原発性と続発性を区別する絶対的な方法ではないと明記していることを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Anatomic Subtype Differences in Extramammary Paget Disease: A Meta-Analysis(JAMA Dermatology・2024)1990年12月から2022年10月までの文献135編を対象とした乳房外Paget病のメタ解析で、外陰型の多くが無症状で診断までの遅れが平均25.1か月であったこと、外陰型の70.3%(1,773例中1,247例)が表皮内病変にとどまるにもかかわらず約3分の1で根治的手術が行われ、それでも34%(1,423例中481例)が再発し再発の89.4%(198例中177例)は皮膚・粘膜内にとどまっていたこと、陰茎陰嚢型の再発は14%(1,101例中152例)と少ないが再発例の35.5%(152例中54例)は領域転移または遠隔転移を伴っていたこと、会陰肛門型は33.9%(218例中74例)が再発し再発例の27.0%(74例中20例)が領域・遠隔転移を伴い、浸潤癌の割合が50%と3型のうち最も高かったこと、解剖学的部位ごとに診断と治療を変えるべきで外陰型にはより低侵襲な治療と局所再発の監視を、会陰肛門型には転移性再発の監視を考慮すべきであることを確認した。なお本解析は発症時に転移のあった症例を除外している。閲覧 2026-09-02