婦人科学

婦人科学 · 16

外陰・腟の悪性腫瘍

Malignant tumors of the vulva and vagina

前提:正常
女性生殖:子宮頸部・腟・外陰部泌尿生殖器系:生殖器系
薬剤
ジエチルスチルベストロール
疾患
外陰癌乳房外Paget病腟明細胞腺癌

🧠 全体像:外陰・腟の扁平上皮系腫瘍は、関連経路と非依存経路を区別する。外陰・腟病変は症状や色調が多彩であるため、疑わしい病変を生検し、病理型・浸潤深度・隣接・リンパ節で治療を組み立てる。

外陰上皮内病変

VIN 1〜3という3段階分類は旧分類である。現在は次の用語を用いる。

現行分類 主な機序 意義
外陰扁平上皮内病変(vulvar low-grade squamous intraepithelial lesion:vulvar ) 低リスクによる産生性感染 旧VIN 1を含み、通常は癌とは扱わない
(vulvar high-grade squamous intraepithelial lesion:vulvar ) 高リスク関連。喫煙、免疫抑制も関与 旧usual-type VIN/VIN 2・3に相当する
(dVIN) 非依存。など慢性皮膚疾患と関連し、多くはTP53変異を伴う 浸潤癌への進展リスクが高く進展も速い。見逃しに注意1

💡 非依存のはdVINだけではない。 HPVにもTP53変異にも依存しない一群(・性の病変)が知られ、Vulvar Acanthosis with Altered Differentiation、Differentiated Exophytic Vulvar Intraepithelial Lesion、Vulvar Aberrant Maturationなど呼称が変遷してきた。PIK3CAやHRASの反復性変化をもつ腫瘍性病変で、・通常型扁平上皮癌のと考えられている。診断過程ではp16とp53の免疫染色をに行う。2

  • 約半数は無症状で、症状があれば掻痒が多い。
  • 病変は隆起性またはで、白、赤、桃、灰、褐色など多彩である。
  • 疑わしい病変は生検する。浸潤が疑われればで評価する。
  • vulvar は切除、レーザー、選択例でなどを用いる。dVINは切除が基本である。dVIN由来のは由来より再発リスクが高く死亡率も高いため、と同じ危険度として扱わない。1

外陰Paget病

は、閉経後に多い稀なである。

  • 長期間続く掻痒・圧痛と、境界明瞭な湿疹様紅斑・白色局面を示す。
  • 恥丘、大腿、臀部へ広がることがある。
  • 生検では大型で淡明なを認める。原発性(一次性)か、内部悪性腫瘍からのによる続発性かの鑑別まで含めて病理評価する。
  • 治療は病変境界を越えた進展を念頭に置きつつ、過剰な侵襲を避ける方向で組み立てる。浸潤と・尿路・消化管などの関連癌を評価する。

💡 外陰型は「表皮内が主だが再発が多い」。 では外陰型の70.3%がにとどまるにもかかわらず約3分の1でが行われており、それでも34%が再発した。ただし再発の89.4%は皮膚・粘膜内にとどまる。診断までの遅れも平均25.1か月と長い。低侵襲な治療と局所再発への綿密な監視を組み合わせるのが現在の方向である。3

外陰癌

発癌経路と臨床像

経路 特徴
関連型 若年側に多く、vulvar 、喫煙、免疫抑制と関連
非依存型 高齢者に多く、やdVINを背景とし、多くはTP53異常を伴う。ただしp53野生型の非依存も存在するため「非依存=TP53異常」と断定しない2
  • 最多はで、ほかに黒色腫、腺癌、Bartholin腺癌、Paget病、がある。
  • 外陰腫瘤、長期間の掻痒、潰瘍、出血、疼痛で発症する。隆起、、など外観だけでは区別できない。
  • 大が最も多く、、会陰にも生じる。
  • 生検で確定し、と隣接臓器を評価する。下部生殖器の関連多発病変にも注意する。

FIGO 2021病期

病期 要点
I 外陰に限局
IA 腫瘍≤2 cmかつ≤1 mm
IB 腫瘍>2 cmまたは>1 mm
II 下部尿道・下部腟・下部肛門へ進展し、リンパ節陰性
IIIA 上部尿道・上部腟、膀胱・直腸粘膜への進展、または≤5 mmの非固定リンパ節転移
IIIB >5 mmの
IIIC に
IVA 骨盤骨へ固定、または固定・した所属リンパ節
IVB 遠隔転移

治療原則

  • 早期扁平上皮癌は腫瘍径・浸潤深度・正中からの距離に応じたを行い、適応例ではを用いる。
  • 進行癌では手術、放射線治療、を組み合わせる。
  • 一律の+両側リンパ節郭清ではなく、根治性と機能温存・合併症軽減を両立させる。
  • 外陰黒色腫は皮膚黒色腫としてなどで病期を決める。「全例3 cm」という旧来の扱いは現行の一律基準ではない。

腟上皮内病変

は・外陰病変より稀で、上部1/3に多い。

  • 多くは無症状で、細胞診異常を契機に発見される。子宮頸部の病変・の既往と関連することが多く、治療後の経過観察中や子宮摘出後に見つかることが典型的である。
  • で確定する。
  • 病変はも多く経過観察し、病変は切除、レーザー、など病変範囲に応じて治療する。

腟癌

  • 原発性は稀で、扁平上皮癌が最多である。腺癌、黒色腫、などもある。
  • 頸癌またはそのの既往がリスクとなる。
  • 性交後・閉経後・、、尿路症状を示し、上部1/3後壁に多い。
  • 小児のは、ぶどう房状に突出するである。

DES曝露の歴史的背景

は1940〜1971年頃に妊婦へ使用された。は若年発症の腟・子宮頸部明細胞腺癌、、上部腟・子宮頸部・子宮の形成異常と関連する。これは歴史的曝露だが、曝露者には個別の長期追跡が必要である。

病期と治療

範囲
I 腟壁に限局
II 腟傍組織へ進展するが骨盤壁には達しない
III 骨盤壁へ進展
IVA 膀胱・直腸粘膜または真骨盤外へ直接進展
IVB 遠隔転移

生検で診断し、治療は放射線治療が主軸で、手術は選択例に限られる。進行例ではが用いられる。治療は腫瘍位置、組織型、既往放射線治療、臓器機能に合わせる。

⚠️ は稀で無作為化試験が無く、治療の根拠はが中心である。 124例の後ろ向き解析では、I・II期で初回手術と初回放射線治療の生存に差は無かった(ただし術後放射線の施行率は55%)。I・II期の単独は局所再発が80%と高く、III・IVA期では単独よりを追加したほうが5年無増悪生存・生存が良好だった。4

flowchart TD
    A["外陰・腟の疑わしい病変"] --> B["生検で組織診断"]
    B --> C["上皮内病変"]
    B --> D["浸潤癌"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human papillomavirus'>HPV</span>関連か非依存かを分類"]
    E --> F["病変範囲と浸潤疑いに応じて切除・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ablation'>焼灼</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical therapy'>外用療法</span>"]
    D --> G["局所進展・リンパ節・遠隔転移を評価"]
    G --> H["手術・放射線・薬物療法を個別化"]

まとめ

  • 外陰はvulvar 、vulvar 、dVINで整理し、旧VIN 1〜3分類と混同しない。
  • では関連経路と・dVINを背景とする非依存経路がある。dVINは進展が速く由来する癌の予後も悪い。非依存にはp53野生型の群もあり、p16/p53免疫染色で整理する。
  • は稀だが、異常出血や頸癌既往、DESを手掛かりに生検する。治療は放射線が主軸で、無作為化試験が無く根拠は中心である。

出典

  1. 1.Clinical and molecular classification of vulvar squamous pre-cancers(International Journal of Gynecological Cancer・2019)外陰上皮内腫瘍がusual type(外陰高異型度扁平上皮内病変:HSIL、HPV関連)と分化型(dVIN、HPV非依存で硬化性苔癬としばしば関連)に分けられること。**dVINは外陰扁平上皮癌へ進展するリスクが高くかつ進展が速い**こと。さらに**dVIN由来の外陰癌はHSIL由来のものより再発リスクが高く死亡率も高い**こと閲覧 2026-08-21
  2. 2.HPV-independent, p53-wild-type vulvar intraepithelial neoplasia: a review of nomenclature and the journey to characterize verruciform and acanthotic precursor lesions of the vulva(Modern Pathology・2022)HPV非依存の外陰病変はしばしばTP53のドライバー変異をもつが、**HPVにもTP53変異にも依存しない前浸潤病変の一群**が存在すること。著明な棘細胞症・疣状増殖・扁平上皮成熟の異常を特徴とし、疣状癌および通常型扁平上皮癌との関連が示され前駆病変と考えられること。PIK3CAやHRASの反復性の遺伝子変化をもつこと。呼称がVulvar Acanthosis with Altered Differentiation、Differentiated Exophytic Vulvar Intraepithelial Lesion、Vulvar Aberrant Maturationと変遷してきたこと。**診断過程ではp16とp53の免疫染色を定型的に行うべき**であること閲覧 2026-08-21
  3. 3.Anatomic Subtype Differences in Extramammary Paget Disease: A Meta-Analysis(JAMA Dermatology・2024)乳房外Paget病のメタ解析で、外陰型の多くが無症状で診断までの遅れが平均25.1か月であること。外陰型の**70.3%が表皮内病変**にとどまるにもかかわらず約3分の1で根治的手術が行われていたこと。それでも**34%が再発**し、再発の89.4%は皮膚・粘膜内にとどまっていたこと。外陰型には**より低侵襲な治療**と局所再発への綿密な監視を考慮すべきこと閲覧 2026-08-21
  4. 4.Management and outcomes of primary vaginal Cancer(Gynecologic Oncology・2020)原発性腟癌124例の後ろ向き解析で、扁平上皮癌が71%を占め、24%に他の悪性腫瘍の既往があったこと。**I・II期では初回手術と初回放射線治療で生存に差が無かった**が、術後放射線の施行率は55%であったこと。**I・II期での小線源治療単独は局所再発が80%と高かった**こと。III・IVA期では外部照射単独より**小線源治療を追加したほうが5年無増悪生存・疾患特異的生存が良好**であったこと閲覧 2026-08-21