婦人科学

婦人科学 · 15

外陰・腟の良性病変

Benign lesions of the vulva and vagina

前提:正常
女性生殖:子宮頸部・腟・外陰部骨盤・会陰:会陰
疾患
脂肪腫

🧠 全体像:外陰・腟病変は「色調変化」「潰瘍・」「腫瘤」「萎縮・炎症」に分けると整理しやすい。診断では感染症と悪性腫瘍を除外し、、治療抵抗性病変、形態が非典型な病変は生検をためらわない。

外陰病変の見方

主な外観 代表疾患 診断上の焦点
白色 、、、 萎縮、びらん、、瘢痕、腫瘍性変化
赤色 湿疹、、乾癬 接触刺激、皮膚疾患、感染
生理的色素沈着、、 黒色腫の除外
潰瘍・ 感染、、、Crohn病、 疼痛、全身病変、瘻孔、悪性腫瘍
・嚢胞性 、前庭、Fordyce斑、など 発生部位、硬さ、圧痛、増大速度

白色病変

疾患 特徴 診断・治療
消失による境界明瞭な。自己免疫疾患を伴い、外陰が初発部位となることもある 多くは臨床診断。非典型なら生検
強い掻痒、、、皮膚脆弱性。進行すると菲薄化、、、鱗屑、・周囲の瘢痕変形を来す。閉経後女性に多いが男性・思春期前小児にもみられ、肛門周囲にも及ぶ 超強力〜強力の長期投与が標準治療。代替に(、)。扁平上皮癌リスクがあるため長期観察1
外陰・腟・口腔の自己免疫性炎症。びらんの周囲にを伴う。と違って腟・口腔粘膜を巻き込みやすく、びらん型の外陰腟は治療が難しく癒着や腟狭窄まで進みうる 生検で他疾患を除外し、を中心に治療。外陰だけでなく腟・口腔も必ず評価する
の反復による上皮肥厚。白色局面または暗赤色局面となり、他の皮膚疾患に似る 刺激回避、掻痒の遮断、中等度以上の。鑑別困難なら生検
低エストロゲンにより大脂肪が減少し、・上皮が萎縮する。乾燥、入口部狭窄、灼熱感、を生じる ・、適応を確認した局所低用量エストロゲンなど

⚠️ の生検適応は「新たな・潰瘍・治癒しない局面」だけではない。臨床像が不明瞭な場合、、第一選択治療に反応しない場合、腫瘍を疑う場合にも行う。採取部位は活動性のや治療で改善しないびらんを選ぶ。1

💡 長期観察が要る理由は数字で押さえる。 デンマークの全国病理登録では、生検で確認されたの女性は一般人口に比べ外陰高度扁平上皮の8.5、扁平上皮癌16.2と高く、この比は追跡期間の長さによって大きく変わらなかった(=リスクは初期に限らず持続する)。2 オランダの3,038人コホートではのが6.7%で、10年はVIN併存で18.8%、非併存で2.8%、診断時70歳以上で5.9%だった。VINの併存と高齢が特に重要な危険因子である。3

色素性病変

  • 生理的色素沈着は、外陰にもともとが多く、その分布が不均一なために生じる。
  • は、・角化皮膚に生じる平坦なである。はに相当する。
  • は、境界不明瞭で褐色、肥厚した病変を外陰・腋窩・頸部に形成し、肥満やインスリン抵抗性を示唆する。

は、非対称性、、、径・増大、を確認する。新規発生、急速な変化、出血、潰瘍を伴えば生検する。

潰瘍・亀裂

  • 感染症、とくに、梅毒などを評価し、悪性腫瘍も除外する。
  • は非常に疼痛が強く、やぶどう膜炎を伴えばを考える。
  • Crohn病は肛門・腸管から外陰へ瘻孔を形成しうる。
  • は疼痛性皮下結節が破裂し、を伴う瘻孔と厚い瘢痕を反復する。

外陰の腫瘤・正常変異

病変 特徴
で生じる最も一般的な外陰嚢胞。大・やに、白色〜皮膚色の状無痛性腫瘤を形成
正常変異。周囲と同色の柔らかな1〜2 mmの乳頭が直線状に並び、各基部から1本ずつ突出する
不整で、ひとつの基部から複数の突起が分岐しやすい
Fordyce斑 のHart線に沿う異所性
Fox–Fordyce病(Fox–Fordyce disease) の慢性炎症で、腋窩・大・に強い掻痒を生じる
静脈瘤、、、血腫

母斑、、、外陰も外陰腫瘤となる。

腟の良性病変

上皮変化・炎症

  • は広範な病変に似ることがある。
  • 萎縮上皮は思春期前、閉経後、などのでみられ、腟壁は淡色、平坦、乾燥し、脆弱になる。
  • 化学性・は、、抗菌・抗真菌、、製品などで起こる。
  • 腟は小潰瘍、強い発赤、白血球の多いを示す。

潰瘍・瘻孔

病態 主な原因
腟潰瘍 、、炎症性疾患、悪性腫瘍
手術損傷、による、悪性腫瘍
第4度の治癒不全、手術合併症、悪性腫瘍、結核、Crohn病

嚢胞性病変

病変 発生部位・特徴 対応
Gartner管嚢胞 遺残。腟上半分の前外側壁に多く、通常1〜5 cm 無症状なら経過観察
Bartholin腺嚢胞・膿瘍 導管閉塞で嚢胞化し、感染すると強い疼痛を伴う膿瘍となる。で大腸菌も多い 無症状小嚢胞は観察。膿瘍はWordを第一に考え、は再発例などで選択する。単純のみは再発しやすく推奨されない。抗菌薬は蜂窩織炎を伴う場合などに限る

閉経後または40歳以上で新規のBartholin腺部腫瘤を認めた場合、あるいは年齢によらず不整・・結節性の腫瘤では、腺癌などを除外するため生検・を考慮する。鑑別にはSkene管嚢胞、Nuck管水腫、、、尿道憩室も含める。

その他

  • 腟外傷は分娩、手術、異物、性的暴力などで生じる。安全確保と的配慮を含め、患者中心に診療する。
  • は腟入口周囲筋の不随意収縮を伴う。現在は過緊張、疼痛、恐怖・などを統合して評価し、教育、、心理・性機能支援を組み合わせる。
flowchart TD
    A["外陰・腟の病変"] --> B["感染・外傷・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute inflammation'>急性炎症</span>を評価"]
    B --> C["色調・潰瘍・腫瘤・萎縮に分類"]
    C --> D["非典型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmentary change'>色素変化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>・治療抵抗性"]
    D --> E["生検で前癌・悪性腫瘍を除外"]
    C --> F["典型的良性病変"]
    F --> G["症状と原因に応じて治療・経過観察"]

まとめ

  • では、、、GSMを、では黒色腫を鑑別する。はのが16.2と高く、VIN併存例ではさらに高いため長期観察を要する。
  • 潰瘍では感染症・全身炎症性疾患・悪性腫瘍、瘻孔では分娩・手術・Crohn病などの原因を検索する。
  • 画像や肉眼所見だけで断定せず、非典型病変、新規の、治癒しない潰瘍には生検を行う。

出典

  1. 1.Lichen sclerosus: The 2023 update(Frontiers in Medicine・2023)硬化性苔癬が肛門性器領域の炎症性粘膜皮膚疾患で、閉経後女性に多く男性・思春期前小児・青年にもみられること。ホルモン状態・反復する外傷・自己免疫疾患が関連する一方、感染は明確な危険因子ではないこと。性器の瘢痕化、性機能・排尿機能障害に加え**扁平上皮癌**に至りうること。診断は通常臨床的だが、**臨床像が不明瞭な場合・治療不応・腫瘍を疑う場合には皮膚生検を行うべき**こと。**標準治療は超強力または強力な外用副腎皮質ステロイドの長期投与**であり、代替としてピメクロリムスやタクロリムスなどの外用カルシニューリン阻害薬があること閲覧 2026-08-21
  2. 2.Biopsy-verified vulvar lichen sclerosus: Incidence trends 1997-2022 and increased risk of vulvar squamous precancer and squamous cell carcinoma(International Journal of Cancer・2024)デンマークの全国病理登録を用いた研究で、生検で確認された外陰硬化性苔癬の女性は一般女性人口に比べ、**外陰高度扁平上皮前癌病変の標準化罹患比が8.5(95%信頼区間7.2〜10.0)、扁平上皮癌が16.2(14.2〜18.4)**と有意に高いこと。これらの標準化罹患比は**追跡期間の長さによって大きく変わらなかった**こと閲覧 2026-08-21
  3. 3.Lichen Sclerosus: Incidence and Risk of Vulvar Squamous Cell Carcinoma(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention・2016)オランダの病理登録から得た硬化性苔癬3,038人の歴史的コホートで、外陰扁平上皮癌の**累積発生率が6.7%**であったこと。10年発生率は**外陰上皮内腫瘍(VIN)の併存で18.8%、併存が無ければ2.8%**、硬化性苔癬診断時の年齢では70歳以上5.9%・50〜70歳3%・50歳未満1.8%であったこと。**VINの併存と診断時70歳以上が外陰癌発生の重要な危険因子**であること閲覧 2026-08-21