婦人科学

婦人科学 · 14

女性の性感染症

Sexually transmitted diseases in female

前提:正常
女性生殖:子宮頸部・腟・外陰部
微生物
Pthirus pubis
疾患
女性性器住血吸虫症
症状
外陰部潰瘍

🧠 全体像:性感染症は無症状でも・不妊・妊娠合併症・他者への伝播を起こす。病原体ごとに、病変、血清学を選び、本人とパートナーの治療、再検査、・他検査、ワクチンを一体として行う。

症候からの整理

症候 主な鑑別
・・分泌物 クラミジア、淋菌、Mycoplasma genitalium、
、梅毒、、、
疣贅 による、、梅毒の
、、

性的暴行後のSTI予防

診察はトラウマに配慮して行い、本人の同意のもとで妊娠、、B型肝炎、梅毒、淋菌、クラミジア、などを評価する。女性への経験的抗菌薬としては、たとえば次の組合せが用いられる。

妊娠している場合はドキシサイクリンを用いず、クラミジアにはアジスロマイシンなど妊娠時レジメンを選ぶ。

さらに、妊娠可能性があれば、接種歴に応じB型肝炎・ワクチンを行う。加害者がHBs抗原陽性で被害者が未接種なら、B型肝炎ワクチンとHBIGを併用する。曝露後予防はできるだけ早く、遅くとも72時間以内に開始して28日間継続する。

⚠️ 性的暴行後の経験的抗菌薬は、単一の世界標準があるわけではない。 セフトリアキソン+アジスロマイシン+メトロニダゾール各単回という古いレジメンを現行運用として載せている地域の指針もあり、逆に耐性への懸念から一部の予防投与を取りやめた施設もある。実施率も一律ではなく、アイルランドの対応ユニット網の4,159例ではクラミジアの曝露後予防が75.1%、曝露後予防が11.0%にとどまっている。1 その地域の最新の指針を確認する。

クラミジア感染症

  • Chlamydia trachomatis D〜K型が・尿道炎を起こす。A〜C型は、L1〜L3型はを起こす。
  • 多くは無症状だが、頸管分泌物、性交後・、、を来す。
  • 腟または頸管検体・ので診断する。
  • 第一選択はドキシサイクリン100 mgを1日2回、7日間であり、アジスロマイシンとの併用ではない。
  • 妊娠中はアジスロマイシン1 g単回が第一選択で、アモキシシリンを代替にできる。
  • PID、卵管障害、不妊、の原因となる。治療約3か月後に再検査し、直近60日のパートナーを評価・治療する。

淋菌感染症

  • 淋菌 はで、頸管、尿道、直腸、咽頭に感染する。
  • 、、を起こすが無症状も多い。PID、、Fitz–Hugh–Curtis症候群、播種性淋菌感染を合併しうる。
  • で診断し、を疑う場合は培養・を行う。
  • 体重150 kg未満ではセフトリアキソン500 mg筋注単回、150 kg以上では1 gを用いる。クラミジアを除外できなければドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間を追加する。2
  • アジスロマイシンとの一律二剤併用は現在の標準ではない。2010年の二剤併用は、への懸念、常在菌への影響、セフトリアキソン耐性のが低いままである一方でアジスロマイシン耐性が増加したことを受けて見直された。2

HPVと尖圭コンジローマ

  • は主に 6・11、などは主に 16・18ほかと関連する。
  • 疣贅は皮膚色の丘疹から腫瘤まで多様で、診断は通常臨床的に行う。色素沈着、、潰瘍、出血、診断不明では生検する。
  • 酢酸白色試験は特異度が低く、診断には推奨されない。
  • 治療はまたはが第一選択で、必要に応じてを併用する。難治・広範な病変では、、外科的除去、などを病変と希望で選ぶ。3
  • は既存感染の治療ではないが、新たな型の感染と関連癌を予防する。接種プログラムは肛門そのものを著しく減らしている。3

性器ヘルペス

  • またはが原因で、神経節に潜伏し無症候性排泄を起こす。
  • 初感染では疼痛を伴う水疱・潰瘍、、リンパ節腫脹、発熱を来し、再発時は灼熱感・掻痒などのを伴う。
  • からの/が第一選択である。Tzanck塗抹は感度・特異度が低く推奨されない。
  • 初回エピソードはアシクロビル、、の全身投与を7〜10日間行う。外用アシクロビルの利益は小さく推奨されない。
  • 妊娠では再発例に36週からを行える。分娩時に病変またはがあれば帝王切開とし、既往だけで一律に帝王切開とはしない。

梅毒

によるで、(/)とトレポネーマを組み合わせて診断する。

病期 主な所見 標準治療の要点
一期 無痛性、無痛性局所リンパ節腫脹 G 240万単位筋注単回
二期 手掌・足底を含む発疹、全身リンパ節腫脹、 G 240万単位筋注単回
潜伏 症状なし、血清学陽性 早期は単回、後期・期間不明は週1回を3回
三期 、など 病型に応じ専門治療
神経・眼・ 髄膜炎、、、眼・耳症状 水溶性結晶静注など専用レジメン

妊娠中に胎児感染を防ぐ有効性が確立した治療はGのみで、他の方法でのリスクが下がるという根拠は無い。アレルギーならして投与する。「を15日間」という固定処方は病期別治療を反映していない。4

⚠️ は・流産・早産・・生涯にわたる変化を来しうる。米国のは2013年から2018年に261%増加し、その後も増加が続いている。4

HIV感染症

  • /2はCD4陽性T細胞などへ感染し、未治療では細胞性免疫を障害する。
  • 急性感染は曝露2〜4週後に発熱、、発疹、リンパ節腫脹、消化器症状など単核球症様に現れることがある。
  • 第4世代抗原抗体検査を基本とし、急性感染を強く疑う場合は を追加する。
  • 診断後はCD4数にかかわらず速やかにを開始する。ウイルス量を持続的に未満へ抑えると性行為による伝播は起こらない(U=U)。

その他の性器潰瘍・外寄生虫

疾患 病原体・所見 治療
C. trachomatis L1〜L3。小潰瘍後に疼痛性鼠径リンパ節、 ドキシサイクリン100 mg 1日2回、21日間
Klebsiella granulomatis。で無痛の進行性潰瘍、 アジスロマイシンを少なくとも3週間かつ治癒まで
Haemophilus ducreyi。疼痛性で辺縁不整の潰瘍、化膿性リンパ節 アジスロマイシン1 g単回またはセフトリアキソン250 mg筋注単回
Pthirus pubis、掻痒と虫体・虫卵 1%など。衣類・寝具処理とパートナー評価

まとめ

  • は無症状でも・不妊・伝播を起こすため、病原体に適した・・血清学とパートナー管理を行う。
  • クラミジアはドキシサイクリン7日間、淋菌は体重別セフトリアキソン単回、早期梅毒はG単回が基本である。
  • 性的暴行後は経験的抗菌薬に加え、、・ワクチン、72時間以内の PEPを検討する。ただし抗菌薬レジメンには地域差と改訂途上の部分があり、単一の世界標準として覚えない。

出典

  1. 1.Post-exposure prophylaxis, STI testing and factors associated with follow-up attendance: a review of 4159 cases of acute post-sexual assault medical care(Sexually Transmitted Infections・2024)アイルランドの性暴力対応ユニット網における急性期受診4,159例の後ろ向きコホートで、緊急避妊が53.8%、**クラミジアの曝露後予防が75.1%、HIV曝露後予防が11.0%**、B型肝炎ワクチン開始が53.7%に実施されたこと——曝露後予防は全例一律ではなく個別に判断されていること閲覧 2026-08-21
  2. 2.Update to CDC's Treatment Guidelines for Gonococcal Infection, 2020(MMWR(Centers for Disease Control and Prevention)・2020)2010年に推奨されていたセフトリアキソン250 mg筋注+アジスロマイシン1 g経口の二剤併用が、抗菌薬適正使用への懸念、常在菌への影響、セフトリアキソン耐性の低い発生率とアジスロマイシン耐性の増加を受けて見直され、**合併症のない尿路生殖器・肛門直腸・咽頭淋菌感染にはセフトリアキソン500 mg筋注単回**が推奨されるようになったこと。**クラミジア感染が除外されていない場合はドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間の併用**を推奨すること閲覧 2026-08-21
  3. 3.Viral Infections of the Vulva: A Narrative Review(Life・2025)外陰の代表的なウイルス感染症について、**HPVワクチン接種プログラムが肛門性器疣贅を著しく減らした**こと。単純ヘルペスでは早期のPCR/NAATが標的治療を早めること。第一選択治療が単純ヘルペスに対する経口アシクロビル/ファムシクロビル、**HPVに対する外用イミキモドまたはポドフィロトキシン(±凍結療法)**であること閲覧 2026-08-21
  4. 4.Syphilis in pregnancy: an ongoing public health threat(American Journal of Obstetrics and Gynecology・2022)先天梅毒が死産・流産・早産・先天異常・生涯にわたる身体的または神経学的変化を来しうること。米国の先天梅毒発生率が2013年から2018年に261%増加し、2021年もなお増加していること。**妊娠中の梅毒に推奨される治療はベンザチンペニシリンGのみ**であり、他の方法で先天梅毒のリスクが下がるという根拠が欠けていること。診断は逆順アルゴリズムまたは従来のアルゴリズムを用い複雑であること閲覧 2026-08-21