薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · C8 Antibiotics / 抗菌薬 · 必修

ベンザチンペニシリン

benzathine benzylpenicillin

分類
Antibiotics / 抗菌薬
商品名(日本)
ステルイズ
商品名(EU)
Tardocillin
科目
Pharmacology
トピック
C8: Penicillins
標的微生物
T. pallidum ssp. pallidumStreptococcus pyogenes / GAS
副作用
皮疹
対象疾患
リウマチ熱・リウマチ性心疾患先天性TORCH感染症梅毒猩紅熱

🧠 全体像は、の分子そのものにという難溶性の塩基を組み合わせて筋注部位からゆっくりとしか溶け出さないにした、いわば「」である。そのものはと同じだが、この薬を理解する軸は薬理ではなく製剤の性質にある——①なので静注は絶対に不可(血管内に粒子が入ると心停止しうる)、②1回の筋注で数週間、有効な血中濃度を保てるため確実なが要る場面(梅毒治療、)で真価を発揮する。

薬効群の中での位置づけ

代表 特徴
(注射) 短時間作用・水溶性・静注可
(経口) 酸に安定、外来経口
(デポ筋注) 難溶性。1回筋注で数週間持続。静注は

を広げた薬ではない。 と同じであり、Streptococcus pyogenesとTreponema pallidumという狭い相手に対して「1回の投与でどれだけ長く効かせられるか」を追求した製剤設計の薬である。

機序

抗菌機序自体はと同一で、PBPに共有結合してペプチドグリカンの架橋(反応)を阻害し、を止めてさせる()。

💡 「長く効く」仕組みは薬理ではなく溶解度にある。 塩は水にほとんど溶けないため、に注射されたは結晶のまま組織内にとどまり、そこから少量ずつしか溶出しない。この「ゆっくり溶ける(デポ)」が、1回240万単位の筋注だけで数週間にわたり治療域の血中濃度を維持できる理由である。

薬物動態

項目 値・特徴
筋注のみ。皮下・静注は不可
血中濃度 低いが持続的。1回筋注(240万単位)で治療域が2〜4週間持続
不十分の治療濃度には達しない
排泄 溶出律速。自体はと同じ

適応

領域 使いどころ
梅毒 :240万単位を筋注単回。晩期潜伏・時期不明・なし):240万単位を週1回・計3回
母体の病期に応じたGでの妊婦治療。確定・強く疑う新生児例は水性結晶へ切り替える
120万単位を4週ごとの筋注が標準。発症率の高い集団・再発リスクの高い患者では3週ごとに短縮する
内服が見込めない場合の単回筋注

⚠️ G筋注はの治療濃度を髄液内に達成しない。 神経・眼・には水性結晶静注(10〜14日)が必要で、筋注だけで代用してはならない。

用法・用量

筋注のみ。梅毒では病期に応じて240万単位を単回または週1回×3回、では120万単位を3〜4週ごとに反復する。妊婦の梅毒治療では、ペニシリンアレルギーがあってもして投与する(に実証された代替薬が他にないため)。実際の用量・間隔は適応・年齢・体重・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ を血管内に誤投与すると、粒子による塞栓・から心停止を含む重篤な合併症を起こしうる。筋注部位・手技を必ず確認する
  • 禁忌への過敏症
  • :梅毒治療開始後数時間以内に大量死滅したスピロヘータからサイトカインが急増し、発熱・悪寒・頭痛をきたす。で対応し、ペニシリンアレルギーと誤認しない
  • 妊婦の梅毒治療でペニシリンアレルギーがある場合は、代替薬へ変更せずしてペニシリンを投与する

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位の疼痛・
注意 皮疹。IgE介在の蕁麻疹とを区別する
重篤・まれ アナフィラキシー、静注時の心停止(誤投与)

まとめ

  • と同じ。違いは「難溶性ので1回筋注が数週間効く」という製剤設計にある。
  • 誤って血管内に入ると心停止のリスクがある。
  • 梅毒治療(病期に応じた単回〜週1回×3回)と(3〜4週ごとの筋注)が二大適応。
  • が不十分なため、には水性結晶静注が必要。
  • 妊婦の梅毒治療では、ペニシリンアレルギーがあってもして投与する。
  • 治療開始後のをペニシリンアレルギーと誤認しない。