婦人科学

婦人科学 · 13

外陰・腟の炎症性疾患

Inflammatory disorders of the vulva and vagina

前提:正常
女性生殖:子宮頸部・腟・外陰部
微生物
Gardnerella vaginalisMobiluncus
疾患
トリコモナス症萎縮性腟炎細菌性腟症
検査値
アミン試験クルー細胞腟pH腟グラム染色
スコア
Amsel基準Nugentスコア

🧠 全体像:の三大原因は(BV)、、外陰腟カンジダ症(VVC)である。臭い・色だけで決めず、、鏡検、、を組み合わせ、BVは炎症よりも優位の生態系が崩れたと理解する。

正常腟環境と初期評価

  • 生殖年齢ではが優位となり、乳酸によりpHを通常3.8〜4.5に保つ。
  • 標本では上皮細胞、白血球、clue cell、運動性を確認する。
  • 10% 標本では酵母・菌糸を確認し、添加時のをとする。
  • 感染以外にも、、異物、化学刺激、ポリープ、腫瘍、低エストロゲン性変化が分泌物の原因となる。

三大疾患の比較

項目 (BV) (VVC)
機序・病原体 Lactobacillus減少と、Gardnerella vaginalisや嫌気性菌を含む多菌種の増殖 Trichomonas vaginalis 主に Candida albicans
分泌物 薄い均一な白〜灰色、 、泡沫状、悪臭を伴いうる 白色で凝乳状、通常は臭いに乏しい
炎症・掻痒 炎症は乏しい 外陰腟発赤、 強い掻痒、発赤、浮腫、
pH >4.5 >4.5 通常≤4.5
診断 、・、 が最も高感度 鏡検。確定はがgold standardで、再発例・複雑例では種同定を伴う培養を行う1
パートナー 2021はルーチン治療を推奨しない2が、2025年10月のACOG更新は再発性・症候性例の男性パートナーへの経口+外用の同時治療を検討事項として置いた(同性パートナーをもつ例と初回発症例は)3 全パートナーの同時治療が予防に不可欠2 単純性では一律治療なし。ただしをきたす男性パートナーはで症状が改善する2

細菌性腟症

BVはで起こるのではなく、の多様化と嫌気性菌増殖によるである。複数の男性パートナー・女性パートナー・新規パートナー、不使用、、抗体陽性と関連する。⚠️ 「単一病原体による典型的なではない」と言い切らない。 は、菌叢変化を引き起こす原因は十分に解明されておらず、単一の性感染症病原体の獲得によって起こるのかは分かっていないと述べるにとどめている2。性的伝播が関与しうるという理解は、近年の知見でむしろ強まっている4。

Amsel基準

次の4項目中3項目以上で診断する。

  1. 薄く均一な
  2. clue cell
  3. >4.5
  4. 10% による(陽性whiff test)

治療

  • メトロニダゾール500 mgを1日2回、7日間内服
  • または0.75%メトロニダゾールゲル5 gを1日1回、5日間
  • または2%クリンダマイシン5 gを就寝前、7日間

症状のある妊婦も治療する。

⚠️ 再発は「多い」どころではなく、推奨治療でも3〜6か月で50%を超える。4 、、治療後に良好な腟がしないことなどが関与する。

パートナー治療

💡 男性パートナー治療の位置づけは2025年に動いた。 2021指針は、女性の治療反応や・再発が男性パートナーの治療に影響されないとしてのルーチン治療を推奨していない2。ここを動かしたのが2025年のStepUp試験(オーストラリア、)で、女性の標準治療に加えて男性パートナーへメトロニダゾール400 mg錠の内服+2%クリンダマイシンの陰茎皮膚塗布をいずれも1日2回7日間併用すると、12週以内の再発が35%(69例中24例)対63%(68例中43例)( 1人年あたり-2.6回、95%信頼区間 -4.0〜-1.2、P<0.001)となり、女性のみの治療が劣るとして試験は早期中止された5。

⚠️ この試験の組入れは「再発性BV」ではない。 対象はをもつ女性と一夫一婦関係にある男性パートナーの組であり、再発例に限った試験として引かない5。

2025年10月のACOG Clinical Practice Update(2020年のPractice Bulletin No. 215の限定的な更新)は、パートナー治療を2通りに書き分けた3。

対象 置かれている推奨
再発性・症候性BVをもつ成人患者の男性パートナー と外用薬を併用した同時パートナー治療を検討する
再発性・症候性で同性パートナーをもつ患者/初回発症の症候性患者 (一律には勧めていない)

⚠️ 「初回発症でもパートナーを治療する」とまとめない。 併用治療の検討が置かれているのは再発性・症候性例の男性パートナーだけである3。

ただし、6試験953組を統合したでは男性パートナー治療全体の再発抑制は有意ではなく(0.97、95%信頼区間 0.76〜1.22、I²=59.9%)、経口+外用を用いた唯一の試験であるStepUpを除くとが消えて効果は中立になった(1.08)6。⭐ 効いたのは「男性を治療したこと」ではなく「経口+外用という形で治療したこと」だった可能性がある——著者らも単剤治療は再発を減らしそうにないとし、併用療法の有効性を評価する質の高い研究が必要だとしている6。BVが性的に伝播しうるという理解を支持する所見でもある4。

トリコモナス症

  • 無症状も多いが、発赤、掻痒、、、点状出血によるを認めうる。
  • 湿潤鏡検は運動性原虫を確認できるが感度が低く、陰性でも疑えばを行う。
  • 女性の第一選択はメトロニダゾール500 mgを1日2回、7日間である。2 g単回投与は女性では再陽性が多く、7日法は1か月後の治癒確認での再検査陽性の割合を半減させた2。
  • 男性の推奨レジメンはメトロニダゾール2 g単回である(男性でこの2法を比較した無作為化試験は無い)2。
  • 全パートナーを同時に治療し、本人とパートナーの治療が終わり症状が消えるまで性交を避ける。女性は初回治療から3か月以内に再検査する(3か月時点が難しければ、初回治療から12か月以内の次回受診時に行う)。男性の再検査を支持するデータは不十分である。2

外陰腟カンジダ症

  • 糖尿病、妊娠、抗菌薬、免疫抑制がリスクとなるが、無症状保菌は治療しない。
  • 診断を確認したうえで、単純性では短期の局所または150 mg単服を用いる。症状だけでBV・と確実に区別することはできない。
  • 妊娠中は7日間の局所を用い、経口を避ける。妊娠中のはおよび頭蓋顔面・と関連しうる。1
  • 単純性VVCは通常は性交で獲得されず、パートナーの治療を支持するデータは無い。ただし亀頭の紅斑を掻痒・刺激感とともに伴うをきたす少数の男性パートナーは、で症状が改善する。VVCではパートナー治療を支持するデータが無く、推奨を示せない。2

反復性VVC

  • 現在は通常、1年未満に症候性エピソード3回以上と定義する2。
  • C. albicansでは局所7〜14日、またはを1・4・7日目に投与して寛解導入し、その後週1回を6か月継続する。
  • 維持療法は抑制には有効だが、長期治癒を保証しない。非albicans種や耐性を疑えば培養・感受性と専門診療を検討する(症候性の非albicans感染にはホウ酸が有用)。を含むを支持する根拠は無い。1

まとめ

  • BVはではなくで、は4項目中3項目以上である。推奨治療でも3〜6か月で50%超が再発する。 2021はパートナーのルーチン治療を推奨しないが、2025年10月のACOG更新は再発性・症候性例の男性パートナーへの経口+外用の同時治療の検討を置いた(初回発症例と同性パートナー例は)。では男性パートナー治療全体の再発抑制は有意ではない。
  • はで確認し、女性にはメトロニダゾール500 mg 1日2回7日間、男性には2 g単回を用いる。全パートナーを同時に治療し、女性は3か月以内に再検査する。
  • VVCは通常pHが正常で、反復性は3回以上/年、妊娠中は局所7日間を用いる(経口は・奇形と関連しうる)。確定診断はが基準で、症状だけで治療に入らない。

出典

  1. 1.Vulvovaginal Candidiasis: A Review of the Evidence for the 2021 Centers for Disease Control and Prevention of Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(Clinical Infectious Diseases(CDC 2021 STI治療ガイドラインの根拠レビュー)・2022)外陰腟カンジダ症の診断では**真菌培養が依然としてgold standard**であり、新しい分子生物学的検査も良好な性能を示すこと。単純性ではアゾール系抗真菌薬が選択薬であること。**妊娠中のフルコナゾールは自然流産および頭蓋顔面・心奇形と関連しうる**こと。非albicans酵母による症候性感染にはホウ酸が有用であること。**プロバイオティクスを含む代替療法を支持する根拠は無い**こと閲覧 2026-08-21
  2. 2.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2021)トリコモナス症では全性的パートナーの同時治療が再感染予防に不可欠であり、現在のパートナーには推定治療のため紹介すること、女性の推奨レジメンがメトロニダゾール500 mg 1日2回7日間・男性が2 g単回投与であること、多回投与法が2 g単回に比べ1か月後のtest-of-cureでの再検査陽性の割合を半減させたこと、女性には初回治療から3か月以内の再検査が推奨される一方で男性の再検査を支持するデータは不十分であること、単純性外陰腟カンジダ症は通常は性交で獲得されずパートナーの治療を支持するデータが無い一方で亀頭炎(亀頭の紅斑を掻痒または刺激感とともに伴う)をきたす少数の男性パートナーは外用抗真菌薬で症状が改善すること、複雑性外陰腟カンジダ症ではパートナー治療を支持するデータが無く推奨を示せないこと、反復性外陰腟カンジダ症が「1年未満に症候性エピソード3回以上」と定義されること、細菌性腟症では性的パートナーのルーチン治療を推奨していないことを、Europe PMCのPMC8344968全文で確認した閲覧 2026-09-17
  3. 3.ACOG Clinical Practice Update: Concurrent Sexual Partner Therapy to Prevent Bacterial Vaginosis Recurrence(American College of Obstetricians and Gynecologists(Obstetrics & Gynecology 146巻6号 e111-e114)・2025)本文書がACOGのClinical Practice Updateであり、2020年のPractice Bulletin No. 215(Vaginitis in Nonpregnant Patients、Obstet Gynecol 2020;135:e1-17)の該当部分に対する限定的な更新であることを、Europe PMCの抄録(146巻6号 e111-e114)で確認した。推奨の書き分け——①再発性・症候性の細菌性腟症をもつ成人患者の男性パートナーには経口薬と外用薬を併用した同時パートナー治療の検討、②同性パートナーをもつ再発性・症候性の患者と初回発症の症候性患者については共有意思決定(逐語は "using shared decision making")——は、ACOG自身のニュースリリース(2025年10月17日)の逐語で確認した。⚠️ Clinical Practice Update本体の全文は未取得(journals.lww.comは403)閲覧 2026-09-17
  4. 4.Bacterial vaginosis(Nature Reviews Disease Primers・2025)細菌性腟症が腟マイクロバイオームの異常であり、早産・自然流産・HIV感染および他の性感染症リスクの上昇と関連すること、世界の女性の4人に1人が罹患すること、推奨される治療法でも3〜6か月の再発が50%を超えること、バイオフィルムや抗菌薬耐性、治療後に良好な腟マイクロバイオームが再定着しないことも治療効果の低さに寄与しうること、BVの性的伝播に関する新しいデータ(男性パートナーの治療が治癒を改善するという証拠を含む)が成因と病態の理解を進めたことを、Europe PMCの抄録で確認した。全文は未取得(PMCに収載が無い)閲覧 2026-09-17
  5. 5.Male-Partner Treatment to Prevent Recurrence of Bacterial Vaginosis(New England Journal of Medicine・2025)非盲検無作為化比較試験(StepUp)の組入れが「細菌性腟症をもつ女性と、その女性が一夫一婦関係にある男性パートナー」の組であって再発例に限っていないこと、男性側が経口メトロニダゾール400 mg錠と2%クリンダマイシンクリームの陰茎皮膚塗布をいずれも1日2回7日間受けたこと、主要評価項目が12週以内の再発であったこと、81組と83組が割り付けられ150組が12週の追跡を終えた時点で女性のみの治療が劣るとしてデータ安全性監視委員会が試験を中止したこと、修正intention-to-treat集団の再発がパートナー治療群69例中24例(35%)・対照群68例中43例(63%)で絶対リスク差が1人年あたり-2.6回(95%信頼区間 -4.0〜-1.2、P<0.001)であったことを、Europe PMCの抄録で確認した。全文は未取得閲覧 2026-09-17
  6. 6.The efficacy of male partner treatment to prevent recurrence of bacterial Vaginosis: A systematic review with Meta-Analysis of randomized controlled trials(European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology・2026)953組を含む6件の無作為化比較試験を統合した解析で男性パートナー治療による再発抑制が有意でなかったこと(リスク比0.97、95%信頼区間 0.76〜1.22、P=0.78、I²=59.9%)、経口と外用を併用した唯一の試験であるVodstrcil 2025を除く感度解析では異質性が消失し(I²=0%)効果が中立(リスク比1.08)になったこと、著者らの結論が「男性パートナーへの単剤治療は再発を減らしそうにないが、経口と外用の併用は女性の治癒率を改善しうるため質の高い研究が必要である」であることを、Europe PMCの抄録で確認した。全文は未取得閲覧 2026-09-17