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Lab values · Published

腟グラム染色

Vaginal Gram stain

別名
腟分泌物グラム染色vaginal Gram stain
臓器系
生殖・産婦人科感染症
科目
GynecologyDermatology
トピック
婦人科 13:外陰・腟の炎症性疾患皮膚科 2-11:細菌性腟症皮膚科 2-02:腟分泌物の診断と管理
関連疾患
細菌性腟症
スコア
Nugentスコア

🧠 全体像は、を塗抹・染色してで鏡検する検査であり、個々の菌を同定するのではなく全体の「構成」を形態で読む検査である。標準化された読み方がで、診断の研究上の基準法とされる一方、実際のベッドサイド診断の多くはが担う。

何を測っているか

中央から採取した分泌物をに薄く塗抹し、乾燥・固定してグラム染色する。鏡検で見るのは個々の菌種の同定ではなく、(ラクトバチルス形態)・(ガードネレラ/バクテロイデス様形態)・(モビルンカス様形態)という3つの形態型の相対的なバランスであり、がラクトバチルス優位の健全な状態から嫌気性菌優位の状態へどれだけ傾いているかを、菌の「量」で読む検査である。

培養は診断に用いない。Gardnerella vaginalisは健常な腟内にも定着しうる常在菌であり、培養で検出されても病的意義を持たない。は「いる/いない」ではなく「どちらが優位か」という量的なバランスの問題であり、これを直接可視化できる点にグラム染色の存在意義がある。

判定基準

標準化された読み方はで、3つの形態型それぞれを1視野あたりの平均で段階評価して合算する半定量的な採点法である(合計0〜10点)1。鏡検は(1,000倍)で複数視野を平均して行う。

⚠️ ラクトバチルス形態は菌が多いほど低得点(健全な菌叢ほど点数が下がる)だが、残り2形態は多いほど高得点であり、採点の向きが逆であることを取り違えやすい。

形態型 形態の見え方 採点の向き
ラクトバチルス形態 多いほど低得点(0〜4点)
多いほど高得点(0〜4点)
(*モビルンカス*様形態) したグラム可変桿菌 多いほど高得点(0〜2点)

合計0〜3点は正常、4〜6点は、7点以上はと判定する1。各形態型の区分ごとの配点はのノートを参照し、ここでは重複させない。

読み取れること

で判定できるは、(4項目中3項目以上の陽性で二分する臨床診断)とは異なり、正常ともBVともいえない(4〜6点)という第3の状態を可視化できることが、この検査に固有の情報である。は満たすか満たさないかの二値判定にとどまり、この移行的な菌叢像を捉えられない。

臨床研究や新しい法の精度検証では、にはを併用)が比較対象の基準として広く使われてきた2

読み取れないこと

⚠️ であり、グラム染色では診断できない。運動性のある原虫を確認するには、確定にはより高感度のを用いる。

の酵母・でも見えることがあるが、診断はの鏡検・培養で行う。グラム染色は細菌叢の評価を主目的とした検査であり、カンジダ症を診断するための検査ではない。

⚠️ の推定診断(の確認)は、症候性男性のでは特異度約99%・感度約95%と有用だが、無症候性男性では感度が80%以下に下がり、女性の頸管では40〜60%まで低下して推定診断には信頼できない。女性ではNAATを用い、外陰腟が推奨検体とされる3

⚠️ 咽頭・直腸検体では、グラム染色そのものが推奨されない。 これらの部位にはが常在し、淋菌と形態で区別できないためである3。頸管検体の感度が低い理由とは別の問題であり、混同しない。

⚠️ 測定上の注意

  • 塗抹が厚すぎる・薄すぎると菌の重なりや分布の偏りが生じ、形態判定ができない。適度な薄さで均一に塗ることが前提になる。
  • 専門的な検鏡技術を要し、判定に時間がかかる。 3形態型をで数え分ける作業は熟練を要するため、多くの臨床現場ではより簡便なに置き換えられている4
  • 検者間・施設間のばらつきが生じやすい。標準化されたの採点法は、このばらつきを縮める目的で導入された1
  • 採取部位は中央とし、頸管からは採らない。が混入すると菌叢の評価そのものが歪む。
  • ・精液・潤滑剤の混入は、とはに標本の解釈を妨げる。
  • (モビルンカス様形態)はグラム可変で染色性が安定せず、他の2形態型より判定がぶれやすい。
  • ⚠️ 同じ検体から作る3つの標本を取り違えない。 クルー細胞は10% はこのと、目的ごとに別の標本を作る。ではクルー細胞もも評価しない。

経時変化とモニタリング

単回の診断用検査であり、治療効果判定にはに用いない。臨床研究や新しい法(NAATなど)の精度検証における基準法として使われる位置づけが中心であり2、症状の推移を追う目的で繰り返し行う検査ではない。

まとめ

  • を塗抹・染色して鏡検する検査で、個々の菌の同定ではなくの構成を形態で読む。培養はGardnerella vaginalisが常在菌でもあるため診断に適さない。
  • 標準化された読み方は1,000倍で複数視野を平均し3形態型を採点、合計0〜3点正常・4〜6点・7点以上BV)で、ラクトバチルス形態だけ採点の向きが逆になる。
  • では判定できない(4〜6点)という第3の状態を可視化できることが、この検査に固有の価値である。
  • (原虫)やカンジダ症の確定診断はできず、女性の頸管検体では感度40〜60%での推定診断にも使えない(有用なのは症候性男性の)。
  • 専門的な検鏡技術と時間を要するため多くの臨床現場ではに置き換えられており、なモニタリングにも用いない。

出典

  1. 1.Reliability of diagnosing bacterial vaginosis is improved by a standardized method of Gram stain interpretation(American Society for Microbiology(Journal of Clinical Microbiology)・1991)原著が、個々の菌種を同定するのではなく3つの細菌形態型(Lactobacillus形態・Gardnerella/Bacteroides様形態・彎曲グラム可変桿菌)の相対的な菌数バランスを段階評価して合算する半定量的な採点法として提示し、合計7点以上を細菌性腟症と判定することを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Amsel Criteria(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)腟グラム染色によるNugentスコアが細菌性腟症診断における検査室の基準法とされる一方、専門的な検鏡技術を要し判定に時間がかかるため多くの臨床現場ではAmsel基準に置き換えられていることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Gonorrhea(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)男性の症候性尿道分泌物のグラム染色は淋菌に対する特異度約99%・感度約95%と診断的価値が高い一方、無症候性男性では感度が80%以下に下がり、女性の頸管スワブでは40〜60%まで低下して推定診断に用いられないこと、咽頭・直腸検体では非病原性の双球菌の存在によりグラム染色自体が推奨されないこと(この理由は頸管検体の感度低下の説明としては挙げられていないこと)、女性では外陰腟スワブを用いたNAATが推奨される検体・検査であることを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.Diagnosis and Management of Bacterial Vaginosis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)FDA承認のNAAT(BD MAX、Hologic Aptima BV等)の精度検証研究が、Nugentスコア(中間型にはAmsel基準を併用)を比較対象の基準として用いてきたことを確認した閲覧 2026-08-04