Microbe Atlas · 細菌
Mobiluncus
- 分類
- G± 桿菌 / Gram-variable rods
- 性状
- Gram陽性 (G+)Gram陰性 (G−)彎曲桿菌 Curved rods偏性嫌気性 Obligate anaerobe
- 科目
- DermatologyGynecology
- トピック
- 2-11: Bacterial Vaginosis13: Inflammatory disorders of the vulva and vagina
🧠 全体像:Mobiluncusは腟グラム染色vaginal Gram stain腟グラム染色(vaginal Gram stain)vaginal Gram stain(腟グラム染色)のNugentスコアNugent scoreNugentスコア(Nugent score)Nugent score(Nugentスコア)で「第3の形態型」として数えられる彎曲グラム可変桿菌curved gram-variable rod彎曲グラム可変桿菌(curved gram-variable rod)curved gram-variable rod(彎曲グラム可変桿菌)であり、*Gardnerella vaginalis*が起点となるバイオフィルムbiofilmバイオフィルム(biofilm)biofilm(バイオフィルム)に続いて増殖する嫌気性菌の代表格である。属レベルでの臨床的な扱いはほぼ一体だが、種を分けたときに見える最大の臨床的落とし穴は——⭐ BVの第一選択薬First-line drugs第一選択薬(First-line drugs)First-line drugs(第一選択薬)であるメトロニダゾールに、M. curtisii株の多くが試験管内でほぼ普遍的に耐性を示すという点にある。同じ嫌気性菌でも薬の効き方が一様ではないことを教える菌である。
微生物学的な特徴
両端が広がった「かもめの翼」状に彎曲curvature彎曲(curvature)curvature(彎曲)した桿菌で、M. curtisiiは短く(平均長約1.5 μm)、M. mulierisはより長い(平均長約3.0 μm)。両種とも本来はグラム陽性型の多層細胞壁を持つが染色性が一定せず、グラム可変として観察される。偏性嫌気性菌obligate anaerobes偏性嫌気性菌(obligate anaerobes)obligate anaerobes(偏性嫌気性菌)でありながら、凹面側から生える数本の鞭毛によって運動性を持つ——嫌気性の腟内常在菌としては珍しい性質である。
病原性の仕組み
単独で腟内環境を支配することはまれで、*Gardnerella vaginalis*のバイオフィルム形成biofilm formationバイオフィルム形成(biofilm formation)biofilm formation(バイオフィルム形成)に続いて増殖する嫌気性多菌種の一員として振る舞う。腟グラム染色vaginal Gram stain腟グラム染色(vaginal Gram stain)vaginal Gram stain(腟グラム染色)上での本菌の菌数bacterial count (colony count)菌数(bacterial count (colony count))bacterial count (colony count)(菌数)はNugentスコアNugent scoreNugentスコア(Nugent score)Nugent score(Nugentスコア)の主要な指標の一つであり、菌数bacterial count (colony count)菌数(bacterial count (colony count))bacterial count (colony count)(菌数)が多いほど高得点かつ治療不成功・再発と相関するとされる。
感染経路と疫学
- 単一病原体による性感染症ではなく、細菌性腟症bacterial vaginosis, BV細菌性腟症(bacterial vaginosis, BV)bacterial vaginosis, BV(細菌性腟症)の嫌気性多菌種叢の一員として増殖する
- ごくまれに腟外への波及(免疫抑制患者・産褥期puerperium産褥期(puerperium)puerperium(産褥期)などでの菌血症)が症例報告されるが、日常臨床で問題になるのはほぼ腟内での役割に限られる
起こす疾患
| 疾患 | 特徴 |
|---|---|
| 細菌性腟症bacterial vaginosis, BV細菌性腟症(bacterial vaginosis, BV)bacterial vaginosis, BV(細菌性腟症) | Gardnerellaバイオフィルムbiofilmバイオフィルム(biofilm)biofilm(バイオフィルム)に続いて増殖する嫌気性多菌種の一員。菌数bacterial count (colony count)菌数(bacterial count (colony count))bacterial count (colony count)(菌数)がNugentスコアNugent scoreNugentスコア(Nugent score)Nugent score(Nugentスコア)の評価対象になる |
診断
- 培養は技術的に難しい偏性嫌気性菌obligate anaerobes偏性嫌気性菌(obligate anaerobes)obligate anaerobes(偏性嫌気性菌)であり、日常診療では行わない
- 腟グラム染色vaginal Gram stain腟グラム染色(vaginal Gram stain)vaginal Gram stain(腟グラム染色)によるNugentスコアNugent scoreNugentスコア(Nugent score)Nugent score(Nugentスコア)で「彎曲グラム可変桿菌curved gram-variable rod彎曲グラム可変桿菌(curved gram-variable rod)curved gram-variable rod(彎曲グラム可変桿菌)」として独立した形態型に計上し、0〜2点で採点する。Nugentらは先行するSpiegel基準に比べてこの形態型の重み付けを大きくすることで施設間再現性を最大化した1
治療と予防
⚠️ M. curtisiiは試験管内でメトロニダゾールおよびその代謝物にほぼ普遍的な耐性を示す一方、クリンダマイシン・βラクタム系(イミペネムimipenemイミペネム(imipenem)imipenem(イミペネム)・シラスタチンcilastatinシラスタチン(cilastatin)cilastatin(シラスタチン)を含む)・バンコマイシンには感性である2。細菌性腟症bacterial vaginosis, BV細菌性腟症(bacterial vaginosis, BV)bacterial vaginosis, BV(細菌性腟症)の第一選択は依然としてメトロニダゾールだが、Mobiluncus菌数bacterial count (colony count)菌数(bacterial count (colony count))bacterial count (colony count)(菌数)が多い例やメトロニダゾール治療に反応しない例では、クリンダマイシンへの切替えset-shifting切替え(set-shifting)set-shifting(切替え)が理にかなう——同じ嫌気性菌でも薬剤感受性が一様ではないことの臨床的な帰結である。
まとめ
- Mobiluncusは彎曲curvature彎曲(curvature)curvature(彎曲)したグラム可変桿菌で、偏性嫌気性obligate anaerobe偏性嫌気性(obligate anaerobe)obligate anaerobe(偏性嫌気性)ながら鞭毛により運動性を持つ。M. curtisii(短い)とM. mulieris(長い)の2菌種が臨床的に重要。
- *Gardnerella vaginalis*のバイオフィルムbiofilmバイオフィルム(biofilm)biofilm(バイオフィルム)に続いて増殖する嫌気性多菌種の一員で、腟グラム染色vaginal Gram stain腟グラム染色(vaginal Gram stain)vaginal Gram stain(腟グラム染色)のNugentスコアNugent scoreNugentスコア(Nugent score)Nugent score(Nugentスコア)では「彎曲グラム可変桿菌curved gram-variable rod彎曲グラム可変桿菌(curved gram-variable rod)curved gram-variable rod(彎曲グラム可変桿菌)」として第3の形態型を構成する(0〜2点)。
- M. curtisiiは試験管内でメトロニダゾールにほぼ普遍的に耐性である一方クリンダマイシン・βラクタム系には感性であり、メトロニダゾール不応例ではクリンダマイシンへの切替えset-shifting切替え(set-shifting)set-shifting(切替え)が選択肢になる。
出典
- 1.Reliability of diagnosing bacterial vaginosis is improved by a standardized method of Gram stain interpretation(American Society for Microbiology(Journal of Clinical Microbiology)・1991)原著が彎曲グラム可変桿菌(Mobiluncus様形態)を他の2形態型と並ぶ独立した形態型として計上する0〜10点の採点法を示し、グラム陽性球菌を採点対象から外し、Gardnerella様とBacteroides様の形態型を統合し、彎曲グラム可変桿菌の重み付けを大きくすることで採点の信頼性を最大化したこと(施設間相関 r=0.82、Spiegel基準は0.61)を確認した閲覧 2026-08-10
- 2.Susceptibility of Mobiluncus species to 23 antimicrobial agents and 15 other compounds(American Society for Microbiology(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)・1987)M. curtisii 12株全てがメトロニダゾールおよびその主要代謝物(ヒドロキシ体)に耐性であった一方、M. mulieris 10株では5株がメトロニダゾール耐性、2株が代謝物耐性にとどまったこと、両菌種ともクロラムフェニコール・クリンダマイシン・リファンピン・バンコマイシン・イミペネムを含む全βラクタム系には感性であったことを確認した閲覧 2026-08-10