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Microbe Atlas · 真菌

Microsporum gypseum

石膏状小胞子菌

分類
皮膚糸状菌 / DermatophytesMicrosporum
科目
Medical Microbiology
トピック
4/5: Mycoses of the skin and its adnexes: dermatophytoses
原因となる疾患
皮膚糸状菌症(白癬)

🧠 全体像:Microsporum gypseumはので、同じのMicrosporum canisと侵す組織は共通するが、感染源も所見も異なる。「同じ属でも一括りにできない」ことを示す好例で、土壌との接触が感染経路の中心である点が最大の特徴。

微生物学的な特徴

  • (Microsporum)に属し、皮膚・毛髪を侵すが爪は侵さない(3属の守備範囲のはTrichophyton rubrumのノートを参照)
  • :土壌中の分生子への曝露(園芸・農作業・裸足での歩行)が主な感染経路
  • 培養:楕円形・薄壁の(Microsporum canisより隔壁数が少ない)を持ち、コロニーはシナモン〜黄褐色の粉状表面を作る
  • ⚠️ 同属のM. canisと異なり、(365 nm)では通常蛍光を示さない——日本のガイドラインは緑黄色の蛍光を示すのをM. canis・M. ferrugineumと、M. gypseumによるの一部に限って記載している1。獣医領域の国際コンセンサスもM. gypseum感染毛では蛍光を欠くと報告されているとしており2、「Microsporum属はすべて陽性」という単純化は誤りである

病原性の仕組み

でヒトに適応していないため、感染成立時のの反応はMicrosporum canisと同様に強く、急性のを作りやすい。小児や園芸・農作業に従事する成人で、土壌との接触後に急性発症する・の原因になり、重症例ではに進展することがある。

💡 なぜ土壌にすむカビが皮膚を源として使えるのか。 のは、本来は土壌中に堆積した毛髪・羽毛・角質などの含有スを分解して生きるとしての性質から進化してきたと考えられている。はもともと環境中の有機物を分解するために獲得された酵素であり、生きた宿主への感染はいわば副次的に獲得した能力にすぎない。・のも、進化的にはこうしたの祖先から派生したと考えられている。

感染経路と疫学

  • 汚染された土壌との直接接触(園芸、農作業、裸足での歩行)が主な感染経路
  • 土壌中で発育した菌に感染した動物との接触を介して間接的にヒトへ伝播することもある
  • Microsporum canisに比べると全体の頻度は低いが、農業・園芸曝露のある集団では鑑別に挙がる

起こす疾患

病型 特徴
・ 土壌曝露後に急性発症する。重症例ではに進展しうる

詳細は(白癬)を参照。

診断

  • で外側の胞子鞘(ectothrix、Microsporum canisと同様のパターン)を確認する
  • は通常陰性(一部のでは緑黄色の蛍光がみられる)——蛍光所見だけでMicrosporum属を除外しないよう注意する1
  • 培養で楕円形・薄壁のを確認し、M. canisなどとの鑑別を確定する

治療と予防

  • では外用薬が毛包へ届かないため内服が原則(推奨度A)。日本では経口またはを用いる1
  • ⚠️ 本種を含むMicrosporum属によるでは、国際的にはのほうがで優れる。 2件の(334例)の解析で、6〜8週内服より6〜12週内服のほうが10〜16週後のが高かった(RR 0.68、95%CI 0.53〜0.86)。ただし日本ではを使用できないため、Microsporum属では海外のガイドラインに準じてを選ぶことが推奨されている。⚠️ 日本では・とも小児への適用がない点にも注意する1
  • でもが多発・汎発化した例では内服を考慮する1
  • 強いは自然治癒傾向もあるが、を防ぐため早期の抗真菌薬治療が推奨される
  • 園芸・農作業時の土壌との直接接触を減らす(手袋・靴の着用)ことが予防になる

まとめ

  • M. gypseumはの種で、園芸・農作業での土壌曝露が主な感染経路。
  • 同属のMicrosporum canisと侵す組織(皮膚・毛髪、爪は侵さない)は共通するが、は通常陰性という点で異なる。
  • ヒトに適応していないため炎症反応は強く、急性の・を起こす。
  • 治療はが中心。Microsporum属には国際的にはが優れるが、日本では使用できないためか(Microsporum属では)を用いる1。土壌との直接接触を減らすことが予防の基本。

出典

  1. 1.皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会・2025)全文PDF(日皮会誌135巻13号2511-2566頁)で、365 nm(Wood灯)検査では頭部白癬のうち *M. canis*・*M. ferrugineum* によるものと *M. gypseum*(*Nannizia gypsea*)によるものの**一部**で侵された毛包の開口部が点々と緑黄色に輝くとされており、蛍光が *Microsporum* 属全体の性質ではないこと、*M. gypseum* が主に土壌から感染する菌として挙げられていること、頭部白癬の治療は原則として経口テルビナフィンまたはイトラコナゾールで(CQ10「内服療法を行うよう強く勧める」推奨度A)外用単独は推奨されないこと、"Microsporum 属による場合には,テルビナフィンよりもグリセオフルビンの有用性が示されているが,本邦ではグリセオフルビンを使用できない"(2544頁)と明記され、Microsporum属による頭部白癬ではテルビナフィン6〜8週内服群よりグリセオフルビン6〜12週内服群で10〜16週後の完全治癒率が優れていた(2件のRCT・334例の解析、RR 0.68、95%CI 0.53〜0.86)こと、Microsporum属でテルビナフィンとイトラコナゾールを直接比較したRCTは無いが海外のガイドラインではイトラコナゾールの選択が推奨されていること、本邦ではテルビナフィン・イトラコナゾールとも小児への適用がないことを確認した閲覧 2026-09-27
  2. 2.Diagnosis and treatment of dermatophytosis in dogs and cats: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology(Veterinary Dermatology(World Association for Veterinary Dermatology; Moriello KA, et al.)・2017)Consensus の全文抜粋で確認した。"With the exception of T. schoenleinii, dermatophytes that produce fluorescence are members of the Microsporum genus" と述べ、蛍光を示す皮膚糸状菌は *T. schoenleinii* を例外として *Microsporum* 属に限られるとしている。一方 "Clinical reports of M. gypseum or M. persicolor dermatophytosis in dogs and cats note a lack of fluorescence on infected hairs" として、*M. gypseum* 感染毛では蛍光を欠くと報告されていることを挙げる。*M. canis* の緑色蛍光は毛の皮質・髄質に生じる水溶性代謝産物(プテリジン)によるもので、胞子や感染性物質そのものによるのではないとも述べている。閲覧 2026-09-27