疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 感染症 · 疾患

細菌性腟症

Bacterial vaginosis

別名
BV
臓器系
感染症生殖・産婦人科
科目
DermatologyObstetrics and Gynecology (Gynecology)
トピック
皮膚科 2-11:細菌性腟症婦人科 13:外陰・腟の炎症性疾患
鑑別疾患
カンジダ症トリコモナス症萎縮性腟炎
続発疾患
骨盤内炎症性疾患早産陣痛・早産
関連疾患
HIV感染症・AIDS
治療薬
メトロニダゾールクリンダマイシンセクニダゾール
原因微生物
Gardnerella vaginalis
症状
分泌物
検査値
腟pHアミン試験clue cell腟グラム染色KOH標本
スコア
Amsel基準Nugentスコア
適応薬
セクニダゾール

🧠 全体像:(BV)は、乳酸産生性Lactobacillus優位の腟内環境が、Gardnerella vaginalisなどのへ置換されるである。⚠️ ただし「単一病原体による典型的なではない」と言い切らない——CDCは、単一の性感染症病原体の獲得によって起こるのかは分かっていないと述べるにとどめている1。強い炎症所見よりも「均一な+」が前景に立つ点が、掻痒・発赤が主体のカンジダ症やとの対比になる。

病態とリスク

Gardnerella vaginalis、Prevotella、Mobiluncus、Fannyhessea vaginae(旧Atopobium vaginae)などの嫌気性菌が増加し、が上昇する。新規パートナー・複数の男性パートナー・女性パートナー、、不使用、抗体陽性と関連し、男性のは女性のBVリスクを下げる。性的活動と結び付く因子が並ぶ一方で、⚠️ は、菌叢変化を引き起こす原因は十分に解明されておらず、単一の性感染症病原体の獲得によって起こるのかは分かっていないと述べるにとどめている1。性交経験の無い女性が罹患することはまれである1。

flowchart TD
  A["乳酸産生Lactobacillus優位"] --> B["腟内pHを酸性(3.8-4.5)に維持"]
  C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='douching'>腟洗浄</span>・性的要因など"] --> D["Lactobacillus減少"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymicrobial anaerobes'>嫌気性多菌種</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='biofilm'>バイオフィルム</span>増加"]
  E --> F["pH上昇・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='volatile amine'>揮発性アミン</span>産生"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='grayish-white discharge'>灰白色分泌物</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fishy odor'>魚臭</span>"]

腟分泌物3大原因との鑑別

項目 (BV) (VVC)
機序・病原体 Lactobacillus減少と嫌気性菌を含む多菌種増殖 Trichomonas vaginalis 主にCandida albicans
分泌物 薄い均一な白〜灰色、 、泡沫状、悪臭を伴いうる 白色で凝乳状、通常は臭いに乏しい
炎症・掻痒 乏しい 外陰腟発赤、掻痒(VVCほど高頻度・高強度ではない)、 強い掻痒、発赤、浮腫、
pH >4.5 >4.5 通常≤4.5
パートナー治療 2021はルーチン治療を推奨しない。ACOG 2025は再発性・症候性例の男性パートナーへの経口+外用の同時治療を検討事項とし、同性パートナーをもつ再発性・症候性例と初回発症の症候性例はに置いた(後述) 同時治療が必要 一律治療なし

診断

の4項目中3項目以上で臨床診断する1。

  1. 腟壁を滑らかに覆う均一で薄い(乳状の)分泌物
  2. >4.5
  3. 10% 添加の前後いずれかでの(=)
  4. でclue cell(細菌が密に付着した)を認める

⚠️ 「分泌物が白色・灰色」「clue cellが上皮細胞の20%以上」は 2021の4項目の文言には含まれていない。 色の記載は無く、clue cellにも閾値は付いていない1。20%という閾値は検査室・教科書で広く用いられており(→)閾値そのものが誤りだという意味ではないが、の4項目として引くときに足さない。

標本上で・を各0〜4点、()形態を0〜2点でスコア化し合算する(0〜10点)は、が検査室の基準法と位置づけている——研究用に限った物差しではない。0〜3が優位、4〜6が、7〜10がで、⚠️ 4〜6のはどちらにも振り分けられない区分として残る1。BV用も利用できるが、⚠️ 無症候の女性での精度が十分に定義されていないため、症候性の女性に限って用いる1。培養はG. vaginalisが正常腟内にも存在し特異的でないため、診断法として推奨されない1。

治療

症状のある患者を治療する。妊娠中の症候性BVも全例治療する(症候性BVは・早産・羊膜内感染・と関連するため)。一方、無症候性BVに対する妊婦への一律スクリーニングは、早産リスクの高低にかかわらず推奨されない——早産高リスク群を対象とした7試験の結果は割れ(有害1・無効2・有益4)、低リスク群ではでの改善が示されなかった1。

推奨レジメン 用法
メトロニダゾール内服 500 mgを1日2回、7日間
メトロニダゾール0.75%腟ゲル 1(5 g)を腟内へ1日1回、5日間
クリンダマイシン2%腟 1(5 g)を就寝時に腟内へ、7日間
代替レジメン 用法
クリンダマイシン内服 300 mgを1日2回、7日間
クリンダマイシン 100 mgを就寝時に腟内へ、3日間
2 gを単回投与
内服 2 gを1日1回、2日間
内服 1 gを1日1回、5日間

⚠️ は「単回で済む第一選択」ではなく代替である。 が代替に置いた理由は高価であることと長期転帰のデータが乏しいことで、単回投与という利便性がこの位置づけを変えるわけではない1。と外用薬の有効性を直接比較したデータも無い1。

⭐ メトロニダゾール内服中にする必要はない。 2021は、アルコールとの間に様の相互作用があるという説得力のある証拠(in vitro・・有害事象報告・臨床研究)は無く、メトロニダゾールはと違ってを阻害しないとしたうえで、メトロニダゾール(または)服用中に飲酒を控えることは不要であると明記している12。

⚠️ クリンダマイシンは油性基剤のため、使用後5日間製・を弱めうる(クリンダマイシンも油性基剤で、治療後72時間以内は・ゴム製品を使わないことが推奨される)1。治療中は性交を控えるか、を正しく継続して使う。BVはHIVや他の性感染症の獲得、妊娠合併症(・早産)と関連するため、リスクがあれば検査を行いを避けるよう説明する。

再発とパートナー管理

再発は多い。症状が再発したら再評価し、別の推奨レジメンへ変更してもよいし、同じ推奨レジメンの再投与でもよい。複数回再発する例では、0.75%メトロニダゾールゲルまたは750 mgメトロニダゾールを週2回、3か月超投与するで再発が減ると報告されているが、⚠️ この効果はをやめると持続しない1。

2021年の指針は、女性の治療反応や・再発はの治療に影響されないとして、のルーチン治療を推奨していない1。2025年10月のACOG Clinical Practice Update(2020年のPractice Bulletin No. 215の限定的な更新)はここを改め、パートナー治療を2通りに書き分けた3。

対象 ACOGの位置づけ
再発性・症候性BVをもつ成人患者の男性パートナー と外用薬を併用した同時パートナー治療を検討する
再発性・症候性で同性パートナーをもつ患者/初回発症の症候性患者 (一律に勧めてはいない)

⚠️ 「初発でも男性パートナーを治療する」とまとめない。 併用治療の検討が置かれているのは再発性・症候性例の男性パートナーだけである3。

根拠となったStepUp試験(オーストラリア、)では、男性パートナーがメトロニダゾール400 mg錠と2%クリンダマイシンの陰茎皮膚塗布を、いずれも1日2回7日間受け、12週以内の再発が35%(69例中24例)対63%(68例中43例)( 1人年あたり-2.6回、95%信頼区間 -4.0〜-1.2、P<0.001)となり、女性のみの治療が劣るとして早期中止された4。⚠️ この試験の組入れは「再発性BV」ではない——対象はBVをもつ女性と一夫一婦関係にある男性パートナーの組であり、再発例に限った試験として引かない4。

⚠️ ただし「男性パートナーを治療すれば再発が減る」と一般化はできない。 6試験953組を統合したでは男性パートナー治療全体の再発抑制は有意でなく(0.97、95%信頼区間 0.76〜1.22、I²=59.9%)、経口と外用を併用した唯一の試験を除くとが消えて効果は中立になった(1.08)5。⭐ 効いたのは「男性を治療したこと」ではなく「経口+外用という形で治療したこと」だった可能性がある——著者らも単剤治療は再発を減らしそうにないとしている5。地域の最新指針と薬剤禁忌に従う。

まとめ

  • BVはから優位へのである。性的活動と結び付く危険因子が並ぶが、⚠️ 「単一病原体による古典的ではない」と言い切らない——は単一の性感染症病原体の獲得によって起こるのかは分かっていないとしている。
  • 診断の柱は4項目中3項目以上(腟壁を滑らかに覆う均一で薄い分泌物・ >4.5・clue cell・添加前後いずれかの)で、検査室の基準法は(0〜3優位/4〜6/7〜10がBV)である。
  • メトロニダゾール内服7日間・0.75%腟ゲル5日間・クリンダマイシン2%腟7日間が推奨レジメンで、内服中のは不要である。とは代替に置かれている。
  • 症候性の妊婦は全員治療するが、無症候の妊婦への一律スクリーニングは早産リスクによらず推奨されない。
  • 再発性・症候性BVでは、2025年ACOG更新に基づき男性パートナーへの経口+外用の同時治療を検討する(初回発症例と同性パートナーは)。ただし男性パートナー治療全体の再発抑制はでは有意でない。

出典

  1. 1.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2021)BVの危険因子として複数の男性パートナー・女性パートナー・複数人との性的関係・新規パートナー・コンドーム不使用・腟洗浄・HSV-2抗体陽性が挙げられ男性の割礼が女性のBVリスクを下げること、性交経験の無い女性が罹患することはまれであること、菌叢変化を引き起こす原因は十分に解明されておらず単一の性感染症病原体の獲得によって起こるのかは分かっていない(逐語は whether BV results from acquisition of a single sexually transmitted pathogen is unknown)とCDCが述べるにとどめていること、性的パートナーのルーチン治療を推奨しない根拠が「女性の治療反応や再燃・再発の起こりやすさは性的パートナーの治療に影響されない」という以前の臨床試験のデータであること、Amsel基準の4項目が「腟壁を滑らかに覆う均一で薄い(乳状の)分泌物」「鏡検で細菌が密に付着した腟上皮細胞=clue cell」「腟分泌液のpHが4.5超」「10%水酸化カリウム添加の前後いずれかでの魚臭」であって色の記載もclue cellの20%という閾値も含まないこと、腟グラム染色によるNugentスコアが検査室の基準法(reference standard laboratory method)であり0〜3が乳酸桿菌優位・4〜6が中間型・7〜10が細菌性腟症であること、核酸増幅検査は精度が無症候女性で十分に定義されていないため症候性の女性に限って用いるべきこと、推奨レジメンが3つ・代替レジメンが5つ(クリンダマイシン内服300 mg 1日2回7日間、クリンダマイシン腟坐剤100 mg就寝時3日間、セクニダゾール2 g経口顆粒単回、チニダゾール2 g 1日1回2日間、チニダゾール1 g 1日1回5日間)であること、セクニダゾールが高価で長期転帰のデータが乏しいため代替に置かれていること、クリンダマイシンクリームが使用後5日間・クリンダマイシン腟坐剤が治療後72時間ラテックス製品を弱めうること、メトロニダゾール(またはチニダゾール)服用中に飲酒を控えることは不要であること、症候性の妊婦は全員治療する一方で無症候の妊婦への一律スクリーニングは早産リスクの高低によらず推奨されないこと、男性パートナーの治療は再発予防に有益ではなかったとされ女性パートナーの治療を評価した研究は無いことを、Europe PMCのPMC8344968全文で確認した閲覧 2026-09-17
  2. 2.Diagnosis and Management of Bacterial Vaginosis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)本文書が2021年CDC性感染症治療ガイドラインの作成にあたり細菌性腟症の疫学・診断・治療の文献を要約した根拠レビューであり、5-ニトロイミダゾール使用時の禁酒に関する文献の検討を含むことを抄録で確認した。⚠️ 本文は非オープンアクセスで今回も取得できていない(Europe PMCにPMC収載なし)。ガイドライン本体の記述は、本ノートではMMWRの全文で確認したうえでMMWRの出典で受けている閲覧 2026-09-17
  3. 3.ACOG Clinical Practice Update: Concurrent Sexual Partner Therapy to Prevent Bacterial Vaginosis Recurrence(American College of Obstetricians and Gynecologists(Obstetrics & Gynecology 146巻6号 e111-e114)・2025)⚠️ この出典は2文書にまたがる。url・title・year・org はClinical Practice Update本体(DOI 10.1097/AOG.0000000000006102、Obstet Gynecol 146巻6号 e111-e114)のもので、本体が2020年のPractice Bulletin No. 215(Vaginitis in Nonpregnant Patients)の該当部分に対する限定的な更新であることは書誌とともにCrossrefで照合した。⚠️ 本体の全文は未取得(journals.lww.comは403、DOIの解決先であるOvidは書誌のみ)。一方、①再発性・症候性の細菌性腟症をもつ成人患者の男性パートナーには経口薬と外用薬を併用した同時パートナー治療の検討、②同性パートナーをもつ再発性・症候性の患者と初回発症の症候性患者については共有意思決定、という推奨の書き分けの出どころはACOG自身のニュースリリース(2025年10月17日「ACOG Recommends Concurrent Sexual Partner Treatment for Recurrent Bacterial Vaginosis for the First Time」、https://www.acog.org/news/news-releases/2025/10/acog-recommends-concurrent-sexual-partner-treatment-recurrent-bacterial-vaginosis-first-time 。ブラウザUA付きcurlで200を実測)であって本体からの逐語ではない。その逐語は "The updated recommendations include considering concurrent sexual partner therapy with a combination of oral and topical antimicrobial agents for male sexual partners of adult patients with recurrent, symptomatic BV. They also include using shared decision making regarding concurrent partner therapy for adult patients with recurrent, symptomatic BV who have same-sex partners and for patients with a first occurrence of symptomatic bacterial vaginosis."閲覧 2026-09-17
  4. 4.Male-Partner Treatment to Prevent Recurrence of Bacterial Vaginosis(New England Journal of Medicine・2025)非盲検無作為化比較試験(StepUp)の組入れが「細菌性腟症をもつ女性と、その女性が一夫一婦関係にある男性パートナー」の組であって再発例に限っていないこと、男性側が受けた治療がメトロニダゾール400 mg錠と2%クリンダマイシンクリームの陰茎皮膚への塗布(いずれも1日2回7日間)であること、修正intention-to-treat集団の12週以内の再発がパートナー治療群69例中24例(35%)・対照群68例中43例(63%)で絶対リスク差が1人年あたり-2.6回(95%信頼区間 -4.0〜-1.2、P<0.001)であったこと、150組が12週の追跡を終えた時点でデータ安全性監視委員会が試験を中止したことを、PubMedの抄録(eutils)で確認した。全文は未取得閲覧 2026-09-17
  5. 5.The efficacy of male partner treatment to prevent recurrence of bacterial Vaginosis: A systematic review with Meta-Analysis of randomized controlled trials(European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology・2026)953組を含む6件の無作為化比較試験を統合した解析で男性パートナー治療による再発抑制が有意でなかったこと(リスク比0.97、95%信頼区間 0.76〜1.22、P=0.78、I²=59.9%)、経口と外用を併用した唯一の試験であるVodstrcil 2025を除く感度解析では異質性が消失し(I²=0%)効果が中立(リスク比1.08)になったこと、結論が「男性パートナーへの単剤治療は再発を減らしそうにないが、経口と外用の併用は女性の治癒率を改善しうるため質の高い研究が必要である」であることを、PubMedの抄録(eutils)で確認した。全文は未取得閲覧 2026-09-17