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Microbe Atlas · 原虫

Trichomonas vaginalis

腟トリコモナス

分類
鞭毛虫 / FlagellatesTrichomonas
科目
Medical Microbiology
トピック
4/17: Trichomonas vaginalis5/26: Normal flora of the genital tract. Pathogens of sexually transmitted diseases (list)
原因となる疾患
トリコモナス症尿路感染症
作用する薬剤
セクニダゾールチニダゾールメトロニダゾール

🧠 全体像Trichomonas vaginalisは今回まとめるの中で唯一「嚢子を作らない」原虫である。原虫の一般的な栄養型/嚢子の2形態モデルに当てはまらず、栄養型だけが感染性かつ診断形態を兼ねる。休眠・耐性形態を持たないため環境抵抗性が低く、性行為以外での伝播はまれ——結果として、他の腸管原虫(Giardiaなど)が「水系・食品」で広がるのに対し、本種は性行為で直接ヒトからヒトへしか広がらない。男性の多くはのまま女性パートナーにさせ続けるため、治療は必ずカップル単位で行うのが臨床対応の核心になる。

微生物学的な特徴

原虫の分類ではに属する。

  • 、鞭毛4本++中心核1個。
  • 栄養型のみで生活環が完結し、嚢子は形成しない。
  • 位:男女とも尿道、女性は腟、男性は前立腺。

生活環

flowchart TD
    A["感染者の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal discharge'>腟分泌物</span>・前立腺分泌物中の<br>栄養型"] --> B["性交により<br>パートナーの腟・尿道粘膜へ付着"]
    B --> C["長軸方向の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binary fission'>二分裂</span>で増殖"]
    C --> D["粘膜表面に定着<br>(嚢子は形成しない)"]
    D --> E["分泌物中に栄養型として排出"]
    E -->|"性行為"| A

⚠️ 嚢子を経ないサイクルであることが臨床上の意味を持つ。 環境中での生存期間が短いため、タオル共有・浴槽・温泉水などを介した感染は理論上ありうるがまれであり、主要な伝播経路は性行為に限られる。この点が、水系・食品を介して広がるGiardiaなどの他のとは根本的に異なる。

病原性の仕組み

  • 栄養型は表面の)で腟・尿道上皮に接着し、で宿主蛋白・免疫グロブリンを分解して定着する。
  • 局所の炎症反応により上皮のが低下し、微小な出血点(点状出血)を生じる——これが「」のである。
  • 💡 性感染症としての二次的な意味も大きい。 局所の炎症・はHIVのを広げるため、感染はHIVの感染・伝播リスクを高めることが知られている。

感染経路と疫学

  • 性行為。世界的に最も頻度の高い治癒可能な非ウイルス性STIとされる。
  • 新生児は母親の感染産道通過時にしうる。
  • 男性の多くはとして経過し、源になり続ける——スクリーニング・パートナー治療が重要な理由。
  • 複数性パートナー・非使用がリスクを高める。

起こす疾患

対象 臨床像
女性 様の、炎症、灼熱感、——点状出血による特徴的な所見
男性 多くは。まれに尿道炎、前立腺炎、
妊婦 早産・のリスク因子

として扱う。HIV感染症・AIDSの感染・伝播リスクを高める点も臨床上重要。

診断

  • または湿性標本):栄養型が「コルク栓抜き(corkscrew)」様の特徴的な運動性を示す。ただし感度は50〜70%程度と限定的。
  • :現在最も感度が高く、標準的な確定診断法。
  • 培養()、での偶発的検出もある。

治療と予防

  • メトロニダゾール(メトロニダゾール)またはが第一選択。女性では単回投与より7日間投与の方が治癒率が高いため優先され、男性では単回投与が用いられる1
  • かつてはメトロニダゾール・服用中〜終了後の・悪心)を理由にが指導されてきたが、この相互作用を支持するエビデンスは乏しく、2021年CDC指針では服薬中の一律は推奨されなくなった2
  • 男性パートナーも症状の有無にかかわらず同時に治療する(ことがサイクルを断つ上で不可欠——本疾患の治療における最大のポイント。

まとめ

  • Trichomonas vaginalisに属し、嚢子を形成せず栄養型のみで生活環が完結する——栄養型が感染性・病原性・診断形態のすべてを兼ねる。
  • 嚢子を経ないため環境抵抗性が低く、性行為以外での伝播はまれ
  • 女性では状のと「」を特徴とするを起こすが、男性の多くはとなり源になる。
  • 局所炎症を介してHIVの感染・伝播リスクを高める。
  • 診断はNAATが標準、簡便法としてでの「コルク栓抜き様運動性」観察がある。
  • 治療はメトロニダゾール/(女性は7日間投与を優先)。男性パートナーの同時治療が必須。服薬中のアルコール制限は、根拠不足を理由に2021年CDC指針で見直された。

出典

  1. 1.Diagnosis and Management of Trichomonas vaginalis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)女性はメトロニダゾール500 mgを1日2回7日間投与するほうが2 g単回投与より再感染率を半減させるため優先され、男性は2 g単回投与を用いることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Diagnosis and Management of Bacterial Vaginosis: Summary of Evidence Reviewed for the 2021 CDC Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines(CDC(Clinical Infectious Diseases誌掲載のガイドライン根拠レビュー)・2021)メトロニダゾール・チニダゾールとアルコールのジスルフィラム様反応を支持するin vitro・動物・臨床のエビデンスがsystematic reviewで見当たらず、2021年CDC性感染症治療ガイドラインでは服薬中の禁酒が一律には推奨されなくなったことを確認した閲覧 2026-08-03