微生物学

微生物学 · 4/12

原虫の一般的性状と分類

General characterisation and taxonomy of protozoa

🧠 原虫の分類は「見た目」ではなく「」で決まる、という1点だけ覚えればよい。 ・鞭毛・というの違いが、そのままこのバッチ全体(4/13〜4/18)の設計図になる——はで這い、は鞭毛で泳ぎ、はで泳ぎ、(スポロゾア)はそもそも自力で動けず宿主細胞内でしか生きられない。この4分類さえ頭に入れば、これから読むEntamoeba・Acanthamoeba/Naegleria・Giardia/Balantidium・Cryptosporidium・Trichomonas・**のすべてが「どの群に属するか」から生活環・病原性まで自動的に見えてくる。

形態

原虫はであり、真菌より大型である。

項目 内容
大きさ 2〜100 μm(真菌より大きい)
核 の核を持つ
ミトコンドリア、小胞体、リボソーム、液胞、細胞骨格タンパク質(アクチン・)
生息環境 土壌・環境水中に存在
環境耐性 乾燥・熱には弱いが、嚢子はに対して高い抵抗性を持つ
疫学 衛生状態の悪い発展途上国・熱帯地域で感染が多い

2つの生活形態:栄養型と嚢子

多くの原虫は生活環の中で2つの形態を行き来する。

形態 栄養型 嚢子
状態 活動型(摂食・増殖する段階) (休眠・)
代謝 ——外部の有機炭素源を利用 生化学的に不活性
役割 増殖・症状の原因 不良環境下での生存を可能にする(感染型となることが多い)
flowchart TD
  A["嚢子<br>糞便中に排出・感染性・抵抗性が高い"] -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excystation'>脱嚢</span>"| B["栄養型<br>摂食・運動性・増殖"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encystment (to encyst)'>被嚢</span>"| A

💡 典型的な糞口感染サイクル。 多くの腸管原虫(Entamoeba・Giardiaなど)はこの「嚢子として排出→経口摂取→して栄養型になる→して再び嚢子になる」というサイクルで感染が維持される。個々の疾患を読むときは、このサイクルのどこで組織侵襲が起こるか(起こらないか)に注目するとよい。

増殖様式

原虫はとをに行うを示すことがある。

  • : 複製後に細胞質とともに親細胞が分裂する(分裂生殖, schizogonia)ことで、多くは有糸分裂性のにより2つの娘細胞を生じる。
  • :
    • 性の異なる2つの配偶子が融合してを交換し、2つの新しい細胞に分裂する。
    • 配偶子の大きさが等しい場合(同形配偶子, isogametes)、両者は受精時に単純に融合する。
    • 配偶子の大きさが異なる場合(異形配偶子, anisogametes)、大型のものを、小型のものをと呼ぶ。
    • 配偶子の融合によりが形成され、これがに包まれる。は増殖(胞子生殖, sporogonia)によりを形成する。

⭐ はとを宿主間で使い分ける代表例。 一時宿主(ヒト)の中ではのみを行い、終宿主(蚊)の中で初めてを行う——この「宿主ごとに生殖様式が変わる」パターンは4/18で詳しく扱う。

分類:運動方法による4群

原虫はの違いによって4群に分類される。

群 特徴 代表属 本バッチでの該当ノート
——細胞質を突出させて伸ばす で食物粒子を包み込んで摂食する Entamoeba, Naegleria, Acanthamoeba 4/13、4/14
鞭毛——回転して細胞を液体環境中でするむち状の突起 液体環境(腸管・腟など)で活動的に運動する Giardia, Trichomonas, , Leishmania 4/15、4/17
——細胞表面を覆う毛状突起が列をなす Balantidium coliがで唯一のヒト病原体 Balantidium coli 4/15
なし(自力移動不能) 。複数宿主にまたがる複雑な生活環を持ち、は中間宿主で、は終宿主で起こる , Cryptosporidium, 4/16、4/18

⭐ だけが「動けない・細胞内・複数宿主」という別次元の性質を持つ。 ・・は自力で運動し、多くは管腔(腸管・腟など)に留まって生活するのに対し、はを持たず細胞内に偏性寄生し、生活環を完結させるために中間宿主と終宿主の両方を必要とする。この違いが、だけがベクター媒介性(蚊など)の重篤なを起こす理由である。

💡 この「による4分類」は医学教育で便利な整理だが、現在の分子系統分類とは一致しない。 国際学会が定める現行の真核生物分類は、原虫を含む真核生物全体を「スーパーグループ」という分子系統に基づくでまとめ直しており、たとえばの多くはAmoebozoa(Amorpheaに含まれる)に、(Apicomplexa門)・(Ciliophora)・渦鞭毛藻はAlveolataとしてひとつのにまとめられる——旧来の「による4分類」はこの意味ではではない便宜的な分類にすぎない12。臨床・試験の文脈ではによる4分類がなお実用的に使われ続けており本ノートもこれに従うが、系統学的なではない点に注意する。また「」という呼称は今も便宜的に使われるが、現行の正式な分類名はApicomplexa(門)である。

まとめ

  • 原虫はで、栄養型(活動・摂食・増殖)と嚢子(休眠・耐性)の2形態を行き来する。
  • 増殖は(分裂生殖)と(配偶子融合→→→胞子生殖)のを示すことがあり、**は宿主ごとに生殖様式を使い分ける代表例。
  • 分類はにより()・(鞭毛)・()・(なし)の4群に分かれる。
  • でヒトに病原性を持つのはBalantidium coliのみ。
  • はを持たずし、中間宿主()と終宿主()を必要とする複雑な生活環を持つ——・Cryptosporidium・**がこれに該当する。
  • この「による4分類」と「栄養型/嚢子」のが、以降のEntamoeba・Acanthamoeba/Naegleria・Giardia/Balantidium・Cryptosporidium/Blastocystis・Trichomonas・Plasmodiaすべてのノートで共通言語として使われる。

出典

  1. 1.Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes(Journal of Eukaryotic Microbiology・2019)現行の国際原生生物学会(ISOP)による真核生物分類では、原虫を含む真核生物全体を分子系統に基づく「スーパーグループ」でまとめ直しており、アメーバ類の多く(Amoebozoa)はAmorpheaに、胞子虫類(Apicomplexa門)・繊毛虫類(Ciliophora/Ciliata)・渦鞭毛藻はAlveolataとしてSAR/Diaphoretickesにまとめられていることを本文で確認した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.The revised classification of eukaryotes(Journal of Eukaryotic Microbiology・2012)2005年の分類改訂で導入されたスーパーグループ体系がその後も系統仮説検証を経て維持・改訂され続けており、原虫を含む真核生物の分類が運動器官のような表現型形質ではなく分子系統に基づくスーパーグループへ移行してきたことをアブストラクトで確認した。閲覧 2026-08-26