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Microbe Atlas · 蠕虫

Trichinella spiralis

旋毛虫

分類
線虫・組織 / Nematodes (tissue)Trichinella
科目
Medical Microbiology
トピック
4/33: Trichinella spiralis4/23: General characterisation and taxonomy of helminths5/11: Zoonotic infections (list) and their prevention

🧠 全体像Trichinella spiralis(通称「」)は、1匹の宿主動物の中で腸管寄生(終宿主的な段階)と(中間宿主的な段階)の両方を完結させるという点で、他の線虫と一線を画す。土壌も水も媒介昆虫も経由せず、感染筋肉の直接捕食だけで次の宿主へ伝播する——加熱不十分な豚肉・肉を食べることそのものが感染成立のすべてである。発熱・・筋肉痛の三徴が診断の急所になる。

微生物学的な特徴

  • 線虫、通称「」。中間宿主・期を持たず、感染筋肉の摂食のみで伝播する特異な生活環を持つ。
  • (シスト)は外側の、内部でとぐろを巻いた幼虫、それを取り囲むからなる。
  • 💡 」という通称に注意。 Trichuris trichiura)が「鞭形の虫体」に由来する名称であるのに対し、本種はでとぐろを巻く小さな線虫であり、両者は名称も分類上の位置づけも全く異なる——混同しやすいので区別すること。
  • Trichinella属にはT. spiralis(世界的に分布、豚由来が主)以外にも複数の近縁種が存在する。北極圏のT. nativa(セイウチ・クマ肉、極寒下でも幼虫が長期生存するを持つ)、ヨーロッパのT. britovi(野生イノシシ・肉食獣)などが代表で、いずれも同様の生活環と臨床像を持つ——「加熱不十分な肉の摂食で起こる筋肉の線虫症」という枠組みは属全体で共通する。

生活環

flowchart TD
    A["加熱不十分な豚肉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='game meat'>ジビエ</span>肉<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encysted larva'>被嚢幼虫</span>含有)を摂食"] --> B["小腸で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excystation'>脱嚢</span>"]
    B --> C["幼虫が腸管粘膜内で成虫へ発育<br>(この宿主の「終宿主」的役割)"]
    C --> D["血流・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph flow'>リンパ流</span>に入り<br>骨格筋へ移行"]
    D --> E["骨格筋内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encystment (to encyst)'>被嚢</span><br>(この宿主の「中間宿主」的役割)"]
    E --> F["数年間感染性を維持"]

病原性の仕組み

  • :成虫の腸粘膜内寄生による腸炎症状(腹痛・下痢・嘔吐)。
  • :幼虫が血流に乗り全身の筋肉へ拡散する際の血管炎・筋炎で、舌・など血流が豊富で代謝の高い筋肉に好んでする。
  • ⚠️ 心筋炎は本症の主要な死因である。 幼虫は心筋にはできず通過するのみだが、これに伴う炎症が心筋障害を起こす。中枢神経系へのも重篤化のになる。
  • :好発筋へのが完了すると、周囲のとともに慢性の炎症反応が持続する。

感染経路と疫学

  • 加熱不十分な豚肉、またはクマ肉・イノシシ肉などの摂食による感染。
  • (飼料管理・トリシネラ検査)が整った地域では稀だが、狩猟肉の生食・半生食文化がある地域で集団感染()が起こる。

起こす疾患

病期 症状
腹痛、下痢、嘔吐
発熱、筋肉痛
幼虫移行・定着後 心筋炎(主要な死因)、中枢神経系症状
大量感染時 重篤な胃腸炎

診断

  • ——ただし抗体産生には発症から数週間を要するため、発症早期は陰性でも否定できない。
  • 血算:好酸球増多に一致してピークを迎えることが多い。
  • を直接観察する。
  • CK()上昇が筋炎を反映することがある。
  • 集団の際は、同じ肉を食べた曝露者の疫学的リンクづけが診断の助けになる。

治療と予防

  • が中心——に投与すると最も有効で、骨格筋へのが完了した後は効果が限定的になる。
  • 重症例(心筋炎・脳炎)では副腎皮質ステロイドを併用する。
  • 予防:豚肉・肉の十分な加熱(内部まで火を通す)、または-15℃以下での十分な期間の冷凍——いずれも幼虫を死滅させる。

まとめ

  • は1匹の宿主の中で腸管寄生(成虫)と骨格筋内(幼虫)の両段階を完結させる特殊な線虫である。
  • 感染は加熱不十分な豚肉・肉に含まれるの摂食のみで成立し、中間宿主も期も持たない。
  • 幼虫は舌・など血流豊富な筋肉に好んでし、数年間感染性を保つ。
  • 臨床像は発熱・筋肉痛・の三徴が古典的で、心筋炎・中枢神経系症状は重症化・死亡の主因になる。
  • 診断は血清学・好酸球増多・。治療はが有効で、完了後は効果が限られる。