皮膚科学

皮膚科学 · 3-10

皮膚上皮内悪性腫瘍

In Situ Malignant Tumors of the Skin

前提:病態
化生・異形成(病態機序)パピローマウイルス
疾患
ヒ素角化症角化棘細胞腫脂漏性角化症乳房外Paget病皮膚有棘細胞癌
症状
局面皮角

🧠 全体像:はが基底膜を越えていない段階である。皮膚では有棘細胞(squamous cell carcinoma in situ:SCCIS、)とが代表で、浸潤前に完全治療することが目標となる。

有棘細胞上皮内癌

は表皮全層を異型が置換するSCCISである。紫外線、、免疫抑制、放射線、の()などが関連し、を経ずに生じることもある。

臨床像

  • 境界明瞭で緩徐に拡大する紅色〜褐色の・痂皮性局面
  • 単発または多発で、湿疹・乾癬・に似る
  • 局面内の硬い結節、潰瘍、出血は浸潤性cSCCへの移行を疑う

亀頭または粘膜の赤色局面はと呼ばれる。はの多発丘疹として現れ、組織学的に/SCCISを示す。

💡 (EMPD)もの一つ。 外陰・陰嚢・会陰などの多い部位に生じる湿疹様局面で、表皮内にとどまる原発性EMPDと、直腸・などの内臓腺癌がに進展・浸潤する続発性EMPDに分ける。1 続発性が疑われれば大腸・直腸・尿路系などの悪性腫瘍検索を行う。外陰型は診断時に表皮内にとどまる例が多い一方で再発率は高く、より低侵襲な治療と長期の局所再発監視が優先される。2

病理と診断

表皮構築の乱れ、細胞異型、、、を認める一方、基底膜は保たれる。浸潤を疑う厚い病変では、真皮まで含む生検を行う。

鑑別 手掛かり
湿疹・乾癬 多発性・対称性、治療反応。ただし単発難治局面は生検
貼り付いたような表面、。刺激性変化では類似する
通常は異形成だが、臨床的重なりが大きい
BCC 真珠様辺縁、と生検で鑑別
赤色局面・結節となり得るため、疑えば生検

治療

病変径・厚さ・部位・免疫状態から、またはを選ぶ。低リスクの薄い病変では、、外用、、を選べるが、組織学的断端確認ができず再発監視を要する。爪部・・再発・免疫抑制例は専門的管理を行う。

悪性黒色腫上皮内病変

MISは異型が表皮内に限局し、真皮浸潤を認めない0である。基底層沿いの増殖、胞巣形成、を認める。慢性光線障害部の型MISはと呼ばれる。

flowchart TD
  A["非対称・色むら・拡大する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmented macule'>色素斑</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermoscopy'>ダーモスコピー</span>評価"]
  B --> C["原則として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural'>全層性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='excisional biopsy'>完全切除生検</span>"]
  C --> D["異型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melanocyte'>メラノサイト</span>が表皮内のみ"]
  D --> E["melanoma in situ"]
  E --> F["0.5〜1 cmを目安に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radical resection'>根治的切除</span>"]
  C --> G["真皮浸潤あり"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Breslow thickness'>Breslow厚</span>に基づき侵襲性黒色腫として病期評価"]

MISの標準はで、一般に0.5〜1 cmの臨床を用いる。顔面の大きななどでは段階的切除やMohs法による断端管理を検討する。や放射線は手術不能・困難例で専門的に検討する非標準的選択肢である。

「すべての悪性黒色腫が臨床的に明瞭なin situ期を経る」とは限らず、は目立つ表皮内水平増殖を伴わず早くすることがある。

良性の類似病変

病変 特徴
褐色〜黒色の貼り付いたような丘疹・局面。急な変化や非典型像は生検
通常は左右対称、境界・色調が均一で長期安定
中央をもつ急速増大結節。cSCCとして切除評価
外傷部を越えて増殖する瘢痕だが、腫瘍を疑う非典型経過では生検

まとめ

  • SCCISは異型が表皮全層を占めるが、基底膜を越えない。
  • とはのSCCIS/として扱う。
  • MISは表皮内に限局する病期0で、完全切除が標準である。
  • 局面内の結節・潰瘍や病理学的真皮浸潤があれば、浸潤癌として再評価する。

出典

  1. 1.Extramammary Paget's Disease: Diagnosis, Pathogenesis, and Treatment with Focus on Recent Developments(Current Oncology・2021)原発性乳房外パジェット病(EMPD)は表皮の上皮内新生物として発生するのに対し、続発性EMPDは悪性細胞の表皮向性拡がりまたは基礎内部腫瘍からの直接浸潤により生じること(代表的な基礎腫瘍は結腸・直腸腺癌や尿路上皮癌)、原発性と続発性で治療方針が異なるため組織学的な鑑別が必要なこと。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Anatomic Subtype Differences in Extramammary Paget Disease: A Meta-Analysis(JAMA Dermatology・2024)外陰型EMPDのメタ解析で、症例の70.3%が表皮内病変にとどまるにもかかわらず約3分の1で根治的手術が行われていたこと、それでも34%が再発し再発の大半(89.4%)が皮膚・粘膜内にとどまっていたことから、外陰型ではより低侵襲な治療と局所再発への綿密な監視が妥当と考えられること。閲覧 2026-08-26