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Disease Atlas · 皮膚 · 腫瘍

脂漏性角化症

Seborrheic keratosis

別名
老人性疣贅脂漏性疣贅seborrhoeic keratosissenile wart
臓器系
皮膚腫瘍
科目
PathologyDermatology
トピック
病理学 C/103:非メラノサイト系皮膚腫瘍皮膚科 3-10:皮膚上皮内悪性腫瘍皮膚科 3-25:腫瘍随伴性皮膚症状
鑑別疾患
悪性黒色腫基底細胞癌
症状
局面瘙痒Leser-Trélat徴候

🧠 全体像は表皮由来のありふれた良性腫瘍で、60歳以上の9割超がもつ加齢性病変である1。この疾患の臨床的な意味は病変そのものではなく、「本当に良性か」を毎回問い直す姿勢にある——典型的な「貼りついた」外観をとる限り治療は不要だが、悪性黒色腫・との鑑別、そして急激な多発が内臓悪性腫瘍を示唆するという、良性病変には珍しい2つの警戒点を併せ持つ。

病態

表皮の限局性の良性増殖で、が皮内に取り込まれになったもの)の形成を伴う。FGFR3PIK3CARASAKT1EGFRなどのクローン性変異が病変内に見つかるが、がん抑制遺伝子の変異は伴わず、これが本態が良性にとどまる根拠になっている1FGFR3変異は高齢・頭頸部の病変で多く、紫外線曝露との関連が示唆される1

臨床像とダーモスコピー

体幹・顔面・頭皮に好発し、褐色〜黒色の「貼りついた」光沢のある局面・丘疹として現れる。表面は・脂ぎった外観を呈し、単発のこともあれば加齢とともに数年単位でゆっくり多発することもある。

では、様開大、稗粒腫様状パターン、ヘアピン血管がになる2

臨床亜型として、状に色素沈着する脂漏性疣贅、下腿に多い白〜黄灰色のstucco keratosis、頭頸部の色黒な人に多い小型病変である黒色丘疹性がある1

悪性腫瘍との鑑別

⚠️ 「良性でありふれた病変」という前提が、鑑別を怠る言い訳にならない。 病変であるため、鑑別の軸は主に悪性黒色腫の2つになる。

flowchart TD
    A["褐色〜黒色の隆起病変"] --> B["「貼りついた」外観・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='comedone'>面皰</span>様開大・<br>稗粒腫様<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyst'>嚢腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gyrus'>脳回</span>状パターンか"]
    B -->|"典型的"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seborrheic keratosis'>脂漏性角化症</span>として経過観察"]
    B -->|"非典型・単発で色調不整"| D["色素網・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudopodia'>偽足</span>・青白色ベールを確認"]
    D -->|"あり"| E["悪性黒色腫を疑い生検"]
    D -->|"なし・樹枝状血管や胞巣構造"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmented'>色素性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell carcinoma, BCC'>基底細胞癌</span>を疑い生検"]
    C --> G{"数週〜数か月で急激に多発・増大したか"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sign of Leser-Trélat'>Leser-Trélat徴候</span>として<br>内臓悪性腫瘍を検索"]
    G -->|"いいえ"| C
疾患 での鑑別点
(本病変) 様開大、稗粒腫様状パターン、ヘアピン血管。色素網やはない2
悪性黒色腫 色素網、・放射状線条、青白色ベールが典型で、のような角化・隆起主体の所見とは異なる2
樹枝状血管、を伴う。「貼りついた」外観と上記のの所見が乏しければ疑う

急速な増大、出血、炎症・刺激後のな変化、患者本人の他の母斑と明らかに異なる印象(病変病変ので扱う所見)を認めれば、単なる刺激性として片付けず生検を検討する。悪性黒色腫が様の外観をとって発見が遅れる「コラージュ現象」も報告されており、典型像に一致しない要素が1つでもあれば拾い上げる姿勢を崩さない。

Leser-Trélat徴候

が数週〜数か月という短期間に急激に多発・増大する現象はと呼ばれ、内臓悪性腫瘍(が古典的だが肺癌・血液腫瘍などの報告もある)を示唆するとして扱われる2。病態機序、との併存が持つ意味、腫瘍検索の進め方は同徴候のノートに譲り、本ノートでは重複させない。

治療

そのものは医学的に治療が必須の病変ではない2。整容目的またはな摩擦・刺激による・出血がある場合に、・電気乾固、レーザーによる、剪除生検などを選択する。診断に迷う病変、急速に変化した病変は治療の前に生検で断を確定する。

まとめ

  • は表皮由来のありふれた良性腫瘍で、60歳以上の9割超にみられる。
  • 様開大・稗粒腫様状パターンがで、悪性黒色腫の色素網・・青白色ベールとは異なる。
  • 「良性でありふれている」という前提に頼らず、悪性黒色腫・との鑑別を常に意識する。
  • 急激な多発・増大はとして内臓悪性腫瘍を示唆し、年齢相応のがん検診を含む精査の契機になる。
  • 治療は整容・症状緩和が目的で医学的必須ではなく、非典型例のみ生検で確認する。

出典

  1. 1.Seborrheic Keratosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Greco MJ, Bhutta BS)・2024)脂漏性角化症の臨床像が貼りついた光沢のある局面であること、ダーモスコピーでは面皰様開大・稗粒腫様嚢腫・脳回状パターン・ヘアピン血管がみられ悪性黒色腫でみられる色素網や偽足・青白色ベールは通常伴わないこと、治療は美容・整容目的または慢性刺激症状に対してのみ行い医学的に必須ではないこと、突然の多発(Leser-Trélat徴候)は内臓悪性腫瘍(消化管・肺癌など)を示唆し年齢相応のがん検診を含む精査を要することを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Seborrhoeic keratosis(DermNet NZ・2016)60歳以上の成人の9割超が1個以上の脂漏性角化症をもつという頻度、FGFR3・PIK3CA・RAS・AKT1・EGFRなどのクローン性変異が病変に見つかる一方でがん抑制遺伝子変異は伴わないこと、脂漏性角化症には黒色表皮腫様に色素沈着する黒子・脂漏性疣贅・stucco keratosisなどの臨床亜型があることを確認した閲覧 2026-08-11