皮膚科学

皮膚科学 · 3-09

表皮前癌病変

Premalignant Epidermal Lesions

前提:病態
化生・異形成(病態機序)化学・放射線による発癌
薬剤
イミキモド
疾患
ヒ素角化症ヒ素中毒角化棘細胞腫点状掌蹠角化症日光黒子日光性面皰皮膚有棘細胞癌
症状
皮角

🧠 全体像:表皮は異形成を基盤とし、一部がへ進展する。はの異形成、は表皮全層のであり、同義ではない。

日光角化症

は、長年の紫外線曝露で生じる性腫瘍で、顔面、耳介、、、前腕などに好発する。

所見 内容
形態 触れるとざらつく紅色〜・丘疹、・角化
背景皮膚 萎縮、、、黄白色の
、色素型、、Bowen様など
急速増大、圧痛、、潰瘍、出血は浸潤性cSCCを疑う

個々のAKが退縮・持続・進展するかを正確に予測できず、多発例では全体が発癌リスクをもつ。

💡 癌化率の数値は出典で大きく異なる。 試験・・総説を対象とした系統的レビューでは、AKからcSCCへの年間・病変あたりの癌化率として0.025%から20%までの幅が報告されており、単一の確立した値はない1。

💡 「前癌」と呼ぶか「」と呼ぶかは議論がある。 AKとcSCCのは病理医間のが高くない場合があり、現行の用語が他の上皮内悪性腫瘍のと整合しないとして、二段階診断体系への見直しが提案されたことがある2。一方で近年の総説はAKをそのものとして分類する立場を取ることもあり、呼称は一定していない。

その他の角化性病変

病変 意義と対応
角質が円錐状に突出する形態診断。基部は疣贅、AK、SCCIS、浸潤性cSCCなどであり、基部を含めて病理評価する
数週で急速増大する対称性結節で中央をもつ。し得るがcSCCと確実に区別できず、通常はcSCCとして完全切除する
手掌・足底の多発。慢性歴と多発リスクを評価
関連角化症 タール・煤などの部に生じ、曝露低減と腫瘍監視を行う
慢性 萎縮、硬化、、、潰瘍を背景にcSCCなどが生じ得る

放射線による一過性紅斑・脱毛・色素沈着と、不可逆的な萎縮・線維化・潰瘍・発癌を区別する。

HPV関連上皮内病変

ではヒトパピローマウイルス関連の低度・高度扁平上皮内病変(low-/high-grade squamous intraepithelial lesion:/)が生じる。部位ごとの分類とスクリーニング体系に従い、は浸潤癌予防のため治療・追跡する。すべての皮膚AKやが由来ではない。

診断

flowchart TD
  A["ざらつく角化性病変"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>・触診・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermoscopy'>ダーモスコピー</span>"]
  B --> C["薄い典型的AK"]
  B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induration'>硬結</span>・圧痛・潰瘍・急速増大"]
  C --> E["病変治療またはフィールド治療"]
  D --> F["十分な深さの生検"]
  F --> G["SCCISか浸潤性cSCCかを判定"]

AKは悪性黒色腫・、は湿疹・乾癬、は疣贅・cSCCと鑑別する。診断不確実、治療抵抗性、侵入疑いでは生検する。

日光角化症の治療

方針 選択肢
個別病変治療 、、選択例で切除
フィールド治療 外用、、外用、など
予防 日陰、防護衣、、人工日焼け回避

病変数、部位、肥厚、免疫状態、患者の許容できる炎症反応と通院条件から選択する。レーザーやは選択肢になり得るが、第一選択は診断確実性とエビデンスを考慮して決める。

💡 治療法間の優劣は限定的にしか分かっていない。 83件のを対象としたでは、個々の病変へのはより完全消失率で優れ(1.31)、フィールド治療の・・・インゲノールメブテートは効果が概ね同程度だが有害事象や美容的結果が異なり、扁平上皮癌のそのものを比較したデータは無かった3。

まとめ

  • AKは紫外線による異形成で、一部がcSCCへ進展する。
  • AKとは同義ではなく、はSCC in situである。
  • は形態名であり、基部の病変を生検する。
  • はcSCCと区別困難なため、原則として切除・病理評価する。

出典

  1. 1.Actinic keratosis: how to differentiate the good from the bad ones?(European Journal of Dermatology・2006)日光角化症からcSCCへの悪性転化率について、既存の系統的レビューで確認できた唯一のメタ解析が年間・病変あたり0.025%から20%という幅の値を報告していたこと閲覧 2026-08-26
  2. 2.The diagnostic concordance of actinic keratosis and squamous cell carcinoma(Journal of Cutaneous Pathology・2005)77人の皮膚病理医による組織切片の読影で、日光角化症と扁平上皮癌の診断一致率は概して高くなく、現行の用語が他の上皮性悪性腫瘍の命名法と整合しないとして二段階診断体系への見直しが提案されたこと閲覧 2026-08-26
  3. 3.Interventions for actinic keratoses(Cochrane Database of Systematic Reviews・2012)ランダム化比較試験83件・参加者10,036人を統合した解析で、個々の病変への光線力学療法が凍結療法より完全消失率で優れ(リスク比1.31)、フィールド治療のジクロフェナク・5-フルオロウラシル・イミキモド・インゲノールメブテートは有効性が概ね同程度だが有害事象・美容的結果が異なり、扁平上皮癌発生率そのものを比較したデータは無かったこと閲覧 2026-08-26