病理学

病理学 · C/73

子宮内膜・筋層の腫瘍

Tumors of the endometrium and myometrium

応用トピック
機能性子宮出血(現在の排卵障害関連異常子宮出血)子宮体癌の病因と前癌病変(子宮内膜増殖症)子宮体癌の病期・治療・病理子宮体部腫瘍の疫学・病因・組織・病期・症状・診断
疾患
子宮筋腫子宮体癌子宮内膜ポリープ平滑筋肉腫
検査値
マイクロサテライト不安定性

🧠 全体像:は発生機序でI型(拮抗されないエストロゲン→類内膜、低グレード、予後良好)とII型(萎縮内膜→p53変異→漿液性、高グレード、予後不良)に分かれる——ここに現行のTCGA分子分類(POLEmut/MMRd/NSMP/p53abn)が重なり、同じの上にの指標が追加されている。筋層の腫瘍では、はエストロゲン感受性の良性腫瘍だがそこからへすることはほぼなく、の多くはde novoに生じる別物である点が対比の軸になる。

子宮内膜ポリープ

子宮内膜癌

I型 — 類内膜癌

  • 最多(約80%)。
  • 拮抗されないエストロゲン過剰が背景(PMOS、肥満、、・、エストロゲン療法、)。
  • 経過: → 異型を伴う増殖症 → 類内膜腺癌。
  • 分子:、KRAS、MSI()、β-カテニン変異。
  • 組織像:正常に似た高分化の腺、背側にを伴うことも。
  • 通常は高分化・低グレード、予後良好。

II型 — 漿液性癌

  • 頻度は低いがより進行性。
  • より高齢(10歳ほど上)、萎縮した子宮内膜を背景に生じる(エストロゲン非依存性)。
  • :。
  • 分子:p53変異(ほぼ全例)。
  • 組織像:構造、著明な核異型、(卵巣に類似)。
  • の傾向、予後不良。

I型とII型の比較

特徴 I型(類内膜) II型(漿液性)
頻度 約80%(最多) 少ない
年齢 閉経前後 より高齢
エストロゲン 依存性(過剰) 非依存性
背景内膜 増殖症 萎縮
EIN 漿液性EIC
分子 、KRAS、MSI、β-カテニン p53
グレード 低グレード 高グレード
予後 良好 不良

進展・病期

  • 直接進展: → 頸部・付属器 → 骨盤内。
  • → 骨盤・。
  • 血行性(後期)→ 肺、肝、骨。
  • 予後因子:組織型、グレード、筋層浸潤の深さ、病期。

分子分類(現行)

I型/II型のは理解の出発点だが、現在はTCGA由来の4分子群が・の中心になっている。実施可能であれば全例で分子分類(MMR免疫染色・p53・POLE変異検索)を行うことが奨励されており1、MMR欠損型(MMRd)の同定はスクリーニングを兼ねる。

分子群 代表所見 予後
(POLEmut) POLE病的変異、 良好
MMR欠損型(MMRd) MMR蛋白消失、MSI-highを伴い得る。評価に直結 中間
(NSMP) POLEmut・MMRd・p53異常のいずれにも該当しない 不均一な中間群
(p53abn) 異常p53発現/TP53変異、に多い 不良

2023年はこの分子分類を病期表記に統合しており、判明していれば病期に「m」と分子亜型の下付きを付して記録する。とくにI・II期ではPOLEmutの判明で病期が下がり(例:IAmPOLEmut)、p53abnの判明で病期が上がる(例:IICmp53abn)——分子分類は表記が変わるだけでなく病期そのものを動かす1。現行の病期・治療判断はこの記事のI型/II型だけでなく分子分類も併せて理解する必要がある。

子宮内膜間質腫瘍

  • 由来。
  • 子宮内膜間質結節:良性、境界明瞭。
  • 低悪性度:筋層・血管への浸潤、JAZF1融合遺伝子、緩徐だが再発しうる。
  • /未分化:進行性、予後不良。

子宮筋層の腫瘍

平滑筋腫(子宮筋腫)

  • の平滑筋由来の良性腫瘍。
  • 女性で最も多い良性腫瘍(生殖年齢女性の30〜50%)。
  • エストロゲン・プロゲステロン感受性 → 妊娠で増大、閉経後に縮小。
  • 部位:、(出血を来す)、(になりうる)。
  • 肉眼:境界明瞭、硬い、灰白色、き状の。
  • 症状:、、、不妊。
  • へのはほぼない(次項の通りは既存のからではなくde novoに発生する)。

💡 は非常に多いが肉腫はまれで、術前に確実な鑑別はできない。 を疑って行われた手術を対象にした133研究のベイズでは、の推定頻度は手術1,000件あたり0.51件(約1/2000)、前向き研究に限ると0.12件(約1/8300)にとどまった2。頻度の低さゆえに、画像や術前生検だけでとを確実に区別することは難しい。

平滑筋肉腫

  • 悪性の。
  • からではなくde novoに生じる、通常単発。
  • 高齢女性(閉経後)。
  • 診断の3所見:腫瘍細胞壊死++。ただし3つ全部が要るわけではなく、閾値は亜型ごとに異なる——型は「腫瘍細胞壊死」「中等度〜高度の異型」「10個/10HPF以上」の3つのうち2つ以上、は4個/10HPF以上に壊死または中等度以上の異型のいずれか、粘液型は壊死または高度の異型のいずれか(どちらも無ければ2個/10HPF以上)で診断する。この基準を厳密に当てはめることがとの鑑別の要となる。やMED12変異はこの鑑別には使えない——有糸分裂活性の高いや奇怪核を伴うでもp16はしばしば陽性になる3。
  • 再発+肺転移が多い、5年生存 約40%。

💡 ポイント: はで発症、I型(類内膜) = 拮抗されないエストロゲン → EIN、/KRAS/MSI、低グレード、予後良好、II型(漿液性) = 萎縮内膜、p53変異、、、予後不良。予後因子は筋層浸潤の深さ+グレード+病期。筋層:() = 女性で最多の良性、エストロゲン感受性、き状、、はほぼない。 = de novo、単発、閉経後、壊死・異型・(型は3つのうち2つ以上)、肺転移。

まとめ

  • はI型(類内膜、約80%、拮抗されないエストロゲン、/KRAS/MSI/β-カテニン変異、低グレード、予後良好)とII型(漿液性、萎縮内膜、p53変異、、高グレード、予後不良)に大別される。
  • 現行の分子分類は(予後良好)、MMR欠損型(評価に直結)、NSMP、(予後不良)の4群からなり、2023年に統合されている。
  • 予後因子は組織型・グレード・筋層浸潤の深さ・病期。
  • は良性の結節から低悪性度肉腫(JAZF1融合遺伝子)、・未分化肉腫まで幅がある。
  • ()は女性で最多の良性腫瘍でエストロゲン感受性だが、へのはほぼない。
  • は既存のからではなくde novoに生じ、腫瘍細胞壊死・細胞異型・高いが診断の3所見(型は3つのうち2つ以上、の閾値は10個/10HPF以上。・粘液型は閾値が低い)。

出典

  1. 1.FIGO staging of endometrial cancer: 2023(International Federation of Gynecology and Obstetrics・2023)全文(PMC10482588)で確認した。FIGO 2023の子宮体癌病期分類。IA1は非攻撃的組織型(原文は「i.e., low-grade endometrioid」と低異型度類内膜癌を指す)がポリープに限局または内膜内にとどまるもの、IA3は低異型度類内膜癌が子宮に限局し同時に低異型度類内膜卵巣病変を伴うもの、ICは漿液性癌・高異型度類内膜癌・明細胞癌・癌肉腫・未分化癌・混合型その他の稀な型といった攻撃的組織型で筋層浸潤がないものであること。分子分類(POLEmut・MMRd・NSMP・p53abn)は「If available and feasible」の条件付きで全例での実施が奨励(encouraged)され、POLEmutは予後良好・MMRdとNSMPは中間の予後を示すとされ、判明していれば病期に「m」と分子亜型の下付きを付して記録すること。I・II期でp53abnまたはPOLEmutが判明した場合は病期が上がる/下がる(IICmp53abn、IAmPOLEmut)こと閲覧 2026-08-27
  2. 2.The prevalence of occult leiomyosarcoma at surgery for presumed uterine fibroids: a meta-analysis(Gynecological Surgery・2015)子宮筋腫を疑って行われた手術における潜在性平滑筋肉腫の頻度に関する133研究のベイズ二項ランダム効果メタ解析で、平滑筋肉腫の推定頻度は手術1,000件あたり0.51件(95%確信区間0.16-0.98、約1/2000)であったこと。前向き研究64件に限ると手術1,000件あたり0.12件(95%確信区間<0.01-0.75、約1/8300)まで下がったこと。子宮筋腫を疑う手術における潜在性平滑筋肉腫の有病率は従来の推定より低いこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Practical issues in uterine pathology from banal to bewildering: the remarkable spectrum of smooth muscle neoplasia(Modern Pathology・2016)有糸分裂活性の高い平滑筋腫、apoplectic leiomyoma、奇怪核を伴う平滑筋腫は平滑筋肉腫と紛らわしく、細胞異型・有糸分裂活性・腫瘍細胞壊死という形態基準を厳密に当てはめることが鑑別の要であること。有糸分裂数の閾値は平滑筋肉腫の亜型ごとに異なり、全文(nature.com、ブロンズOA)で紡錘細胞型は腫瘍細胞壊死・中等度〜高度の細胞異型・10個/10HPF以上の核分裂の3所見のうち2つ以上、類上皮型は4個/10HPF以上の核分裂に腫瘍細胞壊死または中等度以上の異型のいずれか、粘液型は腫瘍細胞壊死または高度の異型のいずれか(それらが無ければ2個/10HPF以上の核分裂)で診断するとしていること。p16は奇怪核を伴う平滑筋腫やapoplectic leiomyomaでもしばしば陽性になるため平滑筋肉腫の根拠にしてはならず、MED12変異もこの鑑別には役立たないこと閲覧 2026-08-27