疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 疾患

子宮内膜ポリープ

Endometrial polyp

臓器系
生殖・産婦人科
科目
PathologyGynecology
トピック
病理学 C/73:子宮内膜・筋層の腫瘍婦人科 20:子宮の良性疾患
鑑別疾患
子宮筋腫
続発疾患
子宮体癌
原因薬剤
タモキシフェン
症状
不妊症異常子宮出血

🧠 全体像は、と間質からなる限局性の隆起で、エストロゲン依存性の良性病変である。多くは無症候だが、の原因として最も頻度が高い構造的病変の一つでもある。診療の中心は「切るか経過観察か」であり、この判断は閉経後・出血の有無・大きさという3つの因子による悪性化リスクの層別化で決まる——悪性化そのものは稀でも、この層別化を誤ると・悪性ポリープ、ひいてはを見逃す。

病態

は、・間質・厚壁の血管からなる、子宮内膜腔へ突出する限局性のである。により内膜局所が過形成的に増殖する点で、がエストロゲン・プロゲステロン感受性のであるのと機序の軸を共有するが、由来組織(内膜腺・間質 vs 平滑筋)が異なる。

臨床像

  • が最多の症状で、閉経前は・周期外の、閉経後はとして現れる。
  • 無症候のまま健診ので偶発的に発見される例も多い。
  • 不妊との関連が指摘されており、内膜腔を占拠する病変が着床を妨げると考えられている。

診断:経腟超音波からソノヒステログラフィー・子宮鏡へ

併用で精度が上がる)が検出の第一段階で、限局性のとして描出される1。病変の性状をさらに評価する場合はソノヒステログラフィーまたはへ進む。

⚠️ 下ポリープ切除は診断と治療を兼ねる。 病変をで確認しながら完全に切除でき、断も同時に得られる。これに対し盲目的な(D&C)は視野がないまま行うため病変を取り残しやすく、診断・治療いずれの目的でも避けるべきとされる1。「出血があるからする」という発想だけで進めず、を経由することが標準的である。

悪性化リスクの層別化——「切るか経過観察か」の中心

⚠️ の悪性化頻度は低いが、閉経後・出血あり・大きいとリスクが上がる。 この層別化が、無症候の小さなポリープを経過観察するか、症候性・高リスクのポリープを切除するかを決める中心的な判断軸である。層別化を誤って・悪性ポリープを見逃すと、背景にあるの診断が遅れる点が実務上の要点になる。

11,204例を対象としたでは、悪性ポリープが2.75%、異型を伴うの合併が1.8%、異型のない増殖症の合併が5.2%であった2

リスク因子 ・悪性化との関連
閉経後 5.63(非閉経女性との比較)2
あり 1.89(無症候例との比較)2
が厚い ・悪性例で平均4.21 mm厚い2

💡 ポリープの大きさは統計的なではなく、経験的な管理閾値として扱われる。 上記のでも、大きさそのものと・悪性化のは算出されておらず、無症候例では径10 mm以上で切除が妥当とする経験的な目安が示されているにとどまる2

💡 の位置づけは単純ではない。 は子宮内膜に対して部分的にエストロゲン様に作用し、ポリープの発生そのものを大きく増やす(使用女性の8〜50%にポリープが生じるとの報告があり、非使用の乳癌患者〈4%未満〉を大きく上回る3)ため、使用歴は断の閾値を下げる重要な手がかりとして扱われる。一方、上記の11,204例のでは、すでに診断されたポリープの中での悪性化使用群でむしろ低く出ており(0.50)、最の研究を除外する感度分析では統計学的有意性を失った2はポリープを増やす」ことと「使用ポリープが悪性化しやすい」ことは同じではない——前者は確立しているが、後者は現時点のデータでは一貫していない。臨床では、使用中の・大きい病変は断の対象とする方針が妥当である。

子宮粘膜下筋腫との鑑別

いずれも子宮腔内の限局性病変として・不妊の原因になるが、由来組織と画像所見が異なる。

項目
由来組織 内膜腺+間質 平滑筋
で境界明瞭、内膜と連続する茎を持つことが多い の類円形腫瘤、筋層とのがある
所見 軟らかく平滑な表面、しばしば茎を持つ 硬く球形、白色調の割面
エストロゲン以外の感受性 エストロゲン依存性 エストロゲン・プロゲステロン双方に感受性

まとめ

  • は内膜腺・間質からなるエストロゲン依存性の限局性隆起で、の原因として頻度が高いが無症候例も多い。
  • 診断はから始め、ソノヒステログラフィーまたはへ進む。下切除は診断と治療を兼ね、視野のない盲目的なは避けるべきとされる。
  • 悪性化は稀だが、閉経後・出血あり・大きいとリスクが上がるという層別化が「切るか経過観察か」を決める中心である。
  • はポリープの発生自体を大きく増やす一方、すでにあるポリープの悪性化を一貫して高めるとは言えず、両者を混同しない。
  • 子宮とは由来組織(腺・間質 vs 平滑筋)と超音波・所見で鑑別する。

出典

  1. 1.Risks of Malignancy among 11,204 Patients with Endometrial Polyp: A Systematic Review and Meta-analysis(Gynecology and Minimally Invasive Therapy・2025)11,204例のメタ解析で悪性ポリープが2.75%、異型を伴う子宮内膜増殖症の合併が1.8%、異型のない増殖症の合併が5.2%であったこと。閉経後女性は非閉経女性より前癌病変・悪性化のオッズが5.63倍(95%CI 3.87〜8.20)高いこと、不正性器出血を伴う例は伴わない例よりオッズが1.89倍(95%CI 1.06〜3.35)高いこと、前癌病変・悪性例では内膜厚が平均4.21 mm厚いこと、タモキシフェン使用のオッズ比は0.50(95%CI 0.26〜0.94)とむしろ低いが、最大規模の研究を除外する感度分析ではOR 0.74(95%CI 0.38〜1.44)に低下し統計学的有意性を失うこと、無症候例では径10 mm以上でポリープ切除が妥当とされること、周閉経期のAUBはポリープの有無によらず内膜サンプリングを行うべきとされること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Endometrial polyps: diagnosis and treatment options - a review of literature(Minimally Invasive Therapy & Allied Technologies・2021)経腟超音波(カラードプラ併用で精度向上)が子宮内膜ポリープ検出の主要な検査法であること、子宮鏡は病理診断と治療を直視下で同時に行える点で診断価値が高いこと、盲目的な掻爬(D&C)は診断・治療のいずれの目的でも避けるべきとされること閲覧 2026-08-11
  3. 3.Tumorigenic Effects of Tamoxifen on the Female Genital Tract(Clinical Medicine. Pathology・2008)タモキシフェン使用女性における子宮内膜ポリープ形成の報告頻度が8〜50%で、タモキシフェンを使用していない乳癌患者の4%未満を大きく上回ること(Uterine Corpus節 Endometrial polyp項)閲覧 2026-08-11