婦人科学

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子宮体癌の病因と前癌病変(子宮内膜増殖症)

Etiology and precancerous states of corporal cancer (hyperplasias)

前提:病態
子宮内膜・筋層の腫瘍遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)
前提:正常
女性生殖:卵管と子宮
疾患
子宮体癌子宮内膜増殖症
検査値
エストロン

🧠 全体像:の主要なは、持続的なエストロゲン刺激を背景とする(endometrial intraepithelial neoplasia:EIN)/である。現在は「異型なし」と「EIN/異型あり」の2群で捉え、後者では併存癌を除外して治療する。

子宮体癌の背景

は先進国で最も多いで、主に閉経後に発症する。corporal cancerは子宮体部の癌を意味する旧来の英語表現である。

病因とリスク因子

拮抗されないエストロゲン

プロゲステロンによる変化を伴わない持続的エストロゲン刺激は、とのリスクを高める。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unopposed estrogen stimulation'>拮抗されないエストロゲン刺激</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrial gland'>子宮内膜腺</span>の持続増殖"]
    B --> C["異型を伴わない増殖症"]
    B --> D["EIN/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical endometrial hyperplasia, AEH'>異型子宮内膜増殖症</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endometrioid carcinoma'>類内膜癌</span>"]
リスク因子 機序・ポイント
肥満 脂肪組織でがへ
・PMOS(従来PCOS) 排卵がなくによる変化を欠く。肥満・も併存し、機序は不足だけに還元できない
月経・・ 生涯の排卵周期・エストロゲン曝露増加
エストロゲン単独補充 子宮を有する人では内膜保護のが必要
子宮内膜では部分的エストロゲン作用
エストロゲン産生 など
MMR遺伝子の
糖尿病・高血圧 肥満・代謝因子と重なりリスク上昇と関連。ただし高血圧は独立因子としては弱く、肥満とのが大きい

、妊娠・経産はリスク低下と関連する。喫煙にも疫学上のが報告されるが、観察研究由来でを受けやすく、また重大な健康害があるため予防手段にはならない。

⚠️ リスク因子の一覧は「因果の強さの序列」ではない。 53のリスク因子・171を評価したアンブレラレビューで、の兆候なく「強いエビデンス」と判定されたのは3因子だけであった——閉経前女性の(5 kg/m²あたりRR 1.49)、(0.1単位あたりRR 1.21)、そして経産によるリスク低下(RR 0.66)である。他の多くは残余を含みうる。表は「機序を理解する枠組み」として使い、個々の項目の重みを同列に扱わない。1

子宮内膜増殖症の分類

現行WHO分類

分類 病理 癌リスクと対応
異型を伴わない 腺増殖はあるが、の細胞異型を欠く 原因是正と治療。
EIN/ 密な腺構築と周囲と異なる細胞異型 。併存癌・進展リスクが高い

歴史的4分類

/と異型の有無を組み合わせる 1994分類は歴史的で、現在は分類へ移行している。

旧分類 現在の読み替え
・、異型なし 異型を伴わない増殖症へ統合
・、異型あり EIN/AEHとして扱う

固定された進展率は研究期間・治療の有無で異なる。重要なのは、異型なしよりEIN/AEHで癌併存・進展リスクが明らかに高いことである。

症状と診断

  • 最多はで、、過多・、を含む。
  • は少量でも評価する。
  • 診断はで行う。細胞診は子宮内膜病変の信頼できる検診法ではない。
  • 病変が局在する、採取量が不十分、出血が持続する場合は下の標的生検が有用である。
  • EIN/AEHを診断したら、保存治療前に併存を可能な限り除外する。

治療

異型を伴わない増殖症

  • 肥満、、などの原因を是正する。
  • 放出または持続的経口を用いる。
  • 定期的な内膜で退縮を確認する。「毎月10日間を3か月」という旧来の単一処方に固定しない。

EIN/AEH

  • がである。
  • 妊孕性温存または手術不能で保存治療を選ぶ場合は、先に併存を除外して過少治療を避けたうえで(経口・子宮内・併用)を投与し、厳密にを行う。2
  • は経口単独より高い退縮率を示すデータがあり(データは限定的で一致していない)、を併用することもある。周期的投与は持続的より退縮率が低いと示唆される。2
  • 減量と血糖是正を含むの改善は全身の健康を改善し、EIN/AEHとのリスクを下げうるため、あわせて助言する。2
  • 反応不良、進行、再発、妊娠希望終了時にはを再検討する。

分子病理への接続

従来の「I型=エストロゲン依存・類内膜、II型=非依存・漿液性」というは病態理解には役立つが、現在の分類を十分に表せない。ではPOLE、MMR欠損型、(NSMP)、p53の4分子群が用いられる。確立しているのはとの判断への反映であり、全病期の個別や妊孕性温存治療への適用はなお検証段階である。

💡 4分子群は予後がまったく違う(PORTEC-3分子解析)。 高リスク410例で、5年は48%、98%、MMR欠損型72%、NSMP 74%であった。さらに術後化学放射線のが有意に有効だったのはのみ(p=.019)で、はどちらの治療群でも良好だった。「予後を分けるだけでなく、の適否を分ける」のがこの分類の意義である。3

まとめ

  • が、異型を伴わない増殖症とEIN/AEHの背景となる。
  • 旧4分類ではなく、現行の「異型なし」と「EIN/AEH」の分類で整理する。
  • EIN/AEHでは併存癌を除外し、根治は、保存治療では+厳密なが必要である。

出典

  1. 1.Risk factors for endometrial cancer: An umbrella review of the literature(International Journal of Cancer・2019)子宮体癌のリスク因子53項目・171メタ解析を評価したアンブレラレビューで、**バイアスの兆候なく「強いエビデンス」と判定されたのは3因子だけ**であったこと。すなわち**閉経前女性のBMI**(5 kg/m²あたりRR 1.49, 95%CI 1.39–1.61)、**ウエスト・ヒップ比**(0.1単位あたりRR 1.21, 95%CI 1.13–1.29)、および**経産による低下**(RR 0.66, 95%CI 0.60–0.74)であること。多くの提唱されたリスク因子は残余交絡やバイアスを受けやすいこと閲覧 2026-08-21
  2. 2.Management of Endometrial Intraepithelial Neoplasia or Atypical Endometrial Hyperplasia: ACOG Clinical Consensus No. 5(American College of Obstetricians and Gynecologists・2023)EIN/異型子宮内膜増殖症に対し**子宮全摘が根治治療**であること。妊孕性温存を検討する際は**先に子宮内膜癌の存在を除外**して過少治療を避けるべきこと。手術を行わない場合は癌への進展リスクが高いため**プロゲスチン療法(経口・子宮内・併用)と綿密な監視**を要すること。**レボノルゲストレル放出子宮内システムは経口プロゲスチン単独より高い退縮率**を示す(データは限定的で一致していない)こと。**周期的投与は持続的経口投与より退縮率が低い**と示唆されること。減量と血糖是正を含む生活習慣の改善を助言すべきこと閲覧 2026-08-21
  3. 3.Molecular Classification of the PORTEC-3 Trial for High-Risk Endometrial Cancer: Impact on Prognosis and Benefit From Adjuvant Therapy(Journal of Clinical Oncology・2020)高リスク子宮体癌410例のPORTEC-3分子解析で、**p53異常型23%・POLE変異型12%・MMR欠損型33%・NSMP 32%**に分類されたこと。**5年無再発生存はp53異常型48%、POLE変異型98%、MMR欠損型72%、NSMP 74%**と大きく異なること。**術後化学放射線の上乗せが無再発生存を有意に改善したのはp53異常型のみ**(p=.019)で、POLE変異型はどちらの群でも良好であったこと。分子分類をリスク層別化に組み込むべきこと閲覧 2026-08-21