組織学

組織学 · 15.2

女性生殖:卵管と子宮

Female reproductive system — Uterine tube & uterus

応用トピック
機能性子宮出血(現在の排卵障害関連異常子宮出血)子宮の良性疾患子宮体癌の病因と前癌病変(子宮内膜増殖症)子宮内膜症と子宮腺筋症異所性妊娠

🧠 子宮内膜は「毎月生まれ変わる層()」と「土台として残る層(基底層)」の2層に分けて覚える。 はホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)に応じて増殖・分泌・剥離を繰り返し、基底層は月経のたびにを新しく再生する“種”として残り続ける——のすべての変化はこのでだけ起こっている、と理解すると周期の全体像が一気に単純化される。

卵管

卵管粘膜はからなり、2種類の細胞が並ぶ。

細胞 機能
により・を子宮方向へ輸送
・精子の栄養となる分泌液を産生

卵管は→(ampulla、受精の主な場)→→の順に子宮へ続き、粘膜のヒダは・で最も複雑に発達する。

子宮壁の3層

flowchart TD
  A["子宮内膜:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional layer'>機能層</span>+基底層"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myometrium'>子宮筋層</span>:厚い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle layer'>平滑筋層</span>"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perimetrium'>子宮外膜</span>:漿膜または外膜"]

子宮内膜:機能層と基底層

基底層
での変化 ホルモンに応じ増殖・分泌・月経時に剥離 変化せず残存、再生の起源
:ホルモン変化に鋭敏に反応し収縮・剥離を引き起こす :ホルモンの影響を受けにくい

⭐ の収縮(プロゲステロン低下による)がの虚血・壊死を引き起こし月経出血に至る——は基底層への血流を維持し続けるため、基底層は月経のたびに失われず、次周期の再生の“土台”として機能し続ける。この血管支配の違いが2層の運命を分けている。

💡 「攣縮→虚血→壊死→出血」だけで月経を説明するのは古い枠組みで、現在は「が引き金となる炎症+創傷治癒」として捉える。 引き金がプロゲステロンの離脱であることは変わらないが、月経内膜は毎月急速な修復を迫られる生理的な「創傷面」であり、炎症とのヒト生体モデルとして扱われる1。しかも低酸素は単なる破壊の原因ではなく、修復に必要な合図でもある——月経時の一過性の生理的低酸素がHIF-1αを安定化させて剥離面のを駆動しており、の女性では月経時の内膜HIF-1αが低く出血が遷延する。マウスで高酸素環境に置くかHIF-1αを抑えると修復が遅れ、HIF-1α安定化薬で修復が戻る2。の攣縮は「壊す仕組み」であると同時に「治す合図」も出している、と理解しておく。

月経周期における子宮内膜の変化

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='menstrual phase'>月経期</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional layer'>機能層</span>の剥離、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spiral arteries'>らせん動脈</span>の攣縮"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative phase'>増殖期</span>:エストロゲン依存、上皮・腺の再生"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secretory phase'>分泌期</span>:プロゲステロン依存、腺の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tortuosity'>蛇行</span>・分泌活性化"]
  C --> A

💡 に腺が強くし「」に見えるのは、着床に備えて腺からの分泌物(グリコーゲンなど)を増やすために腺の表面積を稼ぐ適応——の直線的でまっすぐな腺との対比で、周期のどの時期の内膜かを組織像から判定できる。

💡 「基底層=変化しない土台」は組織像の見え方としては正しいが、再生の担い手が基底層だけに閉じているわけではない。 内膜の幹/はマーカーで同定でき、その局在は血管周囲(の位置)で、基底層だけでなくにも分布する3。周期ごとの再生を「基底層に残った種から生え直す」と覚えるのはよいが、実体は血管周囲の前駆細胞集団である。

まとめ

  • は(輸送)と(栄養供給)からなり、受精は主にで起こる。
  • 子宮内膜は(支配、周期的に剥離)と基底層(支配、再生の土台)に分かれる。
  • は・(エストロゲン依存)・(プロゲステロン依存)を繰り返す。
  • には腺がしてになり、着床に備えた分泌活性化を反映する。
  • 月経は攣縮による虚血・壊死だけでなく、を引き金とする炎症と創傷治癒の過程であり、一過性の低酸素とHIF-1αは修復にも必要である。

出典

  1. 1.Physiology of the Endometrium and Regulation of Menstruation(Physiological Reviews・2020)月経の引き金はプロゲステロンの離脱であり、月経内膜は毎月急速な修復を要する生理的な「創傷面」として、炎症と組織修復のヒト生体モデルになる閲覧 2026-08-24
  2. 2.Hypoxia and hypoxia inducible factor-1α are required for normal endometrial repair during menstruation(Nature Communications・2018)月経時の一過性の生理的低酸素がHIF-1αを安定化させて剥離面の修復を駆動する。過多月経の女性では月経時の内膜HIF-1αが低く出血が遷延し、マウスで高酸素飼育やHIF-1α抑制は修復を遅らせ、HIF-1α安定化薬は修復を回復させる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Stem Cells in Endometrial Physiology(Seminars in Reproductive Medicine・2015)ヒト子宮内膜の間葉系幹/間質細胞のマーカーが同定され、機能層と基底層の両方で血管周囲に局在することが示された閲覧 2026-08-24