腫瘍学

腫瘍学 · II-37

軟部腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断

Epidemiology, etiology, histology, staging, symptoms and diagnosis of soft tissue tumours

前提:病態
遺伝性腫瘍症候群ヘルペスウイルス:HHV-6・7・8脂肪組織腫瘍骨格筋・平滑筋腫瘍
疾患
悪性末梢神経鞘腫瘍滑膜肉腫軟部肉腫平滑筋肉腫腱鞘巨細胞腫

🧠 全体像:軟部肉腫は多様な悪性腫瘍の総称で、無痛性腫瘤として発見されることが多い。疑った時点でと計画生検を行い、生検路を含むを見越して専門センターへ紹介する。

疫学と危険因子

STSは成人悪性腫瘍の約1%とまれで、四肢・体幹、後腹膜、頭頸部など全身に生じる。多くは原因不明だが、既往放射線、慢性、NF1、、関連desmoid、HHV-8関連などがある。

組織分類

分化系統 代表例
脂肪性
線維芽細胞/性 myxofibrosarcoma
平滑筋/横紋筋 、
血管性
神経鞘
不明分化 、

desmoid-type fibromatosisは系に置かれるが、転移しないの病変であり、軟部肉腫と同列には扱わない。

後腹膜ではとが重要である。現行分類は形態だけでなく免疫染色と分子遺伝学を統合して組織型を決める。免疫染色のは感度は高いが特異度が限られるため、形態と併せて解釈しなければならない。分子検査は特定の亜型の同定、な臨床像での診断の裏づけ、真の肉腫と良性の類似病変の鑑別に用いる。1

悪性を疑う所見

  • 増大を続ける、5 cm超、より深い、硬い、疼痛を伴う、再発性。
  • 後腹膜腫瘍は巨大化するまで無症状で、腹痛、膨満、、増大を来す。
  • 5 cm以下・表在性でも肉腫は否定できない。

診断

flowchart TD
  A["疑わしい<span class='jp-term jp-term-diagram' title='soft-tissue mass'>軟部腫瘤</span>"] --> B["局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>:大きさ・筋膜・神経血管・区画"]
  B --> C["胸部CT:肺転移評価"]
  C --> D["専門チームで生検路を設計"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='image-guided'>画像ガイド下</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='core needle biopsy'>コア針生検</span>"]
  E --> F["組織型+FNCLCC grade+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecular diagnostics'>分子診断</span>"]
  F --> G["部位別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor, node, metastasis'>TNM</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resectability'>切除可能性</span>を評価"]

は四肢・体幹の局所評価の第一選択で、大きさ、筋膜・・神経血管への進展を示す。腫瘍周囲の造影増強、壊死に相当する領域、で50%以上を占める信号不均一の3所見は高grade(grade III)と関連し、2つ以上そろうと無転移生存・が悪い。2 ただしこれらは良悪性を判定する固定基準ではなく、あくまでgradeを示唆する所見で、研究間のも大きい。3 は後腹膜、石灰化・骨・脂肪成分の評価に有用である。は一部でgrade、治療反応、を補助するが、成人STSの98%が必ず陽性という固定値は用いない。

病期とgrade

病期は原発部位ごとにT基準が異なり、腫瘍径、N、M、組織学的gradeを統合する。「5 cmと深浅だけ」のは旧版であり、現行部位別分類を参照する。FNCLCC gradeは腫瘍分化、指数、壊死の範囲から算出し、転移リスクの評価に最も適する。4

⚠️ FNCLCCには限界がある。すべての組織型に適用できるわけではなく、再現性も完全ではない。とくにはgrade評価に最適な検体ではなく、腫瘍内ののためgradeを過小評価しうる。42 組織型を組み込んだなど、gradeを補う予後評価も用いられる。1

⚠️ やは治療範囲を広げる。疑わしい深部・大型腫瘤は切除前に専門紹介する。

まとめ

  • 増大、深在、5 cm超の腫瘤は軟部肉腫を疑う。
  • 後に、最終切除を見越したを行う。
  • 組織型、grade、部位別がを決める。

出典

  1. 1.The pathology of soft tissue sarcomas(2019)軟部肉腫の発生率が約5/100,000/年で、現行WHO分類が形態・免疫染色・分子遺伝学を統合していること、免疫染色マーカーは感度は高いが特異度が限られ形態と併せた解釈が必須であること、組織型だけでは経過を予測できずFNCLCC gradeが広く用いられるが限界があり組織型を組み込んだノモグラムが開発されていることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Soft-Tissue Sarcomas: Assessment of MRI Features Correlating with Histologic Grade and Patient Outcome(2019)腫瘍周囲の造影増強・壊死・T2強調で50%以上の信号不均一の3所見がgrade III軟部肉腫と関連し、3つのうち2つ以上を満たすことが無転移生存・全生存の独立予測因子だったこと、生検では腫瘍内不均一性のためgradeが過小評価されうることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Inferring malignancy grade of soft tissue sarcomas from magnetic resonance imaging features: A systematic review(2024)腫瘍径・壊死・腫瘍周囲浮腫・腫瘍周囲および腫瘍内の造影増強・多小葉状の形態がgradeを示唆しうる一方、研究間の異質性が大きく合意形成にはさらなる研究が必要であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Grading of soft tissue sarcomas: from histological to molecular assessment(2014)FNCLCC gradeが腫瘍分化・核分裂指数・壊死の範囲から算出され転移リスク評価に最も適する一方、すべての組織型に適用できるわけではなく、再現性も完全でなく、コア針生検はgrade評価に最適な検体ではないことを確認した。閲覧 2026-08-13