腫瘍学

腫瘍学 · II-36

骨腫瘍の放射線・外科・薬物療法

Radiotherapy, surgical and pharmacological treatment of bone tumours

前提:病態
骨腫瘍・腫瘍様病変抗がん薬I(代謝拮抗薬)抗がん薬II(DNA標的細胞傷害性薬)抗がん薬III(トポイソメラーゼ阻害薬・紡錘体阻害薬)
疾患
骨巨細胞腫骨肉腫・ユーイング肉腫脊索腫軟骨肉腫

🧠 全体像:は組織型ごとにと化学療法感受性が異なる。は手術+、は化学療法+手術/放射線、は手術が中心である。⚠️ ただしを「常に広範切除」と覚えない——四肢骨の(grade 1相当)はまず経過観察でよく、広範切除縁が要求されるのはgrade 2以上と骨盤・の病変である1。

組織型別治療

腫瘍 局所治療 全身治療
広範切除・を目標。RT抵抗性だが・・緩和で検討 標準はメトトレキサート++シスプラチン(MAP)の術前・2。英国ガイドラインはMAPを40歳未満の一次治療とし、40歳を超える例やメトトレキサート例には+シスプラチンを挙げる1。肉眼的完全切除後にはでミファムルチド(マクロファージ活性化薬)をへ追加する選択肢もある
後に手術またはRT、時に併用。局所制御と機能温存を比較。にも局所治療を行う のから始め、局所治療後に追加化学療法。VDC/IE(・・と・の交代投与)を14日間隔で投与する方式が第一選択1
grade と部位で術式が変わる。 四肢骨のはまず経過観察、進行・有症状なら完全。grade 2以上・明細胞型と、骨盤・の病変はすべて広範切除縁で摘出1。頭蓋底など切除困難な部位では高線量精密RT(・)を組み合わせる 通常型は化学療法・RTへの感受性が低い。亜型で異なる(間葉性では補助・を考慮、・転移例にはの予備的なデータがある)1
最大安全切除に高線量精密RTを組み合わせる。手術単独では残存しやすい 標準的の役割は限定的
+局所補助または切除 選択例で。downstagingには有効だが局所再発は減らさない

の治療順序は「の → 手術・根治的照射またはその併用 → 追加化学療法とへの局所治療」である。3 50歳未満の新規診断・限局性()を組み入れたでは、VDC/を21日間隔ではなく14日間隔で投与する方式がを改善し(5年で73%対65%、p=0.048)、毒性は同等だった。4 英国ガイドラインはこれを受けて、2週間隔のVDC/導入を「医学的に耐えうるすべての患者」の第一選択と位置づける。⚠️ ただし全例に押し通す治療ではない——高齢の患者や投与にのない患者では、3週間隔での投与や減量が考慮される。1

⚠️ のは、と画像所見をよく改善し、より保存的な手術へのdownstagingに役立つ。しかしは非使用例と変わらず、最適な投与レジメンにも合意がない。「再発を減らす薬」と理解しない。5

治療の流れ

flowchart TD
  A["専門病理で組織型・gradeを確定"] --> B["局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>+胸部CT等で病期評価"]
  B --> C{"化学療法感受性腫瘍?"}
  C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteosarcoma'>骨肉腫</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ewing sarcoma'>Ewing肉腫</span>"| D["術前<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic chemotherapy'>全身化学療法</span>"]
  C -->|"通常型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chondrosarcoma'>軟骨肉腫</span>など"| E["手術中心<br>(四肢の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical cartilaginous tumor'>異型軟骨腫瘍</span>はまず経過観察)"]
  D --> F["反応と解剖に応じ広範切除"]
  F --> G["病理反応・断端に基づき術後治療"]
  E --> G

外科治療

  • 良性病変は観察、、・を病変ごとに選ぶ。
  • 悪性は腫瘍・・生検路を含めた広範切除を行い、可能なら再建して機能を保つ。
  • 主要神経血管浸潤、感染、機能的再建不能などでは切断が必要な場合がある。切断を「疼痛緩和目的に通常行う」とはしない。
  • ⚠️ が疑われる(を含む)では、は禁忌である。 画像と生検で診断が確定するまでは、外固定または安静固定とにとどめる。では骨折がの間に癒合することが多く、その後に腫瘍と巻き込まれた軟部組織を切除できる。1
  • 四肢骨の(grade 1相当の低悪性度軟骨性腫瘍)は、まず経過観察でよい。進行または有症状であれば、高速バー・などの補助手段を併用した完全で高い局所制御が得られる。ただし局所再発の後にgradeが上がることがあるため、切除が好まれる場合もある。1

放射線療法

はが高く、手術で重大な機能喪失が予測される場合や断端不十分時に重要である。⚠️ 以外(・を含む)では放射線の役割はずっと小さく、根治的照射は手術が不可能な場合に限られる。 そのほかは局所再発リスクが特に高いと判断される選択例へのと、緩和目的である。1 ・では通常光子線への感受性が低いが、・を含む高精度高線量照射が頭蓋底・脊椎病変などで選択肢となる。頭蓋底の・では治療が良好な制御と許容できる毒性を示す。ただし根拠はが中心で、利益の大きさ・適する患者・はなお研究段階にあり、実施施設も限られる。6 成長期ではや正常組織への線量を抑える。

有害事象とフォロー

化学療法による骨髄抑制、腎・心・、妊孕性障害、を監視する。局所再発、肺転移、・再建骨の合併症、、機能を長期追跡し、リハビリテーションを早期から行う。

まとめ

  • は手術+化学療法、は化学療法+局所治療が基本である。英国ガイドラインはのMAPを40歳未満の一次治療とし、40歳を超える例やメトトレキサート例には+シスプラチンを挙げる。
  • は手術が中心だが、術式はgradeと部位で変わる。四肢骨のはまず経過観察(進行・有症状なら)でよく、grade 2以上・明細胞型と骨盤・の病変は広範切除縁を要する。亜型(間葉性・型)で全身治療の位置づけが変わるので必ず確認する。
  • は生命予後を損なわず機能的切除が可能かで判断する。
  • が疑われるにを行わない。診断確定までは外固定・にとどめる。

出典

  1. 1.UK guidelines for the management of bone sarcomas(British Journal of Cancer(British Sarcoma Group)・2025)四肢の異型軟骨腫瘍はまず経過観察でよく進行例・有症状例では補助手段(高速バー・凍結療法など)を併用した完全掻爬で高い局所制御が得られるが局所再発後にgradeが上がりうるため切除が好まれる場合もあること、低悪性度の末梢性軟骨肉腫は正常組織で被覆したまま完全に摘出すること、より高悪性度の軟骨肉腫(明細胞型を含む)と骨盤・体軸骨格の軟骨肉腫はすべて広範切除縁で摘出すべきこと、高悪性度骨肉腫の一次治療が40歳未満ではMAP(高用量メトトレキサート・ドキソルビシン・シスプラチン)で40歳超またはメトトレキサート不耐容例ではドキソルビシン+シスプラチンであること、Ewing肉腫で最もよく用いられる薬剤がビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロホスファミド・イホスファミド・エトポシドの5剤であり2週間隔に圧縮したVDC/IE導入が医学的に耐えうる全患者の第一選択で高齢者・忍容できない例では3週間隔または減量が考慮されること、原発性悪性骨腫瘍が疑われる病的骨折では画像・生検で診断が確定するまで外固定・除痛にとどめ内固定は禁忌であることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Neoadjuvant Chemotherapy for Adults with Osteogenic Sarcoma(2024)骨肉腫の標準治療がメトトレキサート・ドキソルビシン・シスプラチン(MAP)の術前/術後化学療法と外科切除であり、限局例の5年生存が65%、転移例では10〜20%に落ちることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Ewing sarcoma(2021)Ewing肉腫の標準治療が多剤併用の導入化学療法→手術・根治的照射またはその併用による局所治療→追加化学療法と転移巣への局所治療の統合であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Randomized controlled trial of interval-compressed chemotherapy for the treatment of localized Ewing sarcoma: a report from the Children's Oncology Group(2012)限局性Ewing肉腫でVDC/IEを14日間隔で行う圧縮投与が21日間隔より無イベント生存を改善し(5年で73%対65%)、毒性は同等であったことを確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.Denosumab regimens in the treatment of giant cell tumor of bone: A systematic review with meta-analysis(2025)骨巨細胞腫へのデノスマブが高い臨床的有効性と画像上の反応をもたらし、より保存的な手術へのdownstagingに寄与する一方、局所再発率は非使用例と変わらず、最適レジメンについても合意がないことを確認した。閲覧 2026-08-13
  6. 6.Carbon Ion Radiotherapy: An Evidence-Based Review and Summary Recommendations of Clinical Outcomes for Skull-Base Chordomas and Chondrosarcomas(2023)頭蓋底の脊索腫・軟骨肉腫が放射線抵抗性で手術と放射線治療により扱われること、炭素線治療が良好な病勢制御と許容できる毒性を示す一方、根拠は後ろ向き研究が中心で利益の大きさ・患者選択・費用対効果はなお研究段階であることを確認した。閲覧 2026-08-13