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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

滑膜肉腫

Synovial sarcoma

別名
synovioma
臓器系
腫瘍運動器
科目
PathologyHistopathologyOncology
トピック
病理学 C/99:由来不明の軟部腫瘍組織病理 H2-110B:滑膜肉腫(皮下組織、二相型)組織病理 H2-124B:滑膜肉腫(皮下発生:予後因子編)腫瘍学 II-37:軟部腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断
上位概念
軟部肉腫
鑑別疾患
悪性中皮腫横紋筋肉腫
治療薬
ドキソルビシンイホスファミドパゾパニブ
症状
疼痛腫脹
スコア
TNM分類
組織像
滑膜肉腫(皮下組織、二相型)滑膜肉腫(皮下発生:予後因子編)

🧠 全体像は、名称に反して滑膜(関節を裏打ちする組織)に由来しない、由来不明の悪性である。若年成人の四肢(とくに大関節近傍)に好発し、診断は形態だけでなくt(X;18)によるSS18::SSX融合遺伝子の証明に依存する——この融合遺伝子がSWI/SNFクロマチン再構成複合体を破綻させることが発癌の中心的な機序であり、融合パートナーがSSX1SSX2かで予後まで変わる。治療の幹は他の軟部肉腫と同じく広範切除+放射線療法で、化学療法感受性はやや高い(±25〜60%)ことも特徴である。

病態:由来不明の腫瘍とSS18::SSX融合遺伝子

は、かつて由来と考えられされたが、関節外の軟部組織(四肢の深部軟部組織が最多)にも生じることから、現在は由来組織不明のとして扱われる。診断を決定づけるのは組織形態ではなく、染色体18番のSS18遺伝子とX染色体上のSSX1・SSX2(まれにSSX4)遺伝子の転座によって生じるSS18::SSX融合遺伝子で、90%を超える症例で陽性となる1

flowchart TD
    A["t(X;18)(p11;q11)転座"] --> B["SS18とSSX1/SSX2/SSX4が融合"]
    B --> C["SS18-SSX<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fusion protein'>融合蛋白</span>が形成される"]
    C --> D["SWI/SNF(BAF)クロマチン再構成複合体の<br>正常な組成を破綻させる"]
    D --> E["がん抑制的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='target gene'>標的遺伝子</span>の発現が異常に抑制される"]
    E --> F["未分化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesenchymal cell'>間葉系細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transformation'>腫瘍化</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Synovial Sarcoma'>滑膜肉腫</span>"]

💡 融合パートナーの違いは臨床的な意味を持つ。SS18::SSX2)に多く、SS18::SSX1に多い傾向があり、5年率もSSX2陽性群63.3%に対しSSX1陽性群35.1%と有意差があり、でもSSX1融合型は独立した予後不良因子である2

病理

組織亜型 特徴
密に配列するのみからなる。最も頻度が高い
成分と、腺様配列を示す上皮性成分が混在する
低分化型(円形細胞型) 円形細胞が主体で、他のとの鑑別を要し予後に関わる

免疫染色ではサイト・EMAなど上皮性マーカーがに陽性を示すことが多く(上皮由来ではないのに上皮マーカーが陽性という一見矛盾した所見が特徴)、TLE1陽性も診断の補助になる。最終確定はSS18::SSX融合の証明(FISHまたはRT-PCR)による1

臨床像

若年成人(多くは30歳未満)の四肢、とくに大関節近傍(膝・大腿部)に好発する徐々に増大する腫脹疼痛を伴う深部として発見される。関節近傍に生じるため関節疾患と誤認されやすいが、関節内に原発することはまれで、あくまで関節周囲の軟部組織から生じる。肺・骨への転移が主体で、などと同様、他の軟部肉腫より若年層に発生ピークを持つ点が学習上の手がかりになる。

診断

他の軟部肉腫と同様、局所評価にはMRI、全身病期評価には胸部CTを用い、断とSS18::SSX融合の確認を行う。FNCLCC分類(数・壊死の3要素を点数化しグレード1〜3へ分類)で悪性度を評価する点も他の軟部肉腫と共通する1

flowchart TD
    A["若年成人の四肢・大関節近傍の<br>増大する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='soft-tissue mass'>軟部腫瘤</span>"] --> B["局所MRI+胸部CTで病期評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='image-guided'>画像ガイド下</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='core needle biopsy'>コア針生検</span>"]
    C --> D["組織形態+免疫染色(サイト<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratin'>ケラチン</span>・TLE1)"]
    D --> E["SS18::SSX融合をFISH・RT-PCRで確認"]
    E --> F["FNCLCC分類で悪性度を確定"]
    F --> G["肉腫専門チームで手術計画を立てる"]

⚠️ では腺癌・と、円形細胞型ではEwing肉腫・などのと形態が紛らわしいため、免疫染色と融合遺伝子検索で確定させずにを決めない。

治療

治療原則は軟部肉腫に準じ、広範切除+放射線療法が限局例の中心である。では1〜2cm以上のmarginを狙い、四肢温存を優先しつつ機能を損なわない範囲で計画する1

・転移例では、他の軟部肉腫と同様にを基盤とし、単独または併用で治療する。は軟部肉腫の中でも比較的化学療法感受性が高い組織型とされ、±は25〜60%と報告される1。承認された分子標的薬としては非脂肪性軟部肉腫に用いる中央値4.6か月 対 1.6か月)が既治療例の選択肢になる1

flowchart TD
    A["組織型・SS18::SSX融合・FNCLCC悪性度を確定"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resectable'>切除可能</span>か"}
    B -->|"はい"| C["広範切除(1〜2cm以上のmargin)"]
    C --> D{"局所再発リスクが高いか"}
    D -->|"はい"| E["放射線療法を追加"]
    D -->|"いいえ"| F["経過観察"]
    B -->|"いいえ・転移あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='doxorubicin'>ドキソルビシン</span>±<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ifosfamide'>イホスファミド</span>"]
    G --> H["効果不十分なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pazopanib'>パゾパニブ</span>など<br>組織型別の選択肢を検討"]

まとめ

  • は名称に反し滑膜由来ではない、由来不明の悪性で、若年成人の四肢・大関節近傍に好発する。
  • 診断の要はSS18::SSX融合遺伝子(90%超で陽性)で、融合パートナーがSSX1SSX2かにより予後(5年35.1% 対 63.3%)が異なる。
  • 組織亜型は、最多)・・低分化型(円形細胞)に分かれ、、円形細胞型は他のとの鑑別を要する。
  • 治療は他の軟部肉腫と同様に広範切除+放射線療法が中心で、化学療法感受性は比較的高く±は25〜60%に達する。
  • 承認された分子標的薬は既治療・例の選択肢になる。

出典

  1. 1.Synovial Cell Sarcoma(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Mangla A, Gasalberti DP)・2023)米国での年間新規診断数が800〜1000例であり若年成人(30歳未満)に好発すること、90%超の症例でSS18とSSX1・SSX2・まれにSSX4との融合遺伝子を認めこれが病理診断上pathognomonicであること、単相型(紡錘形細胞型が最多)・二相型・低分化型(円形細胞型)という組織亜型、FNCLCC分類(壊死・分化度・核分裂数を点数化しグレード1〜3へ分類)による評価、標準的な外科治療が1〜2cm以上のmarginを狙ったR0切除であること、切除不能・転移例の一次治療がアントラサイクリン系±イホスファミドで奏効率25〜60%であること、パゾパニブが軟部肉腫に対して唯一FDA承認された分子標的薬であり無増悪生存期間中央値がプラセボの1か月に対し4.1か月であったことを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.The clinical implication of SS18-SSX fusion gene in synovial sarcoma(British Journal of Cancer(Ren T, Lu Q, Guo W, et al.)・2013)SS18-SSX1陽性例とSS18-SSX2陽性例を比較した後方視的研究で、5年全生存率がSSX2陽性群63.3%・SSX1陽性群35.1%(P=0.001)であったこと、多変量解析でSSX1融合型が全生存に対する独立した予後不良因子(相対危険度2.343、P=0.002)であったこと、SSX2融合は単相型に多く(75.6%)SSX1融合は二相型に多い(59.6%)傾向があったことを確認した閲覧 2026-08-11