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Drug Atlas · B25 Other / その他 · 必修

デキサラゾキサン

dexrazoxane

分類
Other / その他
商品名(EU)
CardioxaneSavene
科目
Oncology
トピック
I-23: Side effects of chemotherapy
承認適応
薬剤の血管外漏出
副作用
悪心嘔吐発熱口内炎

🧠 全体像同じ1つの分子が、まったく異なる2つの適応・商品名・用量プロトコルで承認されているという珍しい薬である。Zinecard/Cardioxane)は、が閾値を超えた継続患者へ予防的に繰り返し使う薬。Totect/Savene)は、漏出という急性事態に一度だけ使う薬。どちらも「鉄により産生を防ぐ」という同じ機序を、時間軸も用量も正反対に使う。と対をなし、DNA結合性=、非DNA結合性=という対応の片方を占める。

薬効群の中での位置づけ

適応 商品名 使うタイミング 用量の考え方
継続投与時) Zinecard(米国)/Cardioxane(EU) 慢性・反復——毎回の投与前に併用 との用量比10:1(例:500 mg/m²対50 mg/m²)1
Totect(米国)/Savene(EU) 急性・一回性——漏出後6時間以内に開始し3日間 漏出とはに固定用量(1000/1000/500 mg/m²)23
漏出薬剤群 罨法
DNA結合性等)
非DNA結合性等)

⚠️ 適応によって用量・投与スケジュールがまったく違う。 は「の用量に比例した少量を毎回」、は「漏出量によらない固定の大用量を3日間」——取り違えると過少投与・になりうる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dexrazoxane'>デキサラゾキサン</span>が細胞内で加水分解され<br>EDTA類似の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chelation'>キレート</span>構造が開環"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free iron'>遊離鉄</span>・弱結合鉄イオンを捕捉"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anthracycline'>アントラサイクリン</span>-鉄複合体による<br>ヒドロキシラジカル産生を阻害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte (cardiac myocyte)'>心筋細胞</span>の酸化的膜障害を軽減(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardioprotection'>心保護</span>)"]
    C --> E["漏出部組織の酸化的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織傷害</span>を軽減(解毒)"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase II'>トポイソメラーゼII</span>の触媒的阻害作用も併せ持つ"]
    F --> G["⚠️<span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary leukemia'>二次性白血病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelodysplastic syndrome'>骨髄異形成症候群</span>のリスクに関与しうる"]

💡 「鉄をつかまえて産生を止める」という一つのが、にもの解毒にも使われる。 は鉄と複合体を形成し、酸化的DNA損傷・膜障害を引き起こすヒドロキシラジカルを産生する。は開環後にこの鉄を捕捉して反応を止める——が心筋か漏出部の皮下組織かが違うだけで、化学的な仕組みは共通している。

薬物動態

項目 値・特徴
半減期 比較的短い(約2〜3時間)
排泄 主に——40 mL/min未満で両適応とも50%減量12

適応

領域 使いどころ
腫瘍内科( 投与量300 mg/m²以上に達し、なおを継続する必要がある転移性乳癌患者で、心筋症の発症・重症化を減らす目的1
腫瘍内科・救急( (DNA結合性)のに対する軽減23

の適応は転移性乳癌でを継続する場合に限定される(腫瘍縮小率を下げうるため、開始と同時期からの投与は推奨されない)1

用法・用量

に対し10:1の用量比(例:50 mg/m²に対し500 mg/m²)で、投与の15分前に静注する1

(Totect/Savene):漏出後6時間以内に、漏出部から離れた大静脈(反対側上肢など)から投与を開始する。1000 mg/m²(1日目)/1000 mg/m²(2日目)/500 mg/m²(3日目)を1〜2時間かけてし、2・3日目は1日目とほぼ同時刻(±3時間)に投与する23

いずれの適応も腎機能低下(40 mL/min未満)で50%減量する12。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • の適応では非の化学療法レジメンと併用しないと組み合わせる場面のための薬であることが前提)1
  • ⚠️ 骨髄抑制の 化学療法の骨髄抑制をさらに強めるため、投与前後のを行う1
  • ⚠️ 小児での(AML・MDS)の報告。 化学療法と併用した小児患者での報告があり、長期的な・リスク評価を要する1
  • として使う場合、漏出部位そのものへは投与しない(離れた静脈から投与する)

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位疼痛(比で高頻度)、脱毛、悪心嘔吐感、発熱、感染、下痢1
重篤・まれ 骨髄抑制の増強、(小児での報告)1

まとめ

  • (Zinecard/Cardioxane)と(Totect/Savene)という2つの適応を持つ同一分子の薬で、用法は「用量比10:1を毎回」対「漏出後6時間以内に固定用量を3日間」と正反対である。
  • 機序は鉄による-鉄複合体由来の産生阻害で、軽減の両方を説明する。阻害作用も併せ持つ。
  • では(非DNA結合性用、)と対をなすDNA結合性専用のという組み合わせを覚える。
  • 骨髄抑制のと、小児でののリスクに注意する。

出典

  1. 1.DEXRAZOXANE for injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2019)心保護目的(Zinecard)の適応が「累積ドキソルビシン投与量300 mg/m²以上に達し、ドキソルビシンを継続する転移性乳癌患者」に限定されること、用量比がドキソルビシンに対し10:1(例:ドキソルビシン50 mg/m²に対しデキサラゾキサン500 mg/m²)でドキソルビシン投与15分前に静注すること、クレアチニンクリアランス40 mL/min未満で50%減量すること、非アントラサイクリン系レジメンとの併用は推奨されないこと、二次性白血病・骨髄異形成症候群の報告、骨髄抑制の相加作用を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Totect (dexrazoxane for injection) — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2020)アントラサイクリン系血管外漏出に対するデキサラゾキサンの用法(漏出後6時間以内に反対側上肢など漏出部から離れた大静脈から投与開始し、1000/1000/500 mg/m²を3日間投与、クレアチニンクリアランス40 mL/min未満で50%減量)を確認した閲覧 2026-08-02
  3. 3.Savene, INN-dexrazoxane — European public assessment report (EPAR)(European Medicines Agency・2006)EUでのSavene(デキサラゾキサン)の適応がアントラサイクリン系血管外漏出の成人治療に限定されること、初回投与は漏出後可能な限り早く6時間以内に、以後2・3日目に同時刻(±3時間)で1〜2時間かけて投与すること、希少疾病用医薬品指定を受けていることを確認した閲覧 2026-08-10