Disease Atlas · 循環器 · 疾患
がん治療関連心機能障害
Cancer therapy-related cardiac dysfunction
- 別名
- 癌治療関連心機能障害CTRCD
- 臓器系
- 循環器腫瘍
- 科目
- Translational Medicine and PathophysiologyOncology and Reconstructive Oncoplastic Surgery
- トピック
- 病態生理学 2-30:腫瘍による二次的障害(1):癌患者の他臓器障害腫瘍学 I-23:化学療法の副作用腫瘍学 I-26:分子標的治療の副作用
- 鑑別疾患
- 拡張型心筋症心筋炎
- 続発疾患
- 慢性心不全
- 治療薬
- デクスラゾキサン
- 原因薬剤
- ドキソルビシンエピルビシンダウノルビシントラスツズマブスニチニブ
- 症状
- 労作時呼吸困難末梢浮腫起座呼吸
- 検査値
- 左室駆出率全体長軸方向ストレイン心筋トロポニンナトリウム利尿ペプチド
- 適応薬
- デクスラゾキサン
🧠 全体像:がん治療関連心機能障害 cancer therapy-related cardiac dysfunction がん治療関連心機能障害(cancer therapy-related cardiac dysfunction) cancer therapy-related cardiac dysfunction(がん治療関連心機能障害) (CTRCD)は、定義そのものが主題という珍しい病態である。同じ患者でも、どの定義を当てるかで「心毒性あり」にも「なし」にもなる。2022年のESCESC(European Society of Cardiology)心腫瘍学ガイドラインは、①症候性か無症候性かを分け、②無症候性をさらに軽度・中等度・重度に段階分けするという枠組みを与えた1。この枠組みが優れているのは、左室駆出率left ventricular ejection fraction (LVEF)左室駆出率(left ventricular ejection fraction (LVEF))left ventricular ejection fraction (LVEF)(左室駆出率)(LVEFLVEF, left ventricular ejection fraction)が落ちる前の段階を「軽度」として拾える点にある——全体長軸方向ストレインglobal longitudinal strain全体長軸方向ストレイン(global longitudinal strain)global longitudinal strain(全体長軸方向ストレイン)(GLS)の相対低下15%超と心筋トロポニンcardiac troponin心筋トロポニン(cardiac troponin)cardiac troponin(心筋トロポニン)・ナトリウム利尿ペプチドnatriuretic peptideナトリウム利尿ペプチド(natriuretic peptide)natriuretic peptide(ナトリウム利尿ペプチド)の上昇が、そのための入口になる。⚠️ 早期に拾う意味は薬剤で違う——トラスツズマブtrastuzumabトラスツズマブ(trastuzumab)trastuzumab(トラスツズマブ)のように休薬 drug holiday (treatment interruption) 休薬(drug holiday (treatment interruption)) drug holiday (treatment interruption)(休薬) で回復しうる型では休薬 drug holiday (treatment interruption) 休薬(drug holiday (treatment interruption)) drug holiday (treatment interruption)(休薬) の判断に直結するが、アントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) のように蓄積して不可逆に向かう型では「もう戻せない量に達していないか」を測ることに意味がある。
定義が変われば患者集団が変わる
| 版 | 定義 |
|---|---|
| CREC(トラスツズマブtrastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab)trastuzumab(トラスツズマブ) 試験の心臓評価委員会) | 心不全症状を伴うLVEFの5%以上の低下で55%未満、または無症候性でLVEFが10%以上低下して55%未満 |
| ASE/EACVI 専門家expert 専門家(expert)expert(専門家) コンセンサス(2014年) | LVEFが10ポイント超低下し、最終値が53%未満 |
| ESC 心腫瘍学ガイドライン(2022年) | 症候性/無症候性を分け、無症候性を軽度・中等度・重度に段階分け(下表) |
CRECとASE/EACVIの定義は、本ノートが引く総説が紹介しているもので、いずれも「LVEFが一定幅落ちて一定の下限を割る」という一段階の判定である2。⚠️ この枠組みでは、LVEFが落ちる前の亜臨床的 subclinical 亜臨床的(subclinical) subclinical(亜臨床的) な変化が定義上まったく拾えない。 ESC 2022がGLSと心筋バイオマーカー cardiac biomarkers 心筋バイオマーカー(cardiac biomarkers) cardiac biomarkers(心筋バイオマーカー) を取り込んだのは、この穴を埋めるためである。
⭐ 論文や報告書の「心毒性◯%」を読むときは、まずどの定義を使ったかを確認する。 分母ではなく定義が違えば発生率 incidence 発生率(incidence) incidence(発生率) は簡単に数倍動く。
ESC 2022 の重症度分類
無症候性CTRCD
| 重症度 | 定義 |
|---|---|
| 重度 | LVEFが新たに40%未満へ低下 |
| 中等度 | LVEFが新たに10ポイント以上低下して40〜49%になる、または10ポイント未満の低下で40〜49%となり、かつGLSの相対低下15%超および/または心筋バイオマーカーcardiac biomarkers 心筋バイオマーカー(cardiac biomarkers)cardiac biomarkers(心筋バイオマーカー) の新たな上昇を伴う |
| 軽度 | LVEFが50%以上保たれたまま、GLSのベースラインからの相対低下15%超、および/または心筋トロポニンcardiac troponin心筋トロポニン(cardiac troponin)cardiac troponin(心筋トロポニン)・ナトリウム利尿ペプチドnatriuretic peptide ナトリウム利尿ペプチド(natriuretic peptide)natriuretic peptide(ナトリウム利尿ペプチド) の新規上昇 |
症候性CTRCDは心不全の症状・徴候を伴うもので、無症候性とは別立てに4段階へ分ける1。
| 症候性CTRCDの重症度 | 判定 |
|---|---|
| 最重症 | 強心薬inotropic agent強心薬(inotropic agent)inotropic agent(強心薬)・機械的循環補助mechanical circulatory support 機械的循環補助(mechanical circulatory support)mechanical circulatory support(機械的循環補助) を要する、または心移植 heart transplantation 心移植(heart transplantation) heart transplantation(心移植) を考慮する |
| 重症 | 心不全による入院 |
| 中等症 | 外来で利尿薬・心不全治療の強化を要する |
| 軽症 | 軽度の心不全症状があるが治療の強化を要しない |
⭐ 症候性の切り分けは「治療をどれだけ強めなければならなかったか」で決まる。 入院なら重症、外来での利尿薬の増量なら中等症——検査値 Labs 検査値(Labs) Labs(検査値) ではなく行った介入で段階が決まるのが無症候性側との違いである1。
💡 実際にどれくらい拾えるのか。 化学療法を受けずに放射線治療のみを行った乳癌患者72名を24か月追跡したBACCARAT研究では、無症候性CTRCDが44%(32名)に生じ、その内訳は軽度28%(20名)・中等度9%(7名)・重度7%(5名)だった3。大半が軽度であり、この定義が拾っているものの中心が「LVEFはまだ正常なGLSの変化」であることが分かる。
⚠️ GLSは「相対低下」で判定する。絶対値の変化ではない。 ベースライン値がなければ相対低下は計算できず、装置・解析ソフトのベンダーが変わると値が系統的にずれる。だからGLSによるサーベイランス surveillance サーベイランス(surveillance) surveillance(サーベイランス) は投与前のベースライン測定と同一ベンダーでの追跡が前提になる。測定法の詳細は全体長軸方向ストレインglobal longitudinal strain全体長軸方向ストレイン(global longitudinal strain)global longitudinal strain(全体長軸方向ストレイン)のノートに譲る。
1型と2型──アントラサイクリンとトラスツズマブの対比
flowchart TD
A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anthracycline'>アントラサイクリン</span>(1型)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive oxygen species (ROS)'>活性酸素種</span>の産生と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte death'>心筋細胞死</span>"]
B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cumulative dose'>累積投与量</span>に比例して障害が蓄積"]
C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>し不可逆に向かう"]
E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trastuzumab'>トラスツズマブ</span>(2型)"] --> F["心筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human epidermal growth factor receptor 2'>HER2</span>シグナルを遮断し<br>ストレス応答・修復能を障害"]
F --> G["心筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conformational change'>構造変化</span>を伴わない機能的障害"]
G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug holiday (treatment interruption)'>休薬</span>で回復しうる"]
D --> I["心不全"]
H --> I
| 項目 | アントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) (1型) | トラスツズマブtrastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab)trastuzumab(トラスツズマブ) (2型) |
|---|---|---|
| 用量との関係 | 累積投与量cumulative dose 累積投与量(cumulative dose)cumulative dose(累積投与量) 依存性 | 用量に依存しない |
| 可逆性 | 不可逆に向かう | 可逆的なことが多い |
| 心筋の構造変化 conformational change構造変化(conformational change) conformational change(構造変化) | 細胞死・瘢痕化scarring瘢痕化(scarring)scarring(瘢痕化) | 構造変化conformational change 構造変化(conformational change)conformational change(構造変化) を伴わない |
| 検出 | 累積cumulative 累積(cumulative)cumulative(累積) 量の管理と定期的な心機能評価 | LVEFの変化が実質的に唯一の検出手段 |
出典2。⚠️ この2分法には例外がある。 アントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) 心毒性でも、駆出率ejection fraction 駆出率(ejection fraction)ejection fraction(駆出率) 低下から3〜6か月以内に検出されれば可逆でありうる。逆にトラスツズマブ trastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab) trastuzumab(トラスツズマブ) でも、既存の心疾患がある患者では不可逆的な障害を起こしうる2。「1型=必ず不可逆、2型=必ず可逆」と覚えると臨床判断を誤る。
⭐ ドキソルビシンdoxorubicinドキソルビシン(doxorubicin)doxorubicin(ドキソルビシン)の累積投与量 cumulative dose 累積投与量(cumulative dose) cumulative dose(累積投与量) と心筋症の頻度は、3週ごと投与で300 mg/m²で1〜2%、400 mg/m²で3〜5%、450 mg/m²で5〜8%、500 mg/m²で6〜20%と量依存性に上がり、550 mg/m²超でさらに増える。累積cumulative 累積(cumulative)cumulative(累積) 300 mg/m²を超えたら心機能評価の頻度を増やす4。エピルビシンepirubicinエピルビシン(epirubicin)epirubicin(エピルビシン)・ダウノルビシンdaunorubicinダウノルビシン(daunorubicin)daunorubicin(ダウノルビシン)も同様に累積 cumulative 累積(cumulative) cumulative(累積) 量で管理する。薬剤ごとの詳細は各薬剤ノートに譲る。
⚠️ アントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) とトラスツズマブ trastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab) trastuzumab(トラスツズマブ) の同時併用 concurrent administration 同時併用(concurrent administration) concurrent administration(同時併用) は心毒性を増強するとされ、逐次投与が一般的である(この投与順序の推奨は本ノートの出典が直接述べたものではない)。 スニチニブsunitinibスニチニブ(sunitinib)sunitinib(スニチニブ)のようなVEGFVEGF(vascular endothelial growth factor)受容体を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬 tyrosine kinase inhibitor, TKI チロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor, TKI) tyrosine kinase inhibitor, TKI(チロシンキナーゼ阻害薬) も左室機能障害 left ventricular dysfunction 左室機能障害(left ventricular dysfunction) left ventricular dysfunction(左室機能障害) と高血圧を起こし、機序が別であることに注意する。
臨床像
⚠️ 多くは無症候のまま画像・バイオマーカーBiomarkers バイオマーカー(Biomarkers)Biomarkers(バイオマーカー) の変化として現れる——これが定期的なサーベイランス surveillance サーベイランス(surveillance) surveillance(サーベイランス) なしには捉えられない理由である。症候化すると労作時呼吸困難effort dyspnea労作時呼吸困難(effort dyspnea)effort dyspnea(労作時呼吸困難)・起座呼吸orthopnea起座呼吸(orthopnea)orthopnea(起座呼吸)・末梢浮腫peripheral edema末梢浮腫(peripheral edema)peripheral edema(末梢浮腫)といった心不全の症状が前面に出る。ここまで来ると原因薬の中止と心不全治療が必要になり、可逆性も落ちる。
サーベイランスと対応
抗HER2療法anti-HER2 therapy 抗HER2療法(anti-HER2 therapy)anti-HER2 therapy(抗HER2療法) では投与前のベースライン評価と、投与中3か月ごとの心エコー評価が基本になる1。⭐ ベースライン測定を省くと、LVEFの「新たな低下」もGLSの「相対低下」も定義上判定できなくなる——サーベイランス surveillance サーベイランス(surveillance) surveillance(サーベイランス) の成否はここで決まる。
- 無症候性軽度 — 治療を継続しつつ評価間隔を詰める。
- 無症候性中等度〜重度・症候性 — 原因薬の休止・中止を検討し、循環器へ紹介する。休止・再開の具体的な閾値はガイドラインと薬剤ごとに定められているため、原典と添付文書で確認する。
- 心不全としての治療 — 発症した心不全の薬物治療そのものは慢性心不全chronic heart failure慢性心不全(chronic heart failure)chronic heart failure(慢性心不全)のノートに譲る。
- 予防 — デクスラゾキサンdexrazoxaneデクスラゾキサン(dexrazoxane)dexrazoxane(デクスラゾキサン)は鉄をキレート chelation キレート(chelation) chelation(キレート) してフリーラジカル free radicals フリーラジカル(free radicals) free radicals(フリーラジカル) 産生を減らす心保護薬 cardioprotective agent 心保護薬(cardioprotective agent) cardioprotective agent(心保護薬) である。⚠️ 承認されている適応は3極で揃っておらず、「〜に限られる」と一括りにできない。 米国の添付文書は「累積cumulative 累積(cumulative)cumulative(累積) ドキソルビシン doxorubicin ドキソルビシン(doxorubicin) doxorubicin(ドキソルビシン) 投与量300 mg/m²に達し、腫瘍制御のためドキソルビシン doxorubicin ドキソルビシン(doxorubicin) doxorubicin(ドキソルビシン) を継続する転移性乳癌metastatic breast cancer 転移性乳癌(metastatic breast cancer)metastatic breast cancer(転移性乳癌) の女性」で心筋症の発症・重症度を減らす目的と定める5。EUEU(European Union)の製品概要 Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC 製品概要(Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC) Summary of Product Characteristics, SmPC/SPC(製品概要) はより広く「進行および/または転移乳癌の成人で、ドキソルビシンdoxorubicin ドキソルビシン(doxorubicin)doxorubicin(ドキソルビシン) 累積 cumulative 累積(cumulative) cumulative(累積) 300 mg/m²またはエピルビシン epirubicin エピルビシン(epirubicin) epirubicin(エピルビシン) 累積 cumulative 累積(cumulative) cumulative(累積) 540 mg/m²を既に受け、さらにアントラサイクリン anthracycline アントラサイクリン(anthracycline) anthracycline(アントラサイクリン) 治療を要する場合」としている6。日本ではそもそも心保護 cardioprotection 心保護(cardioprotection) cardioprotection(心保護) の適応が承認されておらず、国内で承認されているデクスラゾキサン dexrazoxane デクスラゾキサン(dexrazoxane) dexrazoxane(デクスラゾキサン) の効能は「アントラサイクリン系anthracyclines アントラサイクリン系(anthracyclines)anthracyclines(アントラサイクリン系) 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出 extravasation血管外漏出(extravasation) extravasation(血管外漏出)」だけである7。いずれの地域でもアントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) 開始と同時の投与は腫瘍縮小率 tumor shrinkage rate 腫瘍縮小率(tumor shrinkage rate) tumor shrinkage rate(腫瘍縮小率) を下げうるため避ける5。
鑑別
LVEF低下という所見自体は非特異的である。拡張型心筋症dilated cardiomyopathy, DCM拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy, DCM)dilated cardiomyopathy, DCM(拡張型心筋症)・心筋炎(免疫チェックポイント阻害薬immune checkpoint inhibitor (ICI) 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor (ICI))immune checkpoint inhibitor (ICI)(免疫チェックポイント阻害薬) による心筋炎を含む)・虚血性心疾患ischemic heart disease (IHD)虚血性心疾患(ischemic heart disease (IHD))ischemic heart disease (IHD)(虚血性心疾患)・頻脈誘発性心筋症tachycardia-induced cardiomyopathy 頻脈誘発性心筋症(tachycardia-induced cardiomyopathy)tachycardia-induced cardiomyopathy(頻脈誘発性心筋症) などが、抗癌薬anticancer drug 抗癌薬(anticancer drug)anticancer drug(抗癌薬) 投与中の患者にも同時に起こりうる。⚠️ 「抗癌薬anticancer drug 抗癌薬(anticancer drug)anticancer drug(抗癌薬) を使っているから心毒性」と決めつけない。 とくに急速に進行する心機能低下と心電図変化・トロポニンtroponin トロポニン(troponin)troponin(トロポニン) 著増の組み合わせでは、免疫チェックポイント阻害薬immune checkpoint inhibitor (ICI) 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor (ICI))immune checkpoint inhibitor (ICI)(免疫チェックポイント阻害薬) 関連心筋炎という別の緊急病態を先に否定する。
まとめ
- CTRCDは定義そのものが主題。ASE/EACVI 2014の「LVEFが10ポイント超低下して53%未満」やCRECの定義は一段階の判定で、LVEFが落ちる前の変化を拾えない。
- ESC 2022は症候性/無症候性を分け、無症候性を軽度(LVEF 50%以上のままGLS相対低下15%超および/または心筋バイオマーカー cardiac biomarkers 心筋バイオマーカー(cardiac biomarkers) cardiac biomarkers(心筋バイオマーカー) の新規上昇)・中等度(LVEF 40〜49%)・重度(LVEF 40%未満)に段階分けした。症候性は治療強化の必要度で最重症・重症・中等症・軽症に分ける。
- GLSは相対低下で判定するため、ベースライン測定と同一ベンダーでの追跡が前提になる。
- ⭐ アントラサイクリンanthracycline アントラサイクリン(anthracycline)anthracycline(アントラサイクリン) (1型:累積 cumulative 累積(cumulative) cumulative(累積) 量依存・不可逆寄り)とトラスツズマブ trastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab) trastuzumab(トラスツズマブ) (2型:用量非依存・可逆寄り)の対比が骨格。ただしアントラサイクリン anthracycline アントラサイクリン(anthracycline) anthracycline(アントラサイクリン) も3〜6か月以内に見つければ可逆でありうるし、トラスツズマブtrastuzumab トラスツズマブ(trastuzumab)trastuzumab(トラスツズマブ) も既存心疾患があれば不可逆になりうる。
- 抗HER2療法anti-HER2 therapy 抗HER2療法(anti-HER2 therapy)anti-HER2 therapy(抗HER2療法) ではベースラインと3か月ごとの心エコー評価。ベースラインが無ければ定義が成立しない。
出典
- 1.2022 ESC Guidelines on cardio-oncology(European Society of Cardiology・2022)がん治療関連心機能障害(CTRCD)を無症候性(軽度・中等度・重度)と症候性(最重症・重症・中等症・軽症)に段階分けする定義(LVEF <40%を重度、10ポイント以上低下して40〜49%になれば単独で中等度、10ポイント未満の低下で40〜49%ならGLS相対低下 >15%および/または心筋バイオマーカー上昇を伴う場合に中等度、LVEF 50%以上のままGLS相対低下15%超および/または心筋バイオマーカーの新規上昇を軽度、症候性は治療強化の必要度で4段階とする)と、抗HER2療法ではベースラインと投与中3か月ごとの心エコー評価を基本とするサーベイランス方針を示している閲覧 2026-09-02
- 2.Cardiotoxicity of breast cancer drug treatments(Translational Oncology・2025)本総説が引用する形で、米国心エコー図学会・欧州心血管画像学会(ASE/EACVI)の専門家コンセンサスがCTRCDを「LVEFが10ポイント超低下し最終値が53%未満」と定義し、トラスツズマブ関連心毒性のCardiac Review and Evaluation Committee(CREC)が「心不全症状を伴うLVEFの5%以上の低下で55%未満」または「無症候性でLVEFが10%以上低下して55%未満」と定義していたことを記述していること、1型心毒性が用量依存性・不可逆で心筋細胞死を伴いアントラサイクリンが代表であること、2型が非用量依存性・可逆性で心筋の構造変化を伴わずトラスツズマブが代表でありLVEFの変化が唯一の検出手段であること、ただしアントラサイクリン心毒性も駆出率低下から3〜6か月以内に検出されれば可逆でありうること、トラスツズマブも既存の心疾患がある患者では不可逆的な障害を起こしうるという例外があることを確認した閲覧 2026-09-02
- 3.Cancer therapy-related cardiac dysfunction after radiation therapy for breast cancer: results from the BACCARAT cohort study(Cardio-Oncology (BMC)・2024)本研究がESC心腫瘍学ガイドラインに基づき、症候性CTRCDを心不全の存在で定義し、無症候性CTRCDを「重度=LVEFが新たに40%未満へ低下」「中等度=LVEFが新たに10ポイント以上低下して40〜49%になる、またはLVEFが10ポイント未満の低下で40〜49%となりかつGLSのベースラインからの相対低下が15%超」「軽度=LVEFが50%以上でGLSのベースラインからの相対低下が15%超」と記述していることを確認した。乳癌放射線治療単独例72名の24か月追跡で44%(32名)がCTRCDを発症し、内訳は軽度28%(20名)・中等度9%(7名)・重度7%(5名)であった閲覧 2026-09-02
- 4.DOXORUBICIN HYDROCHLORIDE injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2024)3週ごと投与での心筋症発生率が累積投与量300 mg/m²で1〜2%、400 mg/m²で3〜5%、450 mg/m²で5〜8%、500 mg/m²で6〜20%と量依存性に上昇し、550 mg/m²を超えるとリスクがさらに増加すること、累積300 mg/m²を超えたら心機能評価の頻度を増やす記載を確認した閲覧 2026-09-02
- 5.DEXRAZOXANE for injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2025)米国の添付文書ではデクスラゾキサンの適応が「累積ドキソルビシン投与量300 mg/m²に達し、腫瘍制御のためドキソルビシンを継続する転移性乳癌の女性における心筋症の発症・重症度の軽減」であること、ドキソルビシン開始と同時の投与は避ける(腫瘍縮小率を下げうる)と記載されていることを確認した。この限定は米国の承認の書き方であり、EU・日本の承認内容とは一致しない。閲覧 2026-09-08
- 6.Ficha técnica CARDIOXANE 500 mg polvo para solución para perfusión(Agencia Española de Medicamentos y Productos Sanitarios (AEMPS/CIMA)・2017)EUの心保護製剤カルディオキサンの4.1が「進行および/または転移乳癌の成人で、ドキソルビシン換算300 mg/m²またはエピルビシン換算540 mg/m²の累積投与を既に受け、さらにアントラサイクリン治療を要する場合の、アントラサイクリンによる慢性蓄積性心毒性の予防」であることを確認した。米国の「転移性乳癌の女性でドキソルビシン継続」より対象が広く、エピルビシンでの閾値を独立に定めている。文書の10. FECHA DE LA REVISIÓN DEL TEXTO は22/08/2017閲覧 2026-09-08
- 7.サビーン点滴静注用500mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)日本で承認されているデクスラゾキサン製剤はサビーン点滴静注用500mgのみで、4. 効能又は効果が「アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出」だけであり、心保護(心筋症の発症抑制)の適応が承認されていないことを確認した。作成又は改訂年月は2026年5月改訂(第4版)閲覧 2026-09-08