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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

線維形成性小円形細胞腫

Desmoplastic small round cell tumor

別名
DSRCT
臓器系
腫瘍消化器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 1-02:小児の腹部腫瘤・腹部腫瘍小児科 3-05:悪性骨・軟部腫瘍
鑑別疾患
悪性リンパ腫横紋筋肉腫骨肉腫・ユーイング肉腫神経芽腫・Wilms腫瘍
関連疾患
癌性腹膜炎
治療薬
ビンクリスチンドキソルビシンシクロホスファミドイホスファミドエトポシド
症状
腹部膨満腹痛
スコア
腹膜癌指数

🧠 全体像は、若年男性の腹腔内に多発する結節として現れる稀少な肉腫で、診断を確定させるのは形態でも免疫染色単独でもなく**EWSR1-WT1融合遺伝子である。上皮・間葉・神経の3方向へ分化しうる(多方向分化)という一見矛盾した免疫染色パターンを示す点が、他の小円形細胞腫瘍との鑑別で狙われやすい。稀少疾患であるため無理に広げず、「若年男性・腹腔内多発・EWSR1-WT1」という核と、小円形細胞腫瘍の鑑別**に絞って押さえる。

疫学と臨床像

思春期〜若年成人の男性に好発し(男女比はおよそ4:1)、年齢調整は0.3例/百万人で20〜24歳をピーク(0.74例/百万人)とするきわめて稀な腫瘍である1。大半は腹膜原発で、腹腔内・に多発する結節として発見される。腹部膨満腹痛、腫瘤触知が主な初発症状で、診断時にはすでに腹腔内に広範囲進展していることが多い。

病理と診断

組織学的には、間質(デスモ・ストローマ)に埋まった小円形細胞の胞巣という特徴的な構築を示す。免疫染色ではサイト(上皮系)、)、)、WT1蛋白(神経系を含む多方向分化)を同時に発現する多方向分化のパターンを示す2

確定診断の決め手はEWSR1-WT1融合遺伝子である。 t(11;22)(p13;q12)転座により生じるこの融合は、免疫染色所見がな症例でも診断を確定できる、最もの高いとされる23

小円形細胞腫瘍の鑑別

⭐ 小児・若年者の小円形細胞腫瘍は形態だけでは区別できず、融合遺伝子・分化パターンの組み合わせで鑑別する。

疾患 好発部位 特徴的な分子・免疫所見
DSRCT 腹腔・(腹膜) EWSR1-WT1融合。上皮・間葉・神経の多方向分化
・骨盤・軟部組織 EWSR1::FLI1融合(FET–ETS融合)が最多。CD99陽性
頭頸部・泌尿生殖器・四肢など全身 ・MyoD1陽性。ではPAX3/7::FOXO1融合
副腎・傍脊椎 陽性、MYCN増幅の評価
リンパ節・縦隔・骨髄 TdT・CD34など未熟マーカー陽性

同じEWSR1遺伝子が関わっていても、融合パートナーの違い(WT1 vs FLI1)が疾患そのものを分ける点が試験・臨床いずれでも狙われやすい3

癌性腹膜炎との役割分担

DSRCTの腹膜内多発病変は画像上、上皮性悪性腫瘍によると類似して見えることがあるが、両者は原因となる腫瘍の組織型がまったく異なる(DSRCTはEWSR1-WT1融合陽性の肉腫、は上皮性癌の播種)ため、生検による断が必須である。病変量の評価にはと同じ腹膜癌指数(PCI)が用いられる。

治療と予後

標準治療は、→可能な限りの細胞(CRS、腹腔内温熱化学療法HIPECをすることがある)→術後の全腹部放射線療法を組み合わせる治療である。化学療法はVAC-IEレジメン(P6プロトコル)——の3剤と、の2剤を交代で投与する——が代表的に用いられる3

⚠️ 治療を行っても予後は不良である。 単施設コホートでは中央値22.0か月、一次治療での中央値16.0か月、1・2・3年はそれぞれ63.0%・44.2%・14.7%であった4。SEERデータベースを用いた集団規模の解析では、5年33.3%(18歳以下30.9%、18歳超34%で年齢による差はない)と報告されている1

まとめ

  • DSRCTは若年男性の腹腔内に多発する稀少な肉腫で、確定診断はEWSR1-WT1融合遺伝子による。
  • 免疫染色は上皮・間葉・神経の多方向分化という特徴的なパターンを示す。
  • 小円形細胞腫瘍の鑑別はEWSR1::FLI1)・PAX3/7::FOXO1)・と、融合遺伝子・免疫染色の組み合わせで行う。
  • とは組織型が異なる別疾患だが、病変量評価にはPCIを共用する。
  • 治療はVAC-IE(P6プロトコル)による化学療法・CRS(±HIPEC)・治療だが、SEER解析の5年は33.3%と予後不良である。

出典

  1. 1.Incidence and Outcomes of Desmoplastic Small Round Cell Tumor: Results from the Surveillance, Epidemiology, and End Results Database(Journal of Cancer Epidemiology(Lettieri CK, Garcia-Filion P, Hingorani P)・2014)SEERデータベース1973〜2007年の192例を解析した原著コホート研究で、年齢調整発生率0.3例/百万人(20〜24歳でピーク0.74例/百万人)、男女比4:1、全体の5年生存率33.3%(18歳以下30.9%、18歳超34%で有意差なし)であることを確認した(Results)。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Management and survival outcomes of desmoplastic small round cell tumor: a retrospective cohort study from a tertiary cancer center(BMC Cancer(Sundaramoorthy S, Abraham G, Narayanan G, et al.)・2025)単施設25例(96%が男性)の原著後方視的コホートで、全生存期間中央値22.0か月、一次治療での無増悪生存期間中央値16.0か月、1・2・3年生存率がそれぞれ63.0%・44.2%・14.7%であったことを確認した(Results。自施設症例の直接報告であり、5年生存率は報告されていない)。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Case Report: Refractory desmoplastic small round cell tumor: a report of a molecularly confirmed case with EWSR1–WT1 fusion(Frontiers in Oncology(Li N, Jiang J, Tan F, Deng Q)・2026)自験例においてt(11;22)(p13;q12)によるEWSR1-WT1融合を分子診断で確認したこと、サイトケラチン・ビメンチン・デスミン・WT1蛋白など上皮・間葉・神経の多方向分化を示す免疫染色パターンを呈したことを確認した(本文の自験例記載)。疫学・生存率の数値はLettieri(2014)ら他文献の引用であり、本ノートでは採用していない。閲覧 2026-08-12
  4. 4.Unresectable Desmoplastic Small Round Cell Tumor: A Case Report and Review of the Literature(Case Reports in Oncology(Karger, Rueda DA et al.)・2025)t(11;22)(p13;q12)によるEWSR1::WT1融合が他の小円形細胞肉腫と鑑別する診断上の指標であること、ユーイング肉腫はt(11;22)(q24;q12)によるEWSR1-FLI1融合が最多であり融合パートナーで区別できること、自験例にVAC-IE(P6プロトコル:ビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロホスファミドとイホスファミド・エトポシドの交代投与)レジメンを実際に用いたことを確認した(Introduction・Case Presentation)。生存期間の数値は他文献の引用であり、本ノートでは採用していない。閲覧 2026-08-12