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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

仙尾部奇形腫

Sacrococcygeal teratoma

別名
SCTsacrococcygeal teratoma仙尾骨部奇形腫
臓器系
腫瘍小児
科目
PathologyMicroscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
病理学 B/22:小児腫瘍の特徴(神経芽腫・網膜芽細胞腫・ウィルムス腫瘍など)発生学 5.5:第3週(三層性胚盤・原腸形成):臨床発生学 5.1:第3週(三層性胚盤・原腸形成):原腸形成と原始線条発生学 2.1:配偶子形成:始原生殖細胞
鑑別疾患
神経管閉鎖不全(二分脊椎・無脳症)前方仙骨髄膜瘤
続発疾患
胎児水腫
関連疾患
Currarino症候群縦隔原発胚細胞腫瘍卵黄嚢腫瘍卵巣奇形腫
症状
便秘便失禁
検査値
AFP

🧠 全体像:は「発生学の地図の上にできる腫瘍」である。は第3週のとがあった場所であり、同時に卵黄嚢からへ移動するの通り道でもある。この二重の意味でを残した細胞が居座りうる部位に生じるのが本症で、実際にはの遺残説と初期起源説の両方が併存し、片方に確定していない1。臨床の幹は3本——(外向きか骨盤内か)が手術経路を決め、診断された年齢が悪性の確率を決め、血清が再発の見張り役になる。に見つかった大きな腫瘍は血管が豊富で、からに至ると予後が急激に悪くなる。

発生学的な位置づけ

  • ヒトのの約90%は性腺(特に精巣)に生じるが、新生児・乳児ではがの最好発部位である1。性腺外のが脳・頸部・縦隔・後腹膜という体のに沿って現れるのは、の移動経路に一致するためである。
  • は Oosterhuis–Looijenga 分類の Type I に当たる。性腺外にのみ生じ、女児優位で、組織型はとに限られる1。思春期以降のが男性優位であるのと対照的である。
  • はとの位置に対応する。ここにが残れば、やへ発展しうる1。
  • ⭐ は「変異で駆動される腫瘍」ではなく「発生で駆動される腫瘍」である。 はがヒトの癌のなかで最も低い部類(0.3〜0.5変異/Mb)で、TP53 変異はほぼ見られない1。「癌=の蓄積」という枠組みが当てはまらない代表例である。

疫学と合併奇形

  • 発生頻度は2万〜4万に1例1。オランダの例では約35,000に1例だった2。
  • 女児が男児の3〜4倍と明らかな女児優位を示す1。
  • 15〜30%にを伴うが、多くは水腎症のような腫瘍による圧迫の結果であり、が明らかな合併症候群はをほぼ唯一の例外としてまれである(原文は「を除けば因果的な関連はまれ」)1。
  • =の++。MNX1(旧名 HLXB9)変異によるで、の約40%が良性である1。

Altman分類

腫瘍が体外へ出ている部分と骨盤内にある部分の比で4型に分ける。手術経路と機能予後を決めるのがこの分類の役割である1。

型 形態 頻度 手術
I 主に外方性で内部成分は小さい 45% 後方()アプローチ
II 外に出ているが骨盤内成分も大きい() 35% 後方アプローチ
III 主に骨盤内で外部成分は小さい 10% 経腹+後方の併用を要することが多い
IV 外部成分が無く完全に骨盤内 10% も選択肢

⚠️ IV型は外から見えないため診断が数か月遅れる。 骨盤内の大きなII〜IV型は便秘・・・尿失禁といった圧迫症状で気づかれることがあり、III型の広範な切除は機能予後が悪くなりやすい1。

胎児期の問題

25〜50%は定期ので出生前に診断される1。この時期の最大の問題は腫瘍が血管に富むことである。

flowchart TD
    A["血管に富む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid'>充実性</span>の腫瘍が急速に増大"] --> B["腫瘍への大量の血流による前負荷の増大"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-output heart failure'>高拍出性心不全</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomegaly'>心拡大</span>)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrops fetalis (fetal hydrops)'>胎児水腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='placentomegaly'>胎盤腫大</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyhydramnios'>羊水過多</span>"]
    D --> E["早産・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrauterine fetal death, IUFD'>子宮内胎児死亡</span>"]
    A --> F["分娩時の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor rupture'>腫瘍破裂</span>・大量出血"]
    F --> E
  • 在胎30週未満で診断された例は特に危険である1。
  • オランダの84胎児の検討では、不良な転帰の危険因子は(21.0、95%CI 2.6〜275.1)と(10.3、95%CI 1.9〜55.8)だった2。を含む全体死亡率は32.1%、を除くと13.1%である2。
  • 出生後は、大きな腫瘍で・血小板減少・と大量出血が起こりうるため、と凝固能を確認する1。

出生後の診断

多くは出生直後にの突出腫瘤として・触診で診断される。⚠️ に腫瘤を作る()の病変と紛らわしい。 はより尾側の肛門とのあいだに位置し、しばしば肛門を前方へ偏位させる。これに対し性の腫瘤はより頭側の・の上にあり、腫瘤上の皮膚所見(・血管腫)や下肢筋力低下・膀胱機能障害を伴う1。全例で骨盤により進展範囲を評価する。

年齢と悪性度

⭐ 「は良性、遅く見つかるほど悪性」が本症の最重要点である。 出生時に診断された患者の91%は成熟またはだったのに対し、それより遅れて診断された乳児では27%がだった1。診断時年齢が2か月を超えることと、腫瘤が優位であることが、悪性組織型と不良な予後を示唆する1。この事実が「早期に手術する」根拠そのものになっている。

治療と経過観察

  • 完全切除が標準治療である。手術の遅れは・出血を招き、悪性化の傾向があるためが必須とされる1。
  • ⚠️ をいっしょに摘出する。 を残すことと術中のがにつながり、と未熟・悪性の組織型が再発の最大の危険因子である1。
  • であっても、再発予防目的のは無効であり推奨されない1。
  • 再発は10〜15%で、大半は初回手術後6〜36か月に診断される。再発例では悪性組織型に転じていることが多い1。
  • 血清AFPは再発の監視に有用で、再発例の75%で上昇していた1。と血清を3か月ごとに3〜4年続け、疑わしければ・を行う1。
  • ⚠️ 新生児・乳児のは肝由来で生理的に高く、値の解釈に注意を要する1。一時点の絶対値だけで判断しない。
  • 長期のとして、の29%に肛門直腸の(慢性便秘・)、33%に泌尿器の機能障害(・・尿失禁)がみられる1。

まとめ

  • は・の遺残と初期の移動経路という二つの発生学的背景をもつType Iで、は片方に確定していない。
  • 2万〜4万に1例、女児が3〜4倍。合併奇形の多くは圧迫の結果で、因果的な症候群はに限られる。
  • (I 45%・II 35%・III 10%・IV 10%)が手術経路を決め、外から見えないIV型は診断が遅れる。
  • は血管に富む腫瘍がを招き、とが不良な転帰の強い危険因子である。
  • 出生時診断例の91%は成熟・だが、2か月を超えて診断された乳児では27%がで、年齢が悪性度の指標になる。
  • 治療はを含む早期完全切除で、でもは無効。とで3〜4年の経過観察を行う。

出典

  1. 1.Sacrococcygeal Teratoma : A Tumor at the Center of Embryogenesis(Journal of Korean Neurosurgical Society・2021)仙尾部奇形腫が胎児期・新生児期に生じる性腺外胚細胞腫瘍でありType I胚細胞腫瘍に分類されること、卵黄嚢から生殖隆起へ移動する初期始原生殖細胞のエピジェネティックな再プログラム化に由来すると考えられる一方、仙尾部が原始線条とHensen結節に対応する位置であり残存全能性幹細胞からも奇形腫・卵黄嚢腫瘍が生じうること、胚細胞腫瘍が変異駆動ではなく発生駆動の腫瘍であること、発生頻度が生児出生2万〜4万に1例で女児が男児の3〜4倍多いこと、15〜30%に先天奇形を伴い因果関係が明らかなのはCurrarino三徴(仙骨骨欠損・肛門直腸奇形・仙骨前腫瘤、HLXB9変異による常染色体優性、仙骨前腫瘤の約40%が良性奇形腫)に限られること、Altman分類がI型(主に外方性、45%)・II型(外方性だが骨盤内成分が大きい、35%)・III型(主に骨盤内、10%)・IV型(外部成分の無い仙骨前腫瘍、10%)の4型であること、25〜50%が出生前に診断され羊水過多・胎児水腫・胎盤腫大のリスクが高く在胎30週未満での診断が特に危険であること、急速に増大する充実性で血管豊富な腫瘍が高拍出性心不全と胎児水腫を招くこと、出生時診断例の91%が成熟・未熟奇形腫であるのに対し2か月を超えて診断された乳児の27%が卵黄嚢腫瘍であったこと、診断時年齢2か月超と充実性優位が悪性組織型と不良な予後を示唆すること、完全切除が標準で尾骨の摘出と術中の腫瘍散布防止が強調されること、術後再発が10〜15%で不完全切除と未熟・悪性組織型が最大の危険因子であること、未熟奇形腫でも術後化学療法は再発予防に無効で推奨されないこと、再発の大半が初回手術後6〜36か月に診断され再発例の75%で血清AFPが上昇すること、新生児・乳児では肝由来のAFPが生理的に高く解釈に注意を要すること、直腸診と血清AFPを3か月ごとに3〜4年続ける経過観察が一般に推奨されること、生存者の29%に肛門直腸の後遺症・33%に泌尿器の機能障害がみられることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Factors associated with poor outcome in fetuses prenatally diagnosed with sacrococcygeal teratoma(Prenatal Diagnosis・2021)1998〜2018年のオランダで出生前診断された仙尾部奇形腫84胎児の後方視的研究で、出生前診断される頻度が約35,000に1例であったこと、人工妊娠中絶16例(19.0%)を含めた全体死亡率が32.1%、中絶を除いた死亡率が13.1%であったこと、不良な転帰の危険因子が胎児水腫(オッズ比21.0、95%CI 2.6〜275.1、p=0.012)と心拡大(オッズ比10.3、95%CI 1.9〜55.8、p=0.011)であったことを確認した。閲覧 2026-09-02