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腹膜癌指数

Peritoneal cancer index

別名
PCI
臓器系
腫瘍
科目
Pathology
トピック
病理学 C/41:虫垂・腹膜の病理
適用疾患
癌性腹膜炎線維形成性小円形細胞腫

🧠 全体像は、腹腔全体に播種した腫瘍の広がりを部位ごとの病変の大きさという一本の物差しで定量化するスコアである。腹腔を13の領域に分け、各領域で最も大きい病変の径を0〜3点で採点し合算する(合計0〜39点)。用途は手術+の適応判断とだが、は原発によって全く違うという点が最重要——大腸癌ではPCIが高いほど予後不良の指標として働く一方、ではPCIが高くても完全減量さえできれば予後は良好でありうる。単一の数字で「高い=手術しない」と読まない。

目的と適用場面

内容
目的 の広がりを定量化し、CRS+HIPECの適応判断・に用いる
対象 、原発性腹膜など腹膜表面に病変を持つ患者
使う場面 術前画像での見積もり、そして開腹・腹腔鏡での評価(確定はこちら)
評価しないもの リンパ節転移、遠隔臓器転移そのもの(PCIは腹膜表面の病変量に限定した指標)

Sugarbakerにより1990年代に提唱され、CRS+HIPECの標準化・症例選択のために広く用いられるようになった指標である。

構成要素と配点

腹部・骨盤を9領域(0〜8)に、小腸を4領域(9〜12)に分けた13領域それぞれについて、その領域内で最大の病変の径をLesion Size Score(LS-0〜LS-3)で採点し、13領域の合計点をPCIとする12

領域の区分

領域番号 部位
0 中心部(臍周囲)
1 右上腹部
2
3 左上腹部
4
5 左下腹部
6 骨盤部
7
8
9 空腸上部
10 空腸下部
11 回腸上部
12 回腸下部

Lesion Size Score(各領域0〜3点、13領域合計で0〜39点)

スコア 定義
LS-0 その領域に病変を認めない
LS-1 病変が視認できるが最大径0.5cm以下
LS-2 最大径0.5cmを超え5cm以下の結節
LS-3 最大径5cmを超える病変、または隣接構造との癒着を伴う癒合病変(大きさに関わらずLS-3)

解釈とカットオフ

単一のは存在しない。原発によって「高い」ことの意味が変わる。

原発 PCIの意味づけ
大腸癌 PCIが低いほど(目安として16未満)予後良好、20を超える高PCIでは根治的より治療を選ぶ施設が多い12
胃癌 大腸癌よりさらに厳しい閾値(PCI 15未満、あるいは10未満)を適応の目安とする報告がある1
(虫垂由来) PCIが20を超えても、完全減量(CC-0)が達成できる見込みがあればな除外基準にはならない——組織学的な悪性度がおおむね低く進行が緩徐なため、病変量よりも完全減量の可否が予後を左右する13
の虫垂・大腸癌由来 PCIが20を大きく超える例では多くの施設が根治的を推奨しない2

💡 この違いを生む軸は「PCIそのもの」ではなく「完全減量(CC-0/CC-1)を達成できるか」である。 高PCIでも各病変がな形で分布していれば完全減量に到達でき、低PCIでも小腸間膜など切除困難な部位に病変が集中していれば完全減量できないことがある。PCIは病変量の指標であって、そのものを表すわけではない。

⚠️ 限界と使ってはいけない場面

  • 術前画像によるPCIは過小評価されやすい。 CT・MRIでは微小な(特に小腸間膜や横隔膜下面の)を検出しきれないため、術前の見積もりだけでCRS+HIPECの適応を最終的に除外しない。
  • 確定は開腹または腹腔鏡での直視評価による。 画像PCIと術中PCIは乖離しうるため、術前画像PCIはあくまで見積もりであり、最終判断は術中の13領域の直視評価で行う。
  • 完全減量スコア(CCスコア)と対で使う。 PCIが病変の広がりを表すのに対し、CCスコアは手術後に残存した病変の大きさを表す指標で、両者を組み合わせて初めて手術の意義を評価できる。PCI単独で予後を語らない。
  • リンパ節転移や腹膜以外の遠隔転移の有無はPCIに反映されないため、病期評価全体の代わりにはならない。

まとめ

  • PCIは腹腔を13領域に分け、各領域の最大病変径を0〜3点で採点し合算する(0〜39点)定量指標である。
  • 用途はCRS+HIPECの適応判断とだが、は原発によって異なり、大腸癌では高PCIが不良な予後を、では高PCIでも完全減量できれば良好な予後を示しうる。
  • 術前画像によるPCIは過小評価されやすく、確定診断は開腹・腹腔鏡での直視評価による。完全減量スコアと組み合わせて解釈する。

出典

  1. 1.Selection of patients and staging of peritoneal surface malignancies(World Journal of Gastrointestinal Oncology・2010)腹膜癌指数(PCI)は腹部・骨盤を9領域(0〜8)、小腸を空腸上部・下部(9・10)と回腸上部・下部(11・12)の4領域に分けて評価すること、各領域の最大病変径をLesion Size Score(LS-0=病変なし、LS-1=0.5cm以下、LS-2=0.5〜5cm、LS-3=5cmを超えるまたは癒着を伴う癒合病変)で採点し合算すること、大腸癌ではPCIが16未満で予後良好・16以上で不良、20を超えると姑息的治療に留めるべきとする報告があること、胃癌ではPCI 15未満または10未満を適応の目安とする著者がいること、粘液性腫瘍(腹膜偽粘液腫)ではPCIが20を超えても完全減量が可能なら絶対的除外基準にはならないことを確認した(本文)閲覧 2026-08-11
  2. 2.Peritoneal Surface Malignancies(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)PCIが腹腔を13領域に分け各領域の病変径をスコア化し最大39点となる定量指標であること、高異型度の虫垂・大腸癌由来でPCIが20を大きく超える例ではほとんどの施設が根治的減量手術を推奨しないことを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Cytoreduction (CRS) and Hyperthermic Intraperitoneal Chemotherapy (HIPEC)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)CRS-HIPECが腹膜偽粘液腫を含む虫垂粘液性腫瘍の腹膜播種に対する標準治療であること、大腸癌の腹膜転移に対する適応はPRODIGE 7試験公表後も議論が続き低容量病変・良好な全身状態など厳選された症例に限られることを確認した閲覧 2026-08-11