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Disease Atlas · 小児 · 疾患

手足口病

Hand, foot, and mouth disease

別名
HFMD
臓器系
小児感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyPediatrics
トピック
微生物学 3/30:ピコルナウイルス:ライノ・コクサッキー・エコー・エンテロウイルス小児科 3-48:小児の発熱と発疹小児科 3-58:口腔・咽頭疾患
鑑別疾患
ジアノッティ・クロスティ症候群パルボウイルスB19感染症ヘルパンギーナ
合併症
無菌性髄膜炎ウイルス性脳炎心筋炎肺水腫
原因微生物
エンテロウイルス
症状
小水疱口内炎発熱落屑弛緩性麻痺

🧠 全体像:は主に属の・EV-A71型による小児の急性ウイルス感染症で、手掌・足底・口腔の小水疱と軽度発熱が典型像である。⚠️ EV-A71は他の血清型と異なり、中枢神経合併症(・・)を伴うアジア太平洋地域の流行を繰り返してきた点が臨床上のであり、A16単独の軽症疾患という理解では不十分である。はな広範囲のと、数週遅れて出現する(onychomadesis)を特徴とする。

病原体と伝播

の主な原因は属のとEV-A71型で、による非典型例も近年報告が増えている。糞口感染が基本経路で、汚染された食物・水、便からの直接・間接接触により伝播する。主に乳幼児に好発し、温帯地域では夏〜秋にピークを迎える。

臨床像

flowchart TD
    A["経口摂取(汚染食物・水・接触)"] --> B["咽頭・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gut-associated lymphoid tissue'>腸管リンパ組織</span>で増殖"]
    B --> C["ウイルス血症"]
    C --> D["皮膚粘膜(手・足・口)への到達"]
    D --> E["典型:手掌・足底・口腔の小水疱+軽度発熱"]
    C -->|"EV-A71が中枢神経系へ波及"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brainstem encephalitis'>脳幹脳炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute flaccid paralysis'>急性弛緩性麻痺</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic pulmonary edema'>神経原性肺水腫</span>"]

典型例では軽度発熱に続き、手掌・足底・口腔粘膜(・舌など前方にも及ぶ)に紅色の小水疱が出現する。口腔病変は疼痛を伴い、経口摂取が減ることがある。多くは1週間前後で自然軽快する。

による非典型例では、皮疹が上肢・下肢・体幹・口囲・臀部・など典型部位を越えて広範囲に及び、既存の病変部位に皮疹が集中する「eczema coxsackium」という分布を取ることがある(症例集積で55%)。回復後には手掌・足底の(1〜3週後、52%)や、遅れて出現する爪の変化・(onychomadesis、4〜6週後、24%)を来しうる1。

EV-A71による中枢神経合併症

⭐ EV-A71は中枢神経合併症のリスクが高く、この点が他の血清型と最も異なる。 、、などのを含む重篤な中枢神経合併症を伴うアジア太平洋地域の流行を繰り返してきた。⚠️ よく引かれる「致死率80%」は母集団が限られる。 1998年の台湾の流行でのため挿管された児の約80%が挿管後12時間以内に死亡したという数字であり、中枢神経合併症例全体の致死率ではない。2000〜2002年には30〜40%へ、近年の台湾では10%未満へ低下している。生存例でもやなどのを残しうる2。

1998年台湾での流行では、・が129,106例報告され(実際の総数の1割未満と推定)、重症例405例、死亡78例(うち71例・91%が5歳以下)であった。死亡例78例中65例(83%)が肺水腫またはを呈し、死亡例から分離されたウイルスの92%がEV-A71型であった。脳炎、、肺水腫・、、心筋炎が合併症として報告された3。

💡 は脳幹の自律神経中枢の障害を介して起こると考えられており、とは機序が異なる。 によるのが肺を亢進させるという説明が一般的であり、通常の心不全治療だけでは対応できない。

診断

臨床診断が基本で、手掌・足底・口腔・の水疱分布から診断できることが多い。重症化が疑われる場合や非典型例では、・便からのでウイルスを同定し、を疑う場合は(脳脊髄液)も検体に加える。

鑑別

口腔病変を伴う小児発疹性疾患のうち、後方()の有痛性水疱に限局する(主にA型)と、歯肉の発赤・腫脹・出血を伴い前方(歯肉・口唇周囲)に病変が強いによるが代表的な鑑別に挙がる。歯肉病変の有無が両者を分ける手掛かりになる。

治療と予防

特異的な抗ウイルス薬はなく、支持療法(、水分摂取の維持)が中心である。予防の基本は糞口感染対策としてのである。中国ではEV-A71による流行を背景にが承認されており、6〜35か月齢の乳幼児10,007例を対象としたでは、12か月の追跡でEV-A71関連の・に対するワクチン効果は94.8%、関連入院・合併症に対する効果はいずれも100%であった4。このワクチンはEV-A71型に特異的であり、A16型やA6型には効果が及ばない点に注意する。

まとめ

  • は主に・EV-A71型による小児のウイルス感染症で、手掌・足底・口腔の小水疱と軽度発熱が典型像である。
  • による非典型例は広範囲のを呈し、回復後に・(onychomadesis)を来しうる。
  • EV-A71は中枢神経合併症(・・)のリスクが高く、1998年台湾流行では死亡例の91%が5歳以下、83%が肺水腫・を呈した。
  • (後方・有痛性水疱)と(歯肉病変)が代表的な鑑別である。
  • 治療は支持療法のみ。中国承認のはEV-A71関連の重症化・を高率に予防するが、他の血清型には及ばない。

出典

  1. 1."Eczema Coxsackium" and Unusual Cutaneous Findings in an Enterovirus Outbreak(Pediatrics(Mathes EF, Oza V, Frieden IJ, et al.)・2013)2011〜2012年に7施設で診療した手足口病様症状の小児80例(うち17例はコクサッキーウイルスA6を塩基配列決定で確認)の後方視的症例集積で、追跡できた38例中9例(24%)に初診から4〜6週後の爪の変化(爪甲脱落を含む)がみられ、27例中14例(52%)に発症1〜3週後の手掌・足底の落屑がみられたこと、既存のアトピー性皮膚炎病変部位に皮疹が集中する「eczema coxsackium」という非典型分布を80例中44例(55%)で認めたことを確認した閲覧 2026-09-01
  2. 2.Enterovirus A71 neurologic complications and long-term sequelae(Journal of Biomedical Science・2019)エンテロウイルスA71は手足口病に無菌性髄膜炎・脳幹脳炎・ポリオ様症候群などの重篤な中枢神経合併症を伴うアジア太平洋地域の大規模流行を繰り返しており、中枢神経合併症例の致死率は1998年流行時の約80%から近年は10%未満まで低下したが、生存例でも神経発達遅延・四肢筋力低下などの後遺症を残しうることを確認した閲覧 2026-09-01
  3. 3.An Epidemic of Enterovirus 71 Infection in Taiwan(The New England Journal of Medicine・1999)1998年台湾でのエンテロウイルス71型流行の疫学調査で、手足口病・ヘルパンギーナが129,106例報告され(実際の総数の1割未満と推定)、重症405例、死亡78例(うち71例・91%は5歳以下)であったこと、死亡例78例中65例(83%)が肺水腫・肺出血を呈し、死亡例からのウイルス分離の92%がエンテロウイルス71型であったこと、脳炎・無菌性髄膜炎・肺水腫/肺出血・急性弛緩性麻痺・心筋炎を合併症として認めたことを確認した閲覧 2026-09-01
  4. 4.Efficacy, Safety, and Immunogenicity of an Enterovirus 71 Vaccine in China(The New England Journal of Medicine・2014)中国で6〜35か月齢の健常乳幼児10,007例を対象に行った無作為化・二重盲検・プラセボ対照第3相試験で、12か月の追跡期間中にエンテロウイルス71型関連手足口病・ヘルパンギーナに対するワクチン効果は94.8%(95%CI 87.2-97.9)、エンテロウイルス71型関連入院に対する効果は100%(0例 vs 24例)、神経学的合併症を伴う手足口病に対する効果も100%(0例 vs 8例)であったことを確認した閲覧 2026-09-01