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Symptoms · Published

第三心音

Third heart sound

別名
III音S3奔馬調律ギャロップ音
臓器系
循環器
科目
Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
病態生理学 1-3:心不全の原因と症状
関連疾患
三尖弁閉鎖不全症肺水腫慢性心不全

🧠 全体像:(S3)は「聴こえたら即異常」ではない。若年・妊婦では正常にも生じる低調音であり、同じ音でも年齢・背景によって意味が180度変わる。この所見の価値は感度ではなく特異度にある——聴こえないことは心不全を除外しないが、40歳を超えて聴こえれば圧上昇を強く示唆する1。

定義と用語の整理

は、拡張早期の急速充満期の終わりに生じる低調・短い音で、上「奔馬(ギャロップ音)」とも呼ばれる。第二の直後(が開いて心室が急速に血液を受け入れる時期)に一致し、心房の収縮によって生じる第四(後述)とはが異なる2。

病態生理

かつては「のかかった心室に血液がぶつかる音」と単純に説明されてきたが、近年は輪の径が音の発生に重要な因子であることが示されている2。病的なS3は左房容量増加・圧上昇と相関し、機序としては拡張早期に大量の血液が急速にコンプライアンスの高い(あるいはの高い)心室へ流入し、心室壁の急激な伸展がされる際の振動と理解される。

生理的S3と病的S3の切り分け

⭐ 同じ音でも年齢・背景で意味が変わる。 ここを取り違えると健常な若年者を心不全とし、逆に高齢者の心不全を見逃す。

生理的S3 病的S3
年齢 小児〜おおむね40歳未満 40歳以降は原則病的
背景 妊婦(80%超で正常所見として聴取される)、鍛錬されたアスリート 心不全、、など上昇を来す病態
判断の軸 年齢と実質的心疾患の有無 同左(40歳以降・があれば病的と判断)
増強させる手技 など静脈還流を増やす手技で増強しうる 同様に増強しうるが、座位・立位など静脈還流を減らす手技で消失しにくいことがある

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flowchart TD
    A["拡張早期の低調音(S3)を聴取"] --> B{"40歳未満、または妊婦か"}
    B -->|"はい"| C{"実質的な心疾患を<br>示す所見が他にあるか"}
    C -->|"なし"| D["生理的S3として経過観察"]
    C -->|"あり"| E["病的S3として原疾患を評価"]
    B -->|"いいえ(40歳以降)"| E

S3とS4の対比

S3 S4
拡張早期(急速充満期の終わり) 拡張後期()
機序 血液が心室へ急速流入する際の振動 硬くの低下した心室へ心房が収縮して血液を送り込む際の
意味するもの ・上昇(拡張早期の異常) 心室(などが代表)
心房細動での聴取 聴取されうる 消失する(そのものがないため)

2

⚠️ S4は心房の収縮に依存する音であるため、心房細動などが失われた不整脈では原理的に聴取できない。S3・S4が同時に聴かれる「重複奔馬」は、著明な心室と上昇が併存していることを示す。

聴取法

  • 体位:(30°程度)にするとが胸壁に近づき、低調音が聴取しやすくなる。
  • 器:ベル型を皮膚に軽く当てる。強く押し当てると皮膚が振動板の役割を果たし、低調音がかき消される。
  • 部位:を中心に、下部まで探るように聴く。
  • 呼吸:患者に呼気で呼吸を止めてもらうと、周囲雑音が減り低調音に集中しやすい3。

左心性と右心性の区別

⭐ 吸気で増強するのは右心性である。 吸気によりが低下してへの静脈還流が増えるため、右室性のS3・S4は吸気で強く聴かれる。左室性のS3・S4は逆に、呼気末や仰臥位で強調されやすい3。

左心性S3 右心性S3
主な聴取部位 左または右胸骨下縁
吸気での変化 変化に乏しい、または呼気で目立つ 増強する
代表病態 、 右心不全、不全

⚠️ 高度な右室機能不全では、右室がそもそも吸気による静脈還流増加に反応できず、この吸気性増強が消失することがある3。増強が乏しいことをもって右心性を否定しない。

まとめ

  • S3は拡張早期の急速充満期に生じる低調音で、40歳未満・妊婦では生理的にありうるが、40歳以降は病的と考える。
  • S4は拡張後期()に生じ、心室を示す。心房細動ではがないため聴取できない。
  • 聴取はベル型を軽く当て、でを中心に探る。
  • 吸気で増強するのは右心性、変化に乏しい・呼気で目立つのは左心性という原則があるが、高度右室機能不全ではこの原則が崩れうる。
  • 診断的価値は感度より特異度にある。聴こえないことは心不全を除外しない。

出典

  1. 1.A systemic review and meta-analysis comparing the ability of diagnostic of the third heart sound and left ventricular ejection fraction in heart failure(Frontiers in Cardiovascular Medicine・2022)心不全診断における第三心音の統合感度0.23・特異度0.94・診断オッズ比4.55(12研究)であり、感度は低いが特異度が高い所見であることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Third and Fourth Heart Sound(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)第三心音が左房容量増加・心室充満圧上昇と相関する低調音であること、第四心音がコンプライアンス低下した心室へ心房が収縮期後期に血液を送り込む際の乱流で生じ左室肥大など心室コンプライアンス低下疾患の特徴であることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.The Third Heart Sound(Clinical Methods, 3rd edition (NCBI Bookshelf)・1990)第三心音が拡張早期の急速充満期終わりに生じ弁の聴診器ベル型を軽く当て30°左側臥位で心尖部を中心に聴取するのが要点であること、小児から40歳前後までは生理的第三心音がありうるがそれ以降は実質的疾患の有無で意義を判断すべきこと、右室性第三心音は左または右胸骨下縁で聴取され吸気で強くなることが右室性であることの手がかりになる(高度右室機能不全では消失しうる)ことを確認した。閲覧 2026-08-19
  4. 4.Physiology, Maternal Changes(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)妊婦の80%超で第三心音が正常所見として聴取されることを確認した。閲覧 2026-08-19