薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · A17 Hypnotics / 睡眠薬 · 必修

ゾルピデム

zolpidem

分類
Hypnotics / 睡眠薬
商品名(日本)
マイスリー
商品名(EU)
Stilnox
科目
Pharmacology
トピック
A17: Non-benzodiazepine anxiolytics and non-benzodiazepine hypnotics
禁忌疾患
閉塞性睡眠時無呼吸
副作用
めまい日中傾眠錯乱睡眠関連摂食障害
解毒薬
フルマゼニル
対象疾患
不眠障害・ナルコレプシー

🧠 全体像(非)の代表格で、GABA-A受容体のうちα1サブユニットを含む型に選択的に結合する。と同じの近傍に作用するが、α1選択性ゆえに「眠くする」作用だけが際立ち、BZDが併せ持つ・筋弛緩・抗けいれん作用はほとんど持たない。この「同じ結合部位を使うのに効果のプロフィールが違う」という一点が、とBZDの使い分けを理解する鍵になる。

薬効群の中での位置づけ

はGABA-A受容体への作用が非選択的か選択的かで大きく分かれ、の中でもさらに化学構造で枝分かれする。

分類 代表薬 半減期 特徴
BZD系 GABA-A α1/α2/α3/α5(非選択的) 長い(約24時間) ・筋弛緩・抗けいれんも併せ持つが、翌日への持ち越し・依存が強い
GABA-A α1選択的 短い(約2〜3時間) に特化。の第一選択級
(ピラゾロピリミジン) α1選択的 最短(約1時間) 夜間覚醒時の頓用にも使える
α1/α2/α3/α5(やや非選択的) 中間(約5時間) 睡眠維持にも有効だがと持ち越しが強め
MT1/MT2 - 乱用性がほぼない
OX1R/OX2R - GABA系と異なる新機序

「BZDとは結合部位が同じなのに効果が違う」の答えはサブユニット選択性にある。 のような非選択的BZDはα1()だけでなくα2/α3(・筋弛緩)にも結合するため多面的な効果と副作用を持つ。はα1だけを狙うため作用がに絞られ、抗けいれん・筋弛緩作用が乏しい分、てんかんやには使えない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zolpidem'>ゾルピデム</span>がGABA-A受容体の<br>α1サブユニット近傍(ω1/BZ1部位)に結合"] --> B["GABAのCl⁻チャネル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opening frequency'>開口頻度</span>を増加"]
    B --> C["Cl⁻流入増加→神経細胞の過分極"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CNS activity'>中枢神経活動</span>の抑制"]
    D --> E["入眠までの時間短縮(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnotic effect'>催眠作用</span>)"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flumazenil'>フルマゼニル</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutral antagonist'>中立拮抗薬</span>)"] -.->|"同じ結合部位を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive'>競合的</span>に占拠"| A
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overdose'>過量投与</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complex sleep behavior'>複雑睡眠行動</span>"] -.->|"投与"| F

💡 が効く理由は「結合部位を共有しているから」。 は化学構造こそBZDと異なるが、GABA-A受容体上の同じ(BZD結合部位)に結合するため、この部位をに占拠するで作用を逆転できる。ただしが短いに対しが起こりうるため、単回投与で終わらせない。

薬物動態

項目 値・特徴
約70%
食事の影響 で吸収が遅延・低下。空腹時の服用が望ましい
分布 蛋白結合率約92%。血液脳関門を速やかに通過
代謝 主にCYP3A4(一部CYP1A2・CYP2C9)で
排泄 代謝物として尿・胆汁排泄
半減期 約2〜3時間()。製剤(CR)は放出で睡眠維持にも配慮

女性は同じ用量でも血中濃度が高く残りやすい。 の代謝・排泄には性差があり、女性では男性より血中濃度が高く保たれやすいため、米国FDAは2013年に女性の開始用量を男性の半量(で5 mg)へ引き下げる安全性勧告を出した。翌朝の運転技能低下との関連が根拠になっている。

適応

(短期治療)。-I(不眠に対する)を利用できない、または十分な効果が得られない場合に、のもとで最少・最短期間で用いる補助的選択肢という位置づけが現行の考え方である。

用法・用量

PO(就寝直前、少なくとも7〜8時間の睡眠機会が確保できるときのみ服用)。目安:1回5〜10 mg(女性・高齢者は5 mgから開始)。空腹時の服用が望ましい。開始時に終了・減量の計画を決め、効果・翌朝の眠気・転倒・異常行動を定期的に再評価する。実際の用量は年齢・性別・肝機能・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度 めまい、頭痛、
注意 、翌朝の運転技能低下(特に女性)、(高齢者)、
重篤・まれ (睡眠時運転・摂食)、依存(BZDより低いが残る)、呼吸抑制(他のCNS抑制薬併用時)

まとめ

  • の代表格()。GABA-A受容体のα1サブユニットに選択的に作動し、に特化する。
  • 非選択的なBZD(など)と異なり・筋弛緩・抗けいれん作用は乏しい。
  • 半減期は約2〜3時間と短く、向き。製剤で睡眠維持にも対応。
  • CYP3A4で代謝。女性は血中濃度が高く残りやすく、開始用量は男性の半量が原則。
  • (睡眠時運転など)に2019年FDAのがあり、既往があれば禁忌。
  • 未治療のには禁忌。アルコール・オピオイドとの併用で呼吸抑制が増強する。
  • で拮抗可能(同じ結合部位をに占拠するため)。
  • 依存性はBZDより低いが残るため、最少・最短期間の原則を守る。