小児科学

小児科学 · 3-11

小児顔面神経麻痺

Facial Palsy

前提:正常
頭部:頭皮と顔面
疾患
ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)
症状
涙液分泌低下

🧠 全体像:額が動くかどうかが中枢性と末梢性の第一歩である。末梢性で不能なら、原因検索と同時にを直ちに始める。

中枢性と末梢性

所見 中枢性() 末梢性(・)
麻痺側 病変対側の優位 病変同側の顔面全体
額・ 保たれやすい しわ寄せ不能
比較的保たれる 不全・不能
原因 脳卒中、腫瘍、脱髄、炎症など Bell麻痺、/、、中耳炎、外傷、耳下腺・角病変

💡 病変は、臨床的には末梢性パターンを示す。

⚠️ 小児のでは、二次性の原因がBell麻痺に次いでできない割合を占める。 ドイツの小児科()で15歳未満106例を前向きに追跡した研究では、の発症率が10万人年あたり21.1、うちLymeが10万人年あたり4.9で全体のおよそ4分の1を占めた1。この学科があるハンガリーを含む中欧はのであり、ではの原因検索での優先順位が高くなる。

診察

  • 額のしわ寄せ、強い、歯を見せる、口笛、頬を膨らませる動作を左右比較する。
  • 耳介・外耳道の水疱、、中耳炎、味覚前2/3、、、他の脳神経・四肢所見を調べる。
  • やは病変の補助になるが、全例必須ではない。
  • 反復性、緩徐進行、両側性、他、外傷・腫瘤、改善不良では血液検査・・耳鼻科/神経科評価を行う。

治療

  • 不能:、夜間・、角膜評価。
  • Bell麻痺:成人では発症72時間以内のが3か月時点の完全回復率を有意に改善する(83.0%対63.6%)2が、⚠️ 小児を対象としたではと比べ1か月時点の完全回復率に有意差がなく、大多数は無治療でも回復するため、ステロイドの利益は成人ほど確立していない3。年齢・重症度に応じ個別に検討する。抗ウイルス薬は水疱を伴う帯状疱疹性耳炎症候群などで併用を検討する。
  • :上の・例のでは、抗菌薬へのステロイド併用を行わない4。中耳炎、腫瘍、外傷などは原因治療を行う。
  • リハビリと経過観察を行い、多くは回復するがでは専門紹介する。
flowchart TD
    A["顔面左右差"] --> B{"額のしわ寄せが保たれる"}
    B -->|"はい"| C["中枢性を疑い脳病変を緊急評価"]
    B -->|"いいえ"| D["末梢性:耳・感染・外傷・腫瘤を評価"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eye closure'>閉眼</span>不能なら即時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal protection'>角膜保護</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cause-specific treatment'>原因別治療</span>と回復追跡"]

まとめ

  • 額温存は中枢性を示唆するが例外もある。
  • 末梢性麻痺では顔面全体と耳・味覚・を診る。
  • を診断確定まで遅らせない。

出典

  1. 1.Facial palsy: etiology, outcome and management in children(European Journal of Paediatric Neurology・2011)ドイツの小児科(Lyme病流行地域)で15歳未満の顔面神経麻痺106例を前向きに追跡した研究で、顔面神経麻痺全体の発症率が10万人年あたり21.1、うち神経ボレリア症の発症率が10万人年あたり4.9であり全体のおよそ4分の1を占めたこと、神経ボレリア症例は特発性顔面神経麻痺例より有意に回復が速かったこと(Findings節)。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Early treatment with prednisolone or acyclovir in Bell's palsy(The New England Journal of Medicine・2007)発症72時間以内に登録した成人Bell麻痺496例を対象とした二重盲検プラセボ対照試験で、プレドニゾロン投与群は非投与群より3か月時点の顔面機能完全回復率が有意に高かったこと(83.0%対63.6%)。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Efficacy of Prednisolone for Bell Palsy in Children: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Trial(2022)小児Bell麻痺の大多数は無治療でも回復し、発症72時間以内のプレドニゾロンが1か月時点の完全回復率を有意に改善しなかったこと。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Guidelines for diagnosis and treatment in neurology - Lyme neuroborreliosis(2025)Lyme神経ボレリア症の診断基準上の疑診・確診例の顔面神経麻痺では、抗菌薬へのステロイド併用を勧めないこと。閲覧 2026-08-27