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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

脊髄性筋萎縮症

Spinal muscular atrophy

別名
SMA
臓器系
神経運動器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-12:小児神経筋疾患
治療薬
ヌシネルセンオナセムノゲン・アベパルボベック
症状
球麻痺筋力低下弛緩性麻痺嚥下障害側弯症筋線維束攣縮

🧠 全体像は、の両アレル機能欠失により運動ニューロン維持に必須のSMN蛋白が不足し、)が変性していく疾患である。同じ機能を一部代替できるSMN2遺伝子のが多いほど症状は軽く発症も遅い、という「」の教科書的な例。かつては「I型=乳児期に呼吸不全で死亡する疾患」だったが、+発症前治療によってそのものが書き換わりつつある、の成功例でもある。

病態

遺伝学的機序

  • SMN1(5q13)の欠失・変異により、正常なSMN(survival motor neuron)蛋白の産生が両アレルで障害される、遺伝形式の疾患。
  • ヒトにはSMN1と、ほぼ同じ配列を持つSMN2が存在する。SMN2はエクソン7を含む転写産物の翻訳的サイレント一によりエクソン7を欠く不安定な短縮蛋白を主に作り、機能的SMN蛋白の産生効率はSMN1の一部程度にとどまる。
  • SMN2の(通常0〜4個以上、がある)が多いほど、機能的SMN蛋白の総量が増え、表現型は軽症・発症は遅い傾向がある。SMN2ではなく重症度のとして働く点が本症のポイント。
  • 💡 SMN2には相関があるが1対1対応ではなく、同じでも症状の幅がある。の参考情報として使う。

病態生理

SMN蛋白は全身の細胞に発現する産物(RNAスプライシング装置の構築などに関与)だが、)が特異的に脆弱で、SMN蛋白量が閾値を下回ると・シナプス機能不全を経て細胞死に至る。

flowchart TD
    A["SMN1の両アレル機能欠失(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autosomal recessive'>常染色体劣性</span>)"] --> B["機能的SMN蛋白の産生量が低下"]
    C["SMN2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number'>コピー数</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='modifier'>修飾因子</span>)"] -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number'>コピー数</span>が多い"| D["残存する機能的SMN蛋白がやや増える"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number'>コピー数</span>が少ない"| E["機能的SMN蛋白がさらに減少"]
    B --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior horn cell'>脊髄前角細胞</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower motor neurons'>下位運動ニューロン</span>)の変性・脱落"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G["近位筋優位の進行性筋力低下・低緊張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyporeflexia'>腱反射低下</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bulbar palsy'>球麻痺</span>(嚥下・構音)・呼吸筋障害"]

臨床像

症候の共通パターン

  • の所見:近位筋優位の進行性筋力低下、低緊張(フロッピー)の低下・消失、舌の
  • 感覚障害はきたさない(純粋な)。
  • 重症型では・嚥下障害)、優位の呼吸筋力低下、腹式呼吸優位)を伴う。
  • 眼球運動・心筋は通常保たれる(他の神経筋疾患との鑑別点)。

臨床分類(発症年齢・到達運動機能による)

⭐ 古典的にはWerdnig-Hoffmann病(I型)、Dubowitz病(II型)、Kugelberg-Welander病(III型)とも呼ばれるが、現在は数字による0〜IV型分類が主に使われる。

発症年齢 到達する最大 典型的なSMN2 未治療の(参考)
0型 (子宮内) ほぼ獲得なし 1 出生後数日〜数週で死亡
I型(Werdnig-Hoffmann病) 生後6か月未満 支えなしで座位不可 1〜3 呼吸補助なしでは2歳未満で死亡・呼吸不全
II型(Dubowitz病) 生後6〜18か月 座位は可能だが起立・歩行不可 2〜4 生存期間は小児期〜成人期に及ぶが呼吸・栄養管理を要する
III型(Kugelberg-Welander病) 1.5歳〜成人 独歩を獲得(後に失う例あり) 3〜4 ほぼ正常寿命
IV型 成人期(多くは30歳代以降) 成人期まで独歩維持 4以上 正常寿命

⚠️ 上表の「未治療の」はあくまでが存在しない時代のデータであり、現在はによる発症前治療の普及で、特にI〜II型に相当するでも運動発達がほぼ正常域に達する例が報告されている。「I型=2歳までに死亡」というな説明は治療時代には不適切であり、は「治療前の想定される重症度」として理解する。

診断

検査の進め方

flowchart TD
    A["近位筋優位の筋力低下・低緊張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyporeflexia'>腱反射低下</span>(感覚障害なし)"] --> B["CK:正常〜軽度上昇(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myogenic'>筋原性</span>より低値)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SMN1 gene'>SMN1遺伝子</span>検査<br>(欠失・変異の有無)"]
    C -->|"陽性"| D["SMN2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='copy number'>コピー数</span>を測定"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Clinical Types'>臨床型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic options'>治療選択</span>の参考にする"]
    C -->|"陰性だが臨床的に強く疑う"| F["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor neuron disease'>運動ニューロン疾患</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital myopathy'>先天性ミオパチー</span>等を再検討"]
  • 確定診断は検査(多くはの欠失、一部は点変異)で行う。は現在では必須ではなく、が第一選択。
  • SMN2を同時に測定し、重症度予測・(特に発症前治療の適応判定)に用いる。
  • :多くの国・地域でに追加されており(乾式血液からのSMN1エクソン7欠失検出など)、症状が出る前にSMN1欠失を検出し、発症前に治療を開始できるが広がっている。発症前治療は症候性治療より転帰が明確に良好であることが・実臨床データで示されている。
  • など「」を来す他疾患。

治療

⚠️ SMAは2016年以降にヌクレオチド医薬・遺伝子治療が相次いで承認され、そのものが変わった疾患であり、承認内容は年々更新されている。以下は2026年時点で確認できる主要な

疾患修飾治療

薬剤 種類・機序 適応の要点(主要地域の承認に基づく)
:SMN2のスプライシングを変えエクソン7を含む完全長SMN蛋白の産生を増やす :導入期に複数回、以後は数か月ごとに 5q SMA(I〜IV型相当)に年齢・SMN2を問わず広く承認。発症前投与も可能
低分子:SMN2の同一のスプライシング機構を標的とし、機能的SMN蛋白産生を促す 経口(内服液) 出生直後の新生児から成人まで、5q SMAの全年齢層に承認が拡大している(当初は生後2か月以上、後に2か月未満の発症前乳児にも拡大)
(Zolgensma) による遺伝子治療:機能的SMN1導入遺伝子を運動ニューロンに導入する一回投与 :体重に応じた用量計算が必要 従来は2歳未満の乳幼児が主な適応。近年、同一製剤が2歳以上の小児・成人にも承認され、体重によらない固定用量で投与できるようになり、静注版の年齢上限を超えた症例にも遺伝子治療の選択肢が広がっている

💡 3剤とも承認の適応年齢・SMN2条件・地域差が今も更新され続けているため、実際の適応判断は最新の添付文書・地域の承認内容で確認する。

例(で検出)では、SMN2が少ないほど早期の開始の意義が大きく、生後早期に治療を開始できた症例では座位・独歩など通常は期待しにくい運動発達を獲得した報告が増えている。

支持療法・多職種管理

  • 呼吸管理補助()、重症例では・長期人工呼吸の検討。
  • 嚥下・栄養管理:誤嚥評価、の適応判断、成長・体重のモニタリング。
  • 整形外科的管理の評価と・手術適応の検討。
  • リハビリテーション・機能を維持し、補助具(・座位保持装置)を活用する。
  • の普及後も、呼吸・栄養・整形・リハビリの多職種フォローは治療の効果を最大化するために不可欠であり、単剤治療で完結しない。

まとめ

  • SMAはSMN1の両アレル機能欠失による疾患で、近位筋優位の筋力低下・低緊張・(感覚正常)を特徴とする。
  • SMN2は原因ではなく重症度ので、が多いほど症状は軽い傾向がある。
  • は0型(・最重症)からIV型(成人発症・軽症)までで、確定診断は検査+SMN2測定によって行う。
  • の普及により、発症前にSMN1異常を検出し治療介入できるが広がり、旧来の「I型=乳児期死亡」というの説明は治療時代にはそのまま使えない。
  • 治療の柱は)・(経口低分子)・(AAV9遺伝子治療、静注または)の3系統で、年齢・SMN2・体重により選択が変わり、いずれも早期(できれば発症前)投与で効果が最大化する。呼吸・嚥下栄養・整形・リハビリの多職種支持療法を併走させる。