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Symptoms · Published

腱反射消失

Areflexia

別名
反射消失深部腱反射消失無反射
臓器系
神経
科目
Neurology and NeurosurgeryNeurology
トピック
神経内科 05:反射の診察:深部腱反射・病的反射神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因神経内科 G1-31:ギラン・バレー症候群
関連疾患
Charcot-Marie-Tooth病McLeod症候群Miller Fisher症候群ビタミンE欠乏性運動失調症感覚性ニューロノパチー急性弛緩性脊髄炎糖尿病性筋萎縮慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー無βリポタンパク血症

🧠 全体像:は、で腱を叩いても筋収縮が返ってこないという、二神経性の(求心性のと遠心性の)のどこかが途絶えていることを示す所見である1。病変で反射が亢進するのと対照的に、は——末梢神経・神経根・・のいずれかの障害を意味する1。⭐ 急性の左右対称性・上行性の消失を見たらを最優先で考える——のどの確実性レベルでも腱反射の低下・消失は必須項目である2。

定義と用語の整理

患者は「反射が無い」ことをできない。は診察者がで誘発して初めて分かる所見であり、患者の訴えは筋力低下・・歩行異常として現れることが多い。

NINDSの0〜4段階評価では、0が「反射消失」、1が「低反射(消失させにくいが誘発される)」、2・3が正常範囲(下半分・上半分)、4が亢進(を含む)と定義される1。「消失」と「低下」は連続体であり、(両手を鉤状に組んで引き合う)を試さずに「消失」と記載してはならない——弱い反射の一部はで初めて誘発される。

⚠️ 左右差・上下肢間の差で判断する。 腱反射の亢進・低下が病的かどうかは、絶対値ではなく左右差・四肢全体のバランスで判断するのが原則である。健常者でも高齢者の反射のように加齢だけで低下することがあり、両側対称の軽度低下を単独で病的所見と決めつけない。

病態生理

の機序は、のどこが切れているかで大きく2群に分けて理解する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflex hammer'>打腱器</span>による腱の伸展刺激"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle spindle'>筋紡錘</span>のIa<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent fiber'>求心性線維</span>が興奮"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal root'>脊髄後根</span>を通り<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha motor neuron'>α運動ニューロン</span>とシナプスを作る"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alpha motor neuron'>α運動ニューロン</span>が興奮し遠心性に伝導"]
    D --> E["筋が収縮(反射の完成)"]
    A --> F{"この経路のどこかが<br>途絶えているか"}
    F -->|"末梢神経・神経根の障害"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afferent pathway'>求心路</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='efferent pathway'>遠心路</span>の伝導が途絶<br>(例:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発ニューロパチー</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Guillain-Barré syndrome'>ギラン・バレー症候群</span>)"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal root ganglion (DRG)'>後根神経節</span>の障害"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic'>シナプス前</span>後の細胞体そのものが脱落"]
    F -->|"急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal cord transection'>脊髄離断</span>"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal shock'>脊髄ショック</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reflex arc'>反射弓</span>は温存されるが<br>一時的に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activation'>賦活</span>されない"]

末梢神経障害では、のが最も遠位()から反射を奪うため、の消失が最初に現れやすい——の評価での有無が末梢神経障害のよい予測因子とされるのはこの理屈による1。一方、脱髄性のでは近位筋・近位反射も早期から侵されうる。

💡 急性脊髄障害では、反射消失が「が壊れた」ことを意味しない。 急性の・の直後はによりが全般に消失・減弱するが、これは自体の破壊ではなく脊髄が一時的にされていない状態であり、数日〜数週かけて・痙性へ移行していく3。急性期に反射が無いことをもって「末梢神経の問題」と即断しない。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 急性・進行性・対称性のは、呼吸不全へ進みうる病態として扱う。 では上行性の対称性筋力低下と・消失が中核所見であり、診断確実性のどの段階でも必須項目になっている2。・失調・の三徴を示せばを考える。・自律神経(血圧変動、不整脈)を反射所見と同時に評価する。

⚠️ 急性のの直後は、だけで末梢性病変としない。 の時期には全身の反射が消失し、この所見だけでは末梢神経障害と区別できない。外傷歴・レベルのある感覚障害・膀胱直腸障害の有無を必ず確認する3。

⚠️ (陽性・痙性)との同居を見落とさない。 陽性とが同じ患者に同居する場合、末梢神経と錐体路が同時に障害されている混合病態(、など)を疑う。反射消失だけを見て病変と決めつけない。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loss of deep tendon reflexes'>腱反射消失</span>を確認"] --> B{"分布は"}
    B -->|"左右対称・遠位優位・慢性"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyneuropathy'>多発ニューロパチー</span>として評価<br>血糖・甲状腺・B12・電解質・毒物歴"]
    B -->|"左右対称・急性〜亜急性・上行性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Guillain-Barré syndrome'>ギラン・バレー症候群</span>を最優先<br>呼吸・自律神経を直ちに監視"]
    B -->|"外傷後・レベルのある感覚障害"| E["急性脊髄障害(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal shock'>脊髄ショック</span>)を考える"]
    B -->|"限局した神経根領域"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiculopathy'>神経根症</span>として評価<br>画像・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiology'>電気生理</span>"]
    D --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Babinski sign'>Babinski徴候</span>陽性を伴うか"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper'>上位</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lower motor neurons'>下位運動ニューロン</span>混合病変を疑う"]

所見への対応

そのものは治療対象ではない。所見の消失自体を戻すための介入は無く、原疾患の治療によっての機能が回復するかどうかが問題になる。末梢神経の脱髄が主体であれば免疫治療で数週〜数か月かけて反射が戻りうるが、軸索が変性した場合やが脱落した場合は、原疾患が治まっても反射が永続的に戻らないことがある。反射の再検査は治療効果やのモニタリングとして行う。

まとめ

  • は(求心性〜の〜)のどこかの途絶を示すで、病変のとは対照的な所見である。
  • 末梢神経障害ではにから失われやすい。急性の直後はでが温存されたまま一時的に消失する点に注意する。
  • 急性・進行性・対称性の消失はを最優先で考え、呼吸・自律神経を直ちに監視する。外傷後の消失はを鑑別し、末梢性病変と即断しない。
  • 陽性などとの同居は、混合病態(、ALSなど)を示唆する。
  • 所見そのものへの介入は無く、原疾患の治療と病態(脱髄かか)が反射の回復可能性を決める。

出典

  1. 1.Deep Tendon Reflexes(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)深部腱反射が二神経性の反射弓(求心性Ia線維・遠心性α運動ニューロン)を評価する所見であり低下・消失が下位運動ニューロン病変を示すこと、低下・消失(hyporeflexia)が筋力低下・筋萎縮・線維束性収縮と並ぶ下位運動ニューロン徴候の一つとされること、NINDSの0〜4段階評価スケールで0が「反射消失」、4が「クローヌスを伴うほどの著明な亢進」と定義されていることを確認した閲覧 2026-08-28
  2. 2.Guillain-Barré syndrome and Fisher syndrome: case definitions and guidelines for collection, analysis, and presentation of immunization safety data(Brighton Collaboration GBS Working Group(Vaccine誌)・2011)ギラン・バレー症候群の診断確実性をLevel1〜3の3段階で定義し、いずれの段階でも両側性弛緩性筋力低下に加え腱反射の低下・消失を必須項目としていること、Level1は神経伝導検査所見と髄液の蛋白細胞解離の両方を追加で要求するのに対しLevel3は臨床所見と他疾患の除外のみで足りると定めたことを確認した(原文PDFで直接確認)。閲覧 2026-08-28
  3. 3.Spinal shock revisited: a four-phase model(Spinal Cord・2004)脊髄損傷・脊髄離断の急性期には脊髄反射が消失・減弱する脊髄ショックを呈し、時間経過とともに反射亢進・痙性へ移行することを確認した(4相モデル)閲覧 2026-08-28