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Disease Atlas · 呼吸器 · 先天性疾患

神経腸管嚢胞

Neurenteric cyst

別名
神経腸嚢胞neuroenteric cyst
臓器系
呼吸器神経
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
発生学 5.5:第3週(三層性胚盤・原腸形成):臨床解剖学 2.5:胸部:縦隔
鑑別疾患
気管支原性嚢胞前方仙骨髄膜瘤
合併症
脊髄係留症候群細菌性髄膜炎
関連疾患
食道重複嚢胞
症状
呼吸困難背部痛しびれ筋力低下
画像所見
後縦隔腫瘤

🧠 全体像:は、に生じるのうち、(椎体・など)を伴い、脊柱管内と交通しうるものである。⚠️ 「に嚢胞を見たら、脊椎にがないかを必ず探す」——この一点が、など他のとの最大の違いであり、本ノートの主題である。脊柱管内への進展があれば脊髄圧迫・髄膜炎のリスクを伴うため、⚠️ 手術計画の前にでの有無を評価することが欠かせない。

発生:脊索と内外胚葉の分離不全(脊索分裂症候群の一型)

胎生第3週、が形成される過程では、を通じて一時的にという交通路が外胚葉(将来の神経管)と内胚葉(将来の)の間に生じ、の完成とともに閉鎖するのが正常経過である1。は、この閉鎖過程が不完全に終わることに由来する先天性嚢胞で、機序としてはそのものの閉鎖不全のほか、内胚葉組織によるの分裂、と内胚葉の異常な癒着など複数の説が提唱されている1。

💡 神経管との分離が本来あるべき場所で起こらないという点で、はと呼ばれる群の一型に位置づけられる。分離不全の程度が大きいほど、と(あるいは腹腔)が椎体の欠損部を介して交通した状態が残りやすい。

部位:後縦隔、椎体欠損を介した脊柱管との交通

は()に生じるの代表であり、の鑑別に挙がる。の典型的な好発部位が(周辺)であるのに対し、は発生の性質そのものが脊椎と結び付いている点で区別される。

⭐ ・・単発または多発の・などのをしばしば伴う。ただし、特定のパターンとの関連は明確には確立されておらず、「必ずこの形の奇形を伴う」と決め打ちしない1。椎体の部を介して、の嚢胞が脊柱管内の腔まで交通・進展することがある。

臨床像

  • 乳幼児では、の腫瘤による気道・食道圧迫で呼吸困難、反復性の呼吸器症状を来すことがある。
  • 脊柱管内に進展した成分があると、圧迫部位に応じて、しびれ・感覚障害、筋力低下、、膀胱直腸障害など脊髄・を呈しうる1。
  • ⚠️ との交通が持続していると、髄膜炎を反復することがある。 と外界が交通した状態が残るためで、交通をするまで感染を繰り返しうる。
  • 脊髄が椎体欠損部や嚢胞に係留された状態が続くと、を合併することがある。

画像:MRIで脊柱管内進展を評価してから手術計画を立てる

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior mediastinum'>後縦隔</span>に境界明瞭な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unilocular cyst'>単房性嚢胞</span>"] --> B["脊椎の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmentation anomaly'>分節異常</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemivertebra'>半椎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spina bifida'>二分脊椎</span>・Klippel-Feilなど<br>の有無を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertebral anomaly'>脊椎奇形</span>を伴うか"}
    C -->|"伴う"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraspinal extension'>脊柱管内進展</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid space'>くも膜下腔</span>との交通を評価"]
    C -->|"伴わない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchogenic cyst'>気管支原性嚢胞</span>など他の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='foregut cyst'>前腸性嚢胞</span>を優先して検討"]
    D --> F{"脊柱管内成分があるか"}
    F -->|"あり"| G["脊椎外科と合同で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='two-stage surgery'>二段階手術</span>を計画"]
    F -->|"なし"| H["縦隔単独の摘出を計画"]

はT1・T2ともに脳脊髄液に近い等〜高信号を示し、で高信号となることが多い。慢性炎症を伴う場合はの造影増強を示すことがある1。画像だけでは・と紛らわしいことがあり、確定には組織診断を要する2。

⚠️ を伴う嚢胞をで確認したら、の有無をで評価してから手術計画を立てる。 縦隔側だけを摘出し、脊柱管内との交通を見落としたまま手術を終えると、・髄膜炎・不完全摘出による再発につながりうる。

組織像

では、単純な立方〜円柱上皮からなるType Aを基本形とし、腺・軟骨・リンパ管様成分を伴うType B、・を伴うType Cに分けられる1。免疫染色ではPAS・・・EMA・CK7・CK20が陽性となり内胚葉由来であることを支持し、GFAP陰性であることがとの鑑別点になる1。

治療

⭐ が再発率を最も低く抑える治療である12。がある例では、の縦隔成分摘出と、による脊柱管内成分摘出を組み合わせたが行われることがある。腹側に位置し脊髄と癒着して全摘が困難な場合は、と交通させる開窓を伴うが代替となる1。吸引単独では長期的な効果が乏しく推奨されない1。文献上の再発率は0〜50%と幅があり、は脊椎病変より再発しやすいとされる2。不完全摘出の場合は長期にわたる経過観察を要する。

まとめ

  • は、ののうちを伴い脊柱管内と交通しうるもので、の一型に位置づけられる。
  • ・・などのをしばしば伴うが、決まったパターンは確立されていない。
  • 脊柱管内に成分が及ぶと脊髄圧迫症状や、交通が残ればのリスクがある。
  • の嚢胞にを認めたら、手術計画の前にでの有無を必ず評価する。
  • 治療はが基本で、例ではとを組み合わせたを検討する。

出典

  1. 1.Comprehensive Review of Spinal Neurenteric Cysts with a Focus on Histopathological Findings(Global Spine Journal・2018)神経腸管嚢胞が在胎第3週の原始内胚葉と外胚葉の分離不全に由来すること(脊索の分裂・脊索と内胚葉の癒着・神経腸管の閉鎖不全など複数の機序が提唱されている)、脊髄腫瘍の0.7〜1.3%を占め男性に多いこと、頸椎に最多で胸椎・腰仙椎がこれに続くこと、髄内外・硬膜内髄外性が78〜90%を占め脊髄の腹側〜腹外側に位置する傾向があること、半椎・側弯・単発または多発の二分脊椎・Klippel-Feil症候群などの椎体奇形をしばしば伴うが特定の奇形パターンとの明確な関連は確立されていないこと、MRIでT1・T2ともに脳脊髄液に近い等〜高信号を示しFLAIRで高信号となること・慢性炎症があるとリング状造影増強を示すこと、組織学的にWilkins-Odum分類(Type A:単純な立方〜円柱上皮、Type B:Type A所見に加え腺・軟骨・リンパ管様成分を含む、Type C:Type A所見に加え神経膠・上衣細胞を含む)で分類され免疫染色でPAS・ムチカルミン・CEA・EMA・CK7・CK20が陽性でGFAP陰性であること(上衣嚢胞との鑑別点)、完全摘出が再発率最小の治療であり腹側性・脊髄との癒着で全摘困難な場合はくも膜下腔と交通させる開窓を伴う亜全摘を行うこと、吸引単独は長期的な有効性を欠くため推奨されないことを確認した閲覧 2026-08-19
  2. 2.Neurenteric cysts: A neurosurgical case series and treatment perspectives(Biomedicine (Taipei)・2025)神経腸管嚢胞が内胚葉由来のまれな先天性奇形で腸管型または呼吸器型の粘液分泌性立方〜円柱上皮に覆われること、画像上くも膜嚢胞・類上皮嚢胞と類似し診断に迷うことがあること、可能な限り肉眼的全摘出(GTR)が推奨される一方で亜全摘(STR)・開窓術が代替として論じられていること、文献上の再発率が0〜50%と幅があり頭蓋内病変は脊椎病変より再発しやすいとされていることを確認した閲覧 2026-08-19