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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

進行性肺線維症

Progressive pulmonary fibrosis

別名
PPF
臓器系
呼吸器免疫・膠原病
科目
PulmonologyInternal Medicine
トピック
呼吸器内科 37:間質性肺疾患の病理と診断呼吸器内科 39:原因が明らかな間質性肺疾患内科学 S-05:間質性肺疾患
上位概念
間質性肺疾患
続発疾患
肺高血圧症
治療薬
ニンテダニブ
症状
労作時呼吸困難乾性咳嗽
検査値
スパイロメトリー肺拡散能
画像所見
すりガラス影網状影牽引性気管支拡張

🧠 全体像は独立した「病名」ではなく、以外のが、まるでのように進行していく経過(表現型)を指す診断ラベルである。関連ILD・・分類不能ILDなど、原因もパターンも異なるの中から「症状・肺機能・画像のうち2つ以上が1年以内に進行した」という振る舞いだけを共通項として切り出す考え方であり、ILDの原因分類にもう1本、時間軸に沿った進行性という横串を通すものだと捉えると理解しやすい。

位置づけ——ILD・IPFとの役割分担

⚠️ このノートを読む前提として、3つのノートの役割の違いを最初に押さえる。

ノート 扱う軸 一言で
原因による分類 ILDという全体の「分類の地図」(特発性関連・・薬剤性・の5つの引き出し)
個別の疾患 地図の中の1つの引き出し(特発性)を代表する、原因不明でUIPパターンを示す特定の疾患
経過・表現型 地図のどの引き出しに入っていようと(ただし自身は除く)、進行という振る舞いを示せば当てはまるラベル

PPFの定義は「以外のILD」に限定される。 は定義上すでに進行性線維化性疾患として扱われており、PPF基準を別途適用する対象ではない。PPFの基準を満たしうるとして、、線維化性、線維化性、線維化性関連ILD、線維化性、分類不能線維化性ILD、線維化性が挙げられている1。つまりILDの「5つの引き出し」のうち、特発性の中の以外の部分と、関連・の各引き出しの一部が、経過次第でPPFという横串に刺さりうる。

定義基準

//JRS/ALAT 2022ガイドラインは、PPFを以外のILDにおいて、代替説明のない次の3領域のうち2領域以上を過去1年以内に満たす状態と定義する2

領域 基準
症状悪化 代替説明のない呼吸器症状の悪化
生理学的進行 の絶対値5%以上の低下、またはDLCO%予測値の絶対値10%以上の低下1
画像上の進行 の増悪・拡大、新規の併存、新規細の増悪、の新規出現・増加、の増加のいずれか1
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='idiopathic pulmonary fibrosis'>IPF</span>以外のILDと診断済み<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='connective tissue disease (collagen vascular disease)'>膠原病</span>関連・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypersensitivity pneumonitis'>過敏性肺炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pneumoconiosis'>じん肺</span>・分類不能など)"] --> B["過去1年以内に<br>症状・生理学的機能・画像を再評価"]
    B --> C{"3領域中2領域以上が<br>代替説明なく悪化したか"}
    C -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive pulmonary fibrosis, PPF'>進行性肺線維症</span>ではない<br>基礎疾患の治療を継続"]
    C -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PPF'>進行性肺線維症</span>"]
    E --> F["基礎疾患治療を最適化しても<br>なお進行するか再評価"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nintedanib'>ニンテダニブ</span>を条件付きで検討"]

💡 「代替説明がないこと」が要件に含まれる点が重要である。感染、心不全、肺塞栓症などで症状や画像が悪化した場合はPPFと判断しない。

臨床像

PPFという表現型自体に固有の症状があるわけではなく、基礎疾患の種類を問わず、が緩徐に、あるいは月単位で悪化していく点が共通した臨床像になる。これらの症状悪化そのものが定義基準の1領域(症状悪化)を構成する。基礎疾患の活動性を示す随伴所見(関連ILDなら状・状、なら抗原曝露歴)が並存することもあり、これらは基礎疾患自体の活動性評価に用いる。

診断アプローチ

PPFは新しい病理パターンや検査で診断する疾患単位ではなく、既存のILD診断を前提に、経過を追跡して初めて判定できる表現型である。したがって診断の出発点は個々のILDの標準的な診断(HRCTパターン評価・など)であり、そのうえで肺・DLCO)と画像を定期的に再評価する縦断的な観察が不可欠になる。

治療——ニンテダニブとピルフェニドンの非対称性

PPFに対するの推奨は、の場合と違って2剤が同格ではない。

  • :基礎疾患の治療(免疫調整療法など)を最適化してもなお進行する非進行性線維化性ILDに対し、条件付きで推奨される2。オーストラリア・ニュージーランド胸部学会の2023年改訂ポジションステートメントも同様に「PPFの患者ではを検討すべき」としている1
  • :非進行性線維化性ILDに対しては、明確な推奨に至らず追加研究が求められる段階にとどまる2。エビデンスの質が低く、を検証したINBUILD試験に相当する規模・検出力を持つ試験が不足していることが理由として挙げられている1

⚠️ この非対称性は本ガイドラインが明示的に区別している点であり、「=2剤セットで同格に使える」という誤解をしないことが重要である。自体の治療(両剤とも承認済み)とPPFの治療(推奨レベルが分かれる)を混同しない。

治療の出発点はあくまで基礎疾患そのものの治療関連ILDなら免疫調整療法、なら曝露回避など)であり、これを最適化してもなお進行する場合にの追加を検討する、という順序が基本になる。

合併症・予後

進行性の線維化という経過をたどる以上、慢性低酸素血症と肺の破壊を背景にを合併しうる点はと共通する。個々の予後は基礎疾患・進行速度・治療反応性によって大きく異なり、PPFという表現型だけで一律の予後を語ることはできない。

まとめ

  • PPFは病名ではなく、以外のILDが「進行する線維化」という経過をたどる状態を指す表現型で、症状・生理学的機能・画像の3領域中2領域以上を1年以内に代替説明なく満たすことで定義する。
  • ILDが原因による分類の地図、がその中の特定の疾患であるのに対し、PPFは以外のどの引き出しからでも該当しうる経過軸のラベルである。
  • 生理学的進行は5%以上または 10%以上の低下、画像上の進行はの増悪・新規の増悪・の新規出現などで判定する。
  • 治療は基礎疾患治療の最適化が基本で、なお進行する例にはが条件付きで推奨される一方、は同等の推奨に至っておらず、両薬を同格に扱わない。

出典

  1. 1.Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / European Respiratory Society / Japanese Respiratory Society / Latin American Thoracic Society・2022)進行性肺線維症(PPF)を、IPF以外のILDにおいて症状悪化・生理学的進行・画像上の進行の3項目のうち2項目以上を過去1年以内に他の説明なく満たす状態と定義すること、非IPF進行性線維化性ILDに対しニンテダニブは条件付き推奨(conditional recommendation)とされた一方、ピルフェニドンは推奨に至らず追加研究が推奨されたこと(Results節)を確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Treatment of idiopathic pulmonary fibrosis and progressive pulmonary fibrosis: A position statement from the Thoracic Society of Australia and New Zealand 2023 revision(Thoracic Society of Australia and New Zealand・2023)PPFの基準を満たしうる疾患群として特発性線維化性NSIP・線維化性器質化肺炎・線維化性過敏性肺炎・線維化性膠原病関連ILD・線維化性サルコイドーシス・分類不能線維化性ILD・線維化性じん肺を挙げたこと(Table 2周辺)、PPFの生理学的進行基準がFVC%予測値の絶対値5%以上低下またはDLCO%予測値の絶対値10%以上低下、画像上の進行基準が牽引性気管支拡張の増悪・新規すりガラス影と牽引性気管支拡張の併存・新規細網状影・網状影の増悪・蜂巣肺の新規/増加・肺葉容積減少の増加のいずれかであること、ニンテダニブは"should be considered"という推奨である一方ピルフェニドンは低質のエビデンスにとどまる(INBUILD試験に対しピルフェニドンの試験はunderpowered)ことを確認した。閲覧 2026-08-11