呼吸器学

呼吸器学 · 37

間質性肺疾患の病理と診断

Pathology and diagnostics of interstitial lung diseases

前提:病態
慢性間質性(拘束性)肺疾患
前提:正常
呼吸器:呼吸部(肺胞・血液空気関門)
疾患
リンパ脈管筋腫症間質性肺疾患進行性肺線維症特発性肺線維症
検査値
血清VEGF-D
画像所見
牽引性気管支拡張蜂巣肺網状影

ポッドキャスト

🧠 全体像:は150以上の疾患からなる症候群で、だけでなく肺胞・・血管を含む肺実質を障害する。曝露・薬剤・自己免疫の聴取、パターン、肺機能、必要な検体を多職種で統合し、可逆的炎症と不可逆的線維化を区別する。

1. 病理学的概念

はとその周囲、すなわち相から毛細血管へO₂が移動する薄い組織領域である。ILDでは遠位と肺実質が両側性・斑状に障害され、炎症、肺胞構築破壊、線維化がさまざまな割合で混在する。

ILDとは同義ではない。 線維化は不可逆的な病理変化だが、感染や薬剤性などには原因除去・治療で改善するILDがある。

2. 分類

集団・診療環境によって疾患構成は異なり、一定の頻度配分を一律には示せない。臨床的には、既知原因のILD、、肉芽腫性ILD、その他に大別して考える。

群 代表疾患・原因
既知原因のILD 、、、、関節リウマチ・・SLE・シェーグレン症候群、・
主要IIP、稀なIIP、分類不能IIP。を含む
肉芽腫性ILD
その他 、など

3. 症候

4. 診断の流れ

flowchart TD
  A["病歴:薬剤・曝露・自己免疫"] --> B["診察・SpO₂・血液検査"]
  B --> C["肺機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusing capacity of the lung for carbon monoxide'>DLCO</span>・6分間歩行"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution computed tomography'>HRCT</span>パターン"]
  D --> E["多職種検討 MDD"]
  E --> F["臨床と画像で診断可能"]
  E --> G["診断不確実"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchoalveolar lavage'>BAL</span>・生検を利益と危険で選択"]

血液検査

  • ・などの炎症反応
  • 、特異的自己抗体などの自己免疫血清学
  • ではCa²⁺・を参考にするが、単独で診断しない。

血液ガスと運動評価

O₂はCO₂よりの影響を受けやすく、安静時が保たれていても運動時に拡散を使い切り脱飽和する。安静・運動時SpO₂、必要に応じABGを評価する。

胸部画像

パターンでは、・優位の、、を認める。

2022年の//JRS/ALAT指針は、2018年版で定義されたの4区分——パターン/probable パターン/indeterminate for /を示唆する所見——を統合せず、小修正のうえ維持した。「early pattern」という旧称は、間質性肺異常(ILA)との混同を避けるため廃止されている1。区分ごとの所見は次項ので扱う。

専門施設へ紹介する前にそろえる情報

領域 確認事項
家族・薬剤 家族性、・・メトトレキサート・など
職業・環境 、金属・木材・鉱物、鳥・羽毛、カビ、土壌、加湿器・槽など
自己免疫 関節痛、、皮膚変化、、筋力低下、眼・
基礎評価 、、安静・労作時SpO₂、肺機能、、、
症状、・、、運動時脱飽和、画像の推移

単一時点の・だけでは、診断も進行速度も決められない。前回値との比較は、初診時の絶対値と同じくらい重要である。

リンパ脈管筋腫症

は主として成人女性に生じる全身性腫瘍性疾患で、散発性と複合体関連がある。では両肺にびまん性のを認め、、反復する気胸、、を伴いうる。

2016年の/JRS指針は、に本症に特徴的ながあっても確証所見——複合体、、性の胸水・腹水、嚢胞性リンパ管筋腫——を欠く患者では、診断的へ進む前にを測定することを強く推奨している(エビデンスの質は中等度)。同指針が採用した判定閾値は 800 pg/mL 以上である。この閾値を確立した研究は特異度100%を報告しており、指針が30%を仮定した試算で用いた値は感度73%・特異度99%(閾値の高い2研究を平均した推定)である。偽陽性を最小にする代わりに偽陰性が増えることを委員会は意図して受け入れている——陰性でも除外にはならず、その患者は元々予定されていたへ進むだけだからである2。

治療は、肺機能が異常または低下している患者——同指針の但し書きは「異常な肺機能」をが予測値の70%未満と定義している——にはであるを経過観察より優先することが強く推奨され(エビデンスの質は中等度。治療の目標は肺機能の安定化、機能的能力の改善、の改善とされる)、問題となる・ではより先にを試すことが条件付きで提案される(エビデンスの質は非常に低い)。同指針はドキシサイクリンとをいずれも条件付きで否定している2。

5. 気管支鏡と組織診断

気管支肺胞洗浄

気管支鏡をへ進め、既知量のを注入・回収し、・微生物・悪性細胞を調べる。好酸球性肺疾患、感染、、薬剤性ILDなどの鑑別に有用だが、細胞数増加だけで特定疾患や予後を確定しない。

生検

  • は、結核、癌など、気道沿いまたはに病変が分布する疾患で診断に寄与しうる。好酸球性肺疾患や感染の評価では、組織だけでなくの・培養などを組み合わせる。
  • 診断不ではやを、経験ある施設でと比較して選ぶ。ただしでは、は線維性病型で提案される一方、非線維性病型では推奨が定まっていない3。
  • 全ILD患者に気管支鏡を一律施行するものではない。 <1.5 L、PaO₂ <60 mmHgといった単一の値を絶対境界にせず、・酸素化・・検査で診断が変わる可能性を総合する。

臨床的にが疑われ、がprobable でもの懸念が低ければ、多職種検討で生検なしに診断できる場合がある。組織が必要な場合、経験ある施設でのはの代替となりうる1。一方、を疑うときは、曝露評価・・リンパ球分画を先に統合し、不確実性が残る場合に組織採取を検討する3。

6. 肺機能と6分間歩行試験

7. 診断後の基本方針

  • ILD専門医、放射線科、病理、リウマチ科などの多職種検討で診断を統合する。
  • 原因除去・基礎疾患治療、適応例の療法、・併存症治療、、を組み合わせる。

進行性肺線維症

以外の線維性ILDで、代替説明なく過去1年以内に次の3領域中2つ以上を満たす場合をと定義する1。

領域 基準
症状 呼吸器症状の悪化
生理学 予測値の絶対低下 ≥5ポイント、または補正予測値の絶対低下 ≥10ポイント
画像 の増加、新規+、新規細、の増加・粗造化、新規または増加した、容量減少の増加

以外の線維性ILDに対する標準管理に反応せず進行する例では、が条件付きで推奨される(エビデンスの質は低い)。について2022年指針が出したのは推奨ではなく追加研究の要請であり、一般に対する治療推奨は確立していない1。原因に関係なく一律にを投与するのではなく、基礎疾患と炎症性・線維性の比重に合わせる。

まとめ

  • ILDはであり、線維化の有無・可逆性・原因を分けて考える。
  • と曝露・薬剤・自己免疫歴が診断の中心で、MDDが重要である。
  • やは全例ではなく、結果が診断・治療を変える場合に危険と利益を比較して行う。どの検査を勧めるかは疾患と病型で変わる(ではが線維性病型でのみ提案されている)。
  • で条件付きに推奨されているのはだけで、には推奨が無い(2022年指針が出したのは追加研究の要請である)。

出典

  1. 1.Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / European Respiratory Society / Japanese Respiratory Society / Latin American Thoracic Society・2022)全文(PMC9851481)を閲覧。2018年版の4区分(UIPパターン・probable UIPパターン・indeterminate for UIP・代替診断を示唆する所見)を統合せず小修正のうえ維持したこと、旧称「early UIP pattern」を間質性肺異常との混同を避けて廃止したこと、UIPパターンとprobable UIPパターンで診断の進め方は同様であり代替診断の臨床的懸念がなければ組織確認は通常不要としていること、経気管支凍結肺生検を経験ある施設では外科的肺生検の許容し得る代替とする条件付き推奨(エビデンスの質は非常に低い)、進行性肺線維症の定義(IPF以外のILDで代替説明なく過去1年以内に3領域中2つ以上)と、標準管理に失敗した線維性ILDへのニンテダニブの条件付き推奨(エビデンスの質は低い)、ピルフェニドンについては推奨ではなく追加研究の要請であることを確認した閲覧 2026-09-21
  2. 2.Official American Thoracic Society/Japanese Respiratory Society Clinical Practice Guidelines: Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management(American Thoracic Society / Japanese Respiratory Society・2016)全文(PMC5803656)を閲覧。特徴的な嚢胞性CT所見があり確証所見(結節性硬化症複合体・血管筋脂肪腫・乳び性胸水または腹水・嚢胞性リンパ管筋腫)を欠く患者では診断的肺生検の前に血清VEGF-Dを測定する強い推奨(エビデンスの質は中等度)であること、採用閾値が 800 pg/mL 以上で、この閾値を確立した研究が特異度100%を報告する一方、有病率30%を仮定した試算に用いられた値は感度73%・特異度99%(閾値の高い2研究を平均した推定)であること、偽陰性の患者は元来予定されていた肺生検へ進むだけなので偽陽性を減らす設計を委員会が選んだと明記していること、肺機能が異常または低下したLAM患者へのシロリムスが経過観察に優る強い推奨(エビデンスの質は中等度)で、但し書きが「異常な肺機能」をFEV1が予測値の70%未満と定義し治療目標を肺機能の安定化・機能的能力の改善・QOL改善としていること、問題となる乳び性貯留では侵襲的処置より先にシロリムスを試す条件付き推奨(エビデンスの質は非常に低い)であること、ドキシサイクリンとホルモン療法はいずれも条件付きで否定されていることを確認した閲覧 2026-09-21
  3. 3.Diagnosis of Hypersensitivity Pneumonitis in Adults: An Official ATS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / Japanese Respiratory Society / Latin American Thoracic Society・2020)全文(PMC7397797)を閲覧。過敏性肺炎を非線維性・線維性の2つの臨床表現型に分け、検査ごとに別々の推奨を置いていること、非線維性ではBALリンパ球分画の取得が「推奨」で経気管支鉗子肺生検が「提案」、経気管支凍結肺生検については賛否いずれの推奨も出していないこと、線維性ではBALリンパ球分画・凍結肺生検・外科的肺生検がいずれも「提案」であり経気管支鉗子肺生検には推奨を出していないこと、外科的肺生検はいずれの病型でも他の検査で診断がつかない場合に限る趣旨であること(いずれも推定効果への確信は非常に低い)を確認した閲覧 2026-09-21