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Lab values · Published

血清VEGF-D

Serum VEGF-D

別名
血管内皮増殖因子D
臓器系
呼吸器
科目
Internal MedicinePulmonology and Thoracic Surgery
トピック
内科学 S-05:間質性肺疾患呼吸器内科 37:間質性肺疾患の病理と診断
関連疾患
リンパ脈管筋腫症

🧠 全体像:-Dはリンパ管新生に関わるで、(LAM)ではがこれを産生する1。⭐ この検査の勘所は非対称性にある——800 pg/mL以上ならを省いて診断できるが、下回っても否定できない(閾値800 pg/mLで感度73%・特異度100%)1。⚠️ もう一つ大事なのは適用場面が限られていることで、この検査は「でを認める女性」の中でLAMかそれ以外かを分けるために検証されている。のない女性や男性での意義は分かっていない2。

何を測っているか

-D(D)はリンパ管内皮に働くで、腫瘍のに関与する。LAMではが-Dを産生し、これがリンパ管系への浸潤と転移様の進展に関わるとされる1。つまりこの検査は、そのものを見ているのではなく、が出しているリンパ管新生シグナルの量を血清で捉えている。

💡 だから量がを映す。 有無を判定するだけの指標ではなく、後述のとおり重症度・治療反応とも相関する。

実施法と判定指標

血清を用いてで定量する2。報告単位は pg/mL が一般的で、1 ng/mL=1,000 pg/mL である(文献によって単位が入れ替わるので読み違えない)。

閾値 診断特性 出典での位置づけ
800 pg/mL以上 感度73%・特異度100% /JRS 2016が診断アルゴリズムに採用した閾値1
800 pg/mL超 診断的に特異的 を有する女性のコホートでの原著の表現2
600 pg/mL超 特異度97.6%、尤度比35.2 同上。0.961(95% CI 0.923〜0.992)2

参考までに、原著が報告した群別の中央値は次のとおりで、LAMとそれ以外では分布そのものが離れている2。

群 中央値(IQR)
LAM(n=56) 1,175 pg/mL(780〜2,013)
その他の(n=44) 281 pg/mL(203〜351)
TSC-LAM 3,465 pg/mL(1,970〜7,195)
のみ(LAMなし) 370 pg/mL(291〜520)

結果の読み方

は、で特徴的なを認めるがLAMの臨床診断基準(TSC・・・のいずれか)を満たさない女性に対して測る1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution computed tomography'>HRCT</span>でびまん性・両側性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thin-walled cyst'>薄壁嚢胞</span>"] --> B{"TSC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal angiomyolipoma'>腎血管筋脂肪腫</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic lymphangioleiomyoma'>嚢胞状リンパ管筋腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chylous pleural effusion'>乳び胸水</span>のいずれかを伴うか"}
    B -->|"伴う"| C["臨床診断で確定<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor'>VEGF</span>-Dは診断には要らない)"]
    B -->|"伴わない"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum VEGF-D'>血清VEGF-D</span>を測定"]
    D --> E{"800 pg/mL以上か"}
    E -->|"以上"| F["生検を回避してLAMと診断"]
    E -->|"未満"| G["LAMは否定できない。<br>疑いが強ければ生検を検討"]

⚠️ 陰性は除外にならない。 原著も「陰性の-D結果はLAMの診断を除外しない」と明記している2。ガイドラインの試算でも、30%を仮定した1,000人のうち約219人がを回避できる一方、約81人は陰性でも生検を要する例として残り、断(偽陽性)が約10人生じる1。

重症度・治療反応の指標としての読み方

診断がついた後も、-Dはと治療反応を映す3。

  • ベースライン値はが大きい(0.34〜16.7 ng/mL)。
  • 酸素投与を要する患者では要さない患者より高い(1.7対0.84 ng/mL)。反応性のある患者でも高い(2.01対1.00 ng/mL)。
  • 投与群では6か月・12か月で低下し、プラセボ群ではほぼ横ばいだった。
  • ベースラインlog(-D)の1単位上昇は、12か月時点の変化における群間差134 mLと関連した。
  • 群のうち-Dが低下した例では65%(23例中15例)が改善を示し、低下しなかった例では27%(15例中4例)にとどまった。

⚠️ 測定・判読上の注意

  • 適用集団の外へ持ち出さない。 男性や、でを示さない女性における本検査の有用性は不明である2。健診的なではない。
  • LAMの臨床診断が既についているなら測らなくてよい。 TSC・・・のいずれかを伴う典型的所見は、それだけで確定に足りる1。-Dは「生検をするか否か」の分岐を減らすための検査である。
  • 境界値(600〜800 pg/mL)を陽性と読まない。 特異度が100%になるのは800 pg/mL以上であり、600 pg/mL超では特異度97.6%と偽陽性が残る21。
  • TSC女性では意味が二重になる。 TSC-LAMの値はTSCのみの女性よりはるかに高く2、TSC女性におけるLAM合併の検出にも使える。
  • 治療中の低下を「診断の取り消し」と読まない。 投与で値は下がる3。治療開始後の測定値を診断閾値に当てはめない。

次に進むべき検査・使い分け

状況 次の一手
800 pg/mL以上 生検を行わずLAMとして扱い、肺機能と腹部画像の評価へ進む
閾値未満だが疑いが強い を検討する。並行して腹部画像で・リンパ管筋腫を探す
嚢胞の分布・形態が非典型 ・など他のへ鑑別を広げる
診断確定後の経過観察 を主軸とし、-Dは重症度・治療反応の補助指標として併読する3

まとめ

  • はが産生するリンパ管新生因子を血清で測る非侵襲的検査で、で定量する。
  • 閾値は800 pg/mLで、感度73%・特異度100%。陽性ならを回避して診断できるが、陰性はLAMを除外しないという非対称な検査である。
  • 適用場面は「でを認めるがLAMの臨床診断基準を満たさない女性」に限られ、男性や嚢胞のない女性での意義は不明である。
  • TSC-LAMではTSCのみの女性より著明な高値をとり、TSC女性のLAM合併検出にも使える。
  • 診断後は重症度・治療反応の指標にもなる。で低下し、低下した患者ほどが改善しやすい。

出典

  1. 1.Official American Thoracic Society/Japanese Respiratory Society Clinical Practice Guidelines: Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management(American Thoracic Society / Japanese Respiratory Society・2016)特徴的なHRCT所見に加えTSC・腎血管筋脂肪腫・嚢胞状リンパ管筋腫・乳び胸水のいずれかを満たす場合にconfident clinical diagnosisとすること、これらを満たさない場合の血清VEGF-D診断閾値が800 pg/mLであり、この閾値での感度73%・特異度100%が報告されていること(パネルは事前に感度70%超・特異度90%超を採用基準としていたこと)、有病率30%と仮定した場合1,000人中約219人が肺生検を回避できる一方、真陰性から生検が必要となる例が約81人、誤診断(偽陽性)が約10人生じる試算があること、LAM細胞がVEGF-Dを産生しリンパ管系への浸潤・転移様の進展に関わることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Serum vascular endothelial growth factor-D prospectively distinguishes lymphangioleiomyomatosis from other diseases(Chest・2010)嚢胞性肺疾患で受診した女性48例で血清VEGF-Dを前向きにELISA測定し、結節性硬化症・TSC-LAM・孤発性LAM・その他の嚢胞性肺疾患(生検または遺伝学的に確定した肺Langerhans細胞組織球症・肺気腫・Sjögren症候群・Birt-Hogg-Dubé症候群)を鑑別に含む195例のコホートで診断能を求めたこと、孤発性LAMの血清VEGF-D中央値が1,175 pg/mL(IQR 780〜2,013、n=56)で他の嚢胞性肺疾患の281 pg/mL(IQR 203〜351、n=44)より有意に高かったこと(P<0.001)、前向き評価群では生検でLAMと確定した15例中12例が800 pg/mL超であった一方、他の嚢胞性肺疾患と診断された18例は全例600 pg/mL未満であったこと、ROC曲線下面積が0.961(95% CI 0.923〜0.992)であったこと、600 pg/mL超で特異度97.6%・尤度比35.2、800 pg/mL超は診断的に特異的であったこと、TSC-LAMの中央値3,465 pg/mL(IQR 1,970〜7,195)がTSCのみの370 pg/mL(IQR 291〜520)より有意に高かったこと(P<0.001)、陰性結果はLAMを除外しないこと、男性やHRCTで嚢胞性肺疾患を示さない女性における本検査の有用性は不明であることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Serum VEGF-D a concentration as a biomarker of lymphangioleiomyomatosis severity and treatment response: a prospective analysis of the Multicenter International Lymphangioleiomyomatosis Efficacy of Sirolimus (MILES) trial(The Lancet Respiratory Medicine・2013)MILES試験の参加者(プラセボ42例・シロリムス45例)でベースライン・6か月・12か月の血清VEGF-Dを測定した前向き解析で、ベースライン値の個人差が0.34〜16.7 ng/mLと広いこと、酸素投与を要する患者のベースライン値が要さない患者より高かったこと(1.7対0.84 ng/mL、P<0.0001)、気管支拡張薬反応性のある患者で高かったこと(2.01対1.00 ng/mL、P=0.0273)、シロリムス群では6か月・12か月で低下しプラセボ群ではほぼ横ばいであったこと、ベースラインlog(VEGF-D)の1単位上昇が12か月時点のFEV1変化における群間差134 mLと関連したこと(P=0.0007)、シロリムス群のVEGF-D反応例では23例中15例(65%)がFEV1改善を示したのに対し非反応例では15例中4例(27%)であったこと(P=0.0448)を確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-02