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Disease Atlas · 呼吸器 · 腫瘍

リンパ脈管筋腫症

Lymphangioleiomyomatosis

別名
LAM
臓器系
呼吸器腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePulmonology and Thoracic Surgery
トピック
内科学 S-05:間質性肺疾患呼吸器内科 37:間質性肺疾患の病理と診断
上位概念
間質性肺疾患
鑑別疾患
Birt-Hogg-Dubé症候群リンパ球性間質性肺炎
合併症
気胸
関連疾患
腎血管筋脂肪腫
治療薬
シロリムス
症状
労作時呼吸困難乾性咳嗽
検査値
血清VEGF-D
画像所見
薄壁嚢胞
元疾患
結節性硬化症

🧠 全体像:(LAM)は、平滑筋様のが肺・リンパ系・腎臓に増殖するほぼ女性だけに起こる希少な全身性疾患である1。LAMと(TSC)に伴うTSC-LAMを区別する——どちらもTSC1/TSC2遺伝子の機能喪失によるのという同じ機序で起こるが、は体細胞の変異が2回重なって生じ、TSC-LAMは生殖細胞系列の変異に体細胞の変異が加わって生じる。でびまん性のを見たら疑い、TSC・・・のいずれかがあれば臨床診断が確定し、無ければという非侵襲的なで生検を回避できることが多い。肺機能が予測値の70%を切ったら(MILES試験で肺機能低下を止める効果が実証された)を開始する。

病型と機序

LAMは(平滑筋様の腫瘍細胞)が肺実質・リンパ管・後腹膜・腎臓に増殖する希少な全身性疾患で、ほぼ成人女性に限られ(男性・小児例は報告があるが極めて稀)、はおよそ成人女性100万人あたり5人とされる1。

LAM TSC-LAM
背景 TSCを伴わない (TSC)を伴う
遺伝子変異 TSC2遺伝子にが2回(two-hit) 生殖細胞系列のTSC1またはTSC2変異+体細胞の2つ目の変異
頻度 まれ(世界で数千〜1万人規模と推定) TSCの女性患者の約半数に合併し、加齢とともに頻度が上昇する(下記参照)

いずれの病型でもTSC1()またはTSC2()遺伝子産物の機能が失われ、本来これらが抑制しているが恒常的に活性化する。その結果、の増殖・運動性・生存が制御を失う1。💡 も同じの異常から生じる——LAM・TSC-LAM・は「同じ経路異常が異なる臓器に出た表現型」として理解すると整理しやすい。はさらに-D(D)を発現し、これがリンパ管系への浸潤や、後にへがして再発するという転移様の性質に関わるとされる1。

⚠️ TSCの女性患者におけるLAM合併率は年齢に強く依存する。 133例のTSC女性患者コホート(うち画像のある101例)を初回胸部CTで評価した検討では、48例(47.5%)がTSC-LAMの基準を満たし、21歳未満では27%だったのに対し40歳超では81%に達した(年率およそ8%ずつ上昇)2。これより低い34%という数字が引用されることがあるが、これは2001年の小規模な初期スクリーニング研究に基づく——LAM既往のないTSC患者48例中、女性38例中13例(34%)にでLAMを認めたというもので、対象年齢層や検出手法がCudzilo 2013とは異なる3。

臨床像

初発症状はが最も多いが、気胸が診断より先に起こることが珍しくない——LAM Foundationの登録データベースでは、気胸の既往がある回答者193例のうち158例(82%)でLAM診断前に最初の気胸が発生していた4。⚠️ 若い女性の再発性気胸ではLAMを鑑別に入れる。 同じ調査では登録395例中260例(66%)が生涯に気胸を経験し、初回気胸後に73%が同側または対側の追加気胸を経験していた4。その他、・、による腹部腫瘤感や()でも発見されうる。

診断

⚠️ びまん性のを見たら(LIP)も鑑別に挙げる。 LIPも「が症例の最大80%にみられる」ことを主要な所見とし、LAMの起点となる画像所見と重なる。LIPは全体に及ぶびまん性の・・を伴う点、LAMは平滑筋様細胞の増殖でありTSC・・などの随伴所見やで区別できる点が鑑別の軸になる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution computed tomography'>HRCT</span>でびまん性・両側性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thin-walled cyst'>薄壁嚢胞</span>(round・大きさ様々)<br>※LIPなど他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic lung disease'>嚢胞性肺疾患</span>も鑑別"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tuberous sclerosis'>結節性硬化症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal angiomyolipoma'>腎血管筋脂肪腫</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystic lymphangioleiomyoma'>嚢胞状リンパ管筋腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chylous pleural effusion'>乳び胸水</span>のいずれかを伴うか"}
    B -->|"はい"| C["confident clinical diagnosis<br>(臨床診断で確定)"]
    B -->|"いいえ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum VEGF-D'>血清VEGF-D</span>を測定"]
    D --> E{"800 pg/mL以上か"}
    E -->|"はい"| C
    E -->|"いいえ"| F["生検を要することがある<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial growth factor'>VEGF</span>-D正常でもLAMを除外できない)"]

特徴的な所見(びまん性・両側性の)に加え、TSC・・・のいずれかを伴えば、それだけで臨床診断が確定する(confident clinical diagnosis)1。これらを欠く場合はを測定し、800 pg/mL以上であれば感度73%・特異度100%という報告に基づき生検を回避して診断できる1。⚠️ -Dが陰性でもLAMは否定できない——正常値を示す患者が一定数存在するため、臨床的に疑いが強ければ生検を検討する。

治療

が予測値の70%未満に低下または悪化している患者には、経過観察ではなくの開始が推奨される1。根拠となるMILES試験では、中等度の肺機能障害を有する89例(43例・46例)を12か月で比較し、群の変化速度が1±2 mL/月と安定していたのに対しプラセボ群は−12±2 mL/月で低下し続けた(有意差、153 mL)5。・機能的能力の指標も群で有意に改善した5。⚠️ 効果は投与継続に依存する。 12か月でを中止した後の観察期には、群も含め両群でが再び低下し(8±2対14±3 mL/月)、24か月時点では両群差が消失した5。有害事象は・下痢・悪心・・・下肢浮腫が多く、皮膚関連の有害事象は群で有意に多かった(3.0対1.9件/例)5。

問題となる貯留にも、外科的・に先立ってを検討することが提案されている1。一方、ドキシサイクリンと(・・などの・)は使用しないことが提案されている——いずれも質の低いエビデンスしかなく、一貫した有効性が示されていない1。

気胸の管理も重要な論点になる。同じ登録データベースの調査では、初回気胸後の再発率が保存的治療で66%と高く、(27%)・外科的処置(32%)の方が再発を抑えたが、いずれも将来のを受ける際の合併症と関連しうる——の既往がある患者では、術後の胸膜関連出血のリスクが高かった(既往あり13/45例、既往なしを含めた全体では14/80例(18%)に出血が生じ、そのうち13例(93%)がの既往を有していた)4。💡 将来の候補者では、気胸の初回治療の選択そのものが移植時のリスクに影響する——専門施設と連携して方針を決める。

進行例ではが肢になるが、がへして再発しうることが知られている(-Dが関わるとされる転移様の性質の一例)1。

まとめ

  • LAMはのTSC1/TSC2機能喪失とのによって起こる、ほぼ女性だけに生じる希少な全身性疾患。LAMとTSC-LAM(に伴う)を区別する。
  • びまん性のという所見に、TSC・・・のいずれかを伴えば臨床診断が確定する。それらが無ければ(閾値800 pg/mL)が非侵襲的診断の柱になるが、陰性でも除外はできない。
  • 気胸は診断に先行して起こることが多く、若年女性の再発性気胸ではLAMを鑑別に入れる。
  • が予測値の70%を切ったらを開始する。MILES試験で肺機能低下の抑制と改善が示されたが、効果は投与継続に依存し中止後は再び低下しうる。ドキシサイクリン・は推奨されない。
  • 気胸の管理(保存的・・外科的処置)は将来のを見据えて選択する。

出典

  1. 1.Official American Thoracic Society/Japanese Respiratory Society Clinical Practice Guidelines: Lymphangioleiomyomatosis Diagnosis and Management(American Thoracic Society / Japanese Respiratory Society・2016)LAMがほぼ成人女性に限られ(男性・小児例は稀)、概ね成人女性100万人あたり5人程度の希少疾患であること(原文:"LAM occurs almost exclusively in adult women, affecting approximately five per million")、孤発性の形とTSC(結節性硬化症)に伴う形(TSC-LAM)があることを確認した。LAM細胞がTSC1またはTSC2遺伝子の不活化変異を有し、これによりmTOR経路が恒常的に活性化して細胞の増殖・遊走・生存が制御を失うこと、LAM細胞がVEGF-Dを産生しこれがリンパ管系への浸潤・転移様の進展に関わることを確認した。confident clinical diagnosisの基準として、特徴的なHRCT所見に加え、TSC・腎血管筋脂肪腫・嚢胞状リンパ管筋腫・乳び胸水のいずれか1つを満たすことを確認した。これらを満たさない場合の血清VEGF-D診断閾値が800 pg/mLであり、この閾値での感度73%・特異度100%が報告されていること(パネルは事前に感度70%超・特異度90%超を採用基準としていたこと)、有病率30%と仮定した場合1,000人中約219人が肺生検を回避できる一方、真陰性からの生検要となる例(偽陰性)が約81人、誤診断(偽陽性)が約10人生じる試算があることを確認した。FEV1が予測値の70%未満へ低下・悪化した患者にはシロリムスによる治療を推奨し(観察ではなく)、目標は肺機能の安定化・機能的能力の改善・QOL改善であること、MILES試験でシロリムス群のFEV1変化速度が1±2 mL/月、プラセボ群が−12±2 mL/月であったことを確認した。問題となる乳び貯留に対しても侵襲的処置に先んじてシロリムスを提案していること、ドキシサイクリンおよびホルモン療法(プロゲスチン・GnRHアゴニスト・タモキシフェンなどのSERM・卵巣摘出)はいずれもエビデンスの質が低く有効性が一貫して示されていないとして使用しないことを提案していることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.Lymphangioleiomyomatosis Screening in Women With Tuberous Sclerosis(Chest・2013)結節性硬化症(TSC)の女性患者133例のうち胸部CT画像が得られた101例を初回CTで評価した検討で、48例(47.5%)が初回CTでTSC-LAMの基準(薄壁嚢胞の合計が3個超)を満たしたこと、LAMのリスクが年齢依存的で年率およそ8%ずつ上昇し、21歳未満の対象では27%、40歳超の対象では81%であったこと、無症状でLAMを有する対象の84%が気管分岐部レベルの単一断面に嚢胞を認めたこと、LAMを有する対象の63%が最終的に呼吸器症状を来し12.5%がLAMにより死亡したことを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Prevalence and Clinical Characteristics of Lymphangioleiomyomatosis (LAM) in Patients with Tuberous Sclerosis Complex(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine・2001)肺病変の既往のないTSC患者48例(女性38例・男性含む)をHRCTでスクリーニングした検討で、女性38例中13例(34%)にLAMを認め男性には認めなかったこと、スクリーニングで発見されたLAM例では肺機能が保たれていたのに対し既知のLAM例ではFEV1・DLcoがCT重症度と逆相関したこと、TSC女性におけるLAMの有病率34%はそれまで報告されていた頻度の約10倍であったことを確認した。閲覧 2026-09-02
  4. 4.Management of pneumothorax in lymphangioleiomyomatosis: effects on recurrence and lung transplantation complications(Chest(LAM Foundation患者登録データベースを用いた質問紙調査)・2006)LAM Foundationに登録された395例中260例(66%)が生涯に少なくとも1回の気胸を経験し、質問紙回答者193例のうち158例(82%)でLAM診断より前に最初の気胸が生じていたこと、140例(73%)が同側または対側の追加気胸を経験したこと、再発率が保存的治療後66%・化学的胸膜癒着術後27%・外科的処置後32%であったこと、肺移植を受けた80例中45例(56%)が移植前に胸膜癒着術を受けており、術後の胸膜関連出血は80例中14例(18%)に生じそのうち13例(93%)が胸膜癒着術の既往を有していたことを確認した。閲覧 2026-09-02
  5. 5.Efficacy and Safety of Sirolimus in Lymphangioleiomyomatosis(New England Journal of Medicine(MILES試験)・2011)中等度の肺機能障害を有するLAM患者89例(プラセボ43例・シロリムス46例)を対象に、12か月の無作為化二重盲検比較とその後12か月の観察期からなる2期試験を行い、治療期のFEV1変化速度がプラセボ群−12±2 mL/月に対しシロリムス群1±2 mL/月で有意差(P<0.001、平均変化量の差153 mL)があったこと、シロリムス群の46%・プラセボ群の12%が12か月時点でベースラインのFEV1を維持または改善していたこと、FVC変化速度も有意差(プラセボ−11±3対シロリムス8±3 mL/月、P<0.001、差226 mL)があったこと、EuroQOL視覚アナログスケール(P=0.02)とFunctional Performance Inventory(P=0.03)がシロリムス群で有意に改善したこと、6分間歩行距離には有意差がなかったこと、血清VEGF-D値がシロリムス群で6・12か月時点でプラセボ群より有意に低かったことを確認した。投与を中止した観察期にはプラセボ群8±2・シロリムス群14±3 mL/月とシロリムス群含め両群でFEV1が低下し、24か月時点の変化量には有意差が消失したことを確認した。有害事象は粘膜炎・下痢・悪心・高コレステロール血症・座瘡様皮疹・下肢浮腫が多く、皮膚関連有害事象の発生率がシロリムス群で有意に高かった(3.0対1.9件/例、P<0.001)ことを確認した。閲覧 2026-09-02