病理学

病理学 · C/21

慢性間質性(拘束性)肺疾患

Chronic interstitial (restrictive) lung diseases

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
間質性肺疾患間質性肺疾患の病理と診断原因が明らかな間質性肺疾患
疾患
Caplan症候群間質性肺疾患炭鉱夫塵肺症特発性肺線維症肺胞蛋白症肺胞微石症
検査値
抗GM-CSF自己抗体

🧠 全体像:肺疾患は「肺が硬くなって広がらない」病態でTLC・が下がるが/比は保たれる点でと対照的。の3大原因(石炭粉・・)は、いずれもマクロファージが吸入粒子に反応して壊死・線維化を起こすという共通機序をたどるが、とは石炭粉より低濃度で反応性が強く、それぞれ結核感受性増加・リスクという固有の合併症を持つ。

概要:拘束性と閉塞性

慢性疾患:

⭐⭐ ()の病理・画像パターンは「」だが、パターンはに特異的ではない。 関連・・など以外の線維化性ILDでもパターンを呈しうる。病理の教科書的な特徴は、新旧の線維化が混在するのと、病変の斑状分布である。2022年の//JRS/ALATガイドラインは、生検でのの診断を(1)構築の破壊を伴う斑状の高度線維化(破壊性の瘢痕や)、(2)・傍中隔への偏り、(3)、(4)を示唆する所見が無いこと、の組み合わせに置き、4つがそろえばパターン、一部のみでの所見が無ければ組織学的な「probable 」とした。同ガイドラインの主な変更は、()で「probable 」パターンの患者をパターンと同様に扱い、適切なでは多職種検討のうえなしにと診断しうるとした点である(画像のprobable と組織のprobable は別の判定である)1。

⭐ (・)は低下を遅らせるが、治癒させるわけではない。 は2つの複製(計1,066例)で、年間変化量をINPULSIS-1で-114.7 mL(-239.9 mL、差125.3 mL)、INPULSIS-2で-113.6 mL(-207.3 mL、差93.7 mL)にとどめた2。はASCEND試験(555例)で予測値10ポイント以上の低下・死亡の割合を相対的に47.9%減らした3。いずれも進行を遅らせる効果であり、線維化そのものを治癒させるものではない。

⭐ 「」という枠組みが導入され、以外のにもが用いられるようになった。 は、以外のILDで、過去1年以内に症状悪化・画像上の進行・生理学的進行(絶対値5%以上または絶対値10%以上の低下)の3つのうち2つ以上が他に説明なく生じた状態と定義される。同ガイドラインは、線維化性ILDの標準治療で効果が得られなかったにを提案(条件付き推奨、エビデンスの質は低)し、については追加研究を求めるにとどめた1。で肺容積の10%超に線維化があり、治療にもかかわらず過去24か月以内に進行した以外の線維化性ILD663例を対象としたINBUILD試験では、群の年間低下速度が-80.8 mL/年とプラセボ群-187.8 mL/年より有意に緩徐だった(群間差107.0 mL/年)4。

💡 (NSIP)はに伴いやすく、の診断はを除外する過程が中心となる。 (iNSIP)はの約4分の1を占めるとされる。では空間的・時間的な均一性でと区別され、は通常みられず、組織像は構築の保たれた均一な単核球性の肺胞・間質の炎症で、ほぼ常に線維化を伴う5。(COP)は、関連する病態(・感染・薬剤・・誤嚥など)が見つからないを指し、多くは経口副腎皮質ステロイドに速やかに反応して画像・症状・肺機能が完全に正常化しうる。再発は少なくないが、ステロイドの再開・増量によく反応する6。

塵肺(概要)

発生機序(共通)

  • 1〜5 µmの粒子が最も危険(の分岐部に沈着)
  • 分岐部に捕捉された粒子 → マクロファージにエンドサイトーシス →:
    1. 反応性粒子がマクロファージを殺す → リソソーム酵素の放出
    2. 粒子がマクロファージを刺激し炎症メディエーターを放出 → 壊死 → 線維化 → 肺胞・毛細血管の破壊 → 肺抵抗の増加 →
  • 石炭粉は比較的不活性、とは低濃度でより反応性
  • 煙はすべてのを悪化させる
flowchart TD
    A["1〜5 µmの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dust'>粉塵</span>粒子の吸入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar duct'>肺胞管</span>分岐部での捕捉"]
    B --> C["マクロファージによるエンドサイトーシス"]
    C --> D["マクロファージの壊死・炎症メディエーター放出"]
    D --> E["線維化"]
    E --> F["肺胞・毛細血管の破壊"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>の増加"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cor pulmonale'>肺性心</span>"]

炭鉱夫塵肺症

カテゴリー

無症状の(最も無害)

  • 吸入された炭素がに貪食 → リンパ節へ運ばれる → 黒色の色素沈着
  • 喫煙者・都市居住者にみられる

単純CWP(3所見):

  • :を含むマクロファージ(1〜5 mm、線維化を伴わない)
  • :を含むマクロファージ+(より大きく線維化を伴う。2 cm 超はの閾値であっての径ではない)
  • が併存しうる

複雑CWP = :

  • 単純CWPを背景にの融合
  • 肉眼:強く黒化した瘢痕 >2 cm(通常は多発)
  • 肺機能障害・肺高血圧・を生じるのは主にPMFで、無症状の・単純CWPは肺機能の低下をほとんど来さない

珪肺症

  • (毒性が強く不溶)の吸入
  • 発生機序: → マクロファージ貪食 → → リソソーム酵素放出 → 壊死 → 線維化 → → 肺胞・毛細血管の破壊 →
  • 形態:、、(異常なサーファクタント蓄積 → ガス交換を障害)
  • 臨床:呼吸困難は遅発性、結核への感受性増加(マクロファージ機能を阻害)

石綿肺

⭐ 喫煙は曝露者ののリスクをするが、のリスクには寄与しない。 曝露者の肺癌のは喫煙者でまたはに増加する(程度はコホートにより異なる)一方、喫煙はのリスク因子ではない7。

形態

  • びまん性の線維化
  • 鑑別点: — 金褐色、で透明な中心、中央の線維核が鉄–タンパク–層で被覆される
  • 鉄染色で検出
  • 組織像:中心性の線維化からまで
  • :緻密なコラーゲン+カルシウム、曝露の最も多い所見

臨床

  • 呼吸困難、咳、喀痰(あらゆるびまん性と同様)
  • 静止したまま、またはCHF、、死へ進行しうる
  • 癌リスクの増加

💡 ポイント: = TLC低下+低下、/正常。:1〜5 µmの粒子が最も危険。CWP:機能障害は主にPMF。:結核感受性の増加。:リスク+(陽性)+。

まとめ

  • 肺疾患は低下によりTLC・が低下するが、/比はほぼ正常でと対照的。
  • の主因は石炭粉()、()、()で、1〜5 µmの粒子が分岐部に沈着しやすく最も危険。
  • 共通機序はマクロファージによる粒子貪食→壊死・炎症メディエーター放出→線維化→肺胞・毛細血管破壊→という経路で、煙はすべてのを悪化させる。
  • ・単純CWPは肺機能の低下をほとんど来さず、肺機能障害・肺高血圧・を来すのは主に複雑CWP()である。
  • は結核への感受性を高め、を合併しうる。
  • は(陽性)とが特徴で、・のリスクを高める腫瘍の開始因子かつ促進因子。

出典

  1. 1.Idiopathic Pulmonary Fibrosis (an Update) and Progressive Pulmonary Fibrosis in Adults: An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society / European Respiratory Society / Japanese Respiratory Society / Latin American Thoracic Society・2022)PMC全文(PMC9851481)で、生検によるUIPの診断が(1)構築の破壊を伴う斑状の高度線維化(破壊性の瘢痕および/または蜂巣肺)、(2)胸膜下・傍中隔の肺実質への偏り、(3)線維芽細胞巣、(4)代替診断を示唆する所見の欠如、の組み合わせに基づき、4つがそろえば確信をもってUIPパターンとし、一部のみで代替診断の所見が無いものを組織学的「probable UIP」と呼ぶこと、2018年版からの診断アルゴリズムの主な変更はHRCTでprobable UIPパターンの患者をUIPパターンと同様に扱い、適切な臨床状況では多職種検討のうえ肺生検なしにIPFと診断しうるとした点であること、進行性肺線維症(PPF)をIPF以外のILDで過去1年以内に症状悪化・画像上の進行・生理学的進行(FVC絶対値5%以上またはDLCO絶対値10%以上の低下)の3つのうち2つ以上が他に説明なく生じた状態と定義し、線維化性ILDの標準治療で効果が得られなかったPPFにニンテダニブを提案(条件付き推奨、エビデンスの質は低)し、ピルフェニドンは追加研究を推奨するにとどめたことを確認した閲覧 2026-08-27
  2. 2.Efficacy and Safety of Nintedanib in Idiopathic Pulmonary Fibrosis(New England Journal of Medicine(INPULSIS-1/2試験)・2014)IPF患者計1,066例を対象とした2つの複製第III相試験の抄録で、ニンテダニブ150mg1日2回投与群の調整年間FVC変化量は、INPULSIS-1で-114.7mL対プラセボ-239.9mL(差125.3mL、95%CI 77.7〜172.8)、INPULSIS-2で-113.6mL対-207.3mL(差93.7mL、95%CI 44.8〜142.7)で、著者は疾患進行の緩徐化と整合すると結論したことを確認した閲覧 2026-08-27
  3. 3.A Phase 3 Trial of Pirfenidone in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis(The New England Journal of Medicine・2014)IPF患者555例を52週間追跡したASCEND試験で、ピルフェニドン群はプラセボ群に比べFVC予測値の10ポイント以上の絶対低下または死亡を来した患者の割合が47.9%相対的に低く、FVC低下のない患者の割合は132.5%相対的に高かったが、疾患の進行を遅らせる効果であり治癒ではなかったことを確認した閲覧 2026-08-27
  4. 4.Nintedanib in Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases(New England Journal of Medicine(INBUILD試験)・2019)HRCTで肺容積の10%超に線維化があり、治療にもかかわらず過去24か月以内に進行の基準を満たしたIPF以外の線維化性ILD663例を対象としたINBUILD試験で、ニンテダニブ群の年間FVC低下速度が-80.8mL/年だったのに対しプラセボ群は-187.8mL/年で、群間差107.0mL/年(95%CI 65.4〜148.5)であったこと、対象にはUIP様パターンを含む多様な線維化性ILDが含まれ、IPF以外の線維化性間質性肺疾患にも抗線維化薬(ニンテダニブ)を用いる根拠となったことを確認した閲覧 2026-08-27
  5. 5.Presentation, diagnosis and clinical course of the spectrum of progressive-fibrosing interstitial lung diseases(European Respiratory Review・2018)Europe PMC全文で、iNSIPの診断は主に膠原病または自己免疫性所見を伴うILDの可能性を除外する過程であること、iNSIPはHRCTで空間的・時間的な均一性によってIPFと区別され、蜂巣肺は通常みられず、組織像は構築の保たれた均一な肺胞・間質の単核球性炎症でほぼ常に線維化を伴うことを確認した(iNSIPが特発性間質性肺炎の約4分の1を占めるという記述は本総説が先行文献を引いたもの)閲覧 2026-08-27
  6. 6.Cryptogenic organising pneumonia: current understanding of an enigmatic lung disease(European Respiratory Review・2021)PMC全文(PMC9488952)で、器質化肺炎(OP)は膠原病・感染・薬剤反応・過敏性肺炎・誤嚥など多様な病態に伴って生じ、関連する病態が見つからず特発性と考えられる場合を特発性器質化肺炎(COP)と呼ぶこと、COPは無治療で自然寛解することもあるが通常は経口副腎皮質ステロイドに速やかに反応し画像・症状・肺機能が完全に正常化しうること、再発は少なくないがステロイドの再開・増量によく反応することを確認した(総説の表が引く個別コホートの生存率は本文に採らない)閲覧 2026-08-27
  7. 7.Pulmonary Endpoints (Lung Carcinomas and Asbestosis) Following Inhalation Exposure to Asbestos(Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B・2011)PMC全文(PMC3118517)で、アスベスト曝露労働者の肺癌の発生率は喫煙者で相加的または相乗的に増加し程度はコホートにより異なること、喫煙は中皮腫のリスク因子ではないこと(抄録)を確認した閲覧 2026-08-27