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Disease Atlas · 神経 · 疾患

脊髄硬膜外血腫

Spinal epidural hematoma

別名
脊柱管硬膜外血腫Spinal EDH
臓器系
神経血液
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-25:脊柱管・脊髄の占拠性病変
続発疾患
圧迫性脊髄症
症状
背部痛筋力低下しびれ膀胱膨満

🧠 全体像:脊髄は、脊柱管内のに血液が急速にたまり脊髄を機械的に圧迫するの急性型の一つである。約40〜50%は原因不明の特発性だが、残りは抗凝固薬・血液凝固異常、後や後の医原性、外傷が背景にある——つまり「原因が分からない」ことも珍しくないが、それでも緊急性は下がらない。核心は、突然の激しいのあとに進行する運動・感覚障害という時間の流れそのものが診断の手がかりになることと、発症から・手術までの時間が機能予後を直接左右することにある。頭蓋内のとは、生じる部位・原因・症状・のいずれも異なる別の疾患単位として扱う。

位置づけ:圧迫性脊髄症の急性型の一つ

脊髄は、脊柱管内の(硬膜と・椎体の間の疎な結合組織腔)に血液が急速に貯留し、脊髄を直接圧迫する病態である。のうち、時間〜日単位で進行する急性〜亜急性型に属し、・と並ぶ代表的な原因の一つである。年間は10万人あたり約0.1人と非常にまれで、全の1%に満たない1。

⚠️ 頭蓋内のとは別の疾患単位である。 頭蓋内はによる損傷が主因で受傷から意識障害までのが特徴となるのに対し、脊髄は抗凝固薬や特発性の出血が主体であり、好発部位・臨床像・のいずれも異なる。両者を同一の病態として混同しない。

原因:特発性が最多だが背景因子も多彩

⭐ 約40〜50%は明確な原因が同定されない特発性である1。残りの症例では以下のような背景因子が関与する。

分類 具体例
凝固関連 抗凝固薬(ワルファリン・)内服、血友病などの血液凝固異常、
医原性 後、・後、後
脊椎外傷(骨折・に伴う出血)
血管性 脊柱管内の
特発性 明確な誘因を欠く自然発症(約40〜50%)
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural space'>硬膜外腔</span>への急速な出血"] --> B{"背景因子"}
    B -->|"抗凝固薬・血液凝固異常"| C["脊髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural hematoma, EDH'>硬膜外血腫</span>"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spine surgery'>脊椎手術</span>後・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural anesthesia'>硬膜外麻酔</span>後"| C
    B -->|"外傷"| C
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular malformations'>血管奇形</span>"| C
    B -->|"誘因なし(約40〜50%)"| C
    C --> D["脊髄の急性機械的圧迫"]
    D --> E["圧迫<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high'>高位</span>以下の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute myelopathy'>急性脊髄症</span>状"]

臨床像

⭐ 突然発症の激しいに続いて、運動・感覚障害が進行するというそのものが診断の出発点になる。 自験例の解析では79%に、93%に疼痛と一致または後続する(筋力低下・しびれ)、43%に膀胱直腸括約筋障害を認めた1。圧迫より下の・という、全般に共通するパターンをとる。

⚠️ 抗凝固薬内服中の患者で突然のが急速な神経症状に変わったときは、他の原因を先に除外しようとせず本症を最優先で疑う。 症状の進行が数分〜数時間単位で起こりうるため、評価の遅れがそのまま機能予後の悪化に直結する。

診断:MRIが第一選択

⭐ が第一選択の画像検査である。 で等〜高信号、で高信号を呈し、血腫の位置・脊髄への圧迫の程度を評価する1。が施行できない場合はやで代替する。

治療:緊急外科的除圧と抗凝固薬の是正

⭐ 緊急が治療の中心である。 運動症状出現から12〜36時間以内の手術が一般に推奨されるが、発症96時間後の手術でも完全回復が報告された例があり、時間が経過していても手術の意義を諦めない1。別の報告では、発症12時間以内に手術を行った例で87%が機能回復を得ている2。自験例全体では69.2%が良好な転帰(modified Rankin Scale 2以下)を得た1。

💡 抗凝固薬使用中の患者では、手術と並行しての是正(拮抗薬投与)を検討する。 出血源そのものへの介入()と、出血を助長する背景因子への介入(凝固能是正)は両輪であり、どちらか一方だけでは不十分になりうる1。

flowchart TD
    A["突然の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='back pain'>背部痛</span>→進行する運動・感覚障害"] --> B["緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
    B --> C["脊髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural hematoma, EDH'>硬膜外血腫</span>と診断"]
    C --> D{"抗凝固薬使用中か"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulopathy'>凝固障害</span>の是正(拮抗薬投与)と<br>緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical decompression'>外科的除圧</span>を並行"]
    D -->|"いいえ"| F["緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical decompression'>外科的除圧</span>"]
    E --> G["症状出現から12〜36時間以内の手術が望ましい<br>(時間が経過していても手術の意義は残る)"]
    F --> G

まとめ

  • 脊髄はの急性型の一つで、頭蓋内のとは部位・原因・臨床像・の異なる別の疾患単位である。
  • 約40〜50%は原因不明の特発性で、残りは抗凝固薬・血液凝固異常、後・後の医原性、外傷などが背景となる。
  • 突然の激しいに続く進行性の運動・感覚障害というそのものが診断の出発点になり、抗凝固薬内服中の患者では特に優先して疑う。
  • が第一選択の診断法で、治療は緊急が中心。症状出現から12〜36時間以内の手術が推奨されるが、時間が経過していても手術の意義は残る。抗凝固薬使用中はの是正も並行する。

出典

  1. 1.Prognostic Factors and Treatment Efficacy in Spontaneous Spinal Epidural Hematoma: A Single Center Experience and Literature Review(In Vivo・2024)自然発症脊髄硬膜外血腫(SSEH)の年間発生率が10万人あたり約0.1人にとどまり全脊柱管占拠性病変の1%未満を占めるまれな疾患であること、血友病・血管奇形・凝固障害・抗凝固薬使用・腫瘍・高血圧などが危険因子として挙げられる一方で約40〜50%は原因不明の特発性であること、突然の激しい頸部・背部痛で発症し様々な程度の麻痺に進行すること(自験例で79%に背部痛、93%に疼痛と一致または後続する神経脱落症状、43%に膀胱直腸括約筋障害)、MRIが第一選択の診断法でありT1強調像で等〜高信号・T2強調像で高信号を呈すること、外科的治療は運動症状出現から12〜36時間以内が一般的な推奨だが発症96時間後の手術でも完全回復が報告されていること、自験例で69.2%が良好な転帰(modified Rankin Scale 2以下)を得たこと、抗凝固薬使用中の患者では手術前に凝固障害を是正することが重要であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Epidural Hematoma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)脊髄硬膜外血腫(spinal EDH)の外科的除圧により87%の患者で機能回復が得られ、発症後12時間以内に手術を行った例で転帰が最も良好であったことを確認した。閲覧 2026-09-07