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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

複合アシルCoA脱水素酵素欠損症

Multiple acyl-CoA dehydrogenase deficiency

別名
グルタル酸血症II型グルタル酸尿症II型MADDGA2
臓器系
内分泌・代謝運動器小児
科目
PediatricsMedical Biochemistry
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価生化学 5/6:脂肪酸の酸化;ケトン体
上位概念
先天性脂肪酸酸化異常症
鑑別疾患
CACT欠損症CPT2欠損症イソ吉草酸血症中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症
合併症
横紋筋融解症肥大型心筋症拡張型心筋症
治療薬
ベザフィブラートL-カルニチンリボフラビンコエンザイムQ10
症状
筋痛筋力低下筋痙攣濃色尿肝腫大痙攣末梢神経障害
検査値
アシルカルニチン分析クレアチンキナーゼ低血糖βヒドロキシ酪酸アンモニア
適応薬
コエンザイムQ10リボフラビン

🧠 全体像:(MADD、)は、やのように1つの酵素段階だけが壊れる病気ではない。ETF(フラビン蛋白)とETFDH(ETF脱水素酵素)は、短鎖から極長鎖までのすべての、さらにアミノ酸代謝・コリン代謝の脱水素酵素反応から出る電子を一手に引き受けてへ渡す共通のである12。⭐ だからここが壊れると、のどのも、有機酸代謝の複数の経路も、同時に止まる。 で複数のが一緒に上昇するのは、この「共通の」という機序をそのまま反映した所見である。⚠️ 臨床像はの致死的な代謝クリーゼから、成人の反復性まで極めて幅広い2。

病態——なぜ「複合」なのか

flowchart TD
    A["短鎖・中鎖・長鎖・極<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-chain acyl-CoA dehydrogenase (LCAD)'>長鎖アシルCoA脱水素酵素</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutaryl'>グルタリル</span>CoA脱水素酵素<br>イソバレリルCoA脱水素酵素"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electron transport'>電子伝達</span>フラビン蛋白(ETF)"]
    B --> C["ETF脱水素酵素(ETFDH)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitochondrial electron transport chain'>ミトコンドリア電子伝達系</span>"]
    E["ETFA・ETFB・ETFDH<br>いずれかの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biallelic'>両アレル性</span>病的変異"] --> F["共通の電子受け渡し点が働かない"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty acid beta-oxidation'>脂肪酸β酸化</span>(全<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chain length'>鎖長</span>)が同時に障害"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leucine'>ロイシン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isoleucine (Ile)'>イソロイシン</span>代謝など<br>複数の有機酸代謝経路も同時に障害"]
  • はETFA・ETFB・ETFDHのいずれかで、ETFα・ETFβ・ETFDHの各酵素に対応する2。
  • ⭐ 特異的な酵素(CPT2、CACT、、VLCADなど)が1つずつ壊れる病気群とは、壊れる場所の階層が違う。 MADDは個々の脱水素酵素の下流で電子を受け取るが壊れるため、「複数のが同時に」障害される1。
  • ⚠️ フラビンジヌクレオチド()は、これらの脱水素酵素反応のとして働く。 そのためのであるリボフラビン(ビタミンB2)の欠乏やその代謝障害でも同様の生化学的病態(GA2類縁疾患)が生じるが、日本のガイドラインはこれをGA2そのものとは区別して扱う——でなければ両者は鑑別できない2。
  • 💡 との対比が機序の理解を試す最短経路になる。 はでのの「運び込み」だけが壊れるので、(MCT)で迂回できる。MADDは中鎖・短鎖の酵素反応そのものが壊れているので、MCTでは迂回できない——日本のガイドラインがMADDの急性期にを投与すべきでないと明記するのはこのためである2。⚠️ でが治療の柱になるのと正反対である。
  • 病態生理としてはの一員だが、⚠️ (I型・など)としての側面も併せ持つ——尿中にグルタル酸が蓄積することが病名の由来である2。

臨床病型——2つの分類が並立する

⚠️ 海外の成書と日本のガイドラインで、病型の切り方が違う。 GeneReviewsは3分類(タイプI・II・III)、日本のガイドラインは他の症と揃えた4分類を用いる2。

GeneReviews(3型) 日本のガイドライン(4型) 内容
— NBSや家系内検索で見つかる無症状例。⚠️ NBSで診断されながら突然死や乳幼児危急事態(ALTE)を呈した報告もある暫定分類2
タイプI(を伴う) 出生後早期からの重篤な心筋症・心不全・・非。Potter様・・男児のを伴う場合と伴わない場合があるが、⚠️ いずれも予後は極めて不良で治療に反応せず早期に死亡することが多い21
タイプII(を伴わない)
タイプIII(最も頻度が高い) 乳幼児期発症型 発熱・下痢などのを契機に、非〜を伴う・代謝性アシドーシス・・の形態で間欠的発作。⚠️ として発症することもある2
() 青年期以降に・筋力低下・筋痛。⭐ 小児期には低血糖や筋力低下は原則として認めない2

⭐ タイプI(でを伴う)は、の中では珍しい表現型である。 のも嚢胞性・異常などのを伴いうる点で並ぶ、数少ない「新生児発症+」の組合せである1。

⭐ MADD350例のコホートで、診断時年齢の平均は17.6歳(範囲0.13〜69歳)だった1。⚠️ 成人診断例では、分析やで異常を認めない場合がある2——生化学的に「正常」に見えても除外できない。

症候

  • ⭐ 骨格筋症状は「発作性」ではなく「慢性・進行性」になりやすい点が、他の症と違う。 に無症状の症例もあるが、一般的にはあるいは進行性の(筋力低下など)を呈する2。
  • 筋痛・・()はの一部として起こる。
  • は増悪時に見られるが、には明らかでないことが多い2。
  • ⚠️ 独特の体臭と症状。 「足の蒸れた」「汗臭い」と形容される体臭や、・などのを呈することがある——複数の(I型・)と似た病像になる理由である2。
  • ⚠️ 末梢神経障害を合併しうる。 四肢末端の・感覚を来した成人例が報告され、を疑う所見(振幅低下はあるが延長やの遅延はない)を呈しやすい。⭐ この神経障害は治療抵抗性で、リボフラビンやケトン体療法も無効とされる2。
  • ⚠️ 急速に進行する筋力低下とで、と誤認されうる。 鑑別にはが有用とされる2。

診断

⭐ の「広さ」が最大の手がかりである。

検査 所見
(血清を優先) GeneReviewsはC4・C5・C5DC・C6・C8・C10・C12・C14:1・C16・C18:1の上昇を挙げる1。日本のガイドラインも短〜が広範に上昇するプロファイルを特徴とする2
NBSでの指標 でのC10の上昇。⚠️ にはが生理的に低下し見逃し例が生じうるため、疑われたら速やかにを優先する2
非ケトン性・エチル・ヘキサノイルグリシン・スベリルグリシン・イソバレリルグリシン・メチルブチリルグリシン・グルタル酸・2-ヒドロキシグルタル酸の排泄増加。⚠️ 軽症例では異常を認めないことがあり、正常でも否定できない2
遺伝学的検査 ETFA・ETFB・ETFDHの(片アレルのみ変異ならを追加)。⭐ リボフラビン代謝異常症(GA2類縁疾患)との鑑別はでなければできない21
flowchart TD
    A["NBSでC10高値、またはGA2を疑う臨床像"] --> B["速やかに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum acylcarnitine analysis'>血清アシルカルニチン分析</span>"]
    B --> C{"C4〜C16の広範な上昇<br>またはC5DC・C5の上昇"}
    C -->|"該当しない"| D["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty acid metabolism disorder'>脂肪酸代謝異常</span>症<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium-chain acyl-CoA dehydrogenase'>MCAD</span>・VLCAD・CPT2・TFP欠損症など)を再検討"]
    C -->|"該当する"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinary organic acid analysis'>尿中有機酸分析</span>"]
    E --> F{"3-OHグルタル酸や<br>イソバレリルグリシンの排泄増多"}
    F -->|"あり"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutaric acidemia'>グルタル酸血症</span>1型・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='isovaleric acidemia'>イソ吉草酸血症</span>を疑う"]
    F -->|"なし・エチル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malonate'>マロン酸</span>や<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dicarboxylic acid'>ジカルボン酸</span>の排泄増多"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic analysis'>遺伝子解析</span>へ"]
    H --> I{"ETFA・ETFB・ETFDHに<br>病的変異が複合ヘテロ/ホモ接合"}
    I -->|"あり"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutaric acidemia'>グルタル酸血症</span>2型(MADD)"]
    I -->|"なし・原因不明"| K["GA2類縁疾患<br>(リボフラビン代謝異常症)を疑う"]

⚠️ 本疾患はの一次対象ではなく二次である。 軽症例の検出が困難な場合があり、重症例は治療に反応しない症例が多いことがその理由とされる2。⭐ がであるのと対照的である。 また、他の(・欠損症・原発性症など)の疑陽性を契機に本疾患が見つかることもある2。

⚠️ 鑑別——単一鎖長の異常症とどう見分けるか

⭐ の「上昇するの幅」が最大の鑑別点である。

疾患 所見 MADDとの違い
MADD(本症) 短鎖〜長鎖にわたる広範な上昇(C4〜C18:1)1 —
長鎖のみ(C12〜C18、とくにC16・C18:1)1 短鎖・中鎖は正常。MCTで迂回できる
と同じ長鎖パターンででは鑑別不能 (CPT2かSLC25A20か)でのみ区別
1型 C5DCの単独上昇が主体 多の同時上昇はない
C5の単独上昇が主体 同上

⭐ との鑑別は運動の様式で当たりをつけられる。 は短時間の強い運動後に発作を起こしやすいのに対し、MADDは長時間の中等度の運動後に発作が起こりやすい2。

治療

急性期

⭐ 本体はブドウ糖でを止めることであり、の急性期治療と骨格は同じである。

内容
GeneReviews 高用量ブドウ糖(若年患者で8〜12 mg/kg/分)で血糖値100 mg/dL超を維持し、1〜2時間ごとにモニタリング1
日本のガイドライン 血糖100 mg/dLを目標に補正(推奨度B)。維持できなければGIR 7〜10 mg/kg/分で中心静脈カテーテルを留置。高血糖時はGIRを下げずインスリン0.01〜0.05単位/kg/hrを考慮2

慢性期

治療 内容 位置づけ
リボフラビン大量療法(推奨度B) 100〜300 mg/日 ⭐ MADDの約98%が反応するとされる1。⚠️ ただし日本人での著効報告は海外に比べ少ない——本邦は重症型の変異が多いためとみられる2
(推奨度C) 50〜100 mg/kg/日を3分割 20 μmol/L以下の欠乏があれば積極的に投与2
コエンザイムQ10 ユビデカレノンとして60〜240 mg/日を2分割(推奨度B) 国際的にはリボフラビンと並ぶとされるが、⚠️ 日本人での有効性データは乏しい2
(推奨度C) — 日本のオープンラベル試験で・入院回数は改善したが、⚠️ である発作回数への有効性は示されず、この試験にMADD患者自体は含まれていない2
低タンパク・低脂肪・ ⚠️ 明確な指標はなく、多くの場合厳格な制限は不要。リボフラビン著効例では食事制限自体が不要になる2

⚠️ リボフラビンとコエンザイムQ10は「著効すれば終わり」ではない。 中国からの報告ではリボフラビン中止後も安定していた例がある一方、感冒などを契機に症状がした例もあり、生涯にわたって継続したほうがよいとされる2。

⭐ 運動制限とsick day対応。 登山やマラソンなど長時間の運動は避けるべきだが、運動制限が筋症状の進行を遅らせるというエビデンスはない2。⚠️ sick day対応はこの疾患でとりわけ重要である。 38℃を超える発熱・嘔吐・下痢は原則入院してを行う——心筋症のや不整脈による突然死のリスクがあるため、病状の程度によらず心電図モニターの装着が推奨される2。

予後・成人期の課題

⚠️ 成人期になっても油断できない。 本疾患は慢性・進行性の病態で、年齢によらず突然死のリスクがあるとされる2。⭐ 日本では他国に比べ重症型の変異が多く、リボフラビン有効例が少ないため長期生存例・成人発症例自体が多くない2。

妊娠については、⚠️ 積極的な食事指導と増量によって問題なく出産に至った報告がある——低脂肪・による妊娠成功例が国際的にも報告されている12。妊娠中の補充が胎児へ悪影響を及ぼす根拠はなく、リボフラビンも必須栄養素として安全とみなされる1。

疫学

集団 頻度
日本 約48万出生に1人(2015年までの336万人対象の疫学研究)2
約25万出生に1人
中国 ⚠️ 性の原因として最も頻度が高い1

まとめ

  • MADDはETF・ETFDHという共通の電子が壊れる病気で、単一のだけが障害される・とは壊れる階層が違う。⭐ で複数の(C4〜C18:1)が同時に上昇するのがその生化学的なである。
  • ⚠️ MCTでは迂回できない。 と違い中鎖の酵素反応そのものが障害されているため、急性期にを投与すべきでない。
  • 病型は海外3分類(タイプI・II・III)と日本4分類(・・乳幼児期発症型・)が並立する。⭐ 骨格筋症状は発作性でなく慢性・進行性になりやすい点が他の症と異なる。
  • ⚠️ NBSは一次対象ではなく二次。 ではC10の上昇のみで見逃されうるため、疑われたら速やかにを行う。確定診断はETFA/ETFB/ETFDHのによる。
  • 急性期はブドウ糖でを止め、イントラリピドは禁忌。慢性期はリボフラビン(の約98%が反応、ただし日本人では著効例が少ない)・・コエンザイムQ10・を組み合わせる。
  • ⚠️ 成人期も突然死のリスクが残り、sick day対応は生涯にわたって続ける。 日本は重症型の変異が多く、成人発症例・長期生存例が国際的な報告より少ない。

出典

  1. 1.Multiple Acyl-CoA Dehydrogenase Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2020)NCBI Bookshelfのライブページを取得して確認した(初版2020年6月18日公開、以後の改訂履歴なし)。MADDが電子伝達フラビン蛋白(ETF)またはETF脱水素酵素(ETFDH)をコードする`ETFA`・`ETFB`・`ETFDH`の両アレル性病的変異により生じること、ETF-ETFDH複合体が脂肪酸酸化系の複数の脱水素酵素(鎖長の異なるアシルCoA脱水素酵素群)に加えアミノ酸代謝・コリン代謝の脱水素酵素反応からの電子を共通に受け取りミトコンドリア電子伝達系へ渡す役割を持つため、この複合体が働かなくなると「複数のアシルCoA脱水素酵素」が同時に障害されること、生化学的特徴が血中の複数のアシルカルニチン種の上昇と尿中の複数の有機酸排泄増加の組合せであり具体的にC4・C5・C5DC・C6・C8・C10・C12・C14:1・C16・C18:1が上昇しうること、この複数鎖長の同時上昇が単一の酵素段階を侵す疾患群(CPT2欠損症など)との鑑別点であること、重症度による3分類が新生児期発症で先天奇形(異形顔貌・嚢胞性腎・神経細胞移動異常など)を伴うタイプI、先天奇形を伴わない新生児期発症のタイプII、乳児期から成人期にわたる遅発性のタイプIII(最も頻度が高い)であること、遅発型MADD350例のコホートで診断時年齢の平均が17.6歳(範囲0.13〜69歳)であったこと、遅発型MADDの約98%がリボフラビン反応性を示すこと(リボフラビンがFADに変換されETFDH酵素を安定化する補酵素として働く)、新生児マススクリーニングの濾紙血でC4・C5・C8アナライトの上昇が指標となること、確定診断が血漿アシルカルニチンプロファイルと尿中有機酸分析に分子遺伝学的検査(`ETFDH`・`ETFA`・`ETFB`のシークエンス解析、片アレルのみ変異が見つかった場合は欠失重複解析を追加)を組み合わせて行われること、日常管理としてタンパク質と脂肪の食事制限・長時間絶食の回避・高用量リボフラビン(100〜300 mg/日)・カルニチン補充(50〜100 mg/kg/日を3分割)・コエンザイムQ10補充(60〜240 mg/日を2分割)が挙げられること、急性期対応として静脈内輸液に高用量ブドウ糖(若年患者で8〜12 mg/kg/分)を用いて血糖値100 mg/dL超を維持し1〜2時間ごとにモニタリングすること、揮発性麻酔薬や長鎖脂肪酸を高用量含むプロポフォール・エトミデートは可能なら避けるべきとされる一方で低用量プロポフォール併用が奏功した症例報告もあること、代謝クリーゼ中のイントラリピド(脂肪乳剤)投与は禁忌でありエネルギー補給は炭水化物で行うべきであること、遅発型MADDでの低脂肪・高炭水化物食による妊娠成功例が報告されていること・妊娠中のカルニチン補充が胎児への悪影響を示す根拠はなくリボフラビンも必須栄養素として安全とみなされること、新生児期発症でCPT2欠損症の致死性新生児型が先天奇形(嚢胞性腎異形成・神経細胞移動異常)を伴いうる点でMADDタイプIと並ぶ稀な新生児発症の先天奇形合併疾患であること、出生時発生頻度が世界的には約25万出生に1人と推定される一方で中国では脂質蓄積性ミオパチーの原因として最も頻度が高いことを確認した。閲覧 2026-09-06
  2. 2.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 グルタル酸血症2型(複合アシルCoA脱水素酵素欠損症)(日本先天代謝異常学会・2025)PDF全文をテキスト抽出して確認した。グルタル酸血症2型(GA2)が国際的には複合アシルCoA脱水素酵素欠損症(MADD)と記載されることが多く、ETFおよびETFDHの先天的欠損により短鎖・中鎖・極長鎖アシルCoA脱水素酵素、グルタリルCoA脱水素酵素、イソバレリルCoA脱水素酵素などの複数の脱水素酵素反応から電子伝達系への電子供給が同時に障害されて生じること、常染色体潜性遺伝であること、リボフラビン代謝異常症は「GA2類縁疾患」として扱いGA2そのものには含めないこと、日本における発生頻度が1997〜2012年のパイロット研究196万人を含む2015年までの336万人を対象とした疫学研究で約48万出生に1人であったこと、新生児マススクリーニングの二次対象疾患に分類されており軽症例の検出が困難な場合があり重症例は治療に反応しない症例が多いこと、日本人では早期診断されても乳幼児期に死亡するような比較的重症の患者が多く海外に比べリボフラビン著効例の報告が少ないこと、臨床病型を発症前型・新生児期発症型・乳幼児期発症型・遅発型(骨格筋型)の4型に分類し海外の成書のタイプ1・タイプ2・タイプ3(遅発型)分類とは分け方が異なること、新生児期発症型がPotter様顔貌・多嚢胞腎・尿道下裂といった先天奇形を伴う場合と伴わない場合があり心筋症・心不全・呼吸障害・非ケトン性低血糖を呈しいずれも予後が極めて不良で治療に反応せず出生後早期に死亡することが多いこと、乳幼児期発症型が発熱や下痢などの異化亢進を契機に非〜低ケトン性低血糖を伴う急性脳症・代謝性アシドーシス・高アンモニア血症・Reye様症候群の形態で間欠的発作をきたし乳幼児突然死症候群として発症することもあること、遅発型(骨格筋型)が青年期以降に横紋筋融解・筋力低下・筋痛を主要症状とし小児期には低血糖や筋力低下は原則として認めず成人診断例ではろ紙血タンデムマス分析や尿中有機酸分析で異常を認めない場合もあること、遅発型骨格筋症状が発作間欠期に無症状となる症例もある一方で一般的には慢性的あるいは進行性の近位筋ミオパチーを呈する点が他の脂肪酸代謝異常症と異なること、四肢末端のしびれ・軸索変性を示す感覚神経障害を合併しうるが治療抵抗性でリボフラビンやケトン療法も無効とされること、独特の「足の蒸れた」「汗臭い」体臭やジストニア・ジスキネジアなどの錐体外路症状を呈しうること、新生児マススクリーニングでの本疾患のマーカーがC10の上昇である一方実際には短〜長鎖アシルカルニチンが広範に上昇するプロファイルが特徴でありNBS陽性時には速やかに血清アシルカルニチン分析を優先すべきこと(濾紙血では安定期に長鎖アシルカルニチンが低下し見逃し例が生じうるため)、尿中有機酸分析では非ケトン性ジカルボン酸・エチルマロン酸・ヘキサノイルグリシン・スベリルグリシン・イソバレリルグリシン・メチルブチリルグリシン・グルタル酸・2-ヒドロキシグルタル酸の排泄増加が特徴だが軽症例では異常を認めないことがあること、確定診断には`ETFA`・`ETFB`・`ETFDH`いずれかの遺伝子解析が推奨されリボフラビン代謝異常症(GA2類縁疾患)との鑑別は遺伝子解析でなければできないこと、鑑別診断としてGA2以外の脂肪酸代謝異常症・急性脳症・ミトコンドリア病・糖原病に加えグルタル酸血症1型やイソ吉草酸血症などの有機酸代謝異常症が挙げられ糖原病が短時間の強い運動後に発作を起こしやすいのに対し本疾患では長時間の中等度の運動後に発作が起こりやすいこと、急性発作時の治療がブドウ糖を含む輸液で血糖値100 mg/dLを目標に補正すること(推奨度B)・血糖が維持できなければGIR 7〜10 mg/kg/分を目安に中心静脈カテーテルを留置すること・高血糖時はGIRを下げずインスリン0.01〜0.05単位/kg/hrを考慮すること・本疾患ではMCTミルクを投与すべきでないこと、体温を38℃以下に管理しアセトアミノフェンは安全に使用できるがNSAIDs(メフェナム酸・ジクロフェナクなど)はβ酸化酵素の活性低下を招く可能性があり使用すべきでないこと(推奨度E)、横紋筋融解症を主症状とする場合CK値が10万U/L以上となることも珍しくなく糖分を含む大量輸液とアルカリ化で急性腎不全を予防すること、慢性期管理の食事療法が低タンパク・低脂肪・高炭水化物食だが多くの場合厳格な制限は不要とされリボフラビン著効例では食事制限が不要になること・非加熱コーンスターチ1〜2 g/kg/回を就寝前に用いる症例があること(推奨度C)、薬物療法としてリボフラビン大量療法100〜300 mg/日(推奨度B、日本人での著効報告は海外に比べ少ない)・L-カルニチン50〜100 mg/kg/日(推奨度C、遊離カルニチン20 μmol/L以下の欠乏があれば積極的に投与)・ベザフィブラート(推奨度C、日本のオープンラベル試験でQOLと入院回数は改善したが横紋筋融解発作回数への有効性は示されず本疾患患者は試験に含まれていない)・コエンザイムQ10(ユビデカレノンとして60〜240 mg/日を2分割、推奨度B、国際的にはリボフラビンと並ぶ第一選択薬だが日本人での有効性データは乏しい)・D,L-3-ヒドロキシブチレートによるケトン体療法(推奨度C、未承認)が挙げられること、運動制限として登山やマラソンなど長時間の運動は横紋筋融解症を誘発しやすく原則避けるべきだが運動制限が筋症状の進行を遅らせるというエビデンスは無いこと、sick day対応が本疾患ではとりわけ重要で38℃を超える発熱・嘔吐・下痢では原則入院してブドウ糖輸液を行い心筋症の急性増悪や不整脈による突然死のリスクがあるため心電図モニターの装着が推奨されること、成人期には慢性・進行性の病態で年齢によらず突然死のリスクがあり日本では他国に比べ重症型の変異が多くリボフラビン有効例が少ないため長期生存例・成人発症例が多くないこと、周術期については十分なブドウ糖輸液と血糖・CKモニタリングを行えば近年は特に禁忌とすべき麻酔薬はないとされることを確認した。閲覧 2026-09-06