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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

CACT欠損症

Carnitine-acylcarnitine translocase deficiency

別名
カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症SLC25A20欠損症
臓器系
内分泌・代謝循環器小児
科目
Medical BiochemistryPediatrics
トピック
生化学 5/6:脂肪酸の酸化;ケトン体小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価小児科 2-30:低血糖の症状と治療
上位概念
先天性脂肪酸酸化異常症
鑑別疾患
CPT1A欠損症CPT2欠損症ライ症候群原発性カルニチン欠損症中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症複合アシルCoA脱水素酵素欠損症
合併症
不整脈肥大型心筋症
治療薬
L-カルニチントリヘプタノイン
症状
筋緊張低下肝腫大痙攣嘔吐筋力低下頻呼吸意識障害
検査値
アシルカルニチン分析アンモニア低血糖クレアチンキナーゼβヒドロキシ酪酸アミノトランスフェラーゼ

🧠 全体像:はSLC25A20がコードするの欠損で、をミトコンドリア内へ運び込めなくなるである1。⭐ この病気の掴みどころは、と「検査では見分けがつかないのに、臨床像が違う」ことである——はC16・C18・C18:1が上がる点で同一で、出生時の発症時にもでも区別できない2。⚠️ だが病型の分布はまったく違う。 で最多の「反復性の筋型」に相当するものが本症にはほとんど無く、日本のガイドラインは筋症状のみを主体とする明らかなの報告は無いと明記する1。⭐ 本症の顔はの不整脈とで、心停止の頻度が高く、が長期のを決める2。

カルニチンシャトルの真ん中が抜ける

は、そのままではを通れない。外膜のCPT1がを付けてにし、内膜のCACTがと交換でそれをマトリックスへ運び入れ、内膜内側のCPT2がへ戻す2。CACTはとしてに局在する1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-chain fatty acid'>長鎖脂肪酸</span>+CoA(細胞質)"] --> B["CPT1(外膜):<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acyl group'>アシル基</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carnitine'>カルニチン</span>へ転移"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-chain acylcarnitine'>長鎖アシルカルニチン</span>"]
    C --> D["CACT(内膜):<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acylcarnitine'>アシルカルニチン</span>を取り込み<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='free carnitine'>遊離カルニチン</span>を細胞質へ返す"]
    D --> E["CPT2(内膜内側):<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acyl-CoA'>アシルCoA</span>を再生"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-oxidation'>β酸化</span>"]
    C -.->|"CACTが欠損すると通れない"| G["細胞質に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-chain acylcarnitine'>長鎖アシルカルニチン</span>が蓄積<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='free carnitine'>遊離カルニチン</span>は低下"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoketotic hypoglycemia'>低ケトン性低血糖</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>・不整脈・心筋症"]

⭐ 蓄積するそのものが毒である。 日本のガイドラインは、症で一般的なに加えて、本症ではやを起こすことが知られており、蓄積するの毒性が原因とされると述べている1。💡 エネルギー不足だけでは説明できない不整脈の多彩さが、この病気を他のから浮き立たせている。

💡 なぜCACTだけが前面に出るのか。 GeneReviewsは、ではアセチルCoAが減るため(尿素サイクルの必須の活性化因子)が減少するという機序が提唱されていると記す2。⭐ だからではなく、ブドウ糖でアセチルCoAの供給を立て直す方が効くという治療の形につながる。

⚠️ CPT2欠損症との対比

⭐ 生化学で分けられないので、臨床像と遺伝子で分ける。 GeneReviewsの鑑別表は、について「とはが類似しており、出生時の発症時およびでは区別できない。および/またはが必要である」と記している2。

遺伝子 SLC25A20(3p21.31) CPT2
⚠️ C16・C18・C18:1の上昇で同一。区別できない 同左
中心となる病型 ⭐ (欧米の報告で約80%) ⭐ 筋型()
筋症状主体の ⚠️ 報告が無い(日本のガイドライン) 反復性のが最多の病型
変異の型 ・・が多い が多い
慢性期の補充 ⭐ 推奨される(約100 mg/kg/日。心毒性はマウスモデルの所見で、患者での経験は心毒性を来さないことを「示唆する」) ⚠️ 議論がある(不整脈リスクとして提唱されている)

💡 変異の型が重症度の偏りを説明する。 日本のガイドラインは、SLC25A20では・・が多く、これがと異なり重症型が多い理由の一つとしている1。⭐ 蛋白がまるごと失われる変異が多ければは低くなる。

病型

⚠️ GeneReviewsと日本のガイドラインで「」の指すものが違う。 GeneReviewsは生後1か月以降の発症をまとめてと呼び14例を数えている2。一方、日本のガイドラインが言う「」は学童期以降に筋症状で見つかる型であり、⭐ その意味でのは本症では報告が無い1。両者は矛盾しておらず、本症の「」は乳幼児期の低血糖と心病変で来るのであって、筋症状では来ないということである。

重症新生児期発症型

⭐ 生後2日ごろ、の結果が返る前に発症する2。欧米の報告では約80%の症例がここに入り、けいれん・無呼吸・不整脈・心筋症などで発症する1。

領域 所見
心(⭐ 最も目立つ) を筆頭とする不整脈。1度房室ブロック・・・幅広いQRSの・も2。片室性/両室性の、55%未満の
代謝 低ケトン性低血糖・・上昇・乳酸/代謝性アシドーシス・
一般 ・・・を伴う
まれな ・・嚢胞腎・・1
病理 骨格筋・心筋・肝臓・腎尿細管の脂肪変性1
  • ⭐ 酵素活性は1%未満で、診断や治療が遅れれば生後12か月未満で死亡する2。
  • ⚠️ 最も多い死因はによる心停止である2。他に、急性感染に続く敗血症やショック、そして小児期のやによる死亡も報告されている。
  • 急性期を乗り越えても終わらない。 長期生存例では慢性のと軽度〜中等度のが続き、・・胆石・、・・・が報告されている2。
  • ⚠️ を決めるのはの反復である。 発症時の脳障害(しばしば心停止による)と、その後の代謝不全に伴うの頻度・程度がに寄与する2。

軽症早発型・遅発型(生後1か月以降)

GeneReviewsはの診断時所見の頻度を次のように示す2。⚠️ 同章が記載するは14例であり、母集団が小さい。

所見 頻度
70%(感染後に生じた例もあれば誘因が同定できない例もある)
心病変 40%(低下・・・・・心停止)
呼吸器症状 30%(・低酸素血症・無呼吸・呼吸不全)
20%(100 µmol/Lを超えうる)
上昇 20%
20%(200 U/Lを超えうる)
代謝性/ 20%
  • ⚠️ 酵素活性で予後を決めない。 の酵素活性は対照の1〜10%だが、1〜10%でも重症新生児型と同じ臨床像を示した例がある2。日本のガイドラインも同じ趣旨を述べている1。
  • ⚠️ に無症状でも安心できない。 日本のガイドラインは、にを認めない症例であっても、感染症罹患を契機として突然死を起こしうることを繰り返し強調し、発熱時や嘔吐時の対応に厳重な注意を求めている1。

多施設の実データ

23例を集めた国際多施設のが、この病気の重心を数字で示している3。

  • 16例のうち15例が発症時に心病変を持ち、内訳は不整脈9/15・心停止7/15・9/15。
  • アンモニアは測定された14例中13例で上昇、16例中14例が低血糖。
  • ⭐ 軽症化した7例はいずれもパキスタン系で、うち6例がc.82G>Tのホモ接合。遅発ので、慢性を伴わずに長期生存していた。
  • のうち9例が長期生存したが、多くが摂食障害と認知の遅れを伴っていた。
  • ⚠️ のみの閲覧である3。

疫学と遺伝型

集団 頻度
オーストラリア・ドイツ・米国(データの統合) 約1:750,000〜1:2,000,0002
香港 1:60,0002
台湾 1:400,0002
日本 ⚠️ 約196万人のNBSパイロット研究で発見例なし。 日本人症例は7例(6家系)の報告にとどまる1

⭐ 東アジアで高頻度なのはc.199-10T>Gのためと考えられている2。

バリアント 集団 表現型
c.199-10T>G ⭐ 東アジア・東南アジア系で最多。日本人症例でも報告1 ホモ接合で重症新生児型
c.270delC(p.Phe91fs) トルコ由来 ホモ接合で重症新生児型
c.713A>G(p.Gln238Arg) 中東由来 ホモ接合で重症新生児型
**c.82G>T(p.Gly28Cys) ⭐ **パキスタン系・インド系 ホモ接合で軽症または
c.824G>A ⚠️ 沖縄 ⚠️ ホモ接合。報告例はいずれもNBSの結果が出る前に発症した重症例1

(集団と表現型の対応はGeneReviews2、c.824G>Aと日本の状況は日本のガイドライン1による)

💡 日本での「まれ」は今後変わりうる。 日本のガイドラインは、がのへ引き上げられ、も同じスクリーニング指標を用いるため、今後診断例が増加する可能性があると述べている1。

診断

flowchart TD
    A["新生児の不整脈・心停止・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoketotic hypoglycemia'>低ケトン性低血糖</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperammonemia'>高アンモニア血症</span>、または<br>NBSでC16・C18:1高値"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glucose infusion'>ブドウ糖輸液</span>を始める前の検体確保に努める"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum acylcarnitine analysis'>血清アシルカルニチン分析</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dried blood spot'>ろ紙血</span>より優先する)"]
    C --> D{"C16・C16:1・C18・C18:1が上昇<br>C0低値・(C16+C18:1)/C2比高値"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carnitine-acylcarnitine translocase deficiency'>CACT欠損症</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carnitine palmitoyltransferase II deficiency'>CPT2欠損症</span>"]
    D -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='VLCAD deficiency'>VLCAD欠損症</span>・TANGO2関連疾患・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitochondrial disease'>ミトコンドリア病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glycogen storage diseases'>糖原病</span>など他の鑑別へ"]
    E --> G["SLC25A20の遺伝学的検査で確定<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acylcarnitine'>アシルカルニチン</span>ではCPT2と区別できない)"]
    G --> H["確定を待たずに高炭水化物・長鎖脂肪制限の栄養管理を開始する"]
  • ⭐ 確定はSLC25A20のによる。 での酵素活性著減でも確定できるが、感度が比較的高い遺伝学的検査が優先される2。⚠️ 2024年1月時点で、日本国内にCACT酵素活性を測定している施設は無い1。
  • ⚠️ では否定できない。 周産期以降のではの上昇が検出しにくくなり見逃し例が生じうるため、より感度に優れるを行う1。NBS陽性例は再検査を繰り返さず、速やかに血清で測る。
  • 日本のNBS指標:のC14/C3比と(C16+C18:1)/C2比を組み合わせる指標が、2018年度のの引き上げと同時に導入された。⭐ を基準に作られた指標だが、4例のNBSデータからも同じで診断可能と報告されている1。
  • ⚠️ NBSの結果は間に合わないことが多い。 重症の大半は、結果が返る時点ですでに発症している2。
  • 急性期の一般検査:血糖・アンモニア・CK・AST/ALT・血液ガス・乳酸・・血中/・、そして心エコーと心電図モニター1。低ケトン性の判定にはとを同時に測り、/ > 2.5、/ > 3.0 を目安とする1。
  • 鑑別:のほか、(C14・C14:1・C14:2・C12優位でプロファイルがかなり違う)とTANGO2関連・不整脈がGeneReviewsの鑑別表に挙がる2。日本のガイドラインはこれに(などの)・・を加える1。⚠️ 急激な発症のためと診断されて見逃される可能性がある1。

治療

急性期——ブドウ糖で異化を止める

内容
GeneReviews 経口/経腸の炭水化物(在宅)または(院内)。⭐ は高いブドウ糖に最もよく反応する——1歳未満12〜15 g/kg/日、1〜6歳10〜12 g/kg/日2
日本のガイドライン まず低血糖を補正し血糖100 mg/dLを目安に維持。維持できなければGIR 7〜10 mg/kg/分を目安に中心静脈カテーテルを留置1
  • ⚠️ の効きは限られる。 ・の有効性は限定的とされる2。⚠️ の評価は出典で割れる——GeneReviewsは2例にされ1例で良好かつ安定した転帰が得られたとする2一方、23例のはがとに抵抗性であったと報告している3。⭐ 両者が一致しているのは「高濃度ブドウ糖にはよく反応する」という点である。
  • ⚠️ 体温を38℃以下に管理する。 は安全に使用できるが、(・など)はの活性低下を引き起こす可能性があり使用すべきでない(推奨度E)1。
  • ⚠️⚠️ 急性期の静注の扱いが、と違う。 症ではの蓄積につながるとして急性期の経静脈的投与は禁忌と考えられていることが多かったが、⭐ 本疾患については近年のデータから急性期にも静注が行われ有効性と安全性が報告されており、一部ではの持続静注が心筋症の改善につながったとする報告もある——日本のガイドラインは「注意して投与する」としている1。
  • 心:不整脈・心筋症・・はでの標準治療。⭐ の患者ではの使用を考慮すべきとされる2。が検討されることもある。
  • :ブドウ糖を含む大量輸液と。⚠️ 輸液の糖濃度についてのコンセンサスは無く、症例ごとに血糖をモニタリングしながら行う1。

慢性期——食事が治療の本体

GeneReviewsの日常管理は次のである2。

柱 内容
総カロリーの60%超。長鎖脂肪は10%未満に制限し、はクルミ油・亜麻仁油などで補う
(総カロリーの25〜35%。Table 5では10〜35%)。7炭素の合成で、アセチルCoA 2分子・ 1分子・5炭素ケトン体4分子を供給しを補充する
代替 が得られなければ(総カロリーの10〜30%)
補充 ⭐ 約100 mg/kg/日(Table 5では50〜200 mg/kg/日を分2〜分3)
  • ⚠️ の根拠は薄い。 GeneReviews自身が「でのの使用の根拠は限られている」とし、安全性と有効性が記載されたのは5例(うち3例はで発症)にとどまると書いている2。
  • ⭐ 日本でも2026年3月に使えるようになった。 日本のガイドラインは「2024年12月現在、承認されていない」と記載しているが1、⚠️ その後(ドジョルビ)は2026年3月に「」を効能・効果としてされ、同年5月に発売された4。効能・効果に病型の限定は無く、⭐ 承認の根拠となった海外のうち延長試験(94例)には4例が組み入れられている(承認の軸となった29例の試験には含まれない)4。💡 承認前に書かれた資料は「未承認」のままなので、入手可能性の記述は版を確かめて読む。 含有(明治721)とは、なお代替・併用の選択肢である。
  • ⚠️ の効きも完全ではない。 のMCT製剤に含まれる脂肪酸の20〜50%はC10以上で、この部分はに依存する。これが本症でMCT製剤によるが不十分になる理由と考えられており、⭐ 無脂肪のにC8オイルを加える方式を好む施設もある2。
  • ⭐ 補充の位置づけがと逆を向いている。 での補充はマウスモデルの心毒性所見から議論があったが、⭐ では患者での経験の蓄積が「補充は心毒性につながらないことを示唆する」とされる2。⚠️ 「示唆する(suggests)」であって否定ではない——比較試験があるわけではなく、否定的な証拠が積み上がっていないという形の根拠である。同章は急性期入院治療の表にもの静注を挙げている2。日本のガイドラインは推奨度Dとしつつ、海外の慢性期大量投与例(50〜200 mg/kg/日)を挙げ、血中濃度を(15〜20 µmol/L)以上に保つ補充が一般的とする1。
  • 絶食させない。 日本のガイドラインの食事間隔の目安1。
年齢 日中 睡眠時
3時間 —
6か月まで 4時間 4時間
1歳まで 4時間 6時間
4歳未満 4時間 8〜10時間
4歳以上7歳未満 4時間 10時間

7歳以上は重症度により大きく異なるため個別に決める。⚠️ これはの目安で、sick day では間隔を短くする1。乳児期・幼児期早期には夜間のが勧められることがあり、年長児では1〜2 g/kg/回の就寝前内服が代わりになりうる(推奨度C)21。

  • ⚠️ には代償がある。 慢性反復性のを防ぐには高い炭水化物摂取が必要と思われるが、過度の体重増加とを招きうる2。⭐ 「を止める」ことと「太らせない」ことが同じ食事の中で衝突するので、と肝機能を並べて追う。
  • は本症でも推奨度Cにとどまる。デンマークのでは効果を認めず、日本のオープンラベル非試験でもであるの発作回数について有効性が示されなかった1。
  • 💡 を厚くする方向の試み。 23例の研究では、個別症例で試みられたd,l-・・蛋白摂取増加が慢性のと代謝の安定を改善したように見えた3。⚠️ 症例ごとの試行であり、対照は無い。

⚠️ 避けるもの・sick day

  • 長時間の絶食、を来す疾患(発熱・感染症)、ストレス時の不十分なカロリー投与、長時間の激しい運動、そして⚠️ を高濃度に含む麻酔薬(など)の長時間投与2。
  • ⚠️ をもつを原則使用しない(血中濃度を低下させうる。推奨度E)。⭐ 外来診療を行う他科のとの間で意思統一が必要とされている1。
  • ⭐ sick day は原則入院。 38℃を超える発熱や嘔吐・下痢を認めたら、心電図とのモニター下で厳重に管理する。⚠️ 初回受診時に哺乳可能であっても重篤な代謝不全を起こした症例がある1。
  • :年1回の心エコー、定期的な心電図/ホルター、成長と発達の評価、アンモニア・・肝機能・血糖・電解質・アルブミンの測定。生後1年以降は年1回、・・も測る2。
  • ハイリスク同胞は年齢によらず全員を検査する2。である。

まとめ

  • はSLC25A20(3p21.31)の欠損での内膜の輸送段が抜けるのである。CACTはを取り込むと同時にを細胞質へ返すである。
  • ⚠️ とで区別できない(C16・C18・C18:1の上昇)。GeneReviewsは「出生時の発症時にもでも区別できない」と明記する。確定はSLC25A20の遺伝学的検査。
  • ⭐ しかし臨床像の重心は違う。 で最多の筋型に相当する型が本症にはほとんど無く、日本のガイドラインは筋症状のみを主体とする明らかなの報告は無いとする。本症の顔はの不整脈・心筋症・である。
  • ⚠️ 心停止が最多の死因(による)。心室性に加えてやを起こす点が本症の特徴で、蓄積するの毒性が原因とされる。23例の研究では16例中15例が発症時に心病変を持っていた。
  • ⚠️ がを決める。 アセチルCoAの減少によるの低下が機序として提唱されている。⭐ の効きは限られ、高濃度ブドウ糖(1歳未満12〜15 g/kg/日)が最もよく効く。 の評価は出典で割れている。
  • :⭐ **c.199-10T>Gが東アジア・東南アジアで最多(ホモ接合で重症新生児型)、c.82G>Tはパキスタン系・インド系で。⚠️ **日本の報告は7例(6家系)にとどまり、196万人のNBSパイロット研究では発見例が無かった。 近年の沖縄例はいずれもc.824G>Aのホモ接合の重症例。
  • ⚠️ 酵素活性で予後を決めない。 の活性は1〜10%だが、同じ範囲で重症新生児型の経過をとった例がある。日本には酵素活性を測定できる施設が無い(2024年1月時点)。
  • 治療は高炭水化物(総カロリー60%超)+長鎖脂肪10%未満+(。日本でも2026年3月にされた)+補充(約100 mg/kg/日)。⭐ 補充がと逆向きに推奨される——⚠️ ただし根拠は「マウスモデルの心毒性所見に対し、患者での経験の蓄積が心毒性を来さないことを示唆する」という強さの記述であって、心毒性が否定されたわけではない。急性期の静注も「注意して投与する」に変わってきている。
  • ⚠️ に無症状でも、感染を契機に突然死しうる。 sick day は原則入院。長時間の絶食・激しい運動・の長時間投与・をもつを避ける。

出典

  1. 1.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠損症(日本先天代謝異常学会・2025)PDF全文を閲覧して確認した。CACTがCPT1・CPT2とともにカルニチンサイクルを構成し、ホモ2量体を形成してミトコンドリア内膜に局在し、アシルカルニチンをミトコンドリア内へ輸送するとともにミトコンドリア内の遊離カルニチンを細胞質へ返送すること、CACTが欠損すると細胞質内の長鎖アシルカルニチンが蓄積し遊離カルニチンも低下するため⚠️ アシルカルニチン分析ではCPT2欠損症と同じ所見になり両者をアシルカルニチン分析の結果で鑑別することはできないこと、本邦の報告が極めてまれで海外では胎内で心筋症を発症する新生児期発症型の重症例の報告が多くを占めること、⚠️ 他の脂肪酸代謝異常症にみられる筋症状で発見される遅発例の報告が極めて少なく、筋症状のみを主体とする明らかな遅発型については報告がないこと、新生児期に臨床症状を認めない症例であっても感染症罹患を契機に突然死を起こしうること、CPT2欠損症が新生児マススクリーニングの一次対象疾患へ引き上げられ同じスクリーニング指標を用いるためCACT欠損症も今後診断例が増加する可能性があること、欧米の報告では約80%の症例が新生児期にけいれん・無呼吸・不整脈・心筋症などで発症すること、組織学的に骨格筋・心筋・肝臓・腎尿細管の脂肪変性が認められること、本疾患では脂肪酸代謝異常症で一般的な心室性不整脈に加えて心房頻拍や伝導障害を起こすことが知られ蓄積するアシルカルニチンの毒性が原因とされること、新生児期発症型の一部で小頭症・耳介変形・嚢胞腎・肝石灰化・多小脳回といった先天奇形を呈する場合があること、本邦の約196万人を対象としたNBSパイロット研究では発見例が無く日本人症例は7例(6家系)の報告にとどまること、近年沖縄からの報告例が続きいずれもc.824G>Aをホモ接合性に有しNBSの結果判明前に発症していた重症例であり日本人とくに沖縄地方での創始者効果が考えられること、日本人症例でもアジア人に比較的高頻度のc.199-10T>Gが報告されていること、`SLC25A20`が3p21.31に局在しフレームシフト・スプライシング異常・ナンセンス変異が多くこれがCPT2欠損症と異なり重症型が多い理由の一つとされること、ろ紙血では長鎖アシルカルニチンの上昇が検出し難く見逃し例が発生しうるためより感度に優れる血清アシルカルニチン分析が望ましいこと、血清では長鎖アシルカルニチン全般(C16, C18, C18:1)の増加が特徴的で急性期はC0低値・(C16+C18:1)/C2比高値が目立つこと、NBSのろ紙血でC14/C3比と(C16+C18:1)/C2比を組み合わせる指標が2018年度のCPT2欠損症の一次対象疾患引き上げと同時に導入されCPT2欠損症を基準に作られた指標であるがCACT欠損症4例のNBSデータからも同様のカットオフで診断可能と報告されていること、2024年1月時点で日本国内にCACT酵素活性を測定している施設がないこと、急性期はまず低血糖を補正し血糖100 mg/dLを目安に維持し維持できなければGIR 7〜10 mg/kg/分を目安に中心静脈カテーテルを留置すること、高アンモニア血症が高濃度ブドウ糖輸液(1歳未満12〜15 g/kg/日、1〜6歳10〜12 g/kg/日)単独に反応することが多いとされること、体温を38℃以下に抑えアセトアミノフェンは安全に使用できるがNSAIDs(メフェナム酸・ジクロフェナクなど)はβ酸化酵素の活性低下を引き起こす可能性があり使用すべきでないこと(推奨度E)、⚠️ 脂肪酸代謝異常症では急性期の経静脈的カルニチン投与が禁忌と考えられていることが多かったが本疾患では近年のデータから急性期にも経静脈的投与が行われ有効性と安全性が報告されており一部ではカルニチンの持続静注が心筋症の改善につながったとする報告があるため注意して投与するとされること、慢性期のL-カルニチン投与が推奨度Dで海外の慢性期大量投与例(50〜200 mg/kg/日)が報告され血中遊離カルニチン濃度を正常下限(15〜20 μmol/L)以上に保つよう補充されるのが一般的であること、ベザフィブラートが推奨度Cでデンマークの無作為化比較試験では効果を認めず日本のオープンラベル非ランダム化試験でも主要評価項目である横紋筋融解症の発作回数について有効性が示されなかったこと、トリヘプタノインが日本では2024年12月現在承認されていないこと、食事間隔の目安(新生児期は日中3時間、6か月までは日中4時間・睡眠時4時間、1歳までは睡眠時6時間、4歳未満は睡眠時8〜10時間、4歳以上7歳未満は睡眠時10時間、7歳以上は個別に決定)、脂質を総kcalの30〜40%まで制限することが推奨されるが日本では通常の食事でも脂質が全摂取カロリーの30%未満になることが多いこと、非加熱コーンスターチ1〜2 g/kg/回の就寝前内服が推奨度C、38℃を超える発熱や嘔吐・下痢は sick day として原則入院管理を行うことが強く推奨されること、ピボキシル基をもつ抗生剤は血中遊離カルニチン濃度を低下させうるため原則使用しないこと(推奨度E)、登山やマラソンなど長時間の激しい運動を避けるべきで運動の20分前にMCTを0.5 g/kg投与すると運動不耐性が改善するという報告があること、乳幼児期発症型では厳重な管理によって予後改善が期待でき明確なエビデンスは無いが少なくとも小学校入学までは sick day 対策を含む厳格な管理が望まれることを確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Carnitine-Acylcarnitine Translocase Deficiency(GeneReviews (University of Washington, Seattle / NCBI Bookshelf)・2022)NCBI Bookshelfのライブページ全文で確認した(Morales Corado JA, Lee CU, Enns GM。2022年7月21日初出、改訂履歴に改訂の記載なし)。カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼがカルニチンシャトルの構成要素として長鎖アシルカルニチンをミトコンドリア内膜を越えて運ぶこと、外膜のCPT1が作った長鎖アシルカルニチンを遊離カルニチンと交換でマトリックスへ運び入れCPT2がアシルCoAへ戻すこと、重症の新生児期発症型が最も多く生後2日以内に症状が明らかになること・軽症型は生後数か月以内に発症しうること、高アンモニア血症と心不整脈が早期発症例で目立ち心停止の頻度が高いこと、その他の所見(哺乳不良・嗜眠・低ケトン性低血糖・筋緊張低下・肝逸脱酵素上昇・肝腫大を伴う肝機能障害・横紋筋融解症)が長鎖脂肪酸酸化異常症に典型的であること、片室性または両室性の肥大型心筋症が軽症から重症まで幅をもって生じ食事療法と薬物療法に反応しうること、高アンモニア血症が治療困難で長期の神経認知転帰の重要な決定因子であること、これまでに100例余りが報告され新生児期発症型89例・遅発型14例であること、新生児期の最も目立つ心所見が不整脈とくに心室頻拍で、次いで各種の頻脈性・徐脈性不整脈であり、1度房室ブロック・左脚ブロック・右脚ブロック・幅広いQRSの頻脈性不整脈・心房粗動も報告されていること、左室駆出率低下(55%未満)による心機能障害が多いこと、長期生存例で慢性の高アンモニア血症と軽度〜中等度の高CK血症が続きうること、脂肪肝炎・肝腫大・胆石・肝線維化が長期合併症として報告されていること、腎所見として腎腫大・Fanconi症候群・近位尿細管性アシドーシス・急性腎障害がありうること、重症新生児型が酵素活性1%未満と対応し診断や治療が遅れれば生後12か月未満で死亡すること、最も多い死因が心室頻拍による心停止であること、遅発型(生後1か月以降の発症)の診断時所見の頻度が低ケトン性低血糖70%・心病変40%・呼吸器症状30%・高アンモニア血症20%・肝逸脱酵素上昇20%・高CK血症20%・代謝性/乳酸アシドーシス20%であること、遅発型の酵素活性が対照の1〜10%であるが酵素活性だけで予後を判断できず1〜10%でも重症新生児型と同様の臨床像を示した例があること、c.199-10T>Gが最も多い病的バリアントで東アジア・東南アジア系で最も多く創始者効果が示唆されホモ接合では重症新生児型と関連すること、c.270delC(トルコ由来)とc.713A>G(中東由来)のホモ接合が重症新生児型と、c.82G>T(p.Gly28Cys、パキスタン系・インド系に多い)のホモ接合が軽症早発型または遅発型と関連すること、オーストラリア・ドイツ・米国の新生児スクリーニングデータに基づく発症頻度が約1:750,000〜1:2,000,000、香港が1:60,000・台湾が1:400,000と推定されること、鑑別診断表(Table 3)にCPT2欠損症について「CPT2欠損症とCACT欠損症はアシルカルニチンプロファイルが類似しており、出生時の発症時および新生児スクリーニングでは区別できない。分子遺伝学的検査および/または酵素活性測定が必要である」と記されていること、同表にVLCAD欠損症とTANGO2関連代謝性脳症・不整脈も挙げられていること、診断が`SLC25A20`の両アレル性病的バリアントの同定または培養皮膚線維芽細胞での酵素活性著減で確定し感度が比較的高い分子遺伝学的検査が優先されること、日常管理が高炭水化物食(総カロリーの60%超)・長鎖脂肪の制限(総カロリーの10%未満)・アナプレロティック薬トリヘプタノイン(総カロリーの25〜35%、Table 5では10〜35%)であり、トリヘプタノインが得られなければ中鎖脂肪酸トリグリセリド(総カロリーの10〜30%)で代替できること、絶食を避けカルニチンを約100 mg/kg/日(Table 5では50〜200 mg/kg/日を分2〜分3)補充することが推奨されること、長鎖脂肪酸酸化異常症でのカルニチン補充はマウスモデルの心毒性所見のため議論があったがCACT欠損症での経験の蓄積は心毒性を示さないこと、急性期に高濃度ブドウ糖(1歳未満12〜15 g/kg/日、1〜6歳10〜12 g/kg/日)を投与し高アンモニア血症は高いブドウ糖投与速度に最もよく反応する一方でアンモニア除去薬(安息香酸ナトリウム・フェニル酪酸ナトリウム)の有効性は限られること、カルバグル(カルグルミン酸)がN-アセチルグルタミン酸の構造類似体かつカルバモイルリン酸合成酵素1のアロステリック活性化因子として2例に適応外使用され1例で良好かつ安定した転帰が得られたこと、CACT欠損症ではアセチルCoAが減りN-アセチルグルタミン酸が減少するという機序が提唱されていること、高炭水化物摂取が慢性反復性の高アンモニア血症の予防に必要と思われるが過度の体重増加と脂肪肝炎を招きうること、サーベイランスとして年1回の心エコーと定期的な心電図/ホルター、成長・発達の評価、アンモニア・CK・AST/ALT・血糖・電解質・アルブミンの測定、生後1年以降は年1回の必須脂肪酸・微量元素・脂溶性ビタミンの測定を行うこと、避けるべきものが長時間の絶食・異化を来す疾患(発熱・感染症)・異化ストレス時の不十分なカロリー投与・長時間の激しい運動・長鎖脂肪酸を高濃度に含む麻酔薬(プロポフォールなど)の長時間投与であること、常染色体潜性遺伝でありハイリスク同胞は年齢によらず全員の検査が推奨されることを確認した。閲覧 2026-09-04
  3. 3.New insights into carnitine-acylcarnitine translocase deficiency from 23 cases: Management challenges and potential therapeutic approaches(Journal of Inherited Metabolic Disease(Ryder B, Bhattacharya K, ら)・2021)Europe PMCの抄録で確認した。9施設の国際多施設後ろ向きカルテレビューで23例が同定されたこと、そのうち7例が軽症化した経過をたどるパキスタン系で6例がc.82G>Tのホモ接合であり遅発の発症様式と慢性高アンモニア血症を伴わない長期生存を示したこと、古典型16例のうち15例が発症時に心病変を有し内訳が不整脈9/15・心停止7/15・心肥大9/15であったこと、アンモニアが記録された例では重症例1例を除く全例(測定14例中13例)で上昇し16例中14例が低血糖を来したこと、古典型のうち9例が長期生存したが多くが摂食障害と認知の遅れを伴ったこと、⚠️ 高アンモニア血症がアンモニア除去薬とカルグルミン酸に抵抗性である一方、急性代謝不全時の高濃度ブドウ糖投与にはよく反応すると本文が述べていること、代謝不全の予防には高いエネルギー投与が必要と思われること、個別症例で試みられた d,l-3-ヒドロキシ酪酸・トリヘプタノイン・蛋白摂取増加によるアナプレロシスが慢性の高アンモニア血症と代謝の安定を改善したように見えたこと、古典型早発例でも長鎖脂肪制限・慎重なブドウ糖投与・中鎖脂肪酸トリグリセリド補充によって長期生存が可能であることを確認した。⚠️ 抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  4. 4.ドジョルビ内用液100%(トリヘプタノイン)添付文書(Ultragenyx Japan/医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2026)PMDAの添付文書本文(2026年3月作成・第1版、2026年5月改訂・第2版)を逐語確認した。承認番号30800AMX00122000、販売開始2026年5月、規制区分が処方箋医薬品かつ「条件付き承認品目」であること、効能又は効果が「長鎖脂肪酸代謝異常症」で個々の酵素欠損症の列挙も「分子診断が確定した」に相当する限定も無いこと、用法及び用量がDCIに対する割合10%から開始し2〜3日毎に約5%ずつ増やして目標値25〜35%とし1日4回に分けて経口又は経管投与するものであること、承認条件として医薬品リスク管理計画の策定と実施中の国際共同試験の成績提出が課されていることを確認した。⭐ 17.1.2の海外第II相試験(UX007-CL202、LC-FAOD患者94例)の内訳が「CPTI欠損症患者1例、CPTII欠損症患者19例、VLCAD欠損症患者32例、LCHAD欠損症患者28例、TFP欠損症患者10例、CACT欠損症患者4例」でありCACT欠損症4例が組み入れられていること、一方17.1.1の海外第II相試験(UX007-CL201、29例)はCPTII欠損症4例・VLCAD欠損症12例・LCHAD欠損症10例・TFP欠損症3例でCACT欠損症を含まないことを確認した閲覧 2026-09-04