薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B9 Lipid-lowering drugs / 脂質異常症治療薬

ベザフィブラート

bezafibrate

分類
Lipid-lowering drugs / 脂質異常症治療薬
商品名(日本)
ベザトールSR
科目
Pharmacology
トピック
B9: Drugs affecting lipid metabolism. Drugs controlling body weight
禁忌疾患
慢性腎臓病
副作用
筋肉痛黄疸
監視検査値
クレアチンキナーゼクレアチニン
相互作用
アトルバスタチンシンバスタチンワルファリン
対象疾患
CPT2欠損症複合アシルCoA脱水素酵素欠損症

🧠 全体像:は作動薬()で、・と同じ「TGを下げる薬」という立ち位置を共有する。ただし本剤には治療という主用途とは別に、の筋型に対する薬物療法という特異な文脈がある。⚠️ この文脈での評価は一枚岩ではない——デンマークのRCTでは効果を認めず、日本のオープンラベル試験でも患者・入院回数は改善したがであるの発作回数そのものへの有効性は示されなかった1。「使われている」ことと「効果が確立している」ことは別、という薬。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 標的・機序 主な使いどころ
作動(TG低下が主体) ・・ 活性化→()発現↑・ApoC-III↓ のTG低下が主目的。膵炎予防としての位置づけは文書で強さが違う——の米国添付文書は「膵炎の危険を下げる効果は明らかにされていない」と限定する2(⚠️ 本剤とについて同じ点を述べた文書は本ノートでは確認していない。本剤の国内添付文書の効能は「(家族性を含む)」だけで、膵炎予防には触れていない3)。を下げる目的の薬ではなく、日本動脈硬化学会2022年版の分類でも(本剤を含む)のは低下・上昇どちらもしうる4
肝でのコレステロール合成阻害(スタチン) ・ 還元酵素阻害 低下の第一選択

⭐ 同じの中での違い。 ・がの標準治療薬という位置づけで揺るがないのに対し、は日本では(筋型)の薬物療法という治療とは別の文脈でも登場する。この用途は一次資料上も評価が割れており、としての確立した位置づけとは切り分けて理解する必要がある。

機序

()を活性化しての発現を高めTGリッチリポ蛋白のを促進する点は他のと共通(詳細な下流経路はの項を参照)。は・γ・δの3種いずれにも作用する「パン」である点が他の(選択性が高い)と異なるとされる。

💡 での作用機序の仮説。 はミトコンドリアのに関わる遺伝子群(CPT2を含む)の発現を制御しており、による活性化が変異CPT2蛋白の・発現量を底上げしうるという分子薬理学的な仮説がこの適応の背景にある。ただしこの機序は・線維芽細胞レベルでの知見が中心で、臨床的な有効性そのものは一次資料間で評価が一致していない1。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収
分布 が高い
代謝 一部
排泄 主として腎臓を経て(患者では慎重投与・減量が必須)3
半減期 として1日2回投与で維持できる範囲

⚠️ が中心という点が、この薬の禁忌・のほぼすべてを説明する。 添付文書は値とに応じた具体的な減量表を持ち、値2.0 mg/dL以上・人工(を含む)は禁忌とされる3。

適応

領域 使いどころ
(家族性を含む)。適用前にであることを十分な検査で確認する3
(筋型) ⚠️ 推奨度C。 デンマークのRCTでは無効、日本のオープンラベル試験では・入院回数の改善はあるがの発作回数というでは有効性が示されていない1

用法・用量

通常、成人にはとして1日400 mgを2回に分けて朝夕食後にする。を有する患者・高齢者には値・に応じて適宜減量する3。実際の用量・減量幅は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

副作用

頻度 内容
高頻度(1〜5%未満) 上昇、腹痛・悪心・
注意(1%未満) 筋肉痛・、//上昇、/クレアチニン上昇、発疹・そう痒
重篤・まれ (特にスタチン併用時)、・黄疸、アナフィラキシー(頻度不明)、()・(いずれも頻度不明)3

まとめ

  • (パン)作動薬、。TGリッチリポ蛋白の促進がで、治療における位置づけは・と共通。
  • 主としてのため、値・に応じた減量が必須。値2.0 mg/dL以上・人工は禁忌。
  • スタチンとの併用はのリスクをに高めるため、やむを得ない場合に限り少量から慎重に。抗凝血薬の作用増強にも注意。
  • ⚠️ の筋型に対する使用(推奨度C)は、一次資料間で有効性の評価が一致していない。 デンマークのRCTは無効、日本のオープンラベル試験は・入院回数の改善を示したが(の発作回数)は未達で、としての確立した位置づけとは切り分けて理解する。

出典

  1. 1.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼⅡ(CPT2)欠損症(日本先天代謝異常学会・2025)diseases/cpt2-deficiency.mdのsourcesで確認済みのPDF全文の記載を、ベザフィブラートに関する部分に限定して再掲する。CPT2欠損症の筋型(遅発型)に対しベザフィブラート(推奨度C)が用いられること、デンマークのRCTでは効果を認めなかった報告がある一方、日本のオープンラベル非ランダム化試験では患者QOLや入院回数の改善が示されたものの、主要評価項目である横紋筋融解症の発作回数については有効性が示されなかったことを確認した閲覧 2026-09-03
  2. 2.ANTARA (fenofibrate) capsules, for oral use — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Lupin Pharmaceuticals, Inc.(NDA 021695)・2025)drugInfoページと openFDA の同一 set_id を自分で取得して確認した(Highlights末尾に印刷された改訂表示は Revised 10/2025、effective_time 20251001)。1 INDICATIONS AND USAGE の Limitations of Use が逐語で「Markedly elevated levels of serum TG (e.g., > 2,000 mg/dL) may increase the risk of developing pancreatitis. The effect of fenofibrate therapy on reducing this risk has not been determined」であり、著明なトリグリセリド高値が膵炎の危険を高めうることは述べつつ、フェノフィブラート治療がその危険を下げる効果は明らかにされていないと限定していること。⚠️ この文書はフェノフィブラートの処方情報であって、ベザフィブラート・ゲムフィブロジルについては何も述べていない閲覧 2026-09-17
  3. 3.日本薬局方 ベザフィブラート徐放錠(ベザフィブラートSR錠100mg「日医工」/200mg「日医工」)添付文書(日医工株式会社・2023)PDF全文をテキスト抽出して確認した(2023年10月改訂第1版、承認番号22000AMX01746000〔100mg〕・22100AMX01643000〔200mg〕)。効能又は効果が「高脂血症(家族性を含む)」であること、用法及び用量が通常成人1日400 mgを2回に分けて朝夕食後に経口投与し腎機能障害・高齢者では適宜減量すること(血清クレアチニン値・クレアチニンクリアランスに応じた減量表が付されること)、禁忌が人工透析患者(腹膜透析を含む)・腎不全などの重篤な腎疾患・血清クレアチニン値2.0 mg/dL以上・本剤成分への過敏症の既往・妊婦であること、重要な基本的注意として高脂血症の食事療法・運動療法を先行させ血中脂質値を定期検査すること、HMG-CoA還元酵素阻害薬(プラバスタチン・シンバスタチン・フルバスタチン等)との併用は治療上やむを得ない場合のみとし急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症(自覚症状:筋肉痛・脱力感、CK上昇、血中・尿中ミオグロビン上昇、血清クレアチニン上昇)に注意すること、抗凝血薬のプロトロンビン時間延長作用を増強しうること、スルホニル尿素系血糖降下薬(グリベンクラミド等)との併用で低血糖症状が生じうること、重大な副作用として横紋筋融解症のほか肝機能障害・黄疸、アナフィラキシー、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)・多形紅斑が挙げられることを確認した閲覧 2026-09-06
  4. 4.Japan Atherosclerosis Society (JAS) Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022(Japan Atherosclerosis Society・2024)Europe PMC(PMC11150976)から全文XMLを自分で取得して確認した。Table 10(Classification of dyslipidemia drugs according to their efficacy)のフィブラート系の行が Main Generic Names に Bezafibrate, Fenofibrate, Clofibrate を並べ、LDL-C欄を「↑~↓」、TG欄を「↓↓↓」、HDL-C欄を「↑↑」、non-HDL-C欄を「↓」としていること。表の凡例が ↓↓↓ を30〜50%低下、↑ を10〜20%上昇、↓ を10〜20%低下と定義しており、ベザフィブラートを含むフィブラート系はLDL-Cを下げることも上げることもありうる薬として分類されていること閲覧 2026-09-17