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Drug Atlas · B9 Other / その他

ラロピプラント

laropiprant

分類
Prostaglandin D2 receptor (DP1) antagonist / プロスタグランジンD2受容体(DP1)拮抗薬
商品名(EU)
TredaptivePelzontTrevaclyn
科目
Pharmacology
トピック
B9: Drugs affecting lipid metabolism. Drugs controlling body weight
禁忌疾患
消化性潰瘍
副作用
頭痛

🧠 全体像:は、それ自体には脂質を下げる作用が一切無いという点が理解の出発点になる薬である。プロスタグランジンD2受容体1(DP1)の選択的拮抗薬であり、のそのものには関与せず、が引き起こすという副作用だけを抑えるために配合された成分である(配合剤名Tredaptive/Pelzont/Trevaclyn)。⭐ 「効能を持つ主薬+副作用だけを消す添え物」という組み合わせ自体が、2013年に薬効全体の運命を道連れにして終わった——HPS2-THRIVE試験でこの配合剤がスタチン治療へのとして心血管を示せず、むしろ重篤な有害事象を増やしたことを受け、CHMPは2013年1月17日に販売承認の停止を勧告し、欧州委員会の決定で2013年4月10日に販売承認が取り下げられた1。は単剤として承認されたことは一度も無い。

薬効群の中での位置づけ

成分 役割 脂質への作用
配合剤の主薬。活性化による抑制で・TG↓、↑ あり(治療域で脂質修飾薬として作用)
DP1拮抗薬。誘発性のを抑える添え物 無し——が「脂質値に影響を与えず、の脂質への作用を妨げない」と明記2

💡 アシピモクスの項で見た「誘導体の中でのの枝分かれ」とは別の軸である。 アシピモクスはそのものの構造誘導体(同じ経路で脂質を下げる)だが、はには触れない対症療法専用の添加成分——このカテゴリー分けを混同しない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nicotinic acid'>ニコチン酸</span>を内服(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adipocyte'>脂肪細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='niacin receptor GPR109A'>GPR109A</span>活性化)"] --> B["皮膚の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Langerhans cell'>Langerhans細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratinocyte'>ケラチノサイト</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='niacin receptor GPR109A'>GPR109A</span>も活性化"]
    B --> C["プロスタグランジンD2(PGD2)放出"]
    C --> D["PGD2がDP1受容体に結合"]
    D --> E["血管拡張→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facial flushing'>顔面紅潮</span>"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laropiprant'>ラロピプラント</span>を併用"] --> G["DP1受容体を選択的に拮抗(PGD2の産生自体は阻害しない)"]
    G -.阻止.-> D

💡 「PGD2の産生は止めず、受容体だけをブロックする」という設計である。 は「はプロスタグランジンの産生自体を阻害するとは考えられていない」と述べており2、上流のには手を付けず、下流のDP1受容体だけを選択的に拮抗する。ヒトでの薬理試験では単回6 mg以上の用量で血小板のPGD2誘発性産生を抑制し、DP1への標的関与が確認されている3。

⚠️ アスピリンの前投与とは異なるで、かつ「効果は無い」ことが確認されている。 単剤の項で述べたとおりアスピリンの事前投与はそのものを抑えてを軽減できるが、Tredaptive(/配合剤)に対して325 mgを追加しても、症状のさらなる軽減効果は見られなかった2。の時点で既にDP1がブロックされているため、上流でプロスタグランジン産生を止める介入を重ねても効果が乗らないと理解できる。

適応

⚠️ 単剤に適応は無い。 承認されたのは常にとの配合剤(Tredaptive等)としてであり、適応は配合剤としての・原発性(他の治療で不十分な場合の追加、またはスタチン不適当例の単独療法)だった2。自体の役割は、この配合剤を患者がのために中断せず継続できるようにするという付随的なものにとどまる。

用法・用量

配合剤としての用法・用量のみが存在する。は1,000 mg /20 mg (modified-release錠1錠)を1日1回、4週間後に2,000 mg/40 mg(同錠2錠)へ増量する。1日量2,000 mg/40 mgを超える用量は検討されておらず推奨されない2。

  • は夕方または就寝時に食事とともに、割らず・砕かず・噛まずに服用する
  • 服用時のアルコール・熱い飲み物・辛い食品はを強めるため避ける2

(この配合剤は2013年にで販売承認が取り下げられており、現在は処方できない。用量は歴史的な記録として扱う。)

禁忌・注意

⚠️ 禁忌は配合剤としてのもので、側の禁忌がそのまま適用される。 が挙げる禁忌は4項目——本剤成分への過敏症、重大または原因不明の、活動性消化性潰瘍、2。固有の禁忌は特定されていない。

  • はの誘導・阻害作用を持たないが、の(1’-ヒドロキシ)の血中濃度を約2倍に上昇させるため、UGT2B4/UGT2B7で主に代謝される薬剤(等)との併用は注意する2
  • ・との併用では、の臨床的に意味のある延長は認められなかったが、両剤を併用中の患者ではが一過性(投与後4時間)の抑制を誘発しうるため注意が必要とされる2

副作用

頻度 内容
高頻度(配合剤として) 頭痛、(プールした対照試験でTredaptive群のは12.3%)
頻度不明 めまい、不眠、鼻炎

⚠️ 副作用の大半は側に由来し、単独の寄与は試験デザイン上切り分けられていない。 HPS2-THRIVE試験でも投与されたのは単剤ではなくこの配合剤であり、新規糖尿病診断・重篤な感染症・重篤な出血などの増加のどこまでが由来かは、この試験だけからは判別できない4。

まとめ

  • はDP1(プロスタグランジンD2受容体1)の選択的拮抗薬で、それ自体に脂質を下げる作用は無い。
  • が誘発する(PGD2→DP1を介した血管拡張)だけを抑えるための配合成分で、承認されたのは常に配合剤(Tredaptive等)としてであり単剤の適応は無い。
  • プロスタグランジンの産生自体は阻害しない(受容体だけをブロックする)ため、配合剤にアスピリンを追加してものさらなる軽減効果は無い。
  • ⭐ 2013年、HPS2-THRIVE試験(25,673例)がスタチン治療へので心血管を示せず重篤な有害事象を増やしたことを受け、は/配合剤の販売承認を停止・取り下げた。 現在この配合剤は域内のどの国でも販売されていない。
  • 禁忌は配合剤としての4項目(成分への過敏症、重大な、活動性消化性潰瘍、)——実質的に側の禁忌がそのまま適用される。
  • 副作用の大半はに由来し、固有の寄与はのデザイン上切り分けられていない。

出典

  1. 1.Tredaptive, Pelzont and Trevaclyn (nicotinic acid / laropiprant) — Article 20 referral(European Medicines Agency・2013)ニコチン酸/ラロピプラント配合剤(Tredaptive・Pelzont・Trevaclyn)の審査手続きが2012年12月20日にHPS2-THRIVEの新しいデータを受けて開始されたこと、2013年1月17日にCHMPが販売承認の停止を勧告したこと、その理由がスタチンへの上乗せで心筋梗塞・脳卒中などの主要な血管イベントの減少に有意な追加効果が無く、致死的ではないが重篤な副作用の頻度がむしろ高かったためであること、欧州委員会が2013年3月22日に法的拘束力のある決定を出し、販売承認が2013年4月10日に取り下げられ、「いずれの製品も現在EU域内のどの国でも販売されていない」と記載されていることを確認した。閲覧 2026-09-16
  2. 2.Tredaptive, INN-nicotinic acid/laropiprant — Annex I: Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2013)Tredaptive徐放錠(1,000 mg ニコチン酸/20 mg ラロピプラント、維持量は同錠2錠で2,000 mg/40 mg)の製品概要(Annex I SmPC)を取得して確認した。5.1で、本剤がニコチン酸(治療域でLDL-C・総コレステロール・VLDL-C・アポB・TG・Lp(a)を低下させHDL-C・アポA-Iを上昇させる脂質修飾薬)とラロピプラント(プロスタグランジンD2受容体サブタイプ1〈DP1〉の強力かつ選択的な拮抗薬)の配合剤であり、「ラロピプラントは脂質値に影響を与えず、ニコチン酸の脂質への作用を妨げない」と明記していること。ラロピプラントの機序として、ニコチン酸誘発性の顔面紅潮が主として皮膚でのプロスタグランジンD2(PGD2)放出により媒介され、動物モデルでPGD2がDP1を介して紅潮に重要な役割を果たすことが示されていること、ラロピプラントはプロスタグランジンの産生自体は阻害しないと考えられていることを確認した。4.2で開始用量が1,000 mg/20 mgを1日1回で4週後に維持量2,000 mg/40 mgへ増量すること、4.3の禁忌が本剤成分への過敏症・重大または原因不明の肝機能障害・活動性消化性潰瘍・動脈性出血の4項目であること、5.1でTredaptive単独投与にアセチルサリチル酸325 mgを前投与しても紅潮症状の追加的な軽減効果は無かったこと、4.8で紅潮がTredaptiveの最も頻度の高い有害反応(プールした対照試験でTredaptive群12.3%)であり、紅潮関連症状による中止率がTredaptive群7.2%・ニコチン酸群16.6%・プラセボ/シンバスタチン群0.4%であったことを確認した。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Pharmacokinetics, Pharmacodynamics, and Safety of a Prostaglandin D2 Receptor Antagonist(Clinical Pharmacology & Therapeutics・2008)健常男性ボランティアを対象とした二重盲検プラセボ対照試験で、ラロピプラント(単回投与900 mgまで、反復投与450 mg/日まで)が概して忍容性良好であったこと、用量比例的な薬物動態を示し急速に吸収され(Tmax 0.8〜2.0時間)、消失半減期は約12〜18時間であったこと、単回6 mg以上の用量で血小板でのPGD2誘発性cAMP産生の抑制を通じてDP1受容体への標的関与を示したことを確認した。閲覧 2026-09-16
  4. 4.Effects of Extended-Release Niacin with Laropiprant in High-Risk Patients (HPS2-THRIVE)(New England Journal of Medicine(HPS2-THRIVE Collaborative Group)・2014)スタチン治療中の高リスク患者への徐放性ナイアシン2 g/ラロピプラント40 mg配合剤の追加が主要血管イベントを有意に減少させず(13.2%対13.7%、率比0.96、95%信頼区間0.90〜1.03、P=0.29)、新規糖尿病診断・重篤な感染症・重篤な出血などの重篤な有害事象を有意に増加させたことを確認した。組入れは血管疾患を有する成人25,673例、追跡中央値3.9年。閲覧 2026-09-16